澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

ムーミンとDHC、まったく似合わない、釣り合わない。

(2021年8月31日)
 富士には、月見草がよく似合う。ムーミンにDHCは似合わない。ムーミンの穏やかな雰囲気と、吉田嘉明の野蛮なヘイト体質。両者のコラボは、心あるムーミンファンには幻滅の極み、うまくいくはずもなかろう。

 トーベ・ヤンソンはスウェーデン語系フィンランド人だったという。言語的マイノリティーだった。そして、レスビアンとして人生を過ごした。性的マイノリティーでもあった。デマとヘイトとステマとスラップというDHC・吉田嘉明とは、所詮住む世界が異なるのだ。
 
 そのトーベ・ヤンソンがその生き方において、また作品で示した価値観とはまったく相容れないDHCとのコラボのたくらみ、発表されるやムーミンファンの声がこれを阻止した。

 8月27日付で、下記の「ムーミン公式サイトより重要なお知らせ」がネットに掲載されている。掲載したのは、ムーミンのライセンスを日本で管理するライツ・アンド・ブランズ社。

ムーミンを大切にしてくださる皆様へ
平素より、ムーミンをご愛顧いただきありがとうございます。
この度、当社がライセンス管理をする一部製品に関しまして、皆様へ不快な思いをさせてしまいましたこと、心よりお詫び申し上げます。

本国フィンランドのムーミンキャラクターズ社は、“いかなる差別も、助長ないし許容するものではない”との強い見解を持っており、当社も同一認識を持っております。これは、お互いを認め合い、共存することを尊重していた原作者トーベ・ヤンソンの思想が包摂されています。

今後は、ライセンス許諾時点において、反社会勢力に対する確認に加えて、人権関連についても厳しく審査をし、仮に認識がなく契約された場合においても、それらが判明した時点において、速やかに契約更新停止や生産終了等の働きかけをしていきます。
ムーミン公式サイトを通じ、様々なお声をいただきましたこと、真摯に受け止めております。
ムーミンとムーミンを愛する方々の気持ちを大切に、皆様とともにムーミンの世界観を伝えるために邁進してまいります。
今後とも何卒皆様の温かいサポートをよろしくお願い申し上げます。」

 このネットの「お知らせ」で経過についてはあらかたの理解が可能である。今後ムーミンキャラクターの使用を認めるに際しては、「反社会勢力(=暴力団)だけでなく、DHCのごとき反人権企業も厳しくチェックをしていく」と言っているのだ。

 問題視されたのは、DHCが8月23日に発売を告知した商品。ムーミンなどの絵柄があしらわれた「薬用リップクリーム」「薬用ハンドクリーム」「オリーブホイップハンドクリーム」の3商品。ムーミンの公式サイトとツイッターでこのことが告知されると、「ブランドにそぐわない」「ショック」などの声が相次ぎ、24日までに告知文は削除されたと報じられている。上記のネットでの「お知らせ」は、「皆様へ不快な思いをさせてしまいましたこと、心よりお詫び申し上げます」というとおり、ムーミンファンへの謝罪なのだ。

 ムーミンキャラクターズ社では「いかなる差別も、助長ないし許容するものではない」「これは、お互いを認め合い、共存することを尊重していた原作者トーベ・ヤンソンの思想が包摂されています」と説明しているという。DHCの企業体質については、今さら繰り返すまでもない。ムーミンとDHCとは、水と油、氷と炭、月とスッポンなのだ。

 ムーミン社側は、「公式サイトを通じ、様々なお声をいただきましたこと、真摯に受け止めております。ムーミンとムーミンを愛する方々の気持ちを大切に、皆様とともにムーミンの世界観を伝えるために邁進してまいります。」と言っているが、DHC広報部は、取材の各社に「本件に関するコメントは差し控えさせていただきます」と、いつものとおりだ。

 DHCという企業は、オーナー会長吉田嘉明の迂闊なヘイトコメントを中心に、デマとステマとスラップで、企業イメージを著しく損ねて、経営的には大きなダメージを受けている。

