澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

櫻井よしこの護憲派へのエールに応えよう。

首相でありながら改憲の旗を振る安倍晋三。その取り巻きの一人に、櫻井よしこという右翼活動家がいる。この人が、「NEWS ポストセブン」という小学館運営のホームページに寄稿している。一昨日(1月13日)のことだ。表題が興味深い。「世界で一つの変な憲法の改正は今が最後の好機」というのだ。ちょっと変な日本語感覚だが、まさか編集者側が勝手に付けたタイトルではあるまい。

「世界で一つの変な憲法」とは、「世界で一番変な憲法」あるいは「世界でたった一つの変な憲法」ということなのだろう。要するに、「変な」と言いたいのだ。右翼に、立派な憲法と言われては、日本国憲法も形無しだ。櫻井よしこから、「変な」と言われたのだから、日本国憲法はさぞかし本望だろう。

注目すべきは、憲法の改正は今が最後の好機」という表現である。おそらくは、デマでもフェイクでもない。櫻井よしこの心情を吐露した本音なのであろう。そしておそらくは、安倍晋三も同じように考えているに違いない。「今がラストチャンスだ」「今、せっかくのこのチャンスを逃すと、もう改憲はできない」。これが改憲勢力の本音なのだから、護憲派は「さあ、改憲のラストチャンスをつぶそう」「もう少しの努力で、改憲を阻止し得る」と展望を語ることができる。

以下は、櫻井の言の要約である。

  「日本国憲法は、国の交戦権さえ認めない恐らく世界でたったひとつの変な憲法です。日本が国民、国家、国土を自分の力で守る力を持つ『自立』した国になるために、一刻も早く憲法を改正する必要があります。しかし、安倍政権下で期待された憲法改正の発議は、今に至ってもなお実現していません。」
 
  「その最大の理由は、政党および国会議員のあまりの無責任さにあります。とりわけ公明党は与党でありながら、『議論が熟していない』と憲法改正に背を向けています。」
 
   「『モリ・カケ問題』や『外国人人材法案』をタテに、衆参両院の憲法審査会に応じてこなかった立憲民主党や国民民主党など、野党の無責任さは言わずもがなです。」
 
  「国会議員のなかで本気なのは安倍首相を筆頭に少数の議員に限られるのではないか。肝心の自民党さえも、党全体の状況を見ると、その動きは消極的に見えます。」
 
  「憲法改正には衆参両院で3分の2以上、さらに国民投票で過半数の賛成を得る必要があります。与党が3分の2を大幅に上回っている衆議院はともかくとして、参議院では自民党が126、公明党が25、日本維新の会が11議席で合計しても162。ぎりぎり3分の2に達するという薄氷を踏むような状況です。」
 
  「今年7月には参議院選挙があり、改正に賛成する議員で3分の2を確保できる保証はありません。現実的に考えれば、今が憲法改正の最後のチャンスなのです。」

櫻井は、何のために、こんな寄稿をしたのだろうか。私には、護憲派へのエールに聞こえる。千載一遇の改憲のチャンスが、みすみす失われつつあるという。この情勢認識は、改憲陣営への愚痴であり護憲派への励ましにほかならない。

私も、櫻井の情勢分析に同意する。要するに、今や「カイケン、カイケン」と空元気を振りまいているのは、安倍とその取り巻きだけなのだ。「国会議員のなかで本気なのは安倍首相を筆頭に少数の議員に限られる」のである。実は、改憲推進派は、孤立したさびしい少数派に過ぎない。

連立与党の公明党は、風を読むことに長けている。いま、安倍と改憲の策動をともにすれば、党勢を決定的に殺ぐことになる。「平和の党」「福祉の党」の看板を外して選挙はできない。うかうかと、安倍に乗せられてはならない。そのように風を読んでいる。

さらに、「肝心の自民党さえも、党全体の状況を見ると、その動きは消極的に見えます。」は当たり前。安倍との軋轢は避けたいが、安倍改憲に肩入れして安倍との心中なんぞ御免こうむる。皆がそう思っているに決まっている。

そして野党だ。櫻井が愚痴をこぼさざるを得ないほどの立派な姿勢なのだ。これを支えているのは、世論である。安倍というこの危なっかしい人物に、憲法をいじらせてはならないと、多くの人が考えている。

さて、7月の参院選が天王山だ。現在が、「ぎりぎり3分の2に達するという薄氷を踏むような状況」なのだ。改憲阻止派が、この3分の2を突き崩すためには、護憲野党の共闘が必要である。これさえできれば、「改憲のラストチャンス」をつぶすことができるのだ。

櫻井よしこは、正直にこう言っている。「憲法改正は、薄氷を踏むような状況です」。そのとおりだ。我々は、せっかくのこの櫻井のエールに応えねばならない。改憲派が戦々恐々として踏んでいる薄氷を、もっもっと薄くする努力をしよう。さすれば、氷は割れる。水に落ちた安倍改憲策動が再び浮上することはないだろう。
(2019年1月15日)

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