澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

安倍晋三首相に対する告発状

本日、安倍晋三首相の資金管理団体である晋和会の会計責任者と安倍晋三首相本人の両名を被告発人として、政治資金規正法違反の告発をした。

告発事案は、晋和会の政治資金収支報告書の寄付者の「職業」記載に、16か所の「虚偽記載」があること。「虚偽記載」は、故意だけでなく重過失を含むものと定義されている。会計責任者が刑事責任の対象となった場合、原則として資金管理団体の代表者の監督責任も問われることになる。
監督責任者としての被告発人安倍晋三の刑が確定すれば、公民権停止となる。その場合、公選法99条によって当然に議員としての地位を失う。議員でなくなれば、首相の座も失うことになる。

本日午前11時、醍醐聰さんと私と神原弁護士とで、東京地検に告発状を提出してきた。今後の成り行きを注目したい。
告発状の全文を紹介する。
なお、下記URLを開いてもらえば、同文をクリーンな書式で読むことができる。

http://article9.jp/documents/告発状.pdf

                                2014年8月18日
                   告  発  状
東京地方検察庁 御 中

          告   発   人     醍 醐   聰
          同              湯 山 哲 守
          同              斎 藤 貴 男
          同              田 島 泰 彦
          告発人代理人弁護士  澤 藤 統一郎
          同              阪 口 徳 雄
          同              神 原   元
          同              藤 森 克 美
          同              野 上 恭 道
          同              山 本 政 明
          同              茨 木   茂
          同              中 川 素 充

          被  告  発 人     ○ ○ ○  美
          同              安 倍 晋 三

                  告 発 の 趣 旨
 被告発人○○○美ならびに同安倍晋三に、それぞれ下記政治資金規正法違反の犯罪行為があるので、この事実を申告するとともに厳正なる処罰を求める。

                 被疑事実ならびに罰条
1 被告発人○○○美は、2011(平成23)年当時から現在に至るまで政治資金規正法上の政治団体(資金管理団体)である「晋和会」(代表者 安倍晋三、主たる事務所の所在地 東京都千代田区永田町2-2-1 衆議院第一議員会館1212号室)の会計責任者として、同法第12条第1項に基づき同会の各年の政治資金収支報告書を作成して東京都選挙管理委員会を通じて総務大臣に提出すべき義務を負う者であるところ、2012年5月31日に「同会の2011(平成23)年分収支報告書」について、また2013年5月31日に「同会の2012(平成24)年分収支報告書」について、いずれも「寄附をした者の氏名、住所及び職業」欄の記載に後記「虚偽記載事項一覧」のとおりの各虚偽の記載をして、同虚偽記載のある報告書を東京都選挙管理委員会を通じて総務大臣宛に提出した。
  被告発人○○○美の以上の行為は同法第25条第1項3号に該当し、同条1項によって5年以下の禁錮または100万円以下の罰金を法定刑とする罪に当たる。

2 被告発人安倍晋三は、資金管理団体「晋和会」の代表者として、同会の会計責任者の適正な選任と監督をなすべき注意義務を負う者であるところ、同会の会計責任者である被告発人○○○美の前項の罪の成立に関して、同被告発人の選任及び監督について相当の注意を怠った。
  被告発人安倍晋三の以上の行為は、政治資金規正法25条第2項に基づき、50万円以下の罰金を法定刑とする罪に当たる。

3 虚偽記載事項一覧
  2011(平成23)年分 (2012年5月31日作成提出)
   ・寄付者小山好晴について職業欄の「会社役員」という表示が虚偽
            →正しくは「NHK職員」あるいは「団体職員」
   ・寄付者小山麻耶について職業欄の「会社役員」という表示が虚偽
            →正しくは「会社員」
   ・寄付者周士甫について職業欄の「会社役員」という表示が虚偽
            →正しくは「会社員」
   (以下略)
  2012(平成24)年分 (2013年5月31日提出)
   ・寄付者小山好晴について職業欄の「会社役員」という表示が虚偽
            →正しくは「NHK職員」あるいは「団体職員」
   ・寄付者小山麻耶について職業欄の「会社役員」という表示が虚偽
            →正しくは「会社員」
   ・寄付者周士甫について職業欄の「会社役員」という表示が虚偽
            →正しくは「会社員」
   (以下略)