 これを回復するために最も望ましいことは、吉田嘉明が全面的に非を認め、悔い改めることである。まずは自社の公式サイトで在日差別に謝罪し、スラップ被害者にも反省と謝罪文を送ることだ。従業員のためにそのくらいのことをしてみてはどうだ。

「明治天皇の玄孫」を自称の竹田恒泰、重ねてのスラップ敗訴。

(2021年8月25日)
 竹田恒泰という「右翼言論人」が起こした典型的なスラップ訴訟、東京地裁でみっともない負け方をしたのが今年の2月5日。下記URLで判決全文が読めるが、この判決を読む限り、当然に負けるべくして負けた請求棄却判決。明らかな無理筋の提訴なのだ。

https://yamazakisanwosien.wixsite.com/mysite/%E8%A3%81%E5%88%A4%E8%B3%87%E6%96%993

 その後のことを知らなかったが、竹田は控訴していた。昨日(8月24日)東京高裁で、控訴棄却の判決言い渡しとなったという報道である。当然の判決で、竹田には恥の上塗りとなった。

 時事の配信記事では、「作家の竹田氏、二審も敗訴」「差別指摘は『公正』 東京高裁」と見出しを付けている。この報道が要約する高裁判決の内容は、以下のとおりだ。

「ツイッターで『差別主義者』『いじめの常習者』などと指摘されたのは名誉毀損だとして、作家の竹田恒泰氏が紛争史研究家の山崎雅弘氏に550万円の損害賠償と投稿の削除などを求めた訴訟の控訴審判決が24日、東京高裁であり、高橋譲裁判長は『各ツイートは公正な意見論評の表明』とし、竹田氏側の控訴を棄却した。
 
 判決などによると、山崎氏は2019年11月、竹田氏が富山県朝日町教育委員会主催の講演会に講師として招かれることについて、中高校生に『自国優越思想』を植え付けるなどと批判する投稿をしていた。

 高橋裁判長は、竹田氏が書籍やツイートで中国や韓国に対し攻撃的、侮蔑的表現を多数使用したと認定。山崎氏の投稿は『(竹田の)言動や表現方法から導かれる意見論評として不合理と言えない』と結論付けた。」

 時事の報道では、「控訴審判決は、竹田の言論を中国や韓国に対し攻撃的、侮蔑的表現」と認定。これを根拠としての竹田に対する「自国優越思想」「差別主義者」「いじめの常習者」という批判は許容されることが明らかになった。竹田は、藪を突いて蛇を出した。あるいは、啼いたばかりに撃たれたのだ。

 とは言え、スラップは言論の自由に対する敵対行為である。スラップの被害は被告とされた特定の人だけにとどまるものではない。多くの表現者の言論を萎縮させる。自由な言論に支えられている民主主義社会全体が被害を受ける。

 竹田は心の底ではこう思っているかも知れない。「裁判には負けたが、山崎には労力も時間も金も使わせた。竹田を叩けば本当に裁判をかけてくるという実績を作ったのだから、提訴は無駄ではなかった」と。

 だから、スラップ訴訟には反撃が必要なのだと思う。この点については、この訴訟の一審判決の直後に下記の記事を書いたので繰り返さない。

竹田恒泰のスラップ完敗判決から学ぶべきこと(2021年2月7日)
https://article9.jp/wordpress/?p=16267

 前回触れなかったこと、2点についてコメントしておきたい。

 山崎雅弘のツィートに、下記の記事がある。

「先方の意図はよくわかりませんが、(スラップの)訴状に『原告(竹田恒泰)は、作家で明治天皇の玄孫にあたり、』と書いてあります。作家は職業なので普通だと思いますが、誰々の子孫という家柄の話は本人の能力と関係ない偶然の産物ですから、裁判の訴状に書く人はあまりいないのでは、と想像します。」

 山崎という人は実に慎み深い。「先方の意図はよくわかりません」「誰々の子孫という家柄の話は…訴状に書く人はあまりいないのでは」という程度で筆を納めている。私は、竹田も竹田だが、こんなことをわざわざ書いた代理人弁護士の感覚を疑う。

