澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

マイナンバー さわらぬ神に 祟りなし

この国の政府と国会は、私の望んでいない法や制度を次から次へと作り出す。特定秘密保護法・戦争法・原発再稼働・TPP…。マイナンバー制もその一つだ。正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下、「番号法」)だそうだが、いよいよ本格的に動き出す。かつては国民総背番号制としての嫌われもの。住基ネットは完全に失敗した。マイナンバー制も国民には何のメリットもない。むしろ、危険なデメリットに充ち満ちている。

総務省は、ひそかに私にも12ケタのナンバーを付けたようだが、余計なお世話だ。いや、失敬きわまる。政府が勝手に付けた識別番号を、私は「マイ」ナンバーとは認めない。そんな番号は知りたくもない。もしかしたら、777777777777というラッキーナンバーであるのかも知れないが、生涯知ることはないだろう。認知しないで無縁で暮らすことにする。

年金番号や顧客管理番号は、私という人格に付されたナンバーではない。事務整理の必要性から、納得できる合理性に支えられた、特定の名簿に付された便宜上の番号だと認識できる。しかし、「行政手続における特定の個人を識別するための番号」とは、氏名と同じく私という人格の特定に、包括的かつ永続的に使われる。そんなものは要らない。まっぴらご免だ。

私が長年顧問を務めたある会社の法務部長のことを思い出す。彼は、その会社を退職したあと県会議員に立候補し、無所属ながら見事に当選した。ところが、在任中に思いがけないスキャンダルを起こして、彼のブログが炎上した。それは、彼が公立病院に通院した際、氏名でなく受付番号で呼び出されたことに立腹して、「自分にはちゃんとした氏名がある。番号での呼出アナウンスは自分の人格を傷付けるものだ」という主旨の抗議をし、その旨をブログにも書いたのだ。「ここは刑務所か!。名前で呼べよ。」というトーン。

たちまち、これに反論が相次いだ。「議員にあるまじき傲慢な態度」「上から目線のものの言い方」「氏名を言わないのはプライバシーへの配慮ではないか」。ブログの炎上がきっかけで、フジテレビのワイドショー番組での強引な取材となった。彼は追い詰められ遂に自殺に至った。

県議としての彼のものの言い方に批判すべきところがあるとは言え、自殺にまで追い詰められるほどのことではなかったろうに。一般論としては「番号ではなく氏名を」という彼のポリシーに共感する。彼のブログには、「確かに個人名を伏せてほしい患者はいるでしょう。そうした方には、“匿名希望”とか、“番号呼び出し希望”と、○印欄を付けるたった数文字を追加すれば済むことでしょう。」という記事もあるのだ。今は亡き彼を弔う気持ちも込めて、「番号制度(マイナンバー制度)の中止と利用拡大のとりやめを求める運動」に加わろうと思う。

私が信頼する税理士の組織として「税経新人会」がある。その会のマイナンバー制度に関するリーフレットをいただいた。マイナンバーを利用する必要はないという趣旨。これがよくできている。

このリーフの最初にマイナンバー制度のイメージが図式化されている。これによると、これまでの税や社会保障における「個別番号」は、すべて「氏名に番号がついていた」。しかし、「マイナンバー」は違う。「番号に情報がつき、氏名も情報のひとつ」だという。なるほど、そういうものか。政府が、ナンバーを通じて国民のすべての情報を取得し管理するシステムなのだ。そんな制度の完成は「1984年」の悪夢ではないか。

このリーフのメインの記事は、三つの「Q&A」である。
Q1 何のためにつくられたのでしょうか?
Q2 番号は提出しなければ不利益があるのでしょうか?
Q3 事業者は、従業員の番号を収集しなければならなないのでしょうか?

「Q1」は、マイナンバー制度の趣旨目的について。「政府のウソ」と、「本当の目的」が語られている。
「Q2」は、求められたマイナンバーを提出しなければならないのか、ということ。これがみんなの知りたいこと。
そして、「Q3」は事業者に向けた説明。「従業員の番号の収集は義務のようだが、収集したくない場合にはどうすればよいのか」に対する解答。

番号法自体は個人(番号をもつ本人)に何の義務も課していない。事業者には形式的には従業員の番号収集義務があるものの強制力はない。むしろ、これを収集してしまうと、面倒なことになる。番号の漏洩は犯罪なのだから、最初から番号の収集などしない方がずっと賢明なのだ。

Q1 何のためにつくられたのでしょうか?
 政府は、①行政の効率化②国民の利便性向上③公平・公正な社会の実現が目的としていますが、
 実際は・・・
①「行政の効率化(費用対効果)」
 費用対効果の試算は明確に示されていません。システムの不具合が続出し改修費用が膨らんでいます。民間企業の負担経費を一切考慮していません。実態は巨額な公共事業です。当初国の基本システム開発だけで3000億円以上、1700自治体を含めると1兆円以上かかり、今後膨大な維持費と開発費がかかっていきます。その大半が入札のない随意契約です。
②「国民の利便性」
 政府のいう利便性→年間1回、一生1回のごくわずかな添付書類の削減にすぎません。その代償として、国民はカードの逸失や情報漏れに気を遣いながら、常時携帯を余儀なくされます。
③「公平・公正な社会の実現」
 現行制度改正・運用で可能です。「公正」の対象は庶民です。番号制度では、パナマ文書で明らかなように、海外に流失した企業・富裕層の資金に対する捕捉はできません。また税収では、本来負担能力のある企業利益・株式等の配当・譲渡などに相応の課税をすべきです。また番号制では、政治家の不正は捕捉できません。

