澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「再雇用拒否第2次訴訟」控訴審でも教員側全面勝訴ー都教委方向転換のラストチャンスだ

昨日(12月10日)、「日の丸・君が代」強制拒否訴訟の関連事件で、「再雇用拒否第2次訴訟」の控訴審判決が言いわたされ、控訴人都教委の控訴が棄却された。またまたの都教委敗訴である。今や、都教委の敗訴はニュースバリューがない。世間の耳目を惹く大きな記事にならない。

社会面のトップに大きく報道した赤旗記事。まず見出しが賑やかだ
「都教委の『君が代』強制 司法が断罪 高裁も再雇用拒否は違法 都に賠償命令 原告『画期的判決』」

そして、リードは以下のとおり。 
「東京都立高校の元教員が、「君が代」斉唱時の不起立のみを理由に再雇用を拒否されたことは違憲であり、東京都と都教育委員会の「裁量権の逸脱・濫用」であるとして損害賠償を求めていた訴訟の控訴審の判決で、東京高裁(柴田寛之裁判長)は10日、一審判決を支持して都の控訴を棄却し、再雇用拒否は違法であり、採用された場合の1年間の賃金に相当する賠償(約5370万円)を都に命じました。」

この記事のとおり一審が教員側の全面勝訴(2015年5月25日)だった。このとき、弁護団の一人が、思わず「正義は必ず勝つ・・とはかぎらない。でも、たまに勝つことがある」と迷文句を吐いた。これが率直な感想だったのだ。「憲法の原則からはわれわれこそが正義。われわれが裁判で勝たねばならない。しかし、必ずしも正論が通らないという司法の現実がある。乗り越えるべき壁は大きく高い。今日の判決は、その壁を乗り越えてようやく正義が勝った」という達成感吐露のニュアンスが滲み出ている。

一審判決当時のことは私の下記のブログを参照していただきたい。
  http://article9.jp/wordpress/?p=4927

一審は、教員側の全面勝訴だったから、教員からの控訴はない。全面敗訴の都教委(形式的には東京都)の側だけが、東京高等裁判所に控訴して口頭弁論1回で結審。そして、昨日の控訴棄却の判決となった。今度は弁護団は落ちついている。勝って当然という構えだが、実は内心は躍り上がって喜んでいる。同種の再雇用拒否を争った訴訟は、以前に4件ある。最終的にはいずれも敗訴なのだ。

都教委管轄下の教員に60歳定年制が導入されたのは、65歳の年金受給開始年齢までの5年間を、嘱託として再雇用されることの制度の創設という代替措置との引き替えだった。だから、よほどの事情のない限り誰もが希望すれば再雇用された。また、この再雇用ベテラン教師たちは、力量豊かな重要戦力として教育現場に期待もされたのだ。

ところが、「日の丸・君が代」強制に服しがたいとして職務命令違反による懲戒を受けた教員は、たった一回の戒告処分でも、「よほどの事情があった」と烙印を押されて再雇用を拒否されてくた。

石原慎太郎都政時代の教育行政は、江戸初期に踏み絵を発明した宗門改の役員さながらに、悪知恵を働かせた。「日の丸・君が代」不服従を根絶するために、懲戒処分に伴うあの手この手を編み出した。その種々のいやがらせのトップに君臨するものが再雇用拒否なのだ。

民間企業を被告とする労働事件の感覚では、職場慣行の立証だけで、簡単に勝てる事件。ところが、「再雇用は労働契約の延長にあるものではなく、新たな行政行為として行政の裁量に任される」という「理屈」が裁判所を縛った。

この件よりも以前の同種4件のうち2件は、一審から最高裁まですべて敗訴。残る2件は一審で勝ったが控訴審で負けた。最終的にはすべて敗訴で終わっている。労働者の権利よりも、行政の裁量を手厚く保護しようという馬鹿馬鹿しい判決である。

この先行4事例の最高裁が是認した判決の存在にもかかわらず、本件は一審で全面勝訴した。「でも、たまに勝つことがある」と迷文句の実感がお分かりいただけるだろう。そして、この度の初めての高裁勝訴判決である。

本年5月の一審判決は、東京地裁民事第36部(吉田徹裁判長)が言い渡したもの。
「再雇用制度等の意義やその運用実態等からすると、再雇用職員等の採用候補者選考に申込みをした原告らが、再雇用職員等として採用されることを期待するのは合理性があるというべきであって、当該期待は一定の法的保護に値すると認めるのが相当であり、採用候補者選考の合否等の判断に当たっての都教委の裁量権は広範なものではあっても一定の制限を受け、不合格等の判断が客観的合理性や社会的相当性を著しく欠く場合には、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法と評価され、原告らが有する期待権を侵害するものとしてその損害を賠償すべき責任を生じさせる。」という、画期的なもの。昨日の高裁判決も、この立場を是認し踏襲した。