 「差別主義者」「自国優越思想」の適否を問題としている訴訟である。原告自ら、天皇の係累であることをひけらかしてどうする。墓穴を掘るに等しい。本気で勝つ気のない裁判であることを自白しているのではないか。

 天皇こそが差別構造の象徴であり、その頂点に位置するものである。竹田の寄る辺は、前世紀の遺物としての血筋・家柄しかないのだ。最も恥ずべき、最も唾棄すべき人格としての家柄自慢。これ、「差別主義者」の心理以外のなにものでもない。

 そして、もう1点。下記の一文をお読みいただきたい。誰の文章で、誰に宛てたものか、すぐにお分りだろうか。

「私の経験上、弁護士の多くは負けることが分かっていても訴訟したがります。負けてもお金になるから。あなたの知り合いの弁護士は、負けるリスクについても説明したのですかね? 私の弁護士は、勝ち目のない訴訟はやめるように助言してくれます。それが本当に信頼できる弁護です。」

 常識的には、「私」は山崎雅弘で、「あなた」は竹田恒泰のように読めるだろう。スラップを提訴したのは、竹田恒泰の方なのだから。しかし、事実は奇であり、常識でははかれない世界の話。これは竹田恒泰のツィート(2019年11月29日午後11:42)である。「あなたの知り合いの弁護士」は、原文では「山崎雅弘氏の知り合いの弁護士」となっている。

 不思議に思う。竹田恒泰が、自分が代理人として選任した弁護士から、敗訴のリスクを聞かされなかったはずはない。「勝ち目のない訴訟はやめるように助言」を受けたはずなのだ。敗訴によるダメージは決して小さくはない。現実に、敗訴を重ねた今、弁護士との信頼関係はどうなつているのだろうか。

 もし、適切な助言なしに竹田のいう「勝ち目のない訴訟」に敢えて及んだとすれば、代理人弁護士の責任は大きい。この点は、下記の当ブログを参照いただきたい。

澤藤統一郎の憲法日記 ? スラップの提訴受任は、弁護士の非行として懲戒事由になり得る ー 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第193弾 (article9.jp)

 控訴審判決書を受領した日の翌日から起算して14日以内であれば、敗訴者側は上告・上告受理申立が可能である。負けることが分かっていても、竹田は上訴することになるのだろうか。3度目の恥の上塗りは、おやめになった方がよいのだが。 

DHC吉田嘉明の姑息なヘイトコメントへの「謝罪」 ー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第194弾

(2021年7月23日)
 昨日(7月22日)、毎日新聞(デジタル)が久々にDHCを記事にした。東京オリンピック直前のタイミングに、いま日本が直面している数々の問題を考えさせる恰好の素材を提供するものとなっている。

 DHC・吉田嘉明の、ヘイト体質・独善性・時代錯誤・無反省・卑怯・姑息・批判者への攻撃性・非寛容性等々の姿勢については、これまで繰り返し指摘してきた。その多くの問題が、東京オリンピック開会直前に批判の対象となった差別・イジメ・無反省・時代錯誤・グローバルスタンダードに重なるのだ。DHC・吉田嘉明、いつもながらの反面教師ぶりである。

 毎日新聞記事のタイトルが、「ヘイト声明のDHCが『マル秘』謝罪文 提出先には非公開を要求」というものである。この見出しが私には感無量である。天下の毎日が見出しに、何の遠慮もなく、「ヘイトのDHC」と書くようになった。「ヘイト」と「DHC」が何の違和感もなく自然な結びつきになっている。さらに、「『マル秘』謝罪文」「提出先には非公開を要求」と、躊躇も萎縮もなくDHCのみっともなさを追求している。確実にDHCは追い詰められているのだ。そして、その背後にはヘイトの言動に厳しい世論の高揚がある。

 DHC批判は、DHCや吉田嘉明に対する批判を超えて、DHCを支える取引企業や取引金融機関、連携する自治体へと拡がりつつある。つまりは社会的な反ヘイトの包囲網を作ろうという反ヘイト市民運動のレベルアップである。これは、注目すべき動向ではないか。

