澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

アベ所信表明に見る「大政翼賛現象の始まり」

アベでございます。第192回臨時国会の冒頭、立法府の長として、あっ間違いました、行政府の長として、衆参両院の議員ならびに臣民の皆さまに、あっ間違いました、主権者である国民の皆さまに、所信を表明いたします。

私が語るものはもっぱらバラ色の未来です。過去を美しく描けば、歴史修正主義と罵倒されます。現在は、皆さまご存じのとおりの体たらく、これを素晴らしいなどと言えば白けてしまう。我が政権の3年半を語って国民を感動させるものはなく、糊塗のしようもありません。ですから、未来。未来なら、どのようにでも描くことができる。夢と希望と世界一に溢れたバラ色の未来を語ることで、もうしばらくは、我が政権をもたせることができそうではありませんか。そのような寛容な国民の皆さまあっての、我が政権の安泰なのです。

ところで、我が国は基本的な価値観を共有する国々だけと連携を深めてまいります。指導者への忠誠やナショナリズムという基本的な価値観を共有する国としては、その筆頭が北朝鮮、次いで中国でしょうか。いずれの国も、リーダーの演説には起立して鳴り止まぬ拍手を送るという美しい光景を見せていますが、ようやくにして我が国の自民党議員諸君も、これを見習うにいたつているのは喜ばしい限りです。

私が所信表明演説の次のくだりで声を張り上げたところで、北朝鮮現象が起きたのです。

「我が国の領土、領海、領空は、断固として守り抜く。強い決意を持って守り抜くことを、お誓い申し上げます。
 現場では、夜を徹して、そして、今この瞬間も、海上保安庁、警察、自衛隊の諸君が、任務に当たっています。極度の緊張感に耐えながら、強い責任感と誇りを持って、任務を全うする。その彼らに対し、今この場所から、心からの敬意を表そうではありませんか。」

自民党議員のほぼすべての諸君が、起立して鳴り止まぬ拍手をしてくれました。これこそ、戦後レジームを脱却した大政翼賛現象。他党やメディアからは冷ややかな反応でしたが、それはどうでもよいこと。ようやくにして自党の議員だけでも価値観を共有すべき北朝鮮の域に近づいてくれたかと、感慨一入というところでございます。

ナショナリズムの喚起こそ、国民感情を掻きたてて国民を束ねる要諦。近隣の特定国を邪悪な敵とし、敵は我が国をねらっている。敵になんの理もなく、自国に何の非もない。敵は侵略者、自国はひたすらに被害者。古今東西、この論法が有効なのです。野党議員はともかく、国民はころっとまいるだろう。自民党議員と同じ反応をしてくれるはず。それが私の国民観であり政治勘なのでございます。

ところで最大の問題は改憲です。ついに、改憲勢力の議席が両院とも3分の2を占めるに至っています。でも、さあ「改憲案作り」だとは、さすがの私も言えません。何しろ、選挙では意識的に明示的に改憲を争点から外したのですから。選挙が終わっての手のひらを返したような改憲推進は、「だ・ま・し・う・ち」だの「か・す・め・と・り」だの、あるいは「議席詐取」「政治的悪徳商法」「詐欺的政治手法」と言われるのは必定。次の選挙に影響必死ですから、ここは慎重に対応せざるを得ません。

 憲法はどうあるべきか。日本が、これから、どういう国を目指すのか。それを決めるのは政府ではありません。国民です。そして、その案を国民に提示するのは、私たち国会議員の責任であります(あれっ? 内閣総理大臣としての演説が、突然「私たち国会議員」になっちゃった。まあ、いいか)。与野党の立場を超え、憲法審査会での議論を深めていこうではありませんか。
 決して思考停止に陥ってはなりません。互いに知恵を出し合い、共に「未来」への橋を架けようではありませんか。

「憲法改正案を発議するのは国会議員の責任」だつて? そりゃないだろう。憲法改正案を発議しないことも、発議すべきでないと議論に参加することも、さらには改憲のための議論は必要はないとする姿勢を貫くことも、立派な国会議員のあり方。附和雷同の憲法改正論議参加ではなく、熟慮の改憲議論拒否の選択は大いにあり得るのだ。このことを思考停止などと行政府の長が口を出す余地はない。もちろん、「立法府の長」であっても。
(2016年9月27日)

Info & Utils

Published in 火曜日, 9月 27th, 2016, at 11:28, and filed under 安倍政権.

Do it youself: Digg it!Save on del.icio.usMake a trackback.

Previous text: .

Next text: .

Comments are closed.

澤藤統一郎の憲法日記 © 2016. Theme Squared created by Rodrigo Ghedin.