澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

公明党さん、筋を貫きますか。それとも、下駄の雪に甘んじるのですか。

本日(6月27日)の東京新聞のトップは、「集団的自衛権 公明代表が行使容認」である。とても分かりやすい記事となっている。公明党代表発言の変遷の経過と、その理不尽さ、そしてその影響の重大性が要領よくまとめられている。

公明党の山口那津男代表は、昨夜(26日)のNHK番組に出演して、「憲法解釈を変更し、他国を武力で守る集団的自衛権の行使を限定的に認める考えを表明した」。「山口氏が容認に言及したのは初めて」で、これで、自民公明両党の与党協議は近く合意する方向になった。政府は速やかに解釈改憲を閣議決定する方針で、「専守防衛に徹してきた日本の平和主義は大きな転換点を迎える」。

彼は番組で、「政府が国民の権利を守ろうとする場合には(自国を守る)個別的自衛権に近い形の集団的自衛権であれば、一部限定的に容認して国民を守り、国の存立を全うすることは許される余地があるのではないかと考えるようになった」と明言。「安全保障環境が大きく変わってきている」と理由を述べた。

また、与党協議で議論している「国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」など、武力行使を認めるための新たな三要件については「『明白な危険』は客観的な概念だ。歯止めが利いている」と強調。閣議決定案概要の修正案が「自衛の措置」と位置づけたことも指摘し「二重三重の歯止めが利き、拡大解釈の恐れはないと思っている」と述べたそうだ。

これで、ムードはすっかり解釈改憲閣議決定が既定事実化したごとくである。各紙の夕刊は、「7月1日 与党合意」「同日にも閣議決定」と報じている。

ところで、さすがは東京新聞と思わせるのは、「集団的自衛権をめぐる公明党・山口代表の発言」の変遷の経過を目立つ囲みで明らかにしていること。

「4月23日 政府解釈の変更は、国民に何も聞かないで一方的にやることになるから、憲法の精神にもとる。」
「5月24日 国民や外国が受けとめてきた平和主義を方向転換するわけだから、憲法改正の手続を取るべきだ。」
いずれも正論である。まったくそのとおりだ。

おっしゃるとおり、「政府解釈の変更は、国民に何も聞かないで一方的にやること」だ。誰もがそう考える至極真っ当な認識。しかも、ことは憲法の根幹に関わる問題。解釈の変更に名を借りた実質的改憲というべき暴挙。これを国民の意見をまったく聞くことなく、一方的に時の政権限りでやってしまおうというのは掟破りにほかならない。憲法に縛られる立ち場にある内閣てはないか。その縛りが邪魔だとして実質において憲法を変えてしまおうというのだ。骨太のルール違反であり、96条の改正手続をパスしての姑息な邪道以外のなにものでもない。「憲法の精神にもとる」こと極まれり、というほかはない。政府の解釈改憲の意図をこのように論難すべきことに関して、4月23日以後今日まで何の事情の変化もない。

また、解釈改憲は「国民や外国が受けとめてきた平和主義を方向転換する」ことになる、というのもおっしゃるとおり。「平和主義の方向転換」とは、専守防衛路線を放擲して実質的な9条改憲に踏み切るということ。だから、「憲法改正の手続を取るべきだ」という山口意見はまっとうな感覚。96条に定められた改正の手続を経ずしてできるわけがない。ところが、今になって、この「憲法改正の手続ないままの平和主義の方向転換」に加担しようと言い出したのだ。

だから、公明党には、抗議が殺到しているという報道だ。東京新聞3面に、「反対貫いて・9条壊さないで」という内容で、「議員にファクス1日100通超も」と報じられている。
「与党協議メンバーのある議員の事務所には連日50通ほど、日によっては100通を超えるファクスが届く。厳しい言葉で(集団的自衛権行使容認)賛成に回らないように求める内容が多いという。衆院の中堅議員の事務所では、500通に上るファクスが山積みになっている」

「『個別的自衛権に近い形の集団的自衛権』であれば、一部限定的に容認」というのが山口発言の骨格。「これでは歯止めになってない」という批判の仕方もあろうが、問題の本質は、「歯止め」の成否ではない。専守防衛路線を放擲して、自国が攻撃を受けた場合の自衛権の行使に限定することなく武力の行使を可能とする質的な原則の転換にある。専守防衛に徹することで、自衛隊を「自衛のための最小限度の実力」として、9条2項にいう戦力ではないとしてきたロジックは破綻する。

この9条解釈のロジックの破綻は、直ちにわが国のイメージの変化に直結する。疑いもなく、日本国憲法9条は、わが国の平和国家としてのイメージシンボルである。これがあればこそ、わが国は戦後国際社会に仲間入りを許され、その中でのしかるべき位置を占めることを可能とした。近隣諸国や旧植民地国との友好関係を結ぶこともできた。いま、それが壊され、打ち捨てられようとしている。「9条をもつ平和国家・日本」ではなく、「9条をねじ曲げて国外での戦争を辞さない」非平和国家日本のイメージを自ら作出しようというのだ。「首相が軍国神社に参拝し、武器輸出を認め、歴史を歪曲して戦争を反省しない教科書を容認し、学校では日の丸・君が代を強制し、軍事秘密法制を整備する、好戦国家・日本」の印象に加えてのことである。

しかも、である。毎日のトップは、「政府が集団安全保障容認」の大見出し。「想定問答に明記」「集団的自衛権『限定』方針逸脱」と続いている。政府が用意している閣議決定後の想定問答集によれば、公明との協議も合意も、政府・自民党が望んでいる集団的自衛権の行使にも、また集団安全保障における武器使用にも、何の障害にもならないのだという。

政府・自民党の立ち場では、新3要件とは魔法の呪文のごとくである。新3要件に基づけば、なんでもできる。たとえば、「集団安保については、▽他国への武力攻撃の直後▽日本が自衛権を行使中−−に国連安保理の決議が出た後でも、『国際法上は決議が根拠(集団安保)だが、憲法上、我が国の自衛の措置として許容される』のだから、武力行使できる」と明記されている。

その記事の締めくくりで、毎日はこう明言している。
「政府・与党は閣議決定に集団安保を明記しない方針だが、想定問答は、逆に日本政府が集団安保による武力行使に踏み出す可能性を明確に示し、新3要件が歯止めにならない実態を浮き彫りにした」

こうまで、与党合意の「新3要件」は歯止めにならないと言われているのだ。それでも、下駄の雪であり続けることを選択しますか。公明党さん。
(2014年6月27日)

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Published in 金曜日, 6月 27th, 2014, at 23:20, and filed under 集団的自衛権.

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