澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

カネのちからによる言論介入を許してはならない。 ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第116弾

東京メトロポリタンテレビジョン(MXテレビ)が今年(2017年)1月2日放送の「ニュース女子」について、BPOが「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を公表した件。これは看過してはならない大きな事件であり問題なのだ。

問題がメディアのあり方に関わる重大事なのに、主要紙の社説が揃わないことに不安が残る。中央紙では、12月16日に朝日と東京が、17日には毎日が、いずれも格調の高い社説を書いた。それぞれに立派なものだ。読み易く分かりやすくもある。しかし、読売・産経は書かない。日経までもだ。メディアの使命に関して、余りにも感度が鈍いのではないか。地方紙では、沖縄の2紙が鋭い論評を書いているが、その余には目立つものが少ない。神戸新聞が目についた程度だが、これも気にかかる。

まずは、このような沖縄の基地建設反対運動に関してのデマとヘイトに充ち満ちた劣悪な「報道」が、地上波メディアに垂れ流されていることに戦慄を覚えなければならない。この感覚が大切だと思う。これを見て、「テレビなんぞは、どうせこの程度のもの」と甘く見てはならない。

デマとヘイトは、民衆をあらぬ方向に煽動する力をもちうる。ナチスもそうだった。天皇制政府も同じだった。このような番組の跋扈を芽のうちに摘み、蔓延を押さえ込まなくては、民主主義の基礎が崩される。隣国との協調も地域の安定も危うくなりかねない。視聴者には真実を知る権利がある。デマとヘイトによっての世論操作を許してはならない。この点に、すべてのメディアが敏感になって相互批判をしなければならない。

そして、この事件の構造と問題点を押さえなければならない。
「沖縄の新基地建設反対運動は、在日勢力によって操られた暴力的で恐ろしいもの」というのが、問題番組のコンセプトである。単に事実無根というに止まらず、特定の意図をもって運動への妨害を意図したものと指摘せざるを得ない。これが「デマ」という所以である。このデマは、情報の受け手に民族差別の潜在意識あることを前提に、これを利用し差別感情に訴えようとする企図が生み出したものだ。これを卑劣な「ヘイト」という所以なのだ。

このデマとヘイトの低劣番組を制作したのが、DHCテレビジョン(当時の社名は、DHCシアター、DHCのオーナー吉田嘉明が会長)である。これが、地上波局であるMXテレビに持ち込まれた。DHCテレビジョンの親会社であるDHCの提供番組としてである。MXテレビは、こんな劣悪番組をノーチェックで放送したのだ。この事件が起こってから、「完パケ」という業界用語が有名になった。放送される内容と同様の「番組完成バージョンのパッケージ」という意味のようだ。MXテレビ側は、「完パケ」を見ることすらしていなかった。これが、BPOから重大失態とされている。放送してよい内容かどうか、点検(「考査」)しなければならない立場にあったのに、内容を見てもいなかったというのだ。

なぜ、こんな失態が生じたか。ここが最大の問題点だ。メディアの良心がカネの力に屈しているのだ。もっと正確に言えば、カネを持っているスポンサーが、地上波テレビの番組内容を支配する構造が問題なのだ。

MXテレビといえば東京都お抱え局という印象があるが、最近10年で東京都からの広告料収入がトップだったのは、2011年決算期だけ(東京都11.4%、DHC11.0%)。あとは、DHCがダントツである。DHC1社で、全広告収入の20%を超える年もあるのだ(2013年決算では21.8%、2015年決算では21.0%)。このスポンサーのカネの力には逆らえないというメディアの体質をどう変えるか。メディアの報道内容の資本からの自由や、メディアの良心を制度的にどう保障するのか。そこがロードスなのだ。なんとか、ここで跳ばなければならない。

目についた、各紙の社説の表題だけを紹介しておきたい。

☆朝日社説(12月16日)
BPO意見書 放送の倫理が問われた
http://www.asahi.com/articles/DA3S13275732.html?ref=editorial_backnumber

☆東京新聞社説(12月16日)
沖縄基地番組 事実は曲げられない
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017121602000155.html

☆毎日社説(12月17日)
MXテレビにBPO意見書 放送業界の大きな汚点だ
https://mainichi.jp/articles/20171217/ddm/005/070/019000c

☆日沖縄タイムス 社説(12月16日)
[BPO倫理違反指摘]番組内容自ら再検証を
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/184877

☆琉球新報 社説(12月17日)
BPO意見書 東京MXは直ちに謝罪を
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-632204.html

☆神戸新聞社説(12月17日)
BPO意見書/放送への危機感がにじむ
https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201702/0009921688.shtml

結局のところ、MXテレビは、大スポンサーであるDHCにものを言えない立場にあった。そのために、DHCが制作したデマとヘイトの低劣番組を一切の検証なしに垂れ流して、メディアとしての信用を失墜したのだ。もしかしたら、他のメディアにも、同様の事情があるのかも知れない。だから、DHC批判につながる、「ニュース女子」批判の見解を堂々と述べることができないのではないか。そんな心配が杞憂であることを望む。

私自身が被告になったDHCスラップ訴訟を通じて見えてきているものは、DHCとその代表者吉田嘉明が、カネの力による民事訴訟の濫発によって、自分への批判を封殺しようとしていることだ。

「ニュース女子問題」と「DHCスラップ訴訟」。カネの力による言論への介入という点では、同根なのだ。デマやヘイトを駆逐しようという良識が、あるいはこの上ない貴重な表現の自由が、カネの横暴に屈するようなことがあってはならない。
(2017年12月19日)

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Published in 火曜日, 12月 19th, 2017, at 22:40, and filed under DHCスラップ訴訟.

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