澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

民間の暴力による展示の妨害から、今度は権力の横暴による表現の自由の侵害

本日(9月30日)仲間内のメーリングリストに、名古屋の中谷雄二弁護士からの投稿があった。彼は、「あいちトリエンナーレ」《表現の不自由展》再開を求める、仮処分申立事件の申立側弁護団長である。以下はその抜粋。

皆様からご支援していただいていた「表現の不自由展・その後」について、本日、仮処分の第3回審尋期日で、あいちトリエンナーレ実行委員会と表現の不自由展実行委員会との間で、和解が成立しました。
先週の金曜日(9月27日)の第2回審尋期日で、当方から10月1日 従前の展示どおり再開で和解をしようと投げかけました。
これに対して、あいちトリエンナーレ実行委員会は、本日、午前中に10月6日~8日の再開を想定して和解協議をしようとの文書での申し入れがありました。
これを不自由展実行委員会が受け入れる形での和解です。
その中で、「今回は中止した展示の再開であり、開会時のキュレーションと一貫性を保持すること」を確認しました。
 これにより、基本的には、不自由展実行委員会の要求が基本的に容れられたと判断して和解を成立させることに致しました。
文化庁の補助金差止めというより大きな「検閲」問題が発生した時期にまずは、脅迫によって中止させられた展示の再開を勝ち取ることで、表現の自由の回復の一歩を踏み出すことができました。
 申立が9月13日ですので、全国の皆様の再開を求める運動と併せて短期間に再開の合意を勝ち取ることができました。
 ありがとうございました。

 なお、同仮処分は「企画展実行委」が申立てたもので、その相手方が「芸術祭実行委員会(代表・大村秀章知事)」である。この点紛らわしいが、実質的には申し立てられたのは愛知県である。また、キュレーションとは門外漢にはなじみの薄い言葉だが、「展示内容」と置き換えてよいようだ。

不自由展実行委員会がこだわったのは、中止した展示そのままの再開であり、開会時のキュレーションとの一貫性の保持」であった。その確認ができたからの和解であり、それ故の「再開の合意を勝ち取ることができた」という評価である。

この点を、朝日(デジタル)は、こう報じている。

国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、中止になった企画展「表現の不自由展・その後」の実行委員会が展示再開を求めた仮処分の審尋が30日、名古屋地裁であり、展示を再開する方向で、芸術祭実行委員会側と和解した。企画展実行委の代理人・中谷雄二弁護士が明らかにした。再開時期は10月6~8日で調整する予定で、早ければ週末から再開されることになる。

記者団の取材に応じた企画展実行委の代理人・中谷雄二弁護士によると、芸術祭実行委側から30日朝に大村秀章知事が公表した再開への4条件の提示があった。①犯罪や混乱を誘発しないように双方協力する②安全維持のため事前予約の整理券方式とする③開会時のキュレーション(展示内容)と一貫性を保持し、(来場者に)エデュケーションプログラムなど別途実施する④県庁は来場者に(県の検証委の)中間報告の内容などをあらかじめ伝える――の四つで、中谷弁護士は、「この内容で和解しましょう、と申し入れました」と説明する。

その上で、③のキュレーションの一貫性について、中谷弁護士は「同じ場所で作品を動かさないという趣旨ではなく、同じ部屋の中で個々の作品を動かすことはあり得るが、その範囲であって、一貫性、同一性を崩すことはしないと確認した」と述べた。展示は、慰安婦を表現する少女像や昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品など16作家の23作品が集められていたが、それらをまとめた企画展としての「一体性」は維持された、とみているという。

中谷メールがいうとおり、「脅迫によって中止させられた展示の再開を勝ち取ることで、表現の自由の回復の一歩を踏み出すことができた」ことをまずは、よろこびたい。しかし、「文化庁の補助金不交付というより大きな『検閲』問題が発生している」のだ。表現の自由はご難つづきである。民間の暴力による展示の妨害から、今度は権力の横暴による自由の侵害である。まさしく、自由とは、市民が闘いとり守り育てていくべきものであることを実感する。

その問題で、権力の先頭に立つのは、加計学園事件の当事者である萩生田光一文科相。本日(9月30日)、議員会館で「文化庁の決定に抗議する集会」が開かれた。自ずから、矛先は安倍晋三の手先・萩生田に集中したようだ。

この集会に私は参加できなかったが、私も参加している「表現の自由を守る市民の会」が、下記のアピールを集会に持参した。これも、宛先は、萩生田光一である。このアピールをみんなに訴えたい。ぜひ拡散していただきたい。
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2019年9月30日

文部科学大臣 萩生田 光一 様

「あいちトリエンナーレ2019」に関する補助金不交付決定の撤回を求める要求書

表現の自由を守る市民の会 呼びかけ人
池住義憲(元立教大学大学院特任教授)/岩月浩二(弁護士)/小野塚知二(東京大学大学院経済学研究科教授)/小林緑(国立音楽大学名誉教授)/澤藤統一郎(弁護士)/杉浦ひとみ(弁護士)/醍醐聰(東京大学名誉教授)/武井由起子(弁護士)/浪本勝年(立正大学名誉教授)

私たち「表現の自由を守る市民の会」は、「多様な表現の自由を尊重し、発展させることを目的とし、表現の自由を侵害する公権力の介入に反対する運動に取り組む」(会則)市民団体です。

文化庁は、2019年9月26日、既に所定の審査を経て本年4月に文化資源活用推進事業の補助対象事業として採択されていた「あいちトリエンナーレ」における国際現代美術展開催事業補助金7,829万円を、”適正な審査を行うことができなかった”として、補助金適正化法第6条等に基づき、全額不交付とする決定(以下、本件決定という。)を行いました。

萩生田文科相は、本件決定の理由は手続き上の不備だけで、展示内容と無関係だと強弁しています。しかし、これは明らかに展示内容に関係した政治介入です。公権力が表現活動の抑圧にまわることは許されません。これは憲法21条が禁じる「検閲」にあたる重大な違憲の疑いがある行為です。国際芸術祭の作品展示が開始された直後の8月2日、河村たかし名古屋市長の言動、菅義偉官房長官の補助金見直しを示唆する発言を受けての決定であり、私たちはこうした経過のもとになされた本件決定を容認することはできません。

現行文化芸術基本法はその前文で「文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し,文化芸術活動を行う者の自主性を尊重すること」を明記し、第2条で「文化芸術に関する施策の推進に当たっては,文化芸術活動を行う者の自主性が十分に尊重されなければならない」と定めています。
本件決定はこうした文化芸術基本法の精神に反するものであり、私たちは決して認めることはできません。

文化庁の本件決定は、企画展を脅迫等によって中断に追い込んだ卑劣な行為を追認することになります。行政が不断に担うべきことは、公共性の確保・育成です。社会的少数者や、異なる地域に暮らす人々、民族を知る貴重な窓口を保障することです。本件決定は、これに逆行します。仮に本件決定に唯々諾々として従うならば、国の意見と合わない表現を許さない悪しき前例となり、国に忖度した無難な展示しかできなくなる恐れがあります。表現者、主催・開催側らの委縮を拡げ、社会全体に委縮効果を及ぼします。

よって私たちは、貴大臣に対し、本件決定を直ちに撤回することを強く要求します。民主主義社会は、多様な表現・意見を自由に表現し、議論をかわす場を保障して初めて成り立ちます。補助金を交付する目的は、多様な文化、芸術を国民の税金で助成することであり、国の意向に沿うものかどうか展示作品の内容をチェックする権限を国に与える根拠はどこにもないことを再度、強調しておきます。
(2019年9月30日)

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