澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

中国の人権派弁護士弾圧の報に、治安維持法時代の弁護士受難を思う。

時事や共同の配信記事によると、中国の「人権派弁護士」に対する弾圧がエスカレートして、有罪判決が相次いでいる。かつての天皇制政府による治安維持法による弾圧にも似た理不尽が今も現実に起こっているのだ。隣国の問題として座視するに忍びない。

昨年7月、中国当局は「人権派弁護士」を主とする人権活動家を「拘束・連行」した。その数200人を超す。令状による逮捕ではない「拘束・連行」の法的な根拠はよく分からない。治安維持法の予防拘禁のような制度があるのかも知れない。

いち早く警鐘を鳴らした香港のNPO団体「中国人権弁護士関注組」の当時の発表によれば、2015年7月16日までに拘束・連行された人権派弁護士や活動家は205名。「長期化する当局の摘発に、活動家らからは『弁護士を徹底的に脅して抑え込もうとしている』と懸念の声が上がっている」という。

同団体によると、当局が拘束を継続しているのは「社会秩序を乱す重大犯罪グループ」とみなされた「北京鋒鋭弁護士事務所」の主任弁護士、周世鋒氏や女性弁護士の王宇氏ら11人。一部は自宅に軟禁されている。ほかに15人の行方がつかめていない。179人は「一時拘束」だったようだ。

当局に「拘束」された人権活動家たちへの弁護活動が妨害され、弁護士接見も家族との交流も途絶されたまま、「拘束」が長期化した。治安維持法時代と同様、強要されてやむなく転向した者はその旨を表明して釈放されたが、連行1年を経て、拘束が継続している者23名と報じられている。

本年(2016年)7月9日には、今も拘束中の弁護士の家族ら7人が、即時釈放などを求める共同声明を出した。当局はこれに対して翌8日には、支援者の弁護士1人を新たに拘束することで応じ、「抑圧の手を緩める気配はない」(共同)。

その後、7月15日に、中国天津市人民検察院(地検)第2分院は昨年7月から拘束していた人権派弁護士の周世鋒氏や著名な民主活動家の胡石根氏ら計4人を国家政権転覆罪で起訴すると決めた、と報じられた。

周世鋒氏らの国家政権転覆罪刑事公判の進展に注目していたところ、7月30日には、「中国天津市人民検察院(地検)に「国家政権転覆罪」で起訴された中国の人権派弁護士の周世鋒氏ら4人について、家族や家族が依頼した弁護人を締め出した「秘密裁判」が近く開かれる見通しとなった。同罪で有罪の場合、懲役10年以上となるケースが多い。関係者が30日明らかにした。」(共同)との報道があって、その報道のとおりに公判の内容についてはまったく不明のうちに、相次ぐ有罪判決となっている。

周氏は、「著名な女性弁護士の王宇氏=国家政権転覆容疑で逮捕=らと共に弁護士事務所を設立。有害物質が混入した粉ミルクで多くの乳幼児に健康被害が出た事件の訴訟に関わるなど人権擁護に取り組んできた」と紹介される弁護士。

時事通信の伝えるところでは、昨日(8月4日)「中国の天津市第2中級人民法院(地裁)は、『国家政権転覆罪』で起訴された弁護士の周世鋒氏(51)に懲役7年、公民権剥奪5年の判決を言い渡した。周氏は上訴しないと表明した。国営新華社通信が伝えた。
 周氏は北京鋒鋭弁護士事務所の主任として、多くの人権侵害事件に取り組んできたが、昨年7月に民主活動家ら300人以上に対して行われた一斉連行で拘束された。このうち4人が今年7月、政権転覆罪で起訴され、有罪判決が出たのは周氏が3人目。」

続いて今日(8月5日)「中国『人権派』裁判、4人目にも有罪判決」の報道。
「中国で今週相次いで行われている人権派弁護士や活動家の裁判で、4人目にも有罪判決が下されました。この間、家族や主な支援者は自宅で軟禁状態となり、裁判の傍聴は許されませんでした。5日、初公判が行われたのは、会社経営者で人権活動家の勾洪国氏(54)で、国家政権転覆罪で懲役3年・執行猶予3年の判決が言い渡されました。」(TBS動画ニュース)

傷ましいのは、同氏が次のように言わされていることだ。「私は西洋のいわゆる『民主思想』にだまされていたと分かりました」(人権活動家 勾洪国氏)
報道では、「国営テレビで流された勾洪国氏の法廷での発言は、今週裁判が行われた他の3人と似たような文言で反省と謝罪が繰り返されました。」とされている。

「勾洪国氏の妻・樊麗麗さんら家族や主な支援者は警察に監視され、自宅軟禁状態となっていました。」「去年7月に一斉拘束された人権派弁護士や活動家のうち残る19人は、依然として家族や弁護士の接見が許されず、裁判の日程も明らかになっていません」とも報じられている。

刑事司法の公正こそは、一国の人権保障水準のバロメータだ。民主化度の試金石と言ってもよい。国民の人権は、権力の恣意的発動から厳格に守られなければならない。政権や党の意向次第で、法に基づかない人身の拘束があってはならない。適正な司法手続を経ずに、刑罰が科せられてはならない。

中国のこの刑事司法の原則無視は、まるで野蛮な天皇制下での日本共産党員やその同調者に対する弾圧の再来ではないか。

改正治安維持法に、「結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ二年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」という罰条が設けられている。「共産党の目的遂行の為に弁護活動をした」という認定で、弁護士が逮捕され有罪となったのだ。

良心的に果敢に人権のために闘った優れた弁護士の多くが、法廷で権力と切り結んだ弁護活動を理由に起訴され有罪になり、弁護士資格を剥奪された。3・15事件、4・16事件などの弾圧で逮捕された多くの共産党員活動家が治安維持法で起訴され、その弁護を担当した良心的な弁護士が熱意をもって弁護活動を行った。この法廷での弁護活動が治安維持法違反の犯罪とされて起訴されたのだ。悪名高い、「目的遂行罪」である。「外見上は弁護活動に見えるが、実は共産党の『国体を変革し私有財制度を否定する』結社の目的遂行のために法廷闘争を行ったもの」と認定されて有罪となった。有罪となった弁護士は司法省(検事局)から資格を剥奪された。

中国の事態の深刻さを憂うる。そこに、権力の本性を見ざるを得ない。我が国の天皇制政府の蛮行を忘れてはならない。戦前回帰などなきよう、心したい。
(2016年8月5日)

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Published in 金曜日, 8月 5th, 2016, at 23:59, and filed under 中国, 人権, 刑事司法, 弁護士.

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