澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

次回口頭弁論は12月24日11時 ー 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第30弾

私自身が被告となっている「DHCスラップ訴訟」の次回口頭弁論期日の日程が間近になってまいりました。法廷傍聴と報告集会のご案内を申し上げます。
   12月24日(水)午前11時~   口頭弁論
   東京地裁631号法廷(霞ヶ関の裁判所庁舎6階南側)

   同日11時30分~   報告集会
   場所は東京弁護士会室508号室(弁護士会館5階)

今回の法廷では、前回期日での裁判長からの指示に基づいて、被告が準備書面を陳述することになります。まず、裁判所から求められた準備書面の内容は以下のとおりです。

☆前々回(9月17日)の期日に、裁判長は原被告の双方に対して「主張対照表」のフォーマットへの書き込みを指示しました。「現在、東京地裁での名誉毀損訴訟の審理においては、通常このような対照表を作成するかたちで行っていますので」とのコメントを付してのことでした。

☆ところで、名誉毀損訴訟の事案類型は、「事実摘示型」と「論評型」の2類型に大別されます。「事実摘示型」は、特定の人物の「社会的評価を低下させる事実」を摘示(曝露)するタイプの言論を違法と主張するもの。「論評型」は、既知の事実を前提とした批判(評価)の言論を違法と主張するもの。各々の判断枠組みが異なります。この対照表のフォーマットは、「事実摘示型」の審理に親和性をもつもののように思われるものとなっています。

☆これまで原告は、私のブログの文言を寸断して、「あれも事実の摘示」「これも事実の摘示」と言ってきました。これに対して、被告は「事実の摘示ではない」「全ては、原告吉田が週刊誌に告白した事実と社会的に周知されている事実から合理的に推論した意見ないし論評である」と反論してきました。

ちなみに、事実摘示型の言論は原則として違法とされ、違法性を阻却される要件が充足されるかという観点で審理が進行します。違法性阻却事由は、(1)当該の言論が公共に係るもので、(2)もっぱら公益をはかる目的でなされ、(3)かつ、その内容が真実である(あるいは真実であると信じるについて相当の理由がある)場合とされます。
「(1)公共性、(2)公益性、そして(3)真実性(ないし相当性)」の3要件と定式化されているものです。この3要件を充たして初めて、他人の名誉を毀損し、社会的評価を低下させる言論が違法ではなくなって許容されるという枠組みなのです。

これに対して、論評型では、「事実について述べることとは違って、意見や見解を述べることは自由」という原則をもって処理されます。問題とされている言論の真実性や真実相当性が問題となる余地はなく、「人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱」していない限りは違法性がないと判断されることになります。

名誉毀損事件の圧倒的多数は事実摘示型です。芸能人やスポーツ選手のスキャンダル報道がその典型。特ダネ・スクープと言われるすっぱ抜き報道も事実摘示です。本件で、私が週刊新潮の記事以前に「DHC吉田から、渡辺喜美に8億円の金が密かに渡っていていた」とすっぱ抜けば紛れもない「事実摘示型」。その摘示事実が真実であることの立証が最大の問題となるところ。しかし、8億円授受の事実をすっぱ抜いたのは吉田自身ではありませんか。私は、その事実に基づいてごく常識的な意見を言ったに過ぎません。私の言論は、既知の事実を前提とする論評なのですから、表現内容の真実性や相当性を問題にする余地はありません。原告が私のブログを名誉毀損だと主張すれば、典型的な「論評型」の訴訟となるわけです。

この「事実摘示型」「論評型」との分類は、決して形式論理に基づくものではなく、憲法21条の表現の自由を重視しつつ、表現によって名誉を侵害される人の人格的価値の尊重とのバランスをどうとるべきかという観点から生まれてきた審理方法なのです。