 毎日新聞は、DHCとの連携自治体に関しては、情報公開制度を活用することで、DHCや自治体の反ヘイトの本気度や交渉経過を明らかにしようと思い立ったのだ。その機敏さに敬意を表したい。

 毎日新聞は、DHCと協定を結ぶ自治体に情報公開請求し、DHCが提出した文書などがあれば明らかにするよう求めた。「文書は存在しない」と答えた自治体もあったが、茨城県守谷市や北海道長沼町など4市町がA4判の文書計約70枚の公開を得たという。そのようにして得た開示情報に基づく結論を毎日はこう纏めている。

 「DHCがホームページに在日コリアンを差別する文章を掲載した問題で、DHCは非を認めて謝罪する文書を、協定を結ぶ自治体に水面下で提出していた。しかし、DHCは公式の謝罪や説明を避けており、謝罪文を渡した自治体にも文書の非公開を要求している。」

 なるほど、さもありなん。いかにも、DHC・吉田嘉明の手口である。彼の謝罪は真摯なものではない。しかも覚悟あっての行動ではないから、陰でこそこそという姑息でみみっちいことになる。DHC・吉田嘉明の辞書には、信念の二文字はない。だから、やることが情けなくてみっともなく、正々堂々の片鱗もない。

 茨城県守谷市が開示した資料には、6月9日にDHC地域健康サポート局の担当者が市役所を訪れ、松丸修久(のぶひさ)市長らに経緯を説明した際の記録がある。それによると、担当者は「人権に関わる不適切な内容の文章の非を認め、発言を撤回しました」「同様の行為を繰り返さないことをお誓い申し上げます」などと謝罪する文書を提出。「会長は、思ったよりも波紋が広がったことについて反省している。個人の意見を聞いてほしいという気持ちがあったようだ」と釈明した。

 その上で、公式な謝罪や説明には消極的な姿勢を示した。守谷市に対して「(文章を)削除した経緯等の説明文をHPに載せることはしない」「問い合わせには全てノーコメントで対応する」と説明。市に渡した謝罪文も「内容はマスコミに説明いただいてよいが、文書としての開示はしないでほしい」と求め、文書に社印も押さなかった。

 守谷市はその後、これらの文書について「市民への説明責任を果たせない」と不十分な点を指摘。会社の説明であることを明確にするため社印を押すことや、再発防止に向けた具体策を記載することなどをメールで求めた。しかしDHCの担当者は「文書が新たな批判や問題を呼ぶことは避けたい」として拒んだ。

 東京オリンピック組織委の幹部スタッフとして任を解かれた、森・佐々木・小田山・小林らは、いずれも自分の精神の根幹にある差別意識や個人の尊厳への無理解に真摯に向き合い、これを克服しようとの誠実さをもたない。彼らは、いまだに真に自らを省みることはなかろう。この点で、DHC・吉田嘉明と軌を一にする。

 吉田嘉明の精神の根幹に染みついた差別意識である。その不当、理不尽を如何に説こうとも、理解を得て矯正することはおそらく不可能であろう。しかし、この社会はヘイトの言動を許さず、ヘイトには制裁が伴うということを身に沁みて分からせることは可能である。

 彼が、ヘイトの姿勢を固執すれば世論に叩かれ、社員は肩身の狭い思いを余儀なくされる。DHCにまともな人材は枯渇することになるだろう。消費者による不買という手段の制裁が功を奏する段となれば、DHC・吉田嘉明はヘイトの表現が高く付くものであることを学ぶだろう。

 森・佐々木・小田山・小林らは、世論からの厳しい糾弾に曝され、その任にとどまることができなかった。吉田嘉明はオーナーであるから職を失う恐れはない。DHC・吉田嘉明のヘイトを矯正するには、「世論・消費者」の行動によって、差別・ヘイトは社会から厳しい制裁を受けるものであることを思い知らせる以外にはないのだ。

スラップの提訴受任は、弁護士の非行として懲戒事由になり得る ー 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第193弾

