澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

メディアは、スラップに屈することなく、国民の知る権利に奉仕せよ。

(2022年10月28日)
 昨日、統一教会による2度目のスラップ。批判の言論を封じ込めようという2件の名誉毀損損害賠償請求事件の提訴である。

 もっとも、スラップの定義は明確には定まっていない。ここでは、「自分に対する批判の言論を封殺する目的での民事訴訟の提起」という意味で使いたい。私は、まだ各訴状に目を通していない。被告側抗弁の立証手段についても知る機会を得ていない。だから軽々に判決の帰趨について断定的な意見を述べることはできない。それでも、各提訴は、侵害された自らの権利の救済よりは、前回3件の提訴と一体となって、統一教会への批判の言論を萎縮させることを主たる目的とした提訴であると推認させるに十分である。

 前回のスラップは先月29日、3件での合計請求額は6600万円だった。これについては、提訴翌日の下記当ブログを参照いただきたい。

「統一教会は組織防衛のためのスラップに踏み切った」
https://article9.jp/wordpress/?p=20057 (2022年9月30日)

 今回提訴2件の各請求額は、2200万円(対有田芳生事件)と1100万円(対紀藤正樹事件)。これで、全5件の合計額は9900万円となった。

 それぞれの時代にスラップの著名常習者が現れる。かつてはサラ金業界のトップ・武富士だった。武富士ベッタリの弁護士が訴訟代理人となって典型的なスラップを次々と提訴して、みっともない敗訴を重ねた。このときスラップの標的にされたのは、正義感に溢れた記者であり、消費者問題をライフワークとする弁護士であり、「週刊金曜日」であり「同時代社」であった。武富士は、懸命に批判をかわそうとしてスラップという戦術をとって、却って墓穴を掘った。まだ、スラップという用語が日本に定着していなかったころのことである。

 武富士に次いで、スラップ企業として著名になったのがDHCである。DHC・吉田嘉明もスラップの常習者となった。2014年4月発覚の「渡辺喜美への8億円政治資金貸付事件」批判者に対するスラップだけで10件。その合計請求金額は、なんと7億8000万円である。DHCスラップに較べれば、統一教会スラップの規模はまだ小さいと言えなくもない。
 なお、私もDHCスラップの被告とされた一人である。私に対する請求額は6000万円だった。

 武富士も、DHC・吉田嘉明も、そして統一教会も、社会的な指弾を受ける重大な問題を引き起こした。厳しい批判と非難を受ける立場となって、その防衛ないしは反撃の手段としてスラップを濫発したのだ。

 昨日統一教会が、いずれも東京地裁提訴した2件の訴えの内容は、報道の限りで以下のとおりである。
(1) 被告:有田芳生・日本テレビ
  請求金額:2200万円
  名誉毀損文言:「霊感商法をやってきた反社会的集団というのは警察庁も認めている」との番組での発言
  発言の機会:8月19日放送の番組「スッキリ」
(2) 被告:紀藤正樹・TBS
  請求金額:1100万円
  名誉毀損文言:「親が子どもを脱会させたいために暴力団に頼んだという事件もあった。暴力団は親からもらったお金を統一教会に渡している」との発言
  発言の機会:9月9日の番組「生島ヒロシのおはよう一直線」

この提訴について、有田は「取材に基づき反社会的であることは確信している」「教団によるスラップ訴訟には断固として闘っていく」、紀藤は「言論を萎縮させることを狙った訴訟で、許しがたい。今後訴訟の中で真実を明らかにしていく」とのコメントを出している。日本テレビ・TBSは、いずれも「訴状を確認した上で今後の対応を検討する」としている。

 今後訴訟は、それぞれの名誉毀損文言の主要な部分での真実性、あるいは発言者が真実と信じたことの相当性の有無をめぐって進行することになる。

なお、こんな報道が目にはいった。 
 「訴訟については「いくらでも証拠は出せるので負けるわけない」と自信を持つ有田氏だが、『萎縮効果はあります。私や紀藤氏を出演させると訴えられるとなると、テレビは萎縮します』と指摘した」「そういう効果を狙っているのだろう。旧統一教会の顧問弁護士・福本修也氏は『第3弾、第4弾も検討中だ』と意気込んでいる。」(東スポWeb)

 これが、スラップの萎縮効果である。被告となったメディアだけでなく、その周辺メディアにも訴訟リスクを意識させて、言論の自由の自主規制を余儀なくさせる。報道の自由の旗を高く掲げるジャーナリズムには、スラップに萎縮することなく国民の知る権利を擁護される姿勢を堅持されるよう期待したい。

小坪慎也行橋市議、ヘイトに重ねたスラップで二審判決も敗訴。

(2022年10月9日)
 昨日の赤旗に、「ヘイト告発二審も勝訴」「福岡高裁 共産市議『大きな意味』」という記事。この訴訟もスラップ。しかも、ヘイトが絡んだスラップ。スラップを棄却した裁判例に、また一つが付け加えられた。

 このスラップ訴訟、原告は小坪慎也というヘイト発言の常習者、福岡県行橋市の市議である。注目すべきは、その代理人が江頭節子。最近、この種ヘイト事件を専らにする弁護士。被告は行橋市と日本共産党の徳永克子市議の2者。請求は各被告それぞれに220万円の支払と謝罪広告掲載の要求。2019年12月の提訴で、一審・福岡地裁小倉支部判決が請求を棄却し、一昨日(10月7日)福岡高裁が控訴を棄却する判決を言い渡した。

 赤旗の報道は、「ヘイトスピーチを批判する市議会決議と議会報告で名誉を損なわれたとして福岡県行橋市議会の小坪慎也氏が日本共産党の徳永克子氏に220万円の損害賠償を求めている裁判の控訴審判決が7日福岡高裁でありました。梅本圭一郎裁判長は徳永市議が勝訴した一審判決を支持し、控訴を棄却しました」として、被告行橋市については何も言っていない。マッ、それでもいいか。間違いというわけではないし、読者の関心も徳永市議の勝敗にのみにある。

 赤旗の短い記事が、要領よく事実経過を整理している。

 「小坪市議は2016年の熊本地震の際インターネット記事で「『朝鮮人が井戸に毒を入れた』というデマが飛び交うことは仕方がない」などと発言。市には団体や個人からの多数の抗議が寄せられたほか、爆破予告の脅迫事件が起きました。市議会は、小坪市議に謝罪などを求める決議を可決し、徳永市議はその全文をインターネットの議会報告に掲載したものです。」

 そして、控訴審判決の内容を、これも短く、こう解説している。

 「二審判決は、徳永市議の議会報告は、『専ら公益を図るもの』で、その意見表明には『信じるにつき相当の理由がある』と改めて認定。小坪市議の反論を全て退けました。」

 名誉毀損言論の真実性を証明できれば違法性が阻却される。真実性を証明できなくても、相当性(真実と信じるについての相当の理由)があれば、過失を欠くものとして責任が阻却されることになる。どちらにせよ、請求は棄却となる。

 このスラップを起こした小坪慎也(行橋市議)は、レイシストとして著名な人物である。2016年4月の熊本地震直後に、産経の右翼オピニオンサイト「iRONNA」に、「『朝鮮人が井戸に毒』大騒ぎするネトウヨとブサヨどもに言いたい!」という表題の記事を掲載した。表題が品位を欠くだけでなく、記事もひどい。これによって、彼はヘイトスピーカーとして一躍有名人となったが、良識ある市民からは顰蹙を買い、批判の的となった。のみならず、行橋市に対する爆破予告の脅迫事件まで起こしたのだ。

