澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

ウッドワード・オバマ・ムーアらの「言葉」は、トランプの岩盤支持層に届くだろうか。

ドナルド・トランプは、御難続きである。すべては身から出た錆であり、因果応報として甘受せざるを得ないところ。

ボブ・ウッドワードの内幕本「Fear」では「小学5、6年の理解力しかない」と秘密を暴かれ匿名の政府高官によるニューヨーク・タイムズ紙への寄稿でも厳しく批判された。大統領の人格と政策を「衝動的かつ敵対的、狭量で効果がない」という政権内にいる多数の高官がトランプ大統領の言動の危うさを認識し、大統領が掲げる政策について実現を阻止しようと政権内で画策してきた、ともいうのだからトランプが怒るわけだ。

これまで発言を控えてきたオバマが、これに追い打ちをかけている。「トランプは、敵意と恐怖で国民をあおっている。トランプの下で「健全な民主体制」を支える三権分立が機能しなくなっている。世界の国で唯一、パリ協定から脱退した」、などと批判し、「トランプ擁護の共和党はもはや保守とはいえない。過激派だ」とまで言ったのだから、よほどの覚悟。

そして、本命は、常に話題作を提供するマイケル・ムーアの最新作だ。原題「Fahrenheit 11/9」。これが、邦題「華氏119」として11月に全国で放映される。これが見物だ。中間選挙を前に、トランプに頭の痛い作品。

ムーアの2004年作品が、「Fahrenheit 9/11」。これが「華氏911」の邦題になった前例を踏襲しての「華氏119」。「華氏911」は、9・11同時多発テロをきっかけにしたイラク戦争の批判だが、ブッシュ(子)政権に対する痛烈な批判でもある。今度の「華氏119」は、それ以上に徹底したドナルド・トランプ批判だという。

「華氏119」の「華氏」は、ブラッドリーの小説「華氏451度」からのイメージ借用。書物の燃え上がる温度だという、デストピアの暗喩。「119」は、トランプが大統領選で勝利宣言をした2016年11月9日を意味している。この日が、知性も理性も燃え尽くすデストピアの始まりという意味なのだろう。

そういえば思い出す。あの大統領選のさなか、ムーアは大手メディアの予想を真っ向から否定して、「残念ながらトランプが勝つ」と言っていた。

ムーアによれば、「トランプは“悪の天才”。感心するほどの狡猾さを持っていて、トランプを笑う私たちでさえ彼の術中にはめられている」という。彼は、本作でそのトランプを当選させたアメリカ社会に斬り込むとの前評判

キャッチコピーは、次のようなもの。
2016年11月9日、トランプは米国大統領選の勝利を宣言―その日、米国ひいては世界の終りは始まった?! なぜこうなった?どうしたら止められる?ムーア節炸裂! 宿命の戦いに手に汗にぎるリアル・エンターテイメント!

これが、第43回トロント国際映画祭ドキュメンタリー部門オープニング作品として現地時間9月6日夜に初上映された。話題性十分で、11月中間選挙の結果をも左右しかねない。

しかし、あんなトランプをホワイトハウスの主たらしめているのは、実はアメリカ国民の支持である。彼の明らかな失策にも揺るぎを見せない岩盤支持層あればこそである。まさしく、こんなアベ政権を続けさせている我が国の不幸な事態とまったく同様の構造なのだ。

さて、どうしたら、オバマのいう「健全な民主体制」を取り戻すことができるのだろうか。到底楽観し得ない。トランプやアベを支持する国民層に届く言葉を発し続ける工夫と努力を継続するしかないが、今のところ、われわれはその成功の展望を見出し得ない。「トランプやアベを支持する国民層に届く言葉」を探しあぐねている段階ではないか。ウッドワード・オバマ・ムーアらの「言葉」は、そのような観点から、有効なものとなりうるだろうか。
(2018年9月9日)

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