澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

真正保守・村上正邦が教える「元号存続の意味」。

昨日(12月29日)の毎日新聞朝刊「オピニオン」面の「論点」欄が、「現代日本と元号」の大型インタビュー記事を掲載している。インタビューに応じているのは、島薗進、鈴木洋仁、そして村上正邦の3名。

企画の趣旨を述べるリードの冒頭に、「天皇陛下が2019(平成31)年4月30日に退位され、1989年1月8日に始まった『平成』が1万1070日で幕を閉じる。19年5月1日に皇太子さまが新天皇に即位され、新しい元号がスタートする。」との前置きがある。

おそらくは、年を越えた来年(2018年)には、この手の話題が多く取り上げられるのだろう。もうすぐ天皇が生前退位する。それにともなって元号が変わる。あらためて、問題が突きつけられている。元号とはなんだ。天皇制とはなんだ。天皇代替わりとはなんだ。天皇代替わりに際して保守陣営は、なにを目論んでいるのか。政権は。皇室は。そして、人権や民主主義を大切と思う人々はどう対応すべきなのか。ときあたかも、明治150年でもある。

もっとも、この毎日の企画の意図はよく分からない。焦点が定まらないのだ。だから、3人の論者の議論が噛み合っていない。

インタビューの設問は、「平成はどのような時代として私たちの記憶と歴史に刻まれることになるのか。また、21世紀の現代日本に元号という制度が持つ意味は何か」というもの。まったく別の問が並列しておかれている。明らかに、前者が主で後者が従で、「現代日本と元号」とのタイトルとは齟齬がある。しかも、各設問自体が相当のバイアスを持ったものになっている。だから、「現代日本と元号」のタイトルを頭に置いて読み始めると戸惑うことになる。読後感が散漫なものにならざるを得ない。「現代日本と元号」という「論点」に焦点をしぼれば、スリリングな「討論」になったのではないか。

しかし、企画の意図を離れて、それぞれの論者の意見の内容は、それぞれに興味深い。

島薗進教授は、含蓄を傾けて文明論の時代相を語っている。
「いまの時代相は冷戦終結後世界が方向を見失ったところから始まっている。多くの国が内向きのアイデンティティーを強め、他者との対立関係を作りながら自己主張する「自国ファースト」の状態にある。しかし、今の世界で人類の穏当な進歩や共存共栄という理念は完全に死んだわけではない。宗教界や学問の世界は人類が養ってきた良識の発展、多様な価値観の尊重、文明の共存を目指している。それはかすかな希望であり、良識派の「抵抗の時代」とも言える。日本も後ろ向きにならず、共生のためのビジョンを発信してほしい。日本の豊かな文化資源と、戦争の失敗を含む多くの経験を、東アジアの多様性を重んじた真の共存共栄に生かすことが求められる…」という趣旨。元号については、「元号による『縛り』が減っていれば、なお良いだろう」という形で触れられているのみ。

「元号による『縛り』」とは、元号使用が事実上強制され、元号の存在が国民意識に権力的に介入する状態を指しているのだろう。「教育現場の『日の丸・君が代』問題は、国家が求める行為を個人に受け入れさせるという方向で、国民を『縛る』ことになった。」と同旨の文脈で語られているのだから。

次が、鈴木洋仁なる若い研究者の論述。
その結論は、「このまま元号は消えてしまうのか。そうは思わない。いくら意味が薄れてきたとはいえ、1300年以上も続いた制度をあえてやめる必要があるのか。今は元号について思い入れの少ない若者たちも、やがて「平成生まれ」という時代感を意識するようになるだろう。西暦年号との併用という面倒さはあるが、国民が長い歴史の中で一定の時代感覚を共有する目印として使ってきた元号の役目は薄らぐことはあっても、なくなることはないと思う。」という薄味のもの。

研究者の論述として、どうにも曖昧で違和感を禁じえない。

明確に「元号論」を語っているのが、かつて「参議院のドン」と言われた「村上正邦・元労相」(毎日が、そのように肩書を付している)である。久しぶりに見る名前だが、しゃべる内容は相変わらずだ。右の端に位置を固定して、少しもぶれるところがない。オブラートに包まない保守派の天皇論や元号論のホンネを語って、貴重な内容となっている。

その全文は、ぜひとも下記のURLでお読みいただきたい。
https://mainichi.jp/articles/20171229/ddm/004/070/007000c

まずは、村上正邦とは何者であるか。毎日は次のように紹介している。
「1932年生まれ。拓殖大卒。80年参院議員初当選。参院自民党議員会長を務め『参院のドン』と呼ばれた。汚職事件で2001年議員辞職。その後、実刑が確定。現在、『日本の司法を正す会』代表幹事」
この紹介で足りないところを、インタビューでの彼の発言自体が補っている。「安倍さんは『保守』を自任しているようだが違う」と言ってのける『真正保守』の立場。