本当の目的は・・・
 国民の財産を含めたプライバシー情報の管理と医療・介護・年金の給付制限です。
真の目的は、すでに成立している改正法に見るように、預金に番号をつけ、国民個々人の資力調査と個人情報の集中的管理と利用です。政府財政制度等審議会で、「マイナンバーの利活用で、預金等の金融ストックも勘案した負担能力判定の仕組みを導入」が提案されました。例えば一定の預金者は医療費や介護保険の保険料や自己負担を増やすなどです。
 民間企業にも個人番号カードや番号利用を認めていき、クレジットカード・社員証・交通系ICカード(スイカなど)など民間カードとのワンカード化やスマートホンにその機能をもたせるなど検討しています。また顔写真などの生体情報の登載も予定して、2020年東京オリンピックなどの警備に利用しようとしています(内閣府IT戦略本部のロードマップ案)。

Q2 番号は提出しなければ不利益があるのでしょうか?
 番号法では、個人に提出義務を規定していませんし、提出しないことによる不利益の記載もありません。番号を記載しなければならないというのは、国税通則法や年金法などに記載されていますが、罰則はありません。漏えいの危険があり、悪用される危険がある番号を出しませんという意思表示をしましょう(収集を求める方は、その内容を記録に残せばよいことになっています)。

<書面で意思表示する場合の例>
        殿               月  日
 貴殿より「個人番号の記載は国税通則法等で定められたもの」であることの説明を受けましたが、私は、漏えいなどの不安を感じるため、個人番号を提出しません。
  氏名

Q3 事業者は、従業員の番号を収集しなければならなないのでしょうか?
番号法では、事業者に対し、収集の義務を規定していません。事業者は、番号を取集した場合は、漏えいしないように「安全管理措置」をとるために経費が増大し、神経を使うことになります。また漏えいした場合は、報告義務、刑事罰・罰金など責任は増大します。これらの負担と責任を考えると収集しないことが一番の「対策」です。

<番号を収集しないことをお知らせする例>
従業員の皆さんへ      年  月  事業主より
 2016年1月より番号(マイナンバー)制度が実施されています。年末調整や労働保険の手続きで、皆さんの番号を預かり書類に記入することとなっています。
しかし事業者には、番号法で番号の収集義務がないのもかかわらず、番号の記載された書類(コピーなど)について収集すると、厳重な管理(安全管理措置)が義務付けられています。安全管理措置の内容は、多岐にわたり、手間とコストがかかり、中小の企業にとっては、とても対応できるものではありません。万が一漏えいした場合は、4年以下の懲役または200万円以下の罰金となっています。日本年金機構からの情報漏えいにも見るように、高度な対策していたにもかかわらず個人情報が漏れてしまい、また最近でもこのような事件(犯罪)はたえません。
 よって、今回事業所としては、検討・熟考した結果、万全の安全管理措置がとれませんので、当面番号をお預かりしないで、税務・社会保険などの書類には番号なして提出することとしました。番号の記載がなくても書類が受理されないということはありません。
また通知カードと一緒に「個人番号カードの申請書」が送られてきます。申請書写真を貼って申し込むと、「個人番号カード」を区市町村の役所で受けることになります「個人番号カード」とはICチップ付きプラスチック製で、表面に氏名、住所、生年月日、性別の4情報と顔写真、裏面に番号が記載されます。
 政府は、この普及を進め、国民に日常不断に携帯させ、いろいろな機会に使用させるように考えています。そうなるとカード紛失等の機会も増え、犯罪に使われることも懸念されます。
 以上のことを考えて、「個人番号カード」の取得は慎重にしてください。「個人番号カード」の取得は強制ではありません。

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以下は関係の法条を抜粋。

番号法6条
(事業者の努力)個人番号及び法人番号を利用する事業者は、基本理念にのっとり、国及び地方公共団体が個人番号及び法人番号の利用に関し実施する施策に協力するよう努めるものとする。

番号法14条
(提供の要求)個人番号利用事務等実施者は、個人番号利用事務等を処理するために必要があるときは、本人又は他の個人番号利用事務等実施者に対し個人番号の提供を求めることができる。

※個人(番号の本人)の義務規定はなく、事業者も軽い努力義務にとどまる。本人に個人番号の提供を「求めることができる」であって、義務規定とはなっていない。

 

国税通則法124条
(書類提出者の氏名、住所及び番号の記載等)国税に関する法律に基づき税務署長その他の行政機関の長又はその職員に申告書、申請書、届出書、調書その他の書類を提出する者は、当該書類にその氏名、住所又は居所及び番号(番号を有しない者にあつては、その氏名及び住所又は居所)を記載しなければならない。(以下略)

※一応、「記載しなければならない。」というのだから法的な義務ではある。しかし、強制の手段はなく、もちろん罰則もない。

 

「国税庁の番号制度概要に関するFAQ」
Q2-3-2申告書等にマイナンバー(個人番号)・法人番号を記載していない場合、税務署等で受理されないのですか。
(答)税務署等では、番号制度導入直後の混乱を回避する観点などを考慮し、申告書等にマイナンバー(個人番号)・法人番号の記載がない場合でも受理することとしていますが、マイナンバー(個人番号)・法人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務ですので、正確に記載した上で提出してください。

※「番号を記載しないと受理しないのか」という問への解答は、「番号の記載がない場合でも受理する」である。「正確に記載した上で提出してください」は税務当局の要望である。
(2016年12月11日)

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