4 本件虚偽記載発覚の経緯
  本件の発覚は、NHKの職員(チーフプロデューサー)である小山好晴が有力政治家安倍晋三(現首相)の主宰する政治団体(資金管理団体)に政治献金をしていることを問題としたマスメディアの取材に端を発する。
  「サンデー毎日」本年7月27日号が、「NHKプロデューサーが安倍首相に違法献金疑惑」との見出しを掲げて報道した。同報道における「NHKプロデューサー」とは小山好晴を指し、「NHK職員による安倍首相への献金の当否」を問題とするものであった。また、同報道は小山好晴の親族(金美齢)の被告発人安倍晋三への献金額が政治資金規正法上の量的制限の限度額を超えるため、事実と認定された場合は脱法行為となる「分散献金」を隠ぺいするために小山好晴からの名義借りがあったのではないかという疑惑を提示し、さらに、政治資金収支報告書上の寄付者小山好晴の「職業」欄の「会社役員」という表示について、これを虚偽記載と疑う立場から検証して問題とするものであった。
  小山好晴が「NHK職員」であることは晋和会関係者の知悉するところである。政治資金規正法(12条第1項1号ロ)によって記載を義務付けられている「職業」欄の記載は、当然に「NHK職員」あるいは「団体職員」とすべきところを「会社役員」と記載したことは、被告発人安倍晋三に対するNHK関係者の献金があることをことさらに隠蔽する意図があったものと推察される。
  「サンデー毎日」が上記記事の取材に際して小山好晴らに対して「会社役員」との表示は誤謬ではないかと問い質したことがあって、その直後の7月11日晋和会(届出者は被告発人○○)は小山好晴の「職業」欄の記載を、「会社役員」から「会社員」に訂正した。しかし、小山は「会社員」ではなく、訂正後の記載もなお虚偽記載にあたる。
  晋和会(届出者は被告発人○○)は、7月11日に寄付者小山麻耶(小山好晴の妻・金美齢の子)についても、「会社役員」から「会社員」に訂正している。この両者について、原記載が虚偽であったことを自認したことになる。
  さらに7月18日に至って、晋和会(届出者は被告発人○○)は、自ら、後記「虚偽記載一覧」に記載したその余の虚偽記載についても訂正届出をした。合計16か所に及ぶ虚偽記載があったことになる。
  告発人において虚偽記載を認識できるのは寄付者小山好晴についてのみで、その余の虚偽記載はすべて政治資金収支報告書の訂正によって知り得たものである。当然に、訂正に至らない虚偽記載も、訂正自体が虚偽である可能性も否定し得ないが、告発人らは確認の術を持たない。

5 本件各記載を「虚偽記載」と判断する理由
  政治資金規正法第12条第1項・第25条第1項の虚偽記載罪の構成要件は、刑法総則の原則(刑法第38条第1項)に従って本来は故意犯と考えられるところ、政治資金規正法第27条第2項は「重大な過失により第25条第1項の罪を犯した者も、これを処罰するものとする」と規定して、重過失の場合も含むものとしている。
  その結果、「虚偽記載」とは行為者が「記載内容が真実ではないことを認識した場合の記載」だけでなく、「重大な過失により誤記であることを認識していなかった場合の記載」をも含むものである。
  告発人らは、被告発人○○に、寄付者小山好晴の職業欄記載については、故意があったものと思料するが、構成要件該当性の判断において本件の他の虚偽記載と区別する実益に乏しい。
  刑法上の重過失とは、注意義務違反の程度の著しいことを指し、「わずかな注意を払いさえすれば容易に結果回避が可能であった」ことを意味する。本件の場合には、「わずかな注意を払いさえすれば容易に誤記であることの認識が可能であった」ことである。
  本件の「虚偽記載」16か所は、すべて被告発人○○において訂正を経た原記載である。小山好晴の職業についての虚偽記載を指摘されて直ちに再調査の結果、極めて容易に誤記であることの認識が可能であったことを意味している。すべてが、「わずかな注意を払いさえすれば容易に誤記であることの認識が可能であった」という意味で、注意義務違反の程度が著しいことが明らかである。
  以上のとおり、被告発人○○の行為は、指摘の16か所の記載すべてについて、政治資金規正法上の虚偽記載罪の構成要件に該当するものと思料される。
  なお、被告発人○○の犯罪成立は、虚偽記載と提出で完成し、その後の訂正が犯罪の成否に関わるものでないことは論ずるまでもない。