 その記事の中で、彼は大要こう述べている。「『朝鮮人が井戸に毒を入れた』というデマが飛び交うことに対しては仕方がないという立場である。」「私は、災害時において外の人を恐れるのは仕方ないし、当然のことだと受け入れている。極限状況になればそうなることが自然だと考えるためだ。疑われるのは『外の人』である。もっとも身近な外の人が朝鮮人というだけだろう」。「治安に不安がある場合は、自警団も組むべきだろう。」「しかし、疑心暗鬼から罪なき者を処断する・リンチしてしまうリスクも存在する。そうはなって欲しくないが、災害発生時の極限状況ゆえ、どう転ぶかはわからない。」

 恐るべき人物の恐るべきヘイトスピーチ。こんなものを掲載した産経にも、大きな問題ありと言わねばならない。

 同年9月12日、行橋市議会は、「小坪慎也議員に対する決議」を採択した。評決は16対8、内容は以下のとおりである。

 「9月8日に、行橋市役所に脅迫の電話があった。この事により、市民に対し、また、市当局や議会においても多大な迷惑を及ぼした。この「脅迫事件」は決して許されるべきものではない。
 これは、小坪慎也議員が、平成28年4月に熊本地震が発生した際、差別的にとらえられるSNSでの意見発表を行った事を発端としている。
 公人である市議会議員は、住民を代表する立場にあり、議会外の活動であっても良識ある言動が求められるのは当然である。
 市民・国民に迷惑を及ぼすような意見の表明は、行橋市議会の信用が傷つけられたものといわざるを得ない。
 行橋市議会は、小坪慎也議員が品位を汚すことの無いよう、公人としての立場をわきまえる事を求めると共に、謝罪及び必要な行動を自ら行うことを求めるものである。
 以上、決議する。」

 小坪は、この決議に反発した。「本件爆破予告事件の原因は、原告の「SNSでの意見表明」ではなかった。にもかかわらず、本件決議案等は、本件爆破予告事件が起こるや否や、犯人が逮捕されもしないうちから、『小坪慎也議員が、平成28年4月に熊本地震が発生した際、差別的にとらえられるSNSでの意見発表を行った事を発端としている。』と事実を適示し、それを前提に、原告が市民・国民に迷惑を及ぼし行橋市議会の信用を傷つけたと決め付け、良識が無い、品位を汚すなどと非難したものである。」との言い分である。

 この決議の事実摘示が間違っている。徳永市議は、この間違った決議を提案し、成立させ、事後にはこれをインターネットサイトに掲載し、拡散もした、ことを違法として提訴した。2019年12月のこと。2022年3月17日、福岡地裁小倉支部は行橋市議ヘイト・スピーチ事件裁判について原告の請求を棄却する判決を言い渡している。「本件爆破予告事件の原因が、原告の「SNSでの意見表明」ではなかったにせよ、それが真実であると信じるについての相当な理由が認められるということである。

 小坪は、もう一度真摯に市議会決議を読み直さなくてはならない。「公人である市議会議員は、住民を代表する立場にあり、議会外の活動であっても良識ある言動が求められるのは当然である」。にもかかわらず小坪は、ヘイトに重ねて、スラップにまで及んで良識を放擲したのである。「品位を汚すことの無いよう、公人としての立場をわきまえるべきこと」が求められている。

自由法曹団の皆様に、自著「DHCスラップ訴訟」のご紹介ー 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第207弾

(2022年10月1日)

以下は、自由法曹団通信への寄稿である。自著の紹介記事。

 「紺屋の白袴」という。「医者の不養生」とも。他人のことならテキパキできても、いざ自分のこととなると調子が狂う。私の場合は、ある日突然、「弁護士が民事訴訟の被告になった」。勝手が違って、ウロウロするばかり。

 医者が患者になると、見慣れた病院の風景が変わり、見えないものが見えてくるという。私も、スラップ訴訟の被告とされ、さらにスラップを違法とする「反撃訴訟」の原告にもなって被告業・原告業を体験し、これまで見えなかったものが、少しは見えてきたものがある。

 その6年9か月の顛末を、読み物として上梓した。表題は、『DHCスラップ訴訟』。「スラップされた弁護士の反撃そして全面勝利」という長い副題がついている。版元は日本評論社。
 出版社は≪内容情報≫として、「批判封じと威圧のためにDHCから名誉毀損で訴えられた弁護士が表現の自由のために闘い、完全勝訴するまでの経緯を克明に語る」とキャッチコピーを書いている。
 この散文的な、長い副題とキャッチコピーのとおりなのだが、もう少し、ご説明して、この本をお読みいただきたいと思う。

 ご記憶だろうか。2014年の春に、DHCの吉田嘉明が、当時「みんなの党」の党首だった渡辺喜美に、選挙資金8億円の裏金を提供するという事実が発覚した。大金持ちと政治家の巨額な裏金での結びつき。

 私は3本のブログでこれを批判した。みっともない政治家渡辺喜美よりは、スポンサーである吉田嘉明の「カネで政治を動かそうという姿勢」に批判の重点を置いた。サプリメント販売の最大手であったDHCの経営者として、「消費者利益に反する規制緩和を求める」姿勢も強く批判した。

 そんなブログを書いたことも忘れた5月のある日、東京地裁から特別送達で訴状が届いた。原告は、DHC・吉田嘉明の両名。私の3本のブログ記事によって名誉を毀損されたとして、2000万円の損害賠償を請求するという。
 私は、黙っていてはならないと、この訴訟を典型的なスラップだと批判のブログを連載し始めたら、請求が拡張されて6000万円の訴訟となった。

 この「DHCスラップ訴訟」の応訴のために、親しい友人弁護士にお願いして弁護団を結成していただいた。このとき、あらためて身に沁みた。仲間と言える弁護士をもっていることのありがたさを。

 そして、このときに考えた。弁護士が被告にされたスラップなのだから、スラップに対する闘いの典型例を作らねばならない。けっして《スラップに成功体験をさせてはならない》と。そして今は、成功体験をさせてはならないでは足りない。《DHC・吉田嘉明には手痛い失敗体験をさせなければならない》と思うようになっている。

 訴訟面ではほぼその思いを達し得たと思う。私が被告とされた「DHCスラップ訴訟」では最高裁まで争って請求棄却判決が確定し、その後攻守ところを変えた「反撃訴訟」では、DHC・吉田嘉明のスラップを違法とする判決を獲得し、これも最高裁まで争って165万円の《慰謝料+弁護費用》を勝ち取った。

 しかし、まだ十分ではない。DHC・吉田嘉明に《徹底した失敗体験》をさせるとは、骨身に沁みて、「こんなスラップ訴訟をやるんじゃなかった」「もうこりごりだ。今後2度とスラップはするもんじゃない」と思わせなければならない。

 そのために、訴訟の経過と判決の到達点を多くの人に知ってもらいたいと思う。DHC・吉田嘉明とその代理人弁護士(二弁・今村憲)がどんなみっともない訴訟をしたのか、裁判所がどう判断したのか。

