澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

消費税が福祉の財源になっているなんて、真っ赤なウソ。

かつて日民協の代表理事だった北野弘久さんから聞かされた。
「消費税が福祉の財源になっているなんて、真っ赤なウソですよ。ひどいもんです。1円だって、福祉に回ってなんかいません。澤藤さん、政府の言うことに欺されてはいけませんよ」

北野弘久さんは、税法学の大家である。しかも、元は大蔵省の官僚として、税の実務に携わって、現場を知り尽くした人。その人の言ではあるが、当時の私は、「カネに色はないのだから、消費税として徴税されたカネが福祉にまわっていると言えば言えなくもないのではないか」「1円だって福祉に回っていない、は言い過ぎではないか」などと思っていた。

今改めて、泉下の北野さんにお詫びをしなければならない。「消費税が福祉の財源になっているなんて、真っ赤なウソ」は、まったくその通りなのだ。法と民主主義」6月号の《特集・アベノミクス崩壊と国民生活》に目を通して、そう確信している。当然のことながら、この特集は参院選挙に使えるよう時期を選んでのものである。ぜひ活用していただきたい。

この特集で、消費税を直接論じているのは、アベノミクスと増税・消費税 … 浦野広明」と、アベノミクスと日本の財政 … 醍醐聡」の両論文である。醍醐論文が総論的で、浦野論文はディテイルに及んでいる。

醍醐論文の次の指摘は、専門家には周知のことなのだろうが、私には驚きだった。
国の財政収入を支える税収の大部分をまかなっているのが、「所得税」「法人税」「消費税」の3税。この3税の税収の額と構成がどう変化しているか。醍醐論文は消費税導入直後の1990年と、直近の2018年とを比較している。

筆者作成の「国の財政収支変化の表」から抜粋すると、下記のとおり(単位は兆円)。
 所得税   26.0 ⇒19.0
 法人税   18.4 ⇒12.2
 消費税    4.6 ⇒17.6
 3税合計  49.0 ⇒48.8

3税の合計額は、1990年度と2018年度を比較してほぼ変わらない。しかし、各税收の構成割合は、劇的に変化している。所得税も法人税も大きく減収となり、消費税がこの減収の穴を埋めているのだ。累進課税が可能な直接税を減らして、逆進性の高い消費税に頼る構造。消費税は、福祉の財源とされる前に、所得税と法人税の減税分の穴埋めに、その全額が使われている。まさしく、「1円だって福祉に回っていない」のだ。

 1990年度から2018年度にかけて、消費税収は13兆円増えたが、所得税収は7兆円の減収、法人税収は6.2兆円の減収となっている。つまり、累次の税率引き上げで消費税収が増えた分を所得税、法人税の減収で完全に帳消しされているのである。このうち、所得税の減収は労働分配の抑制による家計の所得の落ち込みが影響した「自然減収」と考えられるが、法人税の減収はこの間、断続的になされた税率引き下げに伴う「制度減収」と言ってよい 。しかも、減税分は大半が配当と内部留保に充てられてきた。
 その結果、1990年度には税収とその他収入からなる基礎的財政収入が社会保障関係費を含む基礎的財政収支対象経費を上回るプライマリー・バランス(PB)の黒字の状況だったのが、1997年度を境にPBは赤字に転じ、2018年度にはPBは10.4兆円の赤字になっている。そこで、このPBの赤字(基礎的財政収入で賄えなかった基礎的財政収入対象経費と国債費を賄う財源調達のために発行されたのが国債(公債)である。その規模は1990年度には11.7兆円だったが毎年度増加し続け、2018年度には33.7兆円となり、国債費(主に元利償還費)は23.3兆円に達している。実に消費税収を大きく上回る規模である。国債残高が減らない限り、国債費が他の歳出を圧迫する要因となり、将来の世代に重くのしかかることは確かである。

浦野論文には、所得税率の累進性緩和の経緯が詳しい。
1974年には、所得税率の刻み数は19段階、住民税は13段階あったという。両税を合わせた最高税率は93%。つまり、大金持ちは所得の93%に当たる税負担を余儀なくされていた。これが課税による所得再配分が生きていた時代の税制だった。

現在はどうか。所得税率の刻み数は7段階、住民税は1段階のみ。両税を合わせた最高税率は55%。つまり、どんな大金持ちも所得の55%に当たる税負担で打ち止めということ。この説明の項の見出しを、浦野さんは「所得再配分の放棄」としている。安倍政権は、2019年10月には、さらに消費増税をしようというのだ。庶民への増税で、大企業と金持ち優遇税制をさらに進めようということなのだ。

浦野論文の最後に、こんな一文がある。

消費税の増税を中止させる点で教訓となるのは、マレーシアである。マレーシアは、第14回総選挙において、消費税の廃止を公約したマハティール氏が率いる野党「希望連盟」が連邦議会下院の過半数議席を獲得し、同国史上初めて政権を交代させた(2018年5月9日)。選挙結果は、野党が121議席(47議席増)、与党が79議席(51議席減)となったのである。

マハティール政権は、公約どおり消費税を廃止し、その後明らかに経済は好転したという。われわれもそれに学びたい。

一握りの大企業経営者と大金持ちを除いた、「圧倒的多数の庶民」のみなさまに、呼びかける。消費増税反対派の候補者を押し上げよう。政権交代とまでは行かずとも、大企業・大金持ち優遇のための消費増税をたくらむ安倍自民党と与党の議席を減らそうではないか。この逆さまの税制を改革して真っ当なものとするために。

********************************************************************

「法と民主主義」は、定期購読も、1冊からのご購入も可能です(1冊1000円)。

お申し込みは、下記のURLを開いて、所定のフォームに書き込みをお願いいたします。なお、2019年6月号は、通算539号になります。

https://www.jdla.jp/houmin/form.html

(2019年7月8日)

Comments are closed.

澤藤統一郎の憲法日記 © 2019. Theme Squared created by Rodrigo Ghedin.