(2021年7月12日)
 日弁連の機関誌を「自由と正義」という。毎月全会員に送付されるこの雑誌で最も読まれているのは、巻末の「懲戒処分公告」である。多くの会員が襟を正し、心して読んでいる。

 全弁護士の強制加盟組織である弁護士会は自治を保障されている。その自治権の主要な柱の一つとして、弁護士の非行に対する懲戒は弁護士会が行うことになっており、法務省からも裁判所からも懲戒されることはない。弁護士に非行ありと主張する誰もが、当該弁護士の所属する単位弁護士会に懲戒を請求することができる。

 最近号(21年6月号)にも、各単位弁護士会がした13件の懲戒公告が並んでいる。懲戒となる弁護士の非行パターンはいくつもあるが、今月号の公告例で少し珍しい事例に興味を引かれた。スラップの防止に関わると思われるこの事例をご紹介したい。

懲戒処分の公告

 第二東京弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。

1 処分を受けた弁護士
   氏  名  I  M
   登録番号  28×××
   事務所 東京都港区芝以下略 ○○法律事務所
2 処分の内容 業務停止2月
3 処分の理由の要旨
  被懲戒者は、ウェブサイト運営者Aの訴訟代理人として、Bに対し、ウェブサイトの利用代金を請求する訴訟を提起するに当たり、懲戒請求者がBの代理人としてAに通知していた内容等から、上記訴訟の提起がAの詐欺的取引を助長することに当たる可能性を認識すべき状況にあったのだから、Aに対して資料を徴求する等して事実関係を検討した上で、Bの主張に反証できる可能性が相当程度存在すると判断できなければ訴訟提起の受任には消極であるべきであったにもかかわらず、十分な調査を行わないまま、2016年11月21日、Bに対して訴訟を提起してAの違法行為を助長した。
 被懲戒者の上記行為は、弁護士職務基本規程第5条等に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

4 処分が効力を生じた年月日   2020年10月30日

2021年6月1日
     日本弁護士連合会

 被懲戒者である弁護士は、業者Aからの依頼を受けて、Aからの依頼のとおりにBを被告とする債権回収の訴訟を提起した。それが、弁護士としての非行に当たるというのだ。しかも、ペナルティは業務停止2か月とけっこう重い。

 なお、弁護士職務基本規程第5条とは、「弁護士は、真実を尊重し、信義に従い、誠実かつ公正に職務を行うものとする。」という倫理的な信義誠実原則を定める条項である。

 問題は、どうやら依頼者Aが悪徳業者でBがその被害者であったらしいということ。その旨は、Bの代理人弁護士からAに対して通知があったのだから、少し調査をして見れば「Aからの依頼は受任すべきではない」と分かったはずではないかという状況だった。弁護士会はそう判断してAの代理をして提訴した弁護士を懲戒処分としたのだ。弁護士たるもの、依頼者の要望の通りの訴訟活動をしていればよいとはならない。引き受けてはならない事件の受任が懲戒事由となり得る。公益性の高い弁護士の業務である、違法を助長する業務は避けなければならない。

 これは、スラップ訴訟に当てはまる。今村憲という第二東京弁護士会所属の弁護士は、DHC・吉田嘉明からの依頼を受けて、依頼者DHC・吉田嘉明の要望の通りに、私(澤藤)を被告とする訴訟(「DHCスラップ訴訟」)を提起しみごとに敗訴した。のみならず、その後の攻守ところを変えた「反撃訴訟」判決で、DHCスラップ訴訟の提起自体が違法と認定され最高裁で確定した。

 しかも、重要なことは、反撃訴訟判決がスラップ提訴を違法と判断とした理由である。反撃訴訟一審判決はこう言っている。

「DHC・吉田嘉明の提訴は、客観的に請求の根拠を欠くだけでなく、DHC・吉田嘉明はそのことを知っていたか、あるいは通常人であれば容易にそのことを知り得たといえる。にもかかわらず、DHC・吉田嘉明は、敢えて訴えを提起したもので、これは裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に当たり、提訴自体が違法行為になる」