 この本を普及することが、「社会の公器」であるべき民事訴訟を、「強者の凶器」たるスラップに悪用させてはならない(弁護団長・光前幸一さんの言)ことにつながるのだと思う。

 幸い、市民からは「読み易い」、弁護士からは「実務に役立つ」、と反響を得ている。とりわけ、スラップを違法とする訴訟実務の到達点は分かり易く書けていると思う。
 是非、ご一読ください。よろしくお願いします。

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統一教会は組織防衛のためのスラップに踏み切った

(2022年9月30日)
 昨日、統一教会(現在は「世界平和統一家庭連合」と称している)が、3件の名誉毀損訴訟を提起した。この件を、朝日はこう見出しを付けて報じている。「旧統一教会がテレビ局と出演の3弁護士を提訴 『名誉毀損』と主張」。

 「テレビ番組での弁護士らの発言で名誉を傷つけられたとして、『世界平和統一家庭連合(旧統一教会)』が29日、読売テレビ『情報ライブ ミヤネ屋』に出演した紀藤正樹弁護士と本村健太郎弁護士、TBS『ひるおび』に出演した八代英輝弁護士と、各テレビ局に、計6600万円の損害賠償や謝罪放送などを求めて東京地裁に提訴した」

 本日、この3通の訴状に目を通す機会を得た。読後感は、「これは統一教会の組織防衛のためのスラップだ」というもの。自らを批判する言論を牽制し萎縮せしめる目的で提訴される民事訴訟をスラップという。状況から見て、この3事件いずれも、統一教会批判の言論封じを目的とした、典型的なスラップ訴訟と言うほかはない。統一教会は、民事提訴を威嚇手段として言論の自由を蹂躙しているのだ。

 以下に訴状3通の内容を紹介しておきたい。

※ 統一教会の名誉毀損提訴事件は以下の3件。
A事件 被告 紀藤正樹・讀賣テレビ
B事件 被告 本村健太郎・讀賣テレビ
C事件 被告 八代英輝・TBSテレビ

※ いずれの訴状も2022年9月29日付。同日提訴の直後にメディアに配布したものと思われる。係属部不明。併合の上申あるか否かも不明。書面審査も経ていない。もちろん、被告には未送達の段階。

※ 金銭給付請求額は、3事件とも慰謝料2000万円と弁護士費用200万円。
 ほかに、いずれの事件でも、謝罪放送(1回)請求と、各被告弁護士のホームページへの謝罪広告掲載請求がある。

※ 謝罪放送(1回)請求と、ホームページへの謝罪広告掲載請求の訴額の合計が、18万円(A・B事件)、78万円(C事件)となっている。
 各ホームページへの謝罪広告掲載請求の訴額はゼロではあり得ない。訴額の最低単位10万円(貼用印紙額1000円)とすべきだろう。謝罪放送(1回)請求の訴額は、広告放送費用相当額となる。これを合計して、18万円・78万円は、常識的に過小ではないか。この点の調整と疎明の補充で、送達まで一定の日時を要すると思われる。

※いずれの訴訟とも、この上なく、単純な名誉毀損訴訟である。名誉毀損言論と特定された被告の言論は、「意見ないし論評」ではなく、典型的な「事実摘示」型請求原因である。もつとも、C事件だけは「論評型」かも知れないが、これも論評の前提とした事実についての真実性の立証が争点となる。

※ 訴状・請求原因は、名誉毀損言論の特定だけをしている。訴訟の構造としては、被告の抗弁→原告の認否→被告の立証、と進行することになる。
 
※ 被告の抗弁は、公共性・公益性・真実性(ないしは真実と信じたことについての相当性)という違法性阻却事由(相当性だけは、故意・過失の欠如)であるが、公共性(公共の利害に関する事項についての言論であること)・公益性(その目的がもっぱら公益をはかる言論であること)に問題はなく、残るは「真実性」(あるいは「相当性」)だけが争われることになる。

※ 当然に予想される抗弁に対して、先行しての積極否認についての事情が、請求原因に書き込まれていれば、迫力ある訴状になったのだが、それがないから、何ともつまらない、論点指摘だけの訴状となった。

※ なお、A事件・請求原因第2項の末尾に「上記発言の指摘事実は、事実ではない」、B事件・請求原因第2項の末尾に「上記発言は事実に反する」、C事件・請求原因第2項の末尾に「上記発言は事実に反する」とある。
 これは真実性の抗弁に対する先行否認だが、起案者は、「(摘示の)事実」と「(その摘示事実の)真実(性)」についての区別がついていない。だから「(上記発言の指摘)事実は、事実ではない」と、トートロジー的なおかしな表現となっている。本来は、「上記発言の指摘事実は、真実ではない」と記載しなければならないところ。B事件、C事件とも同様である。

※A事件 (被告 紀藤正樹・讀賣テレビ)
・名誉毀損表現がやや長文だが、「信者に対して売春させたっていう事件まである」「お金を集めるためにはなんでもするっていう発想」の部分だけが、名誉毀損の事実摘示である。
・この名誉毀損の事実摘示は、原告(家庭連合)についてのものではない。むしろ、原告ではない分派の少数派が「お金がないものだから(信者に対して売春させた)」と明確に語られている。
 この点で、裁判所が「原告の名誉を毀損する事実摘示ではない」として、棄却することが高い確率で考えられる。この場合は、その余の論点に判断は不要。なんとも愛想のない判決となる。
・問題は、判例の用語法での『一般の読者(この場合は視聴者)の普通の注意と読み方』である。原告は、「一般の視聴者の普通の注意と聞き方」を基準とすれば、「原告(家庭連合)が売春までさせたものと印象をもつだろう」と言う。当然に、被告はあり得ないという。ここは一つの論点である。
・前項の論点を被告がクリヤーできない場合にはじめて、被告の抗弁の立証の問題が出てくる。摘示された事実が、主要な範囲で真実であることが立証されれば被告の言論は違法性のないものとされる。真実性の立証に至らずとも、発言者に当該摘示事実を真実と信じたことに相当な理由が認められれば、故意も過失も欠く結果、原告の不法行為請求は棄却されることになる。

※B事件 被告 本村健太郎・讀賣テレビ
・名誉毀損表現は以下のとおり。
 「統一教会というのは、…布教活動自体が違法であるということがはっきりと裁判所で認定されています」「札幌地裁の判決が統一教会の布教活動の違法性を正面から認定した」「司法の判断として統一教会の活動というのは、布教活動自体が違法であると既に認定済みです」「統一教会というのは、一応まだ宗教法人ではあるものの既に裁判所判断として認定が出ている違法な組織である」
・これに対する、真実性の抗弁の立証は判決文の提出だけ。

※C事件 被告 八代英輝・TBSテレビ
・名誉毀損の表現は「この教団がやっている外形的な犯罪行為等…に着目している」だけ。
・原告は、この表現を「事実の摘示」とする。しかし、被告は、具体的な事実摘示をしたのではなく、原告のこれまでの行為を「外形的な犯罪行為等」と論評したと争うことになろう。論評であれば、論評が前提とした事実について、被告が真実性(あるいは相当性)の立証を求められることになる。
・いくつもの原告信者の刑事事件がある。原告は、これは全て信者が独自に罪を犯したもので、組織性はないというのだろうが、問題はそこにない。諸刑事事件事例から、「この教団がやっている外形的な犯罪行為等」との評価が常識的な論理から逸脱していなければ、当該言論を違法とすることはできない。原告の言い分は客観的に無理筋の主張となるだろう。