そのインタビュー記事のタイトルは、「『国柄』守る流れ定着を」というおとなしいものだが、内容からみれば「天皇制復活の重要なステップとして」「明治憲法の復元を目指して」などというべきだろう。

彼はまず、元号法制定以前には、その存続が危機にあったことから話を始める。
「私が元号法制化を求める運動を始めたころは社会党や共産党だけではなく、労働運動も激しく、法制化の動きへの反対論も強かった。昭和49(1974)年、私は参院選に初出馬(落選)したが、日本の国柄を守るためには元号を明確に位置づけなくてはならないと考えていた。旧皇室典範の元号に関する条項は敗戦で占領軍によって削除され、法的根拠を失っていた。元号存続の危機だった。」

元号の存続は「日本の国柄を守る」ことと同義だというわけだ。言うまでもなく、「日本の国柄」とは、天皇制のこと。天皇を中心に据えた日本こそが本来の日本で、天皇を欠いた日本はもはや日本でない、という如くなのだ。その大切な元号が、存続の危機にあったという。元号は、その使用を強制しなければ、消えてゆく脆弱な存在なのだ。

「その年、宗教界を中心に『日本を守る会』(右派団体『日本会議』の源流)が結成され、事務方を引き受けた。ところが自民党の議員の中からも『西暦でいいじゃないか』という声が上がるほど、関心が集まらない。元号について『ガンゴウって何だ?』と真顔で問い返されたこともある。」

自民党の議員でさえも、「西暦でいいじゃないか」だったのだ。元号が消えようと、なくなろうとも、誰も困らない。既に、皇紀が途絶え干支の表記もなくなっているが、なんの不便もない。現実に困る者はいないにもかかわらず、保守派には放置しがたい事態だった。

「そこで、同志と一緒に考えたのは、徹底して左翼の運動手法を踏襲することだった。地方から火を付けて中央を動かす。つまり地方議会で法制化を求める決議を上げさせた。草の根運動が昭和54年の元号法で実った。政界では田中角栄元首相の力添えが大きかった。ロッキード事件の裁判で大変だったのに『日本の国は天皇中心だ』と言って取り組んでくれた。」

結局元号をなくしてはならないというのは、天皇制護持論者だけなのだ。そのことを彼はあけすけに語る。

「元号法の延長線上にあるのが天皇陛下ご即位10年の年、平成11(99)年に成立した国旗・国歌法だ。自民党参院議員会長になるころだったが、政治家として力を尽くした。公明党の協力が得られるかどうかが岐路だった。…同党の冬柴鉄三さんら幹部と赤坂の料理店で腹を割って話すと、日の丸にも君が代にも反対ではない。それで一気に政治日程に上げた。最大の功労者は公明党だ。」
いつものとおりのこと。公明党は、このようにして自民党に恩を売ってきたのだ。

「元号法と国旗・国歌法は、建国記念の日の制定(66年)から始まった明治憲法復元に向けての大きな流れだ。敗戦という国家非常事態での占領憲法を認めるのではなく、明治憲法に立ち返る。その上で憲法を論ずることが日本人の手に憲法を取り戻すことにつながる。」「安倍(晋三首相)さんが言っているような小手先の改正ではだめなんだ。私たちが心血を注いで運動に取り組んだのも、天皇を中心に据えた憲法のためだ。元号法を作った時に「譲位」は想定していない。一世一元制が原則だ。」「靖国神社への参拝も実現させてくださると信じている。英霊は『東条英機万歳』でなく、『天皇陛下万歳』と言って亡くなった。何のための靖国か。」

「建国記念の日」(66年)⇒「元号法」(79年)⇒「国旗・国歌法」(99年)。そして次は、「天皇の靖国参拝実現」が目標だという。そのすべてが、天皇を中心に据えた明治憲法復活のためであり、天皇中心の国柄を顕現するためのものだという。

ひるがえって、日本国憲法を護り活かすとは、何よりもこのような戦前回帰を許さないことだ。自立した主権者国民が天皇の権威にひれ伏してはならない。「建国記念の日」「元号」「国旗・国歌」の強制に反対し、「天皇の靖国参拝」を許さぬことだとよく分かる。

真正保守であり、かつての「参議院のドン」だった村上は、私たちの具体的な運動課題を、正確に教えてくれているのだ。
(2017年12月30日)

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Published in 土曜日, 12月 30th, 2017, at 22:58, and filed under 天皇制.

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