澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

日弁連会長選挙 保守派も革新派も「弁護士自治を堅持」

今、弁護士会は春の恒例行事、役員選挙の真っ盛りである。梅の花が咲く初春の風物詩であり、子どもたちの受験シーズンとも重なる。東京弁護士会では、この時期、全館の会議室が選挙用に押さえられ、他の集会予定がとばっちりを受けることとなる。

今年(2018年)の弁護士会役員選挙は、日弁連・各単位会とも2月9日(金)が投開票。今年の選挙は、まずまず穏やかで波乱はなさそう。私が当ブログで繰りかえし指摘してきた「理念なき弁護士」たちの跳梁は見られない。

以下の記事をご覧いただきたい。
「『弁護士の役割や使命への自覚はなく、もっぱら経営の安定だけが関心事と見える』 平成27、28年度の東京弁護士会副会長選挙で「弁護士自治」の“廃止”を打ち出したロースクール世代の赤瀬康明(39)やその支持者に対し、同じ東弁所属の澤藤統一郎(74)が当時、ブログでこう強く批判した背景には、弁護士自治に対するベテラン世代の強い思い入れがある。

 弁護士自治は、弁護士が悲願の末に勝ち取った生命線だ。戦後の昭和24年に施行された弁護士法で、弁護士会は登録事務と監督・懲戒権を独占した。世界でもまれに見る、監督官庁を持たない自治体制は、戦前の教訓から生まれた。

戦前の旧弁護士法では、登録を法務府が管轄。監督・懲戒権は司法省が持ち、弁護士会は任意加入団体にすぎなかった。こうした状況下で、共産党員が検挙された昭和3年の「3・15事件」などで弁護人を務めた「日本労農弁護士団」が8年、治安維持法違反で一斉に逮捕され、弁護士資格を剥奪(はくだつ)されるなど、弁護士が言論統制の対象となるケースが相次いだ。

 弁護士は、使命とする「人権擁護と社会正義」を実現するためには、いかなる権力にも屈することなく、自由独立でなければならない。そのためには監督・懲戒に国家が介入できない仕組みが必要 -。その積年の願いを実現したのが現在の弁護士自治だ。強制加入制も、弁護士自治を担保するために必要不可欠な仕組みとして導入された。

それだけに、弁護士会の懲戒や会務活動は裁判所や行政の関与で代替可能-という赤瀬の「任意加入制導入」の主張は波紋を広げた。澤藤も『弁護士会自体が人材をきちんと育てていない。非常に危機感を持っている。今は(赤瀬は)泡沫(候補)だが、これから先は分からない』と若手の「弁護士会離れ」の予兆を感じたのだ。」

実はこれ、本年1月23日産経新聞の記事。【弁護士会 地殻変動(2)】というシリーズに、「『政治的な活動にうつつを抜かしている暇ない』ロースクール世代、ベテランと溝」というタイトルでの記事の冒頭部分。産経の記者に取材を受けて語ったことが、要領よくまとめられている。この部分に関しては、いつも私が非難してやまない産経とは思えぬ書きっぷり。これなら、「日の丸・君が代」にせよ、靖国にせよ、改憲問題にせよ、産経の取材を断る理由はなさそうだ。

「ロースクール世代」対「ベテラン世代」の意識の対立という構図が正確かどうかはともかく、弁護士自治を不要と広言する「理念なき弁護士」群の出現は、人権派にとっては恐るべき脅威であり、右派勢力にとっては輝く希望の灯だろう。

在野に徹することを使命とし、権力の介入を許してはならないと明確に自覚すべき分野として、《メディア》と《大学》と《在野法曹》とがある。それぞれに、理念の揺らぎが感じられるものの、まだまだ在野派健在なのだ。

今年(2018年)の会長選挙ではまともな議論が行われている。
日弁連会長選挙候補者は、いわゆる「主流派」から菊地裕太郎、「反主流派」からは武内更一。両候補の選挙公報の対比は興味深い。菊地の略歴はすべて元号表示、武内は西暦で統一されている。常識的には、保守対革新の対立と言ってよかろう。

菊地の訴えの項目は下記のとおり至極穏当なもの。
1.憲法の根本規範を護る
2.公正・公平な人権尊重の社会を目指して
3.弁護士業務基盤を確かなものにする
4.貸与制世代への対応
5.災害対策・被災者支援
6.刑事・民事の司法改革の推進
7.法曹養成制度について
8.弁護士自治を堅持し、司法の力を信じて一体感のある日弁連を

これに対する武内陣営のスローガンの大綱は以下のとおり。こちらは、穏やかならざる雰囲気を感じさせる。
【Ⅰ】9条改憲反対・とめよう戦争 共謀罪廃止
【Ⅱ】弁護士自治は権力・社会的強者と闘うための民衆の盾
【Ⅲ】弁護士貧困化攻撃をはね返そう

両陣営の主張のトーンはずいぶんちがうが、こと弁護士自治に関しては両陣営とも、「堅持」を積極的に訴えている。保守派の菊地もこう言っている。
「弁護士自治は、先達の熱い想いを込めて勝ち得た我われ弁護士にとってのアイデンティティを象徴する理念です。権力に怯まず恐れず対峙する弁護士・弁護士会の活動を支える制度的保障であります。故に、政治リスクの高まりは、弁護士自治リスクと表裏の関係にあり、日弁連は今、重大な局面にあります。弁護士自治を安定的・持続的な制度保障として確たるものにしていくには、不断の努力が欠かせません。」

もちろん、武内陣営も負けずにこう言う。
「弁護士自治は、民衆が権力や社会的強者から自らを守る盾の役割を弁護士に求めて弁護士法に規定させたものです。権力との対決を避けることは人びとの離反を招き、自治の基盤を失わせます。」

弁護士自治という制度の堅持とともに、この理念を承継する具体策が競われている。
これなら、今年の春はうららに過ごせそう。
(2018年1月31日)

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