 スラップは、民事提訴という手段で言論の自由を蹂躙する不当あるいは違法なものである。被告らにエールを送りたい。なお、スラップに関しては、拙著を参照していただきたい。

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猪瀬直樹の対朝日提訴に勝ち目はない。

(2022年9月8日)
 猪瀬直樹が、朝日新聞社と三浦まり(上智大学教授)両名を被告に1100万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起した。一昨日(9月6日)のこと。これがスラップではないかと、話題になっている。

 6月12日、東京・JR吉祥寺駅前で参院選の街頭演説の際、維新の応援弁士であった猪瀬が隣にいた東京選挙区の候補者海老沢由紀=落選=の肩や胸元付近を手で触っている動画が交流サイト(SNS)上に拡散した。この行為をセクハラと報じられたことによって名誉を傷つけられたとするのが、猪瀬の主張。猪瀬は同月17日、自身のツイッターで「軽率な面がありました」と投稿したそうだ。が、どこで気が変わったか、朝日とコメンテーターを訴えたのだ。

 報道では、訴状では《 朝日新聞は6月17日付の電子版記事に、猪瀬の行為について「間違いなくセクハラではないでしょうか」などと批判する三浦のコメントを掲載した》とし、これが名誉毀損と主張されている。

 朝日の電子版を見ると、問題とされたのは『「たとえ本人がよくても…」 演説中に女性触った猪瀬氏、その問題点』と題する記事。その中での三浦コメントの主要部分は次のとおりである。

 「映像では、胸に触れていたように見えました。間違いなくセクハラではないでしょうか。その場では女性本人も拒絶することができない、そういう瞬間だったと思います。
 今回の猪瀬氏は応援弁士の立場。応援してくれる人に対して、この立候補予定者は余計に立場が弱く、抗議しにくい背景があります。
 (立候補予定の女性本人は16日午後、「まったく気にしてませんでした」「胸にあたってもいない」などとツイート)
 たとえ、本人がよくても、見ていた人たち、特に若い女性にとっては、立候補しようとする人はセクハラを我慢しないといけないという誤ったメッセージになってしまいます。」

 私は、このコメントを適切で立派なものと思う。このような言論を妨害してはならない。到底、違法を追及されるような内容ではない。しかし、猪瀬の主張は、《海老沢氏本人がセクハラではないとの見解を示していることなどから「三浦氏の発言は事実ではない」というもの》と報じられている。以上を前提に、猪瀬の提訴はスラップであるのか、そうではないのか。

 スラップとは、法律用語ではない。法や訴訟が社会の中でどのような役割を果たしているのかについての言わば法社会学的な概念であって、厳密な定義があるわけではない。だが、正当な言論を萎縮せしめる効果を狙っての民事訴訟というダーティなイメージに満ちた用語ではある。

 法的問題として捉える以前に、憲法感覚やジェンダー感覚、社会的良識が問われねばならない。国政選挙の女性候補者が、同じ政党の男性候補者の応援演説で、女性候補の身体を触るという奇妙な行為に及んだ。その不審で無神経な行為に「間違いなくセクハラではないでしょうか」という批判が果たして不適切だろうか。非難に値するものであろうか。

 三浦コメントも指摘しているとおり、女性の身体を触ったのは、同じ党に所属する著名な年配の男性応援弁士。これにセクハラ抗議の声を上げることの困難さは言わずもがな。とすれば、この女性が猪瀬をかばってなんと言おうとも、猪瀬の行為を批判する言論は、適切なものでこそあれ、到底非難に値するものではない。

 法的にはどうであろうか。猪瀬の行為は動画にも写真にも記録されている。隠しようも誤魔化しようもない。三浦は、その動画を観て、猪瀬の行為を「映像では、胸に触れていたように見えました。間違いなくセクハラではないでしょうか」と述べたのだ。

 常識的には、「映像では、胸に触れていたように見えました」は《事実の摘示》で、「間違いなくセクハラではないでしょうか」は《意見の表明》である。

 名誉毀損訴訟では、《事実の摘示》と《意見ないし論評》の区別が重要になる。
 これは、判例に定着している「公正な論評の法理」にもとづくもので、「名誉毀損記述」となる文章を「事実の摘示」と「論評(ないし意見)」とで構成されているとして、そのどちらかに区分する。裁判所の対応の姿勢は「事実摘示」の名誉毀損言論に対しては厳格であるが、「論評(ないし意見)」の表明には頗る寛容である。論評・意見の表明の自由は幅広く認められ、極端な人格攻撃をともなわない限り、論評(ないし意見)は自由と考えてよい。

 事実の摘示としての「映像では、胸に触れていたように見えました」には、当該記述の「真実性」ないしは、真実であると信じたことの「相当性」が問われる。その立証あれば、違法性が阻却され、あるいは過失がないとして、請求は棄却されることになる。「映像では、胸に触れていたように見えました」の真実性立証が困難なはずはない。ましてや、相当性においておやである。

 そして、「間違いなくセクハラではないでしょうか」は、「映像では、胸に触れていたように見えました」という真実たる事実を前提にした《意見の表明》であって人格攻撃の要素などもない。この部分の有責はあり得ない。

 結局のところ、猪瀬側に勝ち目のない訴訟と評せざるを得ない。そのことを猪瀬自身が知らぬはずもない。ではなぜ、敢えて提訴か。自分に対する批判の言論に対する萎縮効果を狙ってのものと考えるしかない。これがスラップである。

 むしろ本件は、明らかに法的・事実的な根拠を欠いた民事訴訟の提起とされる可能性が高い。猪瀬がその根拠を欠くことを知りながら提訴におよんだか、あるいは、通常人であれば容易にそのことを知り得たのに敢えて提訴におよんだと認定されれば、この民事訴訟提起自体が不法行為となり、猪瀬に損害賠償が命じられかねない。それが判例のとる立場である。

 猪瀬は今、危ない橋を渡り始めたのだ。

『DHCスラップ訴訟』「松の廊下事件」紹介 ー 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第206弾

(2022年8月29日)
 本日は、私の誕生日。夏の終わりの誕生日、誰も気にする人とていない、のだが、「お誕生日おめでとうございます」の便りが届いた。 はて? 私の誕生日を知る人とてないはずだが…。たよりの末尾に、「2014年のお誕生日とは違う、よい誕生日でありますように」という一文。ああ、この方、『DHCスラップ訴訟』を細かく読んでくださったのだ。

 DHC・吉田嘉明から、私に2000万円の名誉毀損損害賠償請求の訴状が届いたのが2014年5月16日。その後当ブログで反撃に出たところ、2000万円の請求が6000万円に跳ね上がった。その、6000万円請求拡張記念日が2014年8月29日、はからずも私への高額な誕生日プレゼントとなった。

 この方の読後感も、「松の廊下事件」に言及している。献本差し上げた方からの暑中見舞い・残暑見舞いの中のこの本の感想が面白い。私と妻のことを知っている人は、口を揃えて「東京高裁松の廊下事件」のくだりが一番面白い、とおっしゃる。それは、そうかも知れない。その一節の抜き書き。