6 被告発人安倍晋三の罪責
政治資金規正法第25条第2項の政治団体の責任者の罪は、過失犯(重過失を要せず、軽過失で犯罪が成立する)であるところ、会計責任者の虚偽記載罪が成立した場合には、当然に過失の存在が推定されなければならない。資金管理団体を主宰する政治家が自らの政治資金の正確な収支報告書に責任をもつべきは当然だからである。
  被告発人安倍において、特別な措置をとったにもかかわらず会計責任者の虚偽記載を防止できなかったという特殊な事情のない限り、会計責任者の犯罪成立があれば直ちにその選任監督の刑事責任も生じるものと考えるべきである。
  とりわけ、被告発人安倍晋三は、被告発人○○が晋和会の2012(平成24)年分の政治資金収支報告書を提出した約半年前から内閣総理大臣として行政府のトップにあって、行政全般の法令遵守に責任をもつべき立場にある。自らが代表を務める資金管理団体の法令遵守についても厳格な態度を貫くべき責任を負わねばならない。
  なお、被告発人安倍晋三が本告発によって起訴されて有罪となり罰金刑が確定した場合には、政治資金規正法第28条第1項によって、その裁判確定の日から5年間公職選挙法に規定する選挙権及び被選挙権を失う。その結果、被告発人安倍晋三は公職選挙法99条の規定に基づき、衆議院議員としての地位を失う。
  また、憲法第67条1項が「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する」としているところから、衆議院議員としての地位の喪失は、内閣総理大臣の地位を失うことをも意味している。
  そのような結果は、法が当然に想定するところである。いかなる立場の政治家であろうとも、厳正な法の執行を甘受せざるを得ない。本件告発に、特別の政治的な配慮が絡んではならない。臆するところなく、厳正な処罰を求める次第である。

7 本件は決して軽微な罪ではない
政治資金規正法は、政治資金の流れについての透明性を徹底することにより、政治資金の面からの国民の監視と批判を可能として、民主主義的な政治過程の健全性を保持しようとするものである。
  法の趣旨・目的や理念から見て、政治資金収支報告書の記載は、国民が政治を把握し監視や批判を行う上において、この上なく貴重な基礎資料である。したがって、その作成が正確になさるべきは、民主政治に死活的に重要といわざるを得ない。それ故に、法は刑罰の制裁をもって、虚偽記載を禁止しているのである。
  本件16か所の「虚偽記載」(故意または重過失による不実記載)は、法の理念や趣旨から到底看過し得ない。特に、現首相の政治団体の収支報告は、法に準拠して厳正になされねばならない。
  被告発人らの本件行為については、主権者の立場から「政治資金規正法上の手続を軽んじること甚だしい」と叱責せざるを得ない。
  告発人らは、我が国の民主政治の充実とさらなる発展を望む理性ある主権者の声を代表して本告発に及ぶ。
  捜査機関の適切厳正な対応を期待してやまない。
以上 

添  付  資  料
 疎明資料(すべて写)  各1通
 1 晋和会2011(平成23)年分政治資金収支報告書 訂正以前のもの
 2 同上訂正後のもの
 3 晋和会2012(平成24)年分政治資金収支報告書 訂正以前のもの
 4 同上訂正後のもの
 5 「サンデー毎日」2014年7月27日号
 委任状                    4通

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Published in 月曜日, 8月 18th, 2014, at 21:31, and filed under 未分類.

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