澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

2020年7月、地位協定がもたらした沖縄のコロナ禍ー「アジぶら通信Ⅱ」から

(2020年9月9日)
久しぶりに、小村滋君から「アジぶら通信Ⅱ」の配信を受けた。「アジぶら通信」は、究極のミニコミだが、さすがに朝日記者OBの筆。読ませるし、何よりも怒りのボルテージが高い。

今回はワンテーマで、《沖縄のコロナ禍「地位協定」が呼ぶ》という記事。本年7月の在沖米軍基地におけるクラスターの発生と、これに対する県と政府の対応の落差を中心にまとめたもの。情報源は琉球新報である。いつにもまして、怒りのボルテージが高い。

小村君は、誰に怒っているのだろう。文面から読み取れるものは、何よりも無法な米軍に対する怒りである。それだけでなく、米大統領にひたすら追従する安倍政権と菅官房長官にも怒っている。せめて、韓国・オーストラリア並みのプライドをどうして持てないのだと。そしておそらくは、安倍政権を容認し沖縄の事態を傍観している本土の我々にも怒っているのだろう。

一方、安倍政権にもの申す玉城知事、米軍を追及する沖縄2紙やTVの在沖メディア、そして沖縄の人々には、「我が国民主主義のトップランナー」として敬意を表している。

そして、彼は結論として、「米軍無法の根源『地位協定』を改定させることが、安保条約反対に目覚めさせる近道ではないのか。」という。

米軍無法の根源を「地位協定」と認識し、まずは明らかに不合理な「地位協定」改定を目指し、さらには「安保条約反対」にまで及ぼうというのが彼の立場なのだ。そうでなくては、沖縄県民も本土の基地周辺住民も、いつまでも米軍の無法を甘受せざるを得ないまま。彼のように沖縄に寄り添えば、彼のような考えになるしかないのだ。

以下、「アジぶら通信」を、当ブログの体裁に合わせて再構成し、紹介させていただく。

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リード《前提となる基礎知識》
※米国の基地から直行
沖縄の米軍基地で7月に発生した、新型コロナウィルスの感染拡大は、日米地位協定の治外法権ぶりの新たな一面をあぶり出した。地位協定9条は、その2項で「合衆国軍隊の構成員及び軍属は旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される。……構成員及び軍属並びにそれらの家族は、外国人登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される。」としている。

※復帰後に新たな占領状態
1952年4月28日の対日平和条約発効で終わるはずだった米軍の日本占領が、同時に発効した日米安保条約に引き継がれた。その安保条約に基づいて出来たのが「日米行政協定」であり、60年安保により現在の「地位協定」になった。沖縄は、戦後ひたすら米軍の占領状態だったから、安保条約は適用されなかった。72年の日本復帰から地位協定の理不尽に捕らえられた。沖縄戦から75年の今夏、沖縄県民は、新型コロナと米軍と安倍政権という「三敵」と闘った。

毎年7月、8月は米軍の異動時期だ。海兵隊は、米国本土の基地から5千~7千人が沖縄の基地に飛んでくる。毎年繰り返されるローテーション異動だが、地位協定の通り、日本の法律の適用を受けず、米軍の自由に行われる。検疫も、パスポート検査もなく。6月下旬から7月に。沖縄では4月30日以降2か月余り新型コロナ感染者が全く出なかった時期だ。

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本文《2020年7月・沖縄で何が起こったか》

※突然、基地従業員に足止め
7月7日、米軍普天間飛行場で基地従業員が説明もなく足止めされた。米兵のクラスター(集団感染)発生ではないか、と基地従業員から新聞社などに電話が殺到。大規模感染が明らかになった後も、メールやSNSで基地従業員などから情報提供が続いた。

在日米海兵隊は、6月中旬、コロナへの警戒レベルを引き下げ、基地外での行動制限を緩和した。7月になると部隊展開計画に基づき、新型コロナまん延の米国から多くの兵士が沖縄に移動してきた。6月中旬から7月4日の米独立記念日の前後、沖縄本島中部の基地周辺でバーベキュー名目のビーチパーティーに大勢の米兵が集まり、県民の姿もあったという。

※情報を出さない米軍、連絡しない防衛省や安倍政権。
7月7日夕5時、米海兵隊から入った情報は「普天間で複数感染。感染源は不明」。米軍に大規模クラスター発生の概略を掴むのは5日後の11日だった。

7~11日の間キャンプ・ハンセンで複数人感染など連日、1面トップで報道。しかし米軍は感染者数を報道向けに公表しない方針で「県は、米軍の了解が得られた時だけ報道陣に知らせる」とした。勝手に知らせた場合、今後は県にも知らせない、と言われたらしい。

県議会は10日、「米軍に感染情報開示を要求」全会派一致で決議した。さらに「地位協定の抜本改定」を求める意見書も全会派一致で採択した。

しかし菅官房長官は10日、東京での記者会見で「米軍病院から地元保健所に必要情報は伝えられ共有しているはず」と粛々と述べた。河野防衛相も「情報開示は十分」との見方を示した。また北谷町の民間ホテルを米軍が借り上げ、移動者隔離に使用することが明らかになり、町長は「基地内で隔離してほしい」と沖縄防衛局に抗議した。海兵隊にも抗議しようとしたが、防衛省で玉城知事らと河野防衛相で決めたこと、と断られたという。
だが県議会の全会一致「情報開示要求」決議が米軍には効いたらしい。11日、クラーディー在沖米四軍調整官と玉城知事との電話会談が行われ、米軍普天間飛行場とキャンプ・ハンセンで7~11日までに61人がコロナに感染したことが明らかになった。玉城知事が米軍調整官に要求した7項目には、この二つの基地の閉鎖の他に、ローテーション配備で沖縄に入ってくる人数・時期の情報の要求もあった。