?東京高裁「松の廊下」事件
 反撃訴訟結審の日のこと、思いがけない小事件が出来した。私の妻・政子の筆になる一文を記録しておきたい。

 「閉廷します」と裁判官3名が正面扉の奥に消えると同時に私は素早く、傍聴席後ろにある出入り口の前に立った。
 6年余り、1回も休まずこの裁判傍聴に通っていたので、DHC吉田氏側代理人の今村憲弁護士と会うのは、これが最後の機会と思ったからだ。今村弁護士は、判決の法廷には姿を見せないし、いつも法廷が終わるとさっと消えるように法廷を立ち去ることも知っていた。
 いつもの通りそそくさと帰りを急ぐ今村弁護士の前に立ちはだかって、私は声を上げた。「今村さん、私は澤藤の妻です。今日で法廷が終わりなので、もうお会いすることもないでしようから、一言申し上げたいのです。…本当にこの6年間、大きな迷惑を被りました。こんな裁判の代理人をして、弁護士として恥ずかしくないのですか」と一気に言った。それに対して、今村弁護士は「ハア」と言いながら廊下に出ようとした。相手にしたくはないという感じ。
 続いて私も廊下に出て、しつこいと思いながらも「こんな事件の代理人をして恥ずかしくないんですか」と、再び言い募った。すると今村弁護士は、「仕事ですから」とだけ言いながら、脱兎のごとく駆け出した。私は思わず追いかけた。「あなたは仕事ならなんでもするのですか」「こちらにはたいへんな迷惑ですよ」と大声で言いながら、東京高等裁判所の長い広い廊下を大の男が逃げ、小さな白髪の私が追いかける珍妙なことになってしまった。
 おそらくこの人は、これまでこんな羽目に陥ったことが一度もないんだろう。でも逃げるんだから、きっとやましい思いはあるに違いない。そう思いながら追いかけた。弁護士が逃げるので同伴していたDHCの社員らしき人も必死について行く。
 それを私がわめきながら追いかける。法廷から出てきた私の息子が、これもなにごとならんと追いかけてくる。思い出せば思い出すほどにおかしい。
 今村弁護士も、きっと悪人じゃないんだ。他人には言えない事情があって代理人引き受けたんだろうなとは思ったが、それでもこんなことはやっちゃいけない。もう2度と、こんなみっともない仕事をすることがないようにと心から祈るばかり。
 息子(澤藤大河弁護士)には忘れられない情景になったろう。どんな事情があろうとも自分は、こんな恥ずかしいことはするまいと心に刻んだに違いない。

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DHCスラップ訴訟 」ースラップされた弁護士の反撃そして全面勝利

著者名:澤藤統一郎
出版社名:日本評論社
発行年月:2022年07月30日

≪内容情報≫
批判封じと威圧のためにDHCから名誉毀損で訴えられた弁護士が表現の自由のために闘い、完全勝訴するまでの経緯を克明に語る。

【目次】
はじめに
第1章 ある日私は被告になった
1 えっ? 私が被告?
2 裁判の準備はひと仕事
3 スラップ批判のブログを開始
4 第一回の法廷で
5 えっ? 六〇〇〇万円を支払えだと?
6 「DHCスラップ訴訟」審理の争点
7 関連スラップでみごとな負けっぷりのDHC
8 DHCスラップ訴訟での勝訴判決
9 消化試合となった控訴審
10 勝算なきDHCの上告受理申立て
【第1章解説】
DHCスラップ訴訟の争点と獲得した判決の評価 光前幸一

第2章 そして私は原告になった
1 今度は「反撃」訴訟……なのだが
2 えっ? また私が被告に?
3 「反撃」訴訟が始まった
4 今度も早かった控訴審の審理
5 感動的な控訴審「秋吉判決」のスラップ違法論
【第2章解説】
DHCスラップ「反撃」訴訟の争点と獲得判決の意義 光前幸一

第3章 DHCスラップ訴訟から見えてきたもの
1 スラップの害悪
2 スラップと「政治とカネ」
3 スラップと消費者問題
4 DHCスラップ関連訴訟一〇件の顛末
5 積み残した課題
6 スラップをなくすために
【第3章解説】
スラップ訴訟の現状と今後 光前幸一

あとがき
資料(主なスラップ事例・参考資料等)

https://nippyo.co.jp/shop/book/8842.html

『DHCスラップ訴訟』紹介 ー 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第205弾

(2022年8月19日)
 「『DHCスラップ訴訟』ースラップされた弁護士の反撃そして全面勝利」の発刊以来半月余。私は、この書を多くの人に読んでいただきたいと思っている。

 この本の中にも書いたが、スラップを仕掛けて「黙れ」と言った人物を、私はけっして許さない。この決意は、一面私怨であり、一面公憤でもある。私怨は語るまでもない。「おまえの言論は違法だ」「だから6000万円支払え」と提訴されたのだ。とんでもない手間暇を掛けさせられた。しかも、恫喝すれば黙るだろうと見くびられたことの不愉快さ。怨みが消えるはずもない。この私怨の深さがエネルギーの源泉だ。

 もう一つは公憤だ。私の怒りは憲法の怒りでもある。「表現の自由」という美しい、大切な旗を汚されたことへの憤り。カネを持て余している輩が、カネに擦り寄る連中を手駒にして仕掛けてきた、「DHCスラップ訴訟」。この憲法的価値への挑戦には徹底して反撃しないわけにはいかない。幸い、この公憤の側面に多くの仲間が共感してくれた。

 弁護士が被告にされたスラップである。スラップに対する闘いの典型を作らねばならない。最初は、《スラップに成功体験をさせてはならない》と思った。そして今は、《DHC・吉田嘉明には典型的な失敗体験をさせなければならない》と思うようになっている。

 私は、スラップを仕掛けられて跳ね返した。DHC・吉田嘉明の私に対する6000万円請求訴訟は一審判決で全部棄却され、控訴審で控訴棄却となり、最高裁はDHC・吉田嘉明の上告受理申立を不受理とした。しかし、それでは足りない。

 その後、攻守ところを変えて、今度は私が原告となって、DHC・吉田嘉明を被告とする損害賠償請求訴訟を提起した。これも最高裁までの争いとなったが、165万円の認容判決が確定した。少なくとも、DHC・吉田嘉明のスラップを違法とする判決を獲得し、カネを払わせた。しかし、それでもなお、十分ではない。

 DHC・吉田嘉明に《徹底した失敗体験》をさせるとは、骨身に沁みて、「こんなスラップ訴訟をやるんじゃなかった」「もうこりごりだ。今後2度とスラップはするもんじゃない」と思わせなければならない。そのためには、裁判の経過を多くの人に知ってもらわなければならない。DHC・吉田嘉明とその代理人弁護士がどんなみっともない訴訟をしたのか、裁判所がどう判断したのか。そして、そのことの法的な意味はどんなものなのか。それをこの本に盛り込んだ。この本を普及することが、《わが闘争》の現段階である。

 献本差し上げた方からの暑中見舞い・残暑見舞いの中のこの本の感想が面白い。私と妻のことを知っている人は、口を揃えて「東京高裁松の廊下事件」のくだりが一番面白い、とおっしゃる。それは、そうかも知れない。が、私が最もお読みいただきたいのは別のところである。以下は、その一節の抜き書き。


