澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

浜の一揆控訴審人証採用はせず。

平成30年(行コ)第12号 サケ刺網漁不許可取消請求等控訴事件

控訴人の進行意見

                                                      2019年7月19日

仙台高等裁判所第1民事部 御中

控訴人ら訴訟代理人 弁護士    澤  藤  大  河

 本件の進行について、口頭で意見を申し上げます。
まずは、結論を申し上げますと、控訴人らが本年5月24日付で申請した、証人の二平章さん、控訴人本人のKTさん、このお二人の人証を本日採用決定いただきたい。
その上で、次回をその両名の尋問期日とし、次々回に最終準備書面を陳述しての結審という日程の設定を希望いたします。このようなスケジュールにしていただければ、最終準備書面には、2018年漁業センサスの結果を引用して、控訴人としての主張を完結することが可能です。
なお、もし貴裁判所が主張整理の必要があるとお考えなら、あるいは各当事者に求釈明がおありなら、弁論期日間に進行協議の機会を持つことに異論はありません。

各人証採用の必要については、既に被控訴人の否定意見に反論する形で、7月16日付の書面で詳細に述べているとおりですので、ここでは概括的に意見を申しあげます。

本件の進行を振り返って見ますと、原審においては、長く原審被告岩手県が訴の不適法にこだわり、主として本案前の抗弁としての主張の展開に固執したため、本案における当事者の主張の応酬が必ずしも十分とは言い難く、また噛み合わない憾みを残したままに結審に至った経緯があります。
控訴審においては、これまで貴裁判所が進行協議を積極的に活用されて、両当事者に十分な主張と反論を促してきました。その訴訟指揮のよろしきを得て、ようやくにして、各当事者の主張が明確となり、幾つかの新たな論点も整理されて噛み合った形が整い、その論点に沿った形で、控訴人は最小限に絞った人証の申請をしたのです。ところが、その時点で裁判体が交代して、訴訟進行の継続性が途切れた感を否めません。貴裁判所が被控訴人の側に人証の採否についての意見を書面で求め控訴人がこれに反論したというのが、れまでの経緯です。

本来6月末までにいただけるはずの被控訴人意見書を7月10日に受領いたしました。内容を一読して驚きました。被控訴人の、控訴人らに対する敵意を隠そうともしない姿勢についてです。岩手県知事ともあろう公益的立場にある者が、どうしてこれほどにも、余裕のない非寛容な態度となるのか。どうしてこれほどにも、県民である控訴人ら漁民の主張と立証活動を嫌うのか。人証申請対象の控訴人を威嚇し、証言を萎縮させようとするのか。明らかに、過剰に権力的な被控訴人の姿勢といわざるを得ません。当事者対等の訴訟の場においてなおこの姿勢です。岩手県水産行政の零細漁民に対する姿勢の苛烈さを彷彿とさせるものと指摘せざるを得ません。

控訴審では、本件固定式刺し網漁の不許可処分の理由をめぐって、漁業法および岩手県漁業調整規則にいう「漁業調整」のあり方が争われています。
具体的には、そもそも漁業調整という理念とはどういうものなのか。戦後漁業法が、法の目的として掲げた「民主化」とは何を指すのか。そして、本件漁業調整にどう関わるのか。また、公益性を有する漁協が自営定置網漁を行っているのだから、「定置のサケ漁獲に影響を与える組合員の固定式刺し網漁は、禁止して当然」と本当に言えるのか。これが、水協法4条の漁協の目的に照らしての問題です。
 さらに、サケの人工増殖事業が主として漁協によって、また公費を投入して行われていることが、控訴人ら漁民に、サケ採捕を禁じる理由になり得るのか。また、貴裁判所が提示された、「サケ延縄漁許可は、刺し網漁許可の代替性を持っているのか」という新たな論点もあります。これに加えて、各員年間10トンを上限とするという固定式刺し網漁許可の実効性・合理性の有無。そして、三陸沿岸の漁業衰退の中で、固定式刺し網漁許可はどのようなインパクトを持ちうるか。

このような論点の全般について、社会科学者として、また水産行政の実務担当の経験もある二平章氏の証言は必須です。主張はしたが立証はさせないという訴訟指揮はあり得ません。二平証言は、甲29の意見書を敷衍する内容になるはずです。加えて、近時の国連における重要テーマとして、零細漁民の営業と生活、その基盤としての漁村というコミュニティを護ろうという大きな流れがあること、これが各国が共有すべき国際的な公序となっていることについても、二平氏ならではの証言を聞いていただきたいのです。

また、控訴人本人KTさんには、小型船舶漁業者としての実体験から、これまでの県の漁業行政の実態を語っていただきます。定置網漁業者のサケ漁独占と零細漁民のサケ漁からの排除が、いかに不合理で、サケ漁の許可を求める切実さについて、耳を傾けていただきたいのです。また、漁業行政や漁協の運営について予定されている民主的手続の形骸化の実態は、漁業調整のあり方が強者の欲しいままとなっていることを示唆するものとして、重大事だと思料されるものです。

 控訴人ら漁民は、長く浜の有力者や行政と対峙して絶望感を抱いて、今、裁判所の公正を信じて、その判断に希望を見出そうと期待しています。この期待を裏切ることなく、漁民らの切実で真摯な声を十分に聞いていただくよう、切望いたします。

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この意見陳述の後、裁判所は「合議します」と休廷して、再開後の法廷で、人証不採用とした。抗議はし異議を申し立てたが、覆らない。裁判長に理由を問い質すと、「既に両名の意見書陳述書が提出され、被控訴人側では反対尋問の必要がないと言っておられますから」「もし、補充の陳述内容があれば、次回までに書面での提出を」という。

裁判長交代で、法廷の空気は変わってしまった。残念だが、次回は12月。最終準備書面提出となった。

閉廷後の報告集会は盛り上がった。県側の書面の酷さに怒り心頭のところに、裁判所の態度が火に油だった。みんな喋らないではおられないと、意気盛ん。証人採用しないのなら、それに代わる証拠を積み上げようとやる気十分。なるほど、これは「浜の一揆」のボルテージだ。

そして、話題は漁業法改正や規制改革委員会の姿勢。「こんな事態でまだ、自民党の選挙やってるのが漁協の幹部だ」という言葉が印象的だった。

(2019年7月19日・連続更新2300日)

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Published in 金曜日, 7月 19th, 2019, at 22:10, and filed under 浜の一揆.

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