しかも、先週(12月4日)言い渡しがあった東京「君が代」裁判第3次訴訟控訴審における第21民事部「中西茂判決」が、「本件不起立等は軽微な非違行為であるとか、形式的な非違行為であるということはできない」としたのに対して、昨日の第2民事部「柴田博之判決」は、「本件職務命令違反の非違性が,客観的な意味において重大であるなどと評価することはできない」「再雇用職員等の採用候補者選考の場面において,同事実の存在のみを理由に直ちに不合格等と判断すべき程度に重大な非違行為に当たると評価することはできない」としている。教員の訴えに耳を傾ける姿勢の有無の違いを印象づけている。

原告団・弁護団の声明を引用しておきたい。
本日、東京高等裁判所第2民事部(柴田寛之裁判長)は、都立高校の教職員ら24名が、卒業式等において「日の九」に向かつて起立して「君が代」を斉唱しなかつたことのみを理由に、東京都により定年退職後の再雇用職員ないし日勤講師としての採用を拒否された事件(平成27年(ネ)第3401号損害賠償請求控訴事件)について、東京都の採用拒否を裁量権の逸脱。濫用で違法とし、東京都に対し採用された場合の1年間の賃金に相当する金額の賠償を命じた1審東京地裁判決(2015年5月25日)を支持して、東京都の控訴を棄却し、東京都に対し1審同様の損害賠償を命じる判決を言い渡した。
1審に続き控訴審においても、原判決の判断を踏襲した他、東京都の主張をすべて排斥し、都教委の本件採用拒否を裁量権の逸脱・濫用にあたり違法であると認めたことは、都教委による10.23通達以後の「日の丸。君が代」の強制を司法が断罪し、これに一定の歯止めを掛けたものと評価できる。
本原告団・弁護団は、東京都が本判決を受け入れて上告を断念し、10.23通達に基づく「日の丸・君が代」強制などの諸政策を抜本的に見直すことを強く求めるものである。

この上告断念の要請に都教委はどう応えるだろうか。本日の東京「君が代」裁判4次訴訟閉廷後の報告集会では、都教委は上告受理申立の方針で、その承認を議会に諮っているという。またまた、恥の上塗りをしようというのだ。

乙武氏を含む都教委の面々に、本当にこれでよいのかと問い質したい。あなた方は上告受理申立の方針決定に関与しているのか。いったい、その職に責任をもって行動をしているのだろうか。まったく見えてこないのだ。

特に中井敬三教育長に一言申しあげておきたい。これまで、私は中井氏に、「あなたはこれまでの都教委の違法の数々に責任がない。すべて、あなたの前任者がしでかした不始末として、『これまでの都教委のやり方がよくなかった』と言える立場にある。あなたの手は今はきれいだ。まだ汚れていないその手で、不正常な東京の教育を抜本的に改善することができる。敗訴判決はそのチャンスだ。」と言ってきた。

しかし、おそらくはこれが最後のチャンスだ。この度の惨めなばかりの都教委敗訴判決は都教委反省の絶好機というだけでなく、あなたがイニシャチブをとって都教委の方向を転換する恰好の機会でもある。この判決への対応を間違えると、あなた自身の責任が積み重なってくる。あなた自身の手が汚れてくれば、抜本解決が難しくなってくる。一連の最高裁判決に付された補足意見の数々をよくお読みいただきたい。この不正常な事態を解決すべき鍵は、権力を握る都教委の側にあることがよくお分かりいただけるだろう。

「トンデモ知事」の意向で選任された「トンデモ教育委員たち」による「10・23通達」が問題の発端となった。今や、知事が替わった。当時の教育委員もすべて交替している。教育畑の外から選任された中井敬三さん、あなたなら抜本解決ができる。今がそのチャンスではないか。しかも、ラストチャンスだ。ぜひとも間違えないようにしていただきたい。
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   DHCスラップ訴訟12月24日控訴審口頭弁論期日スケジュール
DHC・吉田が私を訴えた「DHCスラップ訴訟」は、本年9月2日一審判決の言い渡しがあって、被告の私が勝訴し原告のDHC吉田は完敗となった。しかし、DHC吉田は一審判決を不服として控訴し、事件は東京高裁第2民事部(柴田寛之総括裁判官)に係属している。

その第1回口頭弁論期日は、
クリスマスイブの12月24日(木)午後2時から。
法廷は、東京高裁庁舎822号法廷。
ぜひ傍聴にお越し願いたい。被控訴人(私)側の弁護団は、現在136名。弁護団長か被控訴人本人の私が、意見陳述(控訴答弁書の要旨の陳述)を行う。

また、恒例になっている閉廷後の報告集会は、
午後3時から東京弁護士会502号会議室(弁護士会館5階)A・Bで。
せっかくのクリスマスイブ。ゆったりと、楽しく報告集会をもちたい。
表現の自由を大切に思う方ならどなたでもご参加を歓迎する。
(2015年12月11日・連続第985回)

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