?それでも逃げた吉田嘉明の卑怯

 2019年4月19日の東京地裁415号法廷。この日は、DHCスラップ「反撃」訴訟の証人尋問の日であった。本来なら、この日が訴訟の山場。緊張感みなぎる法廷になったはず、であった。が、いかんせん盛り上がりに欠けた。傍聴席は満席ではあったが、ピリッとしないままに開廷し尋問が進行し閉廷した。
 何しろ、法廷にいなければならないこの日の主役が不在だった。主役で敵役でもある吉田嘉明には、この日の本人尋問採用決定があり、裁判所から正式の呼出状が送達されている。にもかかわらず吉田は出廷を拒否した。逃げたのだ、敵に後ろを見せて。
 古来、ひとかどの武者が戦場で敵に背中を見せるのは武門末代の恥とされた。矜持をもつ者の美学に反するのだ。一ノ谷の戦場では、劣勢の平家方の若武者平敦盛が、坂東武者熊谷直実から「よき大将軍。卑怯にも敵に背を向けるか! 戻れ、戻れ!」と声をかけられて引き返し、一騎打ちとなる。逃げないから絵になる。物語にもなる。そして、逃げなかったからこそ、敦盛が後世にその名を残すことにもなった。「卑怯者、敵に後ろを見せるのか」と言われながら、吉田嘉明の如くに黙ってとっとと逃げてしまうのでは、白けるばかりである。
 私は、吉田嘉明との法廷での対決を期待もし、闘志を燃やしてもきた。自分から仕掛けた訴訟を、「勝訴の見込みのないスラップだ」と言われて、反論を放棄するとは思わなかった。何度も、卑怯者、逃げるのか、と挑発もした。それでも敵前逃亡した吉田嘉明には、拍子抜けでがっかりし、この日の法廷は面白くなかった。しかし、これで勝訴は間違いないとも思った。
 吉田の尋問を申請したのは、反訴原告(澤藤)側である。吉田でなければ、スラップ提訴の動機は語れない。なぜ、ほかならぬ私を選んで提訴したのか。私の批判が耳に痛いから、これ以上ブログを書くなと脅したのではないか。どうして、言論で闘おうとしなかったのか。どうして短絡的にスラップに飛びついたのか。本当に勝訴の見込みあると考えていたのか。勝訴の見込みの有無について、誰から何を聞かされて、どう判断したのか。もしや、顧問弁護士から、勝訴の見込みがあるとでも吹き込まれたというのか。その経緯を法廷で語れ。スラップにいったい幾ら金をかけたのか。なぜ2000万円の提訴をし、なぜ6000万円に増額したのか、なぜそれ以上の増額はしなかったのか。本人でなくては語りようがないではないか。
 裁判所もそう思ったから、本人尋問採用の決定をし、呼び出した。それでも彼は来なかった。これは、「証明妨害」に当たる。出廷拒否というやり方で、自分に不都合な証拠が裁判所に提出されることを妨害したのだ。
 裁判所がはっきりと「証明妨害」の認定をするかどうかはともかく、これなら吉田が裁判に勝つことは絶対にない。だいたい、この吉田の姿勢は真面目に訴訟をし、勝訴のために努力しようというものではない。考えて見れば、スラップの提訴以来、DHC・吉田嘉明の姿勢は一貫していた。提訴や請求の拡張で、被告を恫喝はするのだが、そのあとに勝訴のための地道な努力をすることはなかった。


DHCスラップ訴訟 スラップされた弁護士の反撃そして全面勝利

著者名:澤藤統一郎
出版社名:日本評論社
発行年月:2022年07月30日

≪内容情報≫
批判封じと威圧のためにDHCから名誉毀損で訴えられた弁護士が表現の自由のために闘い、完全勝訴するまでの経緯を克明に語る。

【目次】
はじめに
第1章 ある日私は被告になった
1 えっ? 私が被告?
2 裁判の準備はひと仕事
3 スラップ批判のブログを開始
4 第一回の法廷で
5 えっ? 六〇〇〇万円を支払えだと?
6 「DHCスラップ訴訟」審理の争点
7 関連スラップでみごとな負けっぷりのDHC
8 DHCスラップ訴訟での勝訴判決
9 消化試合となった控訴審
10 勝算なきDHCの上告受理申立て
【第1章解説】
DHCスラップ訴訟の争点と獲得した判決の評価 光前幸一

第2章 そして私は原告になった
1 今度は「反撃」訴訟……なのだが
2 えっ? また私が被告に?
3 「反撃」訴訟が始まった
4 今度も早かった控訴審の審理
5 感動的な控訴審「秋吉判決」のスラップ違法論
【第2章解説】
DHCスラップ「反撃」訴訟の争点と獲得判決の意義 光前幸一

第3章 DHCスラップ訴訟から見えてきたもの
1 スラップの害悪
2 スラップと「政治とカネ」
3 スラップと消費者問題
4 DHCスラップ関連訴訟一〇件の顛末
5 積み残した課題
6 スラップをなくすために
【第3章解説】
スラップ訴訟の現状と今後 光前幸一

あとがき
資料(主なスラップ事例・参考資料等)

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『DHCスラップ訴訟』読後感集 ー 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第204弾

(2022年8月18日)
 「『DHCスラップ訴訟』ースラップされた弁護士の反撃そして全面勝利」の発刊以来2週間余。評判も売れ行きも、まだよく分からない。

 この訴訟遂行にご支援いただいた方々へ献本したところ、その読後の反響がそろそろ届く時期になった。「読み易くて面白い」という評判に気を良くしている。お世辞半分としても、まずまずの手応え。10部まとめての追加注文をいただいた方も、何人かある。まことにありがたいこと。

 メールで届いた感想のいくつかをご紹介させていただく。

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 躍動感のある語り、法廷闘争の位置づけ、光前先生の解説など、実に工夫され充実した闘いを記した著作物で一気に読み終えました。
 酷暑の中にさわやかな風が吹き通っていった感じです。

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 素晴らしい本の贈呈有り難うございます。
 被告として、そして原告として、果敢に闘われたこと、心から敬意を表します。訴訟の代理人ではなく訴訟の当事者として闘われたことに、大変なご苦労をされたことと推察します。
 先生は、そうしたご苦労を微塵もみせず、人権と民主主義の前進をめざして明るくたたかわれたことに、感動すら覚えます。スラップ訴訟、私も先生の心意気に触発され勉強したいと思います。
 ご健康にご留意されながら今後のご活躍を祈念します。

  ===================

 一気に読んでしまいました。スラップ訴訟の、被告に与える苦痛、世の中にもたらす害悪、それによって守ろうとする業者の不法な利益が、とてもよく伝わってきました。
 スラップ訴訟に対しては、単に棄却を求めるだけでなく、何らかの反撃がなければスラップはなくならないであろうこともよく分かりました。不買運動、激しく同意します。
 今後の課題として、スラップ訴訟に対する応訴負担についての賠償責任を十分なものとすることもおっしゃるとおりと思います。その意味で、応訴の弁護士費用50万円を認めたことは、とても重要で意味のある判決と思います。
 ネット社会の中で、この本の存在意義はますます増していくものと思います。この本を頂いたことへのささやかなお礼として、広く宣伝したいと思います。

