澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

金子みすゞは獲られた鯨の子を想い、アベ晋三は鯨をエサに票を獲る。

「金子みすゞ」。何という清澄な響き。その名を耳にすれば、心が洗われる。
「安倍晋三」。何という汚濁にまみれた響き。その名を聞くだに心がきしむ。

みすゞと晋三。およそかけ離れた、対照的な存在。住む世界が根本的に異なるのだ。聖なるものと俗なるもの。清らかなるものと穢れたもの。真実と嘘。善きこととと悪しきこと。そして、美しいものと醜いもの。

ところが、この両者に接点がないではない。繋ぐものは、出身地と鯨である。
よく知られているとおり、みすゞの生地は山口県大津郡仙崎村。今は、長門市の一部。長じてからは下関に出て、そこで幸薄い短い生涯を終えた。

晋三の生地は東京だが、本籍地は山口県大津郡油谷町。これも、現長門市である。その選挙地盤は、長門市と下関市からなる山口4区。

みすゞの詩には漁をうたったものが少なくない。仙崎が漁師町だったからだ。また仙崎は、捕鯨で知られた漁港でもあった。地元では、近代捕鯨の発祥の地と言っているようだ。みすゞの詩のなかには、鯨をテーマにしたものが見える。よく知られているのが、「鯨法会」だろう。

   鯨 法 会

 鯨法会は春のくれ、
 海に飛魚採れるころ。

 浜のお寺で鳴る鐘が、
 ゆれて水面をわたるとき、

 村の漁夫が羽織着て、
 浜のお寺へいそぐとき、

 沖で鯨の子がひとり、
 その鳴る鐘をききながら、

 死んだ父さま、母さまを、
 こいし、こいしと泣いています。

 海のおもてを、鐘の音は、
 海のどこまで、ひびくやら。

念のため、法会は「ほうえ」と読む。鯨の死を悼み供養する仏事が詩の題材になっている。みすゞの、獲られる側を思いやる気持が心に沁みて、何とももの悲しい。

もの悲しさとは異なる『鯨捕り』という詩も知られている。以下は、その一部。

 むかし、むかしの鯨捕り、
 ここのこの海、紫津が浦。

 海は荒海、時季は冬、
 風に狂うは雪の花、
 雪と飛び交う銛の縄。

 岩もこ礫もむらさきの、
 常は水さへむらさきの、
 岸さへ朱に染むという。

 厚いどてらの重ね着で、
 舟の舳に見て立って、
 鯨弱ればたちまちに、
 ぱっと脱ぎすて素っ裸
 さかまく波におどり込む、
 むかし、むかしの漁夫たち。

晋三には、引用すべき句も歌も詩もない。心に沁みるスピーチも、人を感動させるフレーズも皆無である。あるのは、ウソ、ごまかし、隠蔽、捏造、デンデン…。

しかし、選挙区の自分の支援者の声を聞くことには熱心なのだ。長門市と下関市からなる山口4区は、和歌山の太地と並ぶ捕鯨の拠点だという。なるほど、それがIWCを脱退して、商業捕鯨を始めようという理由と聞かされれば、合点がゆく。何とも唐突で、理解し難い政府の決定の、これか舞台裏であったか。

来年(2019年)7月開始が宣言された商業捕鯨は、沿岸捕鯨と沖合捕鯨(EEZ内)の2種があるという。沿岸捕鯨の中心地が、和歌山県の太地で、沖合捕鯨の基地は下関だという。つまりは、二階幹事長とアベ晋三の選挙区。たいへん分かり易い。

本日(12月28日)の「日刊ゲンダイ」が次の記事を掲載している。

「約30年ぶりの商業捕鯨再開に踏み切ったキーマンに、政府関係者は『山口と和歌山の政権ツートップ』を挙げ、安倍首相と二階幹事長の関与を示唆。太地町を選挙区に抱える二階幹事長は、この日も三軒町長に『(捕鯨を)徹底的にやれ』とハッパをかけたというが、日本の国際機関からの脱退は極めて異例だ。戦前に孤立化を深めた国際連盟脱退すら想起させる。

また、読売も、「自民推進派 脱退を主導」のタイトルの記事で、「二階氏中心的役割」をメインとしつつ、アベ晋三についても、こう書いている。

「安倍首相も、捕鯨の拠点がある山口県下関市を地盤としている。10月29日の本会議では、『一日も早い商業捕鯨の再開のため、あらゆる可能性を追求していく』と表明した」

今度は、鯨疑惑か。アベ晋三よ。鯨が泣いているぞ。

沖で鯨の子がひとり、その鳴る鐘をききながら、
死んだ父さま、母さまを、こいし、こいしと泣いています。
海のおもてを、鐘の音は、海のどこまで、ひびくやら。

この鐘は、議会制民主主義の弔鐘に聞こえる。鯨の子だけではない。みすゞも泣くだろう。民主主義も泣かざるを得ない。
(2018年12月27日・連続更新2097日)

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Published in 木曜日, 12月 27th, 2018, at 22:51, and filed under 安倍政権, 経済, 選挙.

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