澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

東京弁護士会役員選挙結果紹介 - 理念なき弁護士群の跳梁

本年2月2日の当ブログに、東京弁護士会の役員選挙事情を掲載した。「弁護士会選挙に臨む三者の三様ー将来の弁護士は頼むに足りるか」というもの。投票日(2月6日)直前の記事だったので、選挙結果の報告もしなければなるまい。

下記は、東京弁護士会の役員選挙についての、同会ホームページの紹介である。公式の報告だから無味乾燥。外部から注目を惹くところは皆無。せいぜい、「公式ホームページで元号ではなく西暦が使用されているのか」という程度だろう。

2015年度東京弁護士会役員選挙結果について(2015年2月9日)
2015年度東京弁護士会役員等選挙の投票及び開票が2015年2月6日(金)に行われました。同日、東京弁護士会選挙管理委員会において開票結果を確定し、以下の者を当選者と決定しました。

2015年度東京弁護士会役員選挙 結果
会長選挙  当選者
      伊藤 茂昭 (いとう しげあき)
副会長選挙 当選者(弁護士登録年月日順)
      森    徹 (もり とおる)
      佐藤 貴則 (さとう たかのり)
      渡辺 彰敏 (わたなべ あきとし)
      大森 夏織 (おおもり かおり)
      中嶋 公雄 (なかじま きみお)
      湊  信明 (みなと のぶあき)
監事選挙  当選者(無投票・弁護士登録年月日順)
      吉村 誠 (よしむら まこと)
      鹿野 真美 (しかの まみ)
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これに、もう少し情報を加えると、弁護士会事情が多少は見えてくる。

Ⅰ 会長選挙
  当選   伊藤茂昭 3665票 (法友会)
  落選   武内更一  758票
Ⅱ 副会長選挙
  当選 1 湊 信明  909票 (法友会)        
  当選 2 大森夏織  795票 (期成会)        
  当選 3 渡辺彰敏  718票 (法友会)   
  当選 4 森   徹  635票 (法曹親和会・東京法曹会)
  当選 5 佐藤貴則  593票 (法曹親和会・二一会)  
  当選 6 中嶋公雄  522票 (法曹親和会・大同会)  
  落選   赤瀬康明  305票              

法友・親和が東弁の二大会派である。会派とはインフォーマルな派閥のこと。選挙人事は派閥が取り仕切っている。二大派閥による人事壟断に異を唱え、東京弁護士会民主化を掲げて誕生したのが期成会。私もその会員の一人だが、今では既成派閥の一つになったと見る人が多いようだ。各派閥は、それぞれに研修もし親睦も重ねて親密化している。そして、微妙なバランスで、役員選挙を取り仕切っている。会長候補の武内と副会長候補の赤瀬が、この微妙なバランスの外にある。もっとも、この両者はイデオロギー的には正反対の存在。

2月2日ブログに書いたとおり、私が最も注目していたのは、赤瀬康明候補の当落だった。落選したことは、まずは目出度い。しかし、この305という得票数をどう見るべきか。歯牙にかける必要もない少数集団と見てよいのか、泡沫候補と看過し得ないと危機感をもつべきなのだろうか。微妙なところ。

会長・副会長立候補者9名のうち、赤瀬を除く8名は、とにもかくにも弁護士や弁護士会の理念を語っている。会長戦に敗れた武内更一がその熱さにおいて筆頭であるが、いずれも弁護士の使命を語り、その弁護士の使命を全うするための弁護士会のあり方について所信を述べている。赤瀬だけにそれがない。むしろ、「弁護士会を任意加盟にせよ」「弁護士自治など必要はない」「弁護士会の公益活動など無用」「人権擁護活動よりは、会費を安くせよ」という。理念派ではなく、非理念派。真面目派に対して非真面目派。彼と、これを支持した300名にとっては、弁護士とは公益業務ではなく、ビジネスなのだ。弁護士の役割や使命への自覚はなく、専ら経営の安定だけが関心事と見える。

2009年には、赤瀬が所属する弁護士法人(「アデイーレ」)の所長・石丸幸人が東弁会長選挙に立候補して惨敗している。それから6年、弁護士は増員となったが、赤瀬の票は殆ど増えていない。今のところは、理念派が持ちこたえている。

今の世を席巻している新自由主義は、司法界にも押し寄せている。全てを市場原理に委ねて何が悪い、という開き直りである。1999年7月に内閣に「司法制度改革審議会」が設置されて本格化した「司法改革」の基調は、この新自由主義にあるというべきであろう。

企業が求めているのは、面倒な理念など持たない、使い勝手のよい安価な「法技術提供者」である。そのような弁護士の大量創出こそが「司法改革」の名で語られた。いま、その需要に応えた弁護士群が育ちつつあるのだ。主観的にはともかく客観的には、彼らは司法改革を推進した財界に弁護士会の内側から公然とこれに呼応する勢力である。警戒を緩めてはならない。
(2015年2月15日)

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