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 訴訟の詳細を十分に理解してはおりませんでしたので、一読者として読み物として楽しませていただきました。
 初めて原告・被告という当事者の立場になられた澤藤先生のお立場で、訴状が届いてから反撃訴訟での勝訴が確定するまでの経過が、とても迫真的に記録されていて、あっという間に読み進みました。
 澤藤先生の文章は、いつも読むのが楽しみでしたが、今回も澤藤先生の表現豊かな文章を楽しませていただいました。
 裁判を、経済力のある者が、表現行為を封じ込める恫喝として利用するというスラップ訴訟に対し、反撃訴訟で、要件の厳しい濫訴の違法性が確実に認められたことは、とても貴重な成果だと認識を新たにしました。
 この書籍の発刊も、今後のこのようなスラップ訴訟の抑止に寄与するものと思っており、書籍作成に尽力された澤藤先生、弁護団の先生に敬意を表します。

  ===================

拝見して,スラップ恫喝訴訟との闘いの意義,その方法は何か,それについての実例を通して,光前先生の的確な解説を含めて,教科書とも言うべき著作だと思いました。そして,「自由・民主主義・平和,そして反権力・反権威」を「身体の組成」とする先生の信念にもとづく熱い本で,その訴える力も大きなものでした。権利のための闘争がすべての市民にとって倫理的義務であり,ひいては民主国家の法秩序を守る正義の戦いであるという「権利のための闘争」ということを思い出します。
 この本が広く読まれて,スラップとの闘い,表現の自由,権力者に対する批判が萎縮することのないことを期待するところ大です。

  ===================

 不当な圧力に屈せず戦い抜く、というのは言うのは簡単です。
でも実行するのは大変。
 特に攻撃の対象その人は、自分が負けるわけにいかないから本当に大変。
私が被告になったら、闘い切れるかしらと思います。
 6年8カ月の長いあいだ、本当にご苦労さまでした。

  ===================

 帯に書かれた「ある日突然に民事訴訟の被告になった」という一言に、“被告になるのはたいてい「突然」なのでは?”と最初は思いました。しかし読み進めると、ほんとうに異常な突然の脅しがあったとことに驚きました。
私がスラップという用語に接するようになったのは、TPP反対運動を通してだったと思います。
 旧モンサントなどの多国籍企業が、自らのすすめる戦略に従わない農家に対してスラップを乱発するというような話でした。
 海外での話だという印象が強かったのですが、いただいた著作を読み、これほど身近に迫っているものかと驚きました。
 「表現の自由」についての考え方は、相手を傷つけることに慎重な若い世代ほど判断に迷うことが多いようにこの間に感じています。この点、「フランス人権宣言第四条の古典的な定義は、この局面では不正確」という指摘は腑に落ちるものがありました。
 さまざまな事件がおこる中で、私は「吉田・渡辺ワイロ事件」のその後については気にも留めずにすごしていました。結果として、これほど巨額のワイロを当事者が公言しスラップまで乱発したにもかかわらず吉田・渡辺が娑婆で過ごしていることに改めて驚きと怒りを感じました。

  ===================

 DHCという企業の体質については、私の周辺では、この何年かは、ワイロ事件よりもヘイトクライムの点が話題になっていたように思います。
私自身、食の安全や農業・健康という分野に携わる運動にかかわっていますが、DHCや旧モンサント、武富士などが共通してスラップという形をとることに背筋凍る思いがします。
 いずれも消費者運動にかかわる分野にスラップが向けられるというのは、構造的な問題があるのでしょうか。
 社会運動全体としては「対『政治』」が多く、そこに様々な弾圧が加えられるのでしょうが、こと消費者運動は「対『企業』」であることからスラップの標的になりやすいということになるのかという印象を持ちました。
そういう意味で、本書で示された中身が、非常に身近に感じられました。
 貴重な著作をいただきありがとうございました。
 また折に触れて読み返すことになることかと思います。

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DHCスラップ訴訟 スラップされた弁護士の反撃そして全面勝利

著者名:澤藤統一郎
出版社名:日本評論社
発行年月:2022年07月30日

≪内容情報≫
批判封じと威圧のためにDHCから名誉毀損で訴えられた弁護士が表現の自由のために闘い、完全勝訴するまでの経緯を克明に語る。

【目次】
はじめに
第1章 ある日私は被告になった
1 えっ? 私が被告?
2 裁判の準備はひと仕事
3 スラップ批判のブログを開始
4 第一回の法廷で
5 えっ? 六〇〇〇万円を支払えだと?
6 「DHCスラップ訴訟」審理の争点
7 関連スラップでみごとな負けっぷりのDHC
8 DHCスラップ訴訟での勝訴判決
9 消化試合となった控訴審
10 勝算なきDHCの上告受理申立て
【第1章解説】
DHCスラップ訴訟の争点と獲得した判決の評価 光前幸一

第2章 そして私は原告になった
1 今度は「反撃」訴訟……なのだが
2 えっ? また私が被告に?
3 「反撃」訴訟が始まった
4 今度も早かった控訴審の審理
5 感動的な控訴審「秋吉判決」のスラップ違法論
【第2章解説】
DHCスラップ「反撃」訴訟の争点と獲得判決の意義 光前幸一

第3章 DHCスラップ訴訟から見えてきたもの
1 スラップの害悪
2 スラップと「政治とカネ」
3 スラップと消費者問題
4 DHCスラップ関連訴訟一〇件の顛末
5 積み残した課題
6 スラップをなくすために
【第3章解説】
スラップ訴訟の現状と今後 光前幸一

あとがき
資料(主なスラップ事例・参考資料等)

DHCスラップ訴訟|日本評論社 (nippyo.co.jp)

DHC製品は買わないが、この本は買って損はない ー 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第203弾

(2022年8月2日)
 ある人のメルマガに下記の記事。私の知る限りの書籍「DHCスラップ訴訟」の書評第1号である。この方、DHC製品は決して買わない人だが、本書は購入したという。「購入し一読して損はない」と言ってくれた。何ともありがたい。

 『DHCスラップ訴訟・スラップされた弁護士の反撃そして全面勝利』(澤藤統一郎・日本評論社・220730)
 
 化粧品、サプリメント(健康食品)、語学教材などの製造販売メーカーである?ディーエイチシー(DHC)に、いやがらせ名誉毀損の6000万円スラップ訴訟を起こされて被告になった著者の勝利記録。

 スラップとは、個人・市民団体・ジャーナリストによる批判や反対運動を封じ込めるため、企業・政府・自治体が起こす、恫喝訴訟・威圧的訴訟。

 第一章 ある日私は被告になった。第二章 そして私は原告になった。第三章 DHCスラップ訴訟から見えてきたもの。各章に解説が付され、判りやすい。

 資料編には、「主なスラップ訴訟」などが記載されています。DHCはHP上で、代表取締役会長吉田嘉明によるヘイトスピーチを拡散するなど、最低最悪の厚化粧企業。最後に著者は、「私は決して屈しない」「私は決して黙らにない」と宣言されています。

 DHCは不買ですが、本は購入して一読しました。損はありません。

 [参考]DHCスラップ訴訟に至る詳細は、ブログ「澤藤統一郎の憲法日記・分類・DHCスラップ訴訟」に入ってみてください。
  https://article9.jp/wordpress/?cat=12

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DHCスラップ訴訟 スラップされた弁護士の反撃そして全面勝利