12、13日でさらに34人の感染が判明。「海兵隊クラスター」がはっきりすると、県の政府への苛立ちが増した。相変わらず「必要情報は共有」とする菅官房長官ら政府側の開き直り記事も。

これと並んで、玉城知事の怒りのツイッターが掲載された。

日本政府が米軍に対して国民の命を守るためにとるべき協議や措置などを事務方任せにしているのではと憂慮しています。どれだけの数の外国からの人が、どこから国境を越えて日本へ入り、どのようにして、どこへ移動しているのか。全く情報がないなんて異常としか言いようがありません。

※韓国、米軍を二重チェック
しかし在韓米軍は、情報開示の方針を変えなかった。感染者数は勿論。感染が判明した経緯、陽性確認後はどこで隔離されていたか。全て公表した。
韓国では米軍人たちは韓国到着後にPCR検査を受け、2週間の隔離を経て、再びPCR検査を受ける。感染していても3割が陰性反応になるため、二重チェックが欠かせない。それに引き換え日本ではPCR検査も隔離も米軍任せ、チェックするすべもない。

※豪は一時、米軍の配備停止
豪州の場合、海兵隊は一時駐留扱い
米軍感染は7月下旬になっても止まらず、県民感染を越えて増え続けた=25日付電子版
だから配備を断ることができる。豪州国防相は3月末、米軍内の感染拡大を知って海兵隊のローテーション配備停止を決めた。その後、5月に米側と話合い、隊員規模を半分にして、6月に配備が決まった。厳格な検疫とPCR検査が実施された。
日本の場合、地位協定3条で日本が提供する施設について米軍に排他的管理権が与えられている。日本は一切口も手も出せないのだ。

サテ、感染者数の追及に戻ろう。7月15日キャンプ・ハンセンで新たに36人の感染者が出て、合計136人になった。この日、県と米海軍病院が初めて会合を持った。米側は「感染者は殆ど軽症か無症状で基地内で隔離」といい、感染者が増えたのはPCR検査を積極的に進めた結果という。感染者のうち、少なくとも23人は基地外に出て、県民と接触していた。問題は県民への感染の広まりだろう。

その後、感染米兵46人が基地外に出ていた、と報じた。

※知事、防衛相らに面会
玉城知事は15日、基地を抱える仲間・金武町長、當眞・宜野座村長と上京し、河野防衛相らと話し合った。
玉城知事らは「米本国からの異動中止」「検疫などに国内法を適用するよう地位協定の抜本改定」などを求め、「県民は大きな不安に追い込まれているのが現状」と訴えた。河野防衛相は「不安を抱かせ申し訳ない」と陳謝し、地元と連携して対策に当たりたい、とした。茂木外相も「真摯に取り組んでいく」と応じた。官邸では安倍首相も菅官房長官も会わなかった。玉城知事は、米大使館でヤング臨時代理大使と会い、対策を要請した。

※市中感染への不安が…
16日、キャンプ・ハンセンを拠点とするタクシー運転手がコロナ感染したと確認された。また基地従業員やその家族が一部の病院で出入りを制限された。市中感染への不安の行きすぎた反応だろう。
市中感染への不安は、国が推進する「Go To トラベル」への懸念となって現れた。同紙が実施した県内41市町村長へのアンケートに7割の29首長が「22日からのGo To延期を」訴えた。
玉城知事たちの東京への訴えは、一応の効果を生んだ。17日、記者会見した河野防衛相は、日本に入国する全ての米軍関係者にPCR検査を義務付けるよう、日米間で調整していることを明らかにした。米国を出発する際と日本に入国した際、それぞれPCR検査を実施するよう日本政府が要請し、米国も応じる構えだという。一方で沖縄県など基地負担都府県が求めている地位協定の抜本改定は「運用で対応」といつも通り否定した。

※全基地従業員へPCR検査
無責任な米軍と日本政府の間に挟まれた基地従業員のコロナ対策も、県が声を上げなければならなかった。玉城知事は20日、米軍基地の日本人従業員のPCR検査を沖縄防衛局と連携して実施すると県庁で発表した。普天間やハンセンから始め、沖縄の全従業員に実施するとした。

24日、沖縄の米海兵隊で新型コロナ感染者が新たに42人ふえ、205人に達した。この数字は県民の感染者数172人を上回っていた。

その後も米軍の感染者は増え続け、28日には240人に。県民感染者232人を上回り続けた。県民感染者には、人数は定かではないが、基地従業員も含まれていた。しかし7月29日には本土からの「Go To」関係者や那覇の繁華街でのクラスターで44人の県内感染者を出し、米軍関係者を逆転した。以後、感染の主役は県内感染者に移ったように見える。

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