澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

アベ改憲策動の現段階 ― 改憲阻止に楽観論と慎重論と

自民党の改憲策動は今どうなっているんだい。もう、アベ改憲はとても無理だろう。

いや、それは甘い。新聞に「改憲遠のく」の記事が出ているが、運動体には迷惑な話だ。気を抜いてはならない現状だと思う。

そうかな。常識的にはアベ政権は死に体じゃないか。こんな政権に、憲法改正などという力業ができるとは到底思えない。むしろ、運動の成果に自信をもつべきではないのか。

改憲は、内閣の仕事ではない。改正案の審議も発議も、もっぱら国会の仕事だ。アベの力が衰えても、与党がやる気になればできることだ。9月の総裁選でアベ三選が阻止されても、後継総裁が「アベなきアベ改憲」を強行しないとも限らない。

今、アベが火だるまになっているのは根底に改憲強行姿勢があるからじゃないか。アベが追い落とされれば、次の総裁が誰であれ改憲は仕切り直しで、しばらくはおとなしくするだろう。そのような、硬軟おりまぜた柔軟性が自民党のしたたかさだと思うがね。

アベ9条改憲は、12年4月の「改憲草案」よりは、ずっと妥協し後退したものだ。党内には、これを不満とし「改憲草案」の国防軍案を主張する強硬派も少なくない。アベなきあとも、せめてアベ改憲の実現をと、まとまる可能性を否定できない。

自民党が、そんなイデオロギー政党だろうか。自民党の議員が、憲法が票になると思っているはずはない。景気対策、産業振興、震災復興、雇用や年金、教育費援助、農林漁業支援などの現実的な政策に傾斜せざるを得ないところだろう。

いや、今両院ともに、改憲派の議席が3分の2を超している。党内には、いまこそ千載一遇のチャンスという雰囲気が横溢していると見るべきだろう。

その一方で、今のアベ総裁のままでは選挙は戦えないという声が党内に満ちているとも報じられている。アベのバスに乗り遅れまいと有象無象が群がった時代は夢のまた夢。今は、沈みそうなアベ丸から、みんなわれ先に逃げ出そうとしている図ではないか。

党内には、「この連休で気分が変わる。」「内閣支持率も5月中旬にはV字回復」という楽観論もある。これまで何度もの危機を乗り切ってきたアベのしたたかさを過小評価してはならない。

聞きたいのは、アベ改憲スケジュールの現段階だ。もともとは「2020年東京オリンピックまでに改正憲法施行」で、逆算すると、今通常国会中に国会に「改正原案」を発議し、今年の末までに、国会が「改正案」を国民投票に発議しなければ間に合わない。それが頓挫したということではないのか。

当初予定のスケジュールが、かなり難しくなっていることは疑いない。しかし、頓挫したということではない。

少し、詳しく説明してくれないか。

3月14日に、自民党改憲本部が9条改正案の7案を提示した。この中には、9条2項削除案と存続案が混在しているが、初めから最有力だったのは、「9条1項2項はそのまま残して、自衛隊を憲法に明記する」というアベ提案に沿った、「9条2項を維持して、9条の2に、『必要最小限度の実力組織として、自衛隊を保持』」という案だった。

それでまとまらなかったのか。

3月15日が自民党改憲本部の全体会議だった。細田博之本部長は、一任を取り付けようとしたが、まとまらなかった。第2項維持派が「自衛隊」明記案と「自衛権」明記案に分かれたためだと言われている。ここで、アベの求心力低下が表面化した。

その後に、一任を取り付けたと報道されたんじゃないのか。

3月22日に再度の全体会合が開かれた。報道では、「安倍晋三首相の意向に沿って9条第1項(戦争放棄)と第2項(戦力不保持)を維持しつつ自衛隊の存在を明記する憲法改正について、これまでの有力案から『必要最小限度』を削除する修正案が提示された。会合では修正を支持する意見が多数を占め、同本部は今後の対応を細田氏に一任。細田氏は修正案に基づき条文化を進める。」となっている。確かに、一任取り付けとはなった。