☆原告は、何が何でも私の言論を封じることが目的ですから、従前の通りにこの主張対照表に「あれも事実の摘示」「これも事実の摘示」と書き込みました。これに対して、被告は「すべては原告吉田自身が週刊誌に告白した事実から合理的に推論した論評である」と書き込みました。結局は、対照表の作成にさしたる意味はなかったことになります。

☆前回(11月12日)の法廷では、裁判長はさらに、被告に対して「論評が前提とする事実を、『吉田が週刊誌に告白した事実』というだけではなく、もっと特定していただきたい」というものとなりました。裁判所の求めているところや、裁判所の考え方などを明確化するためのやり取りをかなり長時間続けて、裁判所の基本的な枠組みについての考え方が、常識的なものと確認できたので、被告弁護団はその指示に従うことを了解しました。

☆もっとも、被告本人の私には、裁判所の訴訟指揮に釈然としないものが残ります。本件は、企業経営者が8億円もの巨額のカネを政党の党首に注ぎこんだことに対する批判の言論です。その行為は、民主主義の政治過程を金の力で歪めてはならないとの観点から批判し、社会に警告を発したものです。しかも、その企業経営者は、サプリメントや化粧品の製造販売の事業を営み、常々厚生行政や消費者行政に服する立場にあって、その行政による監督の厳格さに不平不満を募らせていた人物なのです。しかも、本来このような政治に注ぎこまれるカネについては、本来公開されて批判の対象としなければならないとするのが政治資金規正法の基本理念。原告吉田の行為は、渡辺喜美の行為とともに批判されて当然というのではなく、それ自体強い批判を必要とするものと信じて疑いません。

☆もし仮に、私のブログに掲載された言論が、いささかでも違法ということになれば、およそ政治的な言論は成り立たなくなります。同種のスラップ訴訟が頻発することとなるでしょう。これを恐れたジャーナリズム総萎縮の事態が出来することとならざるを得ません。批判の言論は封じられ、おべんちゃらの言論だけが横行します。それは、憲法21条が画に描いた餅になることを意味しています。まがまがしい民主主義衰退の未来図以外の何ものでもありません。

☆次回期日に陳述予定の被告準備書面(4)は、そのような基本視点から、本件を飽くまで論評型として審理するよう迫る内容となっています。具体的には、報告集会で弁護団から詳しく解説されることになります。

どうぞ、法廷傍聴と報告集会にお越しください。
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別件のご報告です。
私と同じ弁護士ブロガーで、私と同様にDHC・吉田の8億円拠出をブログで批判して、私と同じ日(本年4月16日)にDHCと吉田から名誉毀損損害賠償請求の提訴を受けた人がいます。提訴の請求金額は2000万円。当初の私に対する請求金額と同額です。その方の係属部は東京地裁民事第30部。そして、その人の場合は、「サクサクと審理を進め、早期に勝訴判決を獲得」という方針で、証拠調べ期日を設けることなく、10月16日に早くも結審しました。結審3か月後の15年1月15日に判決言い渡しが予定となっています。この判決に注目せざるを得ません。

また、DHCと吉田は「8億円授受事件」の批判的報道に関して、2件の仮処分命令申立を行っています。いずれも、東京地裁民事9部(保全事件専門部)で却下され、さらに東京高裁の抗告審でも敗訴しています。つまり計4回の決定がDHC吉田の主張を一蹴しているのです。彼らの濫訴は明らかといってよいと思います。