 とすれば、この懲戒事案に当てはめれば、「今村憲は、事実関係を検討した上で、予想される澤藤の主張に反証できる可能性が相当程度存在すると判断できなければ当該スラップ訴訟提起の受任には消極であるべきであったにもかかわらず、十分な調査を行わないまま性急に、あるいは通常人であれば容易に知りうる勝訴の見込みないことを知りながら、澤藤に対して訴訟を提起してDHC・吉田嘉明の違法行為を助長した」と言えるのだ。DHC・吉田嘉明は当時私を含めて10件のスラップを濫発しており、今村憲はそのすべてに関わっている。悪質性は高いと指摘せざるを得ない。

 スラップ被害をなくす有力な方法が、受任弁護士を懲戒処分とすることである。但し、懲戒請求には除斥期間の定めがある。「懲戒の事由があったときから3年を経過したときは、懲戒の手続を開始することができない」(弁護士法63条)とされているから、今回のスラップについての懲戒請求はできない。この次、同じことがあれば、躊躇なく懲戒請求をしなければならないと思う。 

自治体がDHCの差別を容認してはならない。ー 佐賀県唐津市よ、恥ずかしくないか。静岡県伊東市よ、おかしいぞ。

(2021年6月30日)
 毎日新聞に「追跡」と表題する、連載の調査報道欄がある。「ニュースの背景を解説、検証、深掘りリポート」というキャッチフレーズ。これが、誇大広告ではなく、充実した取材で読み応えがある。

 昨日(6月29日)の毎日朝刊2面に、「追跡 自治体 次々DHC批判」「在日コリアン差別文章 連携協定解消相次ぐ」の記事。そのリードは、大要以下のとおり。

大手化粧品会社ディーエイチシー(DHC)のホームページで2020年11月以降、創業者の吉田嘉明会長名で在日コリアンを差別する内容の文章が複数掲載され、いずれも21年5月になって削除された。同社は取材にコメントを避け、削除の経緯や理由を明らかにしていない。住民の健康増進や産業振興などを目的にDHCと連携協定を結んでいた自治体や、取引先の企業はこの間、どう対応してきたのか。

 DHC・吉田嘉明に染みついた唾棄すべきヘイト体質は、今さら説明するまでもない。問題は、このヘイト企業がなにゆえに今の日本の社会に存続し得ているか。いったい誰がこのヘイト企業の存続に手を貸しているのか、である。

 まずは、消費者である。多くの消費者がDHC・吉田嘉明のヘイト体質を意識することなくその製品を購入している。この無知・無関心・無自覚はヘイトを野放しにする罪と言わざるを得ない。DHC・吉田嘉明のヘイト体質をよく知らねばならない。そして、DHCの製品を購入してはならない。DHC製品不買の消費行動を通じて、この社会における不当な差別解消に貢献することができる。

 次いで小売店である。スーパー、コンビニ、ドラッグストアー、駅ビル、デパート等々の店舗が、ヘイト企業DHCとの取引を拒否すれば、DHCの体質を変えることができる。また、金融機関がヘイト企業DHCへの融資を止め、人材派遣業者がアルバイトの派遣を辞め、原料のサプライヤーが出荷を控え、広告業者がヘイトDHCの宣伝を拒否してもよい。DHCの経営を支えている取引業者が取引を停止することで、DHC・吉田嘉明に、「ヘイトは損だ」「ヘイトを慎まないとまともな経営は成り立たない」と思い知らせることができる。

 とは言え、民間業者の対DHC自発的取引停止は、現実にはなかなかの難事であろう。世論がヘイト企業DHCとの取引を糾弾し、DHCとの取引によるイメージダウンのデメリットが顕著にならなければ容易なことではない。

 しかし、地方自治体は別である。経済的合理性を行動原理としない自治体は、ヘイト企業と連携してはならない。躊躇なくヘイト解消に行動しなければならない。DHCのヘイト体質があからさまとなった今、DHCへの対応如何で、自治体の良識が計られる。「追跡」は、それを記事にしている。たとえば、高知県南国市。