これまでの有力案から、「必要最小限度」を削除すると、「実力組織として、自衛隊を保持する」ということか。

おそらくは、条文としてはこうなるだろうということだ。
「9条の2第1項 前条(註・現行9条1・2項)の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
同第2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。」

「おそらくは」って、3月25日の自民党大会までに条文案を一本化して、この党大会を具体的な改憲発議に向けての決起集会にするはずだったのだろう。

それが、そうはならなかった。翌日の朝日新聞の一面トップの見出しが、「改憲発議 年内厳しく 支持急落 日程窮屈に」。「党改憲推進本部が急いでまとめた『改憲4項目』の条文案が大会で披露されることはなかった」と報じられている。

改憲テーマは、「9条」・「緊急事態」・「参院選の合区」・「教育充実」の4項目だった。どの項目についても、改憲本部長からの条文化が示されなかったのなら、改憲スケジュール頓挫、ということではないのかね。

いや、今のところは「日程窮屈に」なった程度ということだろう。水面下では、公明党との摺り合わせが進行しているはずだ。

ボクは、3月2日に神風が吹いたと思っている。その日の朝日新聞・朝刊のトップ記事が、森友・決裁書「書き換え疑い」の報道だった。「書き換え疑い」は、すぐに「疑い」がとれ、「改ざん」となった。

その記事がもとで3月27日佐川証人喚問までは漕ぎつけたが、尋問では官邸の責任を否定し、細部は証言の拒否だった。

さらに加計問題だ。愛媛県の文書が出てきて、15年4月2日の官邸での面会が話題となった。これに「首相案件」とあった。さらには農水省、内閣府、文科省から内部文書が出てきた。当時の首相秘書官だった柳瀬が窮地に立たされている。

法的な問題としては、イラク派兵の日報が出てきたことは大きい。1万5000頁もの文書が報告されていなかった。シビリアンコントロールはどうなっているのか。

統合幕僚監部の三佐が、国会前の路上で民進党小西洋之参議院議員の「国民の敵」と罵倒した事件はもっと大きい。こんな、危険な自衛隊を憲法上の組織として位置づけるなど、とんでもないことだ。

このことへの反論として、「憲法に自衛隊の規定も、自衛隊へのシビリアンコントロールの規定もないことが問題だ。憲法に規定すればよい」などという珍論がある。

そして、おまけは財務事務次官福田淳一のセクハラ報道だ。福田の言動もひどいが、麻生の対応が致命的だった。これは、安倍内閣の断末魔の図ではないかね。

アベにとっての起死回生の望みが日米首脳会談だった。結局はなんの土産も持ち帰ることができなくて、安倍外交の失敗が際立つ結果となった。朝鮮半島をめぐる国際問題で、まさしく日本は蚊帳の外だ。

アベが倒れれば、アベ改憲策動はなくなる。アベの失点は、護憲勢力に朗報だろう。

アベが取りこぼして、「オウンゴールでアベ政権が倒れた」ではダメなんだ。改憲阻止の国民運動がアベを打倒したという構図にならなければ、アベ後継の改憲策動が始まることになる。

いま、アベが倒れたとして、これを「オウンゴール」というのは引っかかる。アベを糺弾する運動や言論があってのアベ退陣だろう。アベ改憲阻止とは、何よりもアベ政権を倒すこと。行政を私物化し、隠蔽・改ざん・捏造の、腐敗したアベ政権を糺弾することが今大切だろう。

何よりも、「改憲にこだわっていたのでは、選挙民がアベ自民党を見限る」「改憲論では選挙に勝ち目がない」という世論喚起の運動を高めなければならない。3000万署名を積み上げることが、喫緊の課題だ。

そこのところは異論がないね。いかなる改憲策動も、衆・参どちらかの議院で、護憲派が3分の1の議席をとればよい。今の世論分布なら、護憲野党の共闘で可能となるはずだ。それまで頑張ればよい。

もちろん、そのとおりだ。私は油断せぬよう、楽観せぬよう、世論喚起の運動を押し進めたい。

ボクの方は楽観しながら、市民と野党の共闘が実現するよう運動に参加するつもりだ。
(2018年4月23日)

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