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                 『DHCスラップ訴訟』ご報告
《経過》(問題とされたのは下記ブログ「澤藤統一郎の憲法日記」)
 ブログ 3月31日 「DHC・渡辺喜美」事件の本質的批判
      4月 2日 「DHC8億円事件」大旦那と幇間 蜜月と破綻
      4月 8日 政治資金の動きはガラス張りでなければならない
    参照 http://article9.jp/wordpress/?cat=12 『DHCスラップ訴訟』関連記事
 4月16日 原告ら提訴(原告代理人 山田昭・今村憲・木村祐太)
       係属は民事24部合議A係 石栗正子裁判長
       事件番号平成26年(ワ)第9408号
 5月16日 訴状送達(2000万円の損害賠償請求+謝罪要求)
 6月11日 第1回期日(被告欠席・答弁書擬制陳述)
 6月12日 弁護団予備会議(参加者17名・大型弁護団結成の方針を確認)
 7月11日 進行協議(第1回期日の持ち方について協議)
       この席で原告訴訟代理人から請求拡張予定の発言
 7月13日 ブログに、「『DHCスラップ訴訟』を許さない・第1弾」
    第1弾~第4弾 「いけません 口封じ目的の濫訴」「万国のブロガー団結せよ」「言っちゃった カネで政治を買ってると」「弁護士が被告になって」(7月13~16日) 現在30弾まで
 7月16日 原告準備書面1 第1弾~第3弾に対して「損害拡大」の警告
 7月22日 弁護団発足集会(弁護団体制確認・右崎先生提言)
 8月13日 被告準備書面(1) ・委任状・意見陳述要旨提出。
 8月20日 10時30分 705号法廷 第2回(実質第1回)弁論期日。
       被告本人・弁護団長意見陳述。
       11時~ 東弁508号室で報告集会(北健一氏・田島先生ご報告)
 8月29日 原告 請求の拡張(6000万円の請求に増額) 準備書面2提出
新たに下記の2ブログ記事が名誉毀損だとされる。
     7月13日の「第1弾」と、8月8日「第15弾」
 9月12日 DHCから(株)テーミスに対する訴え(35部)取り下げ。
 9月16日 被告準備書面(2) 提出
 9月17日 10時30分 705号法廷 第3回(実質第2回)弁論期日。
       11時~ 東弁507号室で報告集会(スラップ被害者の報告)
 10月28日 原告準備書面3 主張対照表(原告主張部分)提出
 11月10日 被告準備書面(3)  主張対照表(被告主張部分)提出
 11月12日 10時~ 631号法廷 第4回(実質第3回)口頭弁論
        11時~ 第一東京弁護士会講堂で報告集会(三宅勝久氏報告)
 12月24日 11時~ 631号法廷 第5回(実質第4回)口頭弁論
        11時30分~ 東弁508号室で報告集会兼弁護団会議
  ※ 弁護団・経過報告(光前弁護団長)
  ※ 意見交換
  テーマ1 審理の進行について 
       本日までの審理の経過をどう見るか。
       今後の主張をどう組み立てるか。
  テーマ2 反訴の可否とタイミングをどうするか。
  テーマ3 今後の立証をどうするか。
  テーマ4 DHCスラップ他事件との連携をどうするか。
  テーマ5 マスコミにどう訴え、どう取材してもらうか
 《この事件をどうとらえるか》
  *政治的言論に対する封殺訴訟である。
  *言論内容は「政治とカネ」をめぐる論評 「カネで政治を買う」ことへの批判
  *具体的には、サプリメント規制緩和(機能表示規制緩和問題)を求めるもの
  *言論妨害の主体は、権力ではなく、経済的社会的強者
  *言論妨害態様が、高額損害賠償請求訴訟の提訴(濫訴)となっている。
  *ブログというツールが国民を表現の自由の権利主体とする⇒これを育てたい
 *強者が訴権を濫用することの問題点

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           『DHCスラップ訴訟』応訴にご支援を
このブログに目をとめた弁護士で、『DHCスラップ訴訟』被告弁護団参加のご意思ある方は東京弁護士会の澤藤(登録番号12697)までご連絡をお願いします。

また、訴訟費用や運動費用に充当するための「DHCスラップ訴訟を許さぬ会」の下記銀行口座を開設しています。ご支援のお気持ちをカンパで表していただけたら、有り難いと存じます。
    東京東信用金庫 四谷支店
    普通預金 3546719
    名義   許さぬ会 代表者佐藤むつみ
 (カタカナ表記は、「ユルサヌカイダイヒョウシャサトウムツミ」)
(2014年12月12日)

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