 同市は4月19日に電話と電子メールで(DHCに)文章削除を要請。「対応できない」とされたため同月23日に協定解消を通知した。「相手が誰でも差別的発言は良くない。市全体として差別をなくそうと動いている」と担当者は言う。また、神奈川県平塚市は「協働事業を展開してきた行政の責任」としてDHCに公式見解と再発防止策を示すよう要請。だが、公式謝罪や経緯説明は考えていないとの回答で、7月14日付の解消を決めたという。これらはヘイトを容認しない立派な自治体の例。

「追跡」が明らかにした、ヘイトを容認しない立派な自治体(☆)と、DHCのヘイトを容認した立派でない自治体(★)の色分けは以下のとおり。

☆DHCとの連携協定解消(方針や凍結含む)
宮城県石巻市  差別的な発言、掲載は遺憾
茨城県下妻市  外部の指摘を受けながらも掲載されてきたことは看過できない
千葉県横芝光町  差別を助長するような発言は容認できない
神奈川県平塚市  公式ウェブサイトに差別的な文章を掲載し続けたことは問題
神奈川県松田町  差別的な内容は遺憾。差別は許されるべきではない。
高知県南国市  差別的文章は不適切
高知県宿毛市  差別的な表現は不適切
熊本県合志市  人種差別につながる発言は容認できない。

※DHCとの連携協定解消を検討中
茨城県守谷市 企業としての主張と認識せざるを得ない。削除と見解を求めたが回答がなかった。

★DHCとの連携協定継続(方針含む)
北海道長沼町  差別を助長するような文章掲載は容認できない。削除と謝罪及 び再発防止の意思を確認した。
静岡県伊東市  差別的文章の公表は誠に残念。会長の発言と連携協定は直接関係していないと判断した
静岡県御殿場市  差別は断じて許されず、説明を求めた。謝罪と発言撤回を報告され、同様の行為を繰り返さないと誓約された。
佐賀県唐津市  一個人の発言であり、考えを述べる立場にない。協定の目的が達成されるなら解消する考えはない。
熊本県長洲町奥 差別的発言やヘイトスピーチは決して許されないが、おわびと発言撤回のメールを受けた

 ヘイト容認派で最も挑戦的な態度だったのが、吉田嘉明の出身地で、系列ホテルがある佐賀県唐津市である。毎日の取材に対して、「(ヘイトコメントは)個人の発言であり、市として考えを述べる立場にない」と突っぱねている。DHCのオーナー会長である吉田嘉明のDHC公式ホームページにおけるコメントが「個人の発言」ではあり得ない。ヘイト発言を容認する唐津市のごとき態度こそが、日本社会にヘイトのウィルスを蔓延させているのだ。DHCのヘイトを容認する唐津市は、恥を知らねばならない。

 また、DHCの工場などがある静岡県伊東市も、おかしい。「会長の発言と協定は直接関係していない」という。「直接関係していない」は、いかにも苦しい言い訳だが、問題は「直接関係の有無」ではない。問われているのは、自治体の側に企業のヘイト行動を許さないという断固たる意思があるか否かなのだ。伊東市のごとき姿勢が、ヘイト企業をのさばらせているのだ。伊東と言えば、著名な観光都市ではないか。観光都市としてのイメージを大切にすべきではないのか。DHCの汚れたブランドイメージを背負い込むことはあるまい。

ここまで来た「DHC包囲網」ー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第192弾

(2021年6月10日)
 毎木曜日に配達される「週刊金曜日」。今週(6月11日)号に、岩本太郎記者の「ここまで来た『DHC包囲網』」という記事がある。副題が、「本社前で抗議行動、自治体・企業による関係見直しの動きも」というもの。

「DHCの吉田嘉明会長による一連の差別発言に対して6月4日、市民有志が同社への直接的な抗議行動に打って出た。
 東京・南麻布のDHC本社ビル前に市民ら約110人(主催者側発表)が集結。コロナ禍とあって声を上げない「サイレント抗議」形式だったが、写真にある通りさまざまなメッセージを描いた横断幕やプラカードを掲げながら、午後6時半から約2時間にわたり本社ビルの正面玄関前を中心に同社に抗議した。
 ちなみに現場まで取材に来た報道関係者は本誌も含め約20人。NHKやTBSなど放送局も駆けつけるなど、問題への世間の関心の高まりもうかがわせたが、DHC側は終始無反応。ガラス張りの1階ロビーから数人の男性が無表情に外の様子を見守るのみで、ビルから人の出入りはなかった。」

 以上がメインの報道記事。そして、市民運動だけでなく、自治体や取引先企業も加わった「DHC包囲網」が形成されつつある。「「DHC包囲網」は確実に広がり、そして吉田会長の足元まで近づきつつある」という。民主主義の立場から、たいへんけっこうなことだが、記者の取材に応じた抗議行動参加者のコメントが、胸に突き刺さった。

 今回の抗議行動の中心メンバーの1人は2017年1月に東京MXで放送された番組『ニュース女子』(DHCテレビ制作)が沖縄米軍基地建設反対運動を誹謗中傷したことへの抗議をきっかけにDHC問題に取り組んでた。以来4年以上を経て今回がDHC本社前での初の本格的な抗議行動となったが、これまで直接的な抗議行動ができなかったのは、吉田嘉明会長による「訴訟攻撃」即ちスラップを警戒したからだという。

 岩本記者も、「自分たちだけがスラップ訴訟に遭い孤立化するような事態への不安は大きかっただろう。」と感想を述べている。なるほど、そういうものなのだ。

 当ブログではたびたび言及しているが、DHCとは、「デマ」「ヘイト」のカンパニーにとどまらない。まず、「ステマ」でも高名である。自社の社員にカネを払って、ステルスマーケティングをやらせているのだ。ステマとは、「ヤラセ」や「サクラ」による宣伝のこと。実は自社の広告なのだが、消費者には広告であることを隠して、第三者の口コミと装うことで消費者を欺く詐欺的な広告手法をいう。要するに、この会社やることが姑息で汚いのだ。

 さらに、DHCは「スラップ」の常習会社としても名高い。かつては、スラップといえば武富士であった。スラップ常習の弁護士を抱えて、自分を批判する言論にスラップ訴訟をかけまくった。武富士が消滅した今、そのスラップ常習企業の地位をDHCが承継している。なるほど、汚い会社は社会的な批判を受ける。その批判を抑えるためには、スラップ訴訟をやるぞと脅しておくことが効果的なのだ。

 提訴されれば、面倒だ、カネもかかる。だから、うっかりこんな企業を批判して訴訟に巻き込まれてはたいへんだ、触らぬ神に祟りなし、ということになる。まさしく、スラップ常習企業の狙いがここにある。

 私(澤藤)は、DHC・吉田嘉明から、スラップをかけられてこれを撃退した。それだけでは足りないと思って、反撃の訴訟を提起して勝訴した。スラップを違法とする判決を取ったことの意義は大きいのだ。

この成果をもっと世に広めなければならない。DHCのごとき、「デマ」と「ヘイト」と「ステマ」と「スラップ」を兼ね備えた批判に値する企業に、堂々と批判してよいのだ。それなくして、社会はよくならない。

 そのために、DHC・吉田嘉明との係争の詳細を、出版しなければならない。読み易く、読んで楽しく、元気の出るような読み物として工夫しよう。
 そのような本作りに、ご支援をお願いしたい。

世論の糾弾に屈したか、吉田嘉明ヘイトコメントを削除 ー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第191弾

(2021年6月2日)
DHCの吉田嘉明が、公式ホームページからヘイトコメントを削除した。いかにも、こっそりと、である。昨日(6月1日)の早朝のことか、あるいは5月31日深夜のこと。なぜ削除したか、その動機や理由について語るところはない。問い合わせに対して、DHC広報部は「ご質問についてはコメントは差し控える」と言っている。

メディアは、あらためて大きく報道している。「DHC、差別文章をウェブサイトから全て削除」(毎日)、「DHCサイト、差別文章削除 自治体や取引企業から『不適切』」(朝日)、「DHC、ウェブサイトから在日コリアン差