著者名:澤藤統一郎
出版社名:日本評論社
発行年月:2022年07月30日

≪内容情報≫
批判封じと威圧のためにDHCから名誉毀損で訴えられた弁護士が表現の自由のために闘い、完全勝訴するまでの経緯を克明に語る。

【目次】
はじめに
第一章 ある日私は被告になった
1 えっ? 私が被告?
2 裁判の準備はひと仕事
3 スラップ批判のブログを開始
4 第一回の法廷で
5 えっ? 六〇〇〇万円を支払えだと?
6 「DHCスラップ訴訟」審理の争点
7 関連スラップでみごとな負けっぷりのDHC
8 DHCスラップ訴訟での勝訴判決
9 消化試合となった控訴審
10 勝算なきDHCの上告受理申立て
【第1章解説】
DHCスラップ訴訟の争点と獲得した判決の評価 光前幸一

第2章 そして私は原告になった
1 今度は「反撃」訴訟……なのだが
2 えっ? また私が被告に?
3 「反撃」訴訟が始まった
4 今度も早かった控訴審の審理
5 感動的な控訴審「秋吉判決」のスラップ違法論
【第2章解説】
DHCスラップ「反撃」訴訟の争点と獲得判決の意義 光前幸一

第3章 DHCスラップ訴訟から見えてきたもの
1 スラップの害悪
2 スラップと「政治とカネ」
3 スラップと消費者問題
4 DHCスラップ関連訴訟一〇件の顛末
5 積み残した課題
6 スラップをなくすために
【第3章解説】
スラップ訴訟の現状と今後 光前幸一

あとがき
資料(主なスラップ事例・参考資料等)

『DHCスラップ訴訟』間もなく販売開始 ー 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第202弾

(2022年7月27日)
 できたての、まっさらな新刊本が送られてきた。書名は『DHCスラップ訴訟』、「スラップされた弁護士の反撃そして全面勝利」という長い副題。著者は私、この訴訟の弁護団長・光前幸一さんの丁寧な解説が付いている。日本評論社からの出版。

 さっそく通読して、よくまとまっていて面白く読めるという感想。自分が代理人の事件ではこう面白く書けない。自分が当事者となった事件であればこそ、怨みも怒りも迷いも率直に書くことができた。自画への自賛だが、なかなかの出来栄えではないか。

 この書の奥付は「2022年7月30日第1版第1刷発行」となっており、アマゾンでは8月1日発売とされている。弁護団の弁護士各位やカンパを寄せていただいた方など200名弱には献本の予定。今月末にはお届けできるはず。お楽しみに。

 『DHCスラップ訴訟』という書名はDHC製品の宣伝のようでもあって、やや抵抗感もあった。が、結局これ以外にはなかろうと落ちついた。副題の「スラップされた弁護士の反撃そして全面勝利」は長すぎるようにも思えるが、内容をよく表している。これも結局これ以外にないとなった。「スラップする」「スラップされる」という言葉の使い方は耳新しいが、この書で、人口に膾炙することになるのではないか。

 最初の原稿は、随分と長いものを書いた。が、長すぎると評判悪く思い切って縮めた。そのため、書き足りないところ、書き残したものを数えると切りがないが、ほどのよいまとまった読み物になった。そして、私とは視角も文体も違う光前さんの解説が、奥行きを深めている。日評にお願いして、定価は押さえてもらった。私としては、多くの人に読んでいただきたいと思っている。「表現の自由」のために、カネで政治を動かしてはならぬという警告のために、そして、消費者の利益を擁護するために。

 あらためて8年前の5月のある日のことを思い出す。突然に理不尽なスラップ訴状の送達を受けて、当初に思ったことは、ともかくこの訴訟を勝ちきらねばならないということ。しかし、多くの方からの支援を得て余裕ができてくると、これは私一人の問題ではないと実感するようになり思いは変わってきた。

 単にスラップを斥けて良しとするのでは足りない。せっかく弁護士がスラップされたのだ。スラップ反撃の見本と、その成功の実例を作らねばならない。けっして《スラップに成功体験》をさせてはいけない。むしろ、典型的な《スラップ失敗体験》をさせなければならない。そしてそのことを世に伝えなければならない。そう思うようになった。DHCと吉田嘉明に、「うかつにスラップなんかやってたいへんなことになってしまった。もう2度とスラップなんかやるもんじゃない」と反省させなければならない。そしてその経過を世に伝えなければならない。そう思うようになった。

 そのために、まずは自分の言論を萎縮してはならないという思いから「澤藤統一郎の憲法日記」に、「DHCスラップ訴訟を許さない」シリーズを書き始め、これは既に第200彈を超えた。そして、私が被告にされた6000万円請求訴訟が東京地裁から最高裁まで3ラウンドで私が勝訴し、さらに攻守ところを変えた「反撃」訴訟が、これも東京地裁から最高裁まで3ラウンド。合計6ラウンドの闘いで、全て私の勝訴となった。この訴訟は、昨年(21年)1月に確定して全て終了したが、残る課題が、その顛末を一冊の書にまとめて出版することだった。今回のの出版で私の思いはほぼ達成できたとの満足感がある。スラップを仕掛けたDHC・吉田嘉明の側に、典型的な失敗体験をさせることができたのだから。

 多くの人に支えられ、多くの人を頼っての勝利であって、私はこの間誰よりも幸せな被告であり原告であり続けた。この書を、スラップ批判の世論を形成するために広めていただき、さらには実践的なスラップ対応テキストとしてご活用いただけたらありがたいと思う。

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8842.html

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「DHCスラップ訴訟 ー スラップされた弁護士の反撃そして全面勝利」
 著者:澤藤統一郎 (解説・光前幸一)
 価格:税込 1,870円(本体価格 1,700円)
 発刊年月 2022.07 判型 四六判 256ページ

内容紹介
 批判封じと威圧のためにDHCから名誉毀損で訴えられた弁護士が表現の自由のために闘い、完全勝訴するまでの経緯を克明に語る。

目次
はじめに
第1章 ある日私は被告になった
1 えっ? 私が被告?
2 裁判の準備はひと仕事
3 スラップ批判のブログを開始
4 第一回の法廷で
5 えっ? 六〇〇〇万円を支払えだと?
6 「DHCスラップ訴訟」審理の争点
7 関連スラップでみごとな負けっぷりのDHC
8 DHCスラップ訴訟での勝訴判決
9 消化試合となった控訴審
10 勝算なきDHCの上告受理申立て
【第1章解説】DHCスラップ訴訟の争点と獲得した判決の評価……光前幸一

第2章 そして私は原告になった
1 今度は「反撃」訴訟……なのだが
2 えっ? また私が被告に?
3 「反撃」訴訟が始まった
4 今度も早かった控訴審の審理
5 感動的な控訴審「秋吉判決」のスラップ違法論
【第2章解説】DHCスラップ「反撃」訴訟の争点と獲得判決の意義……光前幸一

第3章 DHCスラップ訴訟から見えてきたもの
1 スラップの害悪
2 スラップと「政治とカネ」
3 スラップと消費者問題
4 DHCスラップ関連訴訟10件の顛末
5 積み残した課題
6 スラップをなくすために
【第3章解説】スラップ訴訟の現状と今後……光前幸一

あとがき
資料

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