澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

防衛大学校の卒業式での、あらまほしき首相訓示。

安倍晋三は昨日(3月22日)、防衛大学校の卒業式に臨んで訓示をした。卒業生「諸君」にではなく、彼らを「諸官」と呼んで、幹部自衛官の使命を語った。防衛大学校の伝統としての上級生から下級生への陰湿なイジメが世の話題となる中でのことだが、もちろん、そんなことはおくびにも出さない。「真剣なまなざし、凛々しい姿。本当に、頼もしく思います」という調子で、聞くだに恥ずかしい。

かなり長い、冗長な訓示。まとまりに欠け、切れ味はよくない。大学校側の起案か官邸側の作文かは知らないが、コロナ禍のこの時期の屋内大人数イベントでの長広舌は、危機管理上望ましくない。むしろ、なくもがなの訓示の内容。

それでも、この時期に安倍が何をいうのか。メディアは聞き耳を立てた。各紙の見出しは以下のとおり。彼が何を言ったか。この見出しでつかめる。実は、それ以上の中身はない。

朝日 首相、自衛隊の憲法明記に改めて意欲 防衛大卒業式で
毎日 首相が防衛大卒業式で訓示 クルーズ船防疫「完璧な任務遂行」と賛辞
日経 首相、日米同盟の強化強調 防衛大卒業式で訓示
読売 憲法9条に自衛隊明記、首相が改めて意欲
産経 首相、防大卒業式で憲法改正で自衛隊明記に意欲
赤旗 派兵抗議行動を非難 防大卒業式 首相、9条改憲執念

 私が、興味を惹かれた2個所を抜粋して引用しておきたい。

「本年は、日米安全保障条約の改定から60年となります。日米同盟は、外交・安全保障の主軸となり、日本の平和国家としての歩みを確かなものとし、安定した成長を実現する基盤となりました。
 当時、条約の改定を巡っては、戦争に巻き込まれるといった激しい批判がありました。それでも、先人たちは、50年、100年先を見据え、敢然と行動しました。
 平和安全法制の制定を巡っても、同様の議論がありました。しかし、互いに助け合える同盟は、その絆を強くする。この法制によって、日米同盟は、かつてなく強固なものとなり、厳しい国際環境にあって、大きな抑止力となっています。
 日米同盟は、これまでも、これからも、我が国の外交・安全保障の基軸です。日米同盟を真に実効あるものにできるかは、諸官の双肩にかかっています。地域の公共財としての日米同盟の更なる強化に向けて、我が国の果たし得る役割の拡大を図っていく。各自が常に、その高い自覚の下に職務に邁進し、日米の紐帯を揺るぎないものとしてください。」

「本年1月からは、中東海域において、情報収集活動が始まりました。2月2日、私は、護衛艦『たかなみ』に乗艦し、中東の地に向かう隊員たちを直接激励する機会を得ました。使命感に燃え、整然と乗り込む隊員の姿を、大変、誇らしく思いました。
 一点、残念だったのは、御家族が見守る一角に、憲法違反、とプラカードが掲げられていたことです。隊員の幼い子供たちも、もしかしたら、目にしたかもしれない、どう思うだろうか。そう思うと、言葉もありません。隊員たちが、高い士気の下で、使命感を持って任務を遂行できる。そうした環境を作っていかなければならない。改めて、強く感じています。」

Aは、私にはこう聞こえた。

「本年は、日米安全保障条約の改定から60年となります。当時は戦後20年、戦争を悪とし絶対の平和を求める世論が、わが国に満ちていました。好戦的なアメリカとの条約の改定は、戦争に巻き込まれる危険を引き受けることである。あるいは再び加害国になる恐れも覚悟しなければならない、といった圧倒的な世論の反対がありました。それでも、政権を握っていた岸信介や自民党内の保守派は、敢然とこの世論を抑え込み、封じ込めました。今も論争は続いていますが、結局は日米同盟が、外交・安全保障の主軸となり、日本の安定した成長を実現する基盤となりました。日米同盟は、これまでも、これからも、我が国の外交・安全保障の基軸です。あのとき、連日の国民的なデモの鎮圧に自衛隊は出動寸前で踏みとどまりました。しかし、将来、同様の事態があったときは、諸官は国民世論の如何にたじろぐことなく、自信をもって暴徒の鎮圧にあたらなけれはなりません。そうして,日米の紐帯を揺るぎないものとしてください。

Bについては、彼は本来こう言うべきだったろう。

「本年2月2日、私は護衛艦『たかなみ』に乗艦し、中東の地に向かう隊員たちを直接激励する機会を得ました。その際、見送りをされる隊員のご家族とならんで、抗議の意思を表明される少なからぬ人びとをお見受けしました。その人たちは、「中東派遣反対」「中東へ行かないで」「むりやり行かすな自衛隊」「自衛隊員の命をまもれ」などと、横断幕やプラカードを掲げていらっしゃいました。もちろんその方たちは「自衛隊は憲法違反」「自衛隊の海外派遣は違憲」との信念をお持ちと拝察いたします。
 言うまでもないことですが、勇躍して中東に向かう自衛隊員も、自衛隊を海外に派遣すべきではないと抗議をされる人びとも、同じ日本国民です。我が国は、民主主義と自由を国是としており、いかなる政治的な思想・信条もその表現も自由なのです。諸官は、「自衛隊の存在は違憲だ」という表現が自由に行われる日本であればこそ、この国を守る価値があることを肝に銘じなくてはなりません。
 隊員の幼い子供たちも、『自衛隊は違憲』という見解をもった同胞にも献身する自衛隊であることの誇りを伝えていただかねばならない。改めて、そう強く感じています。」

(2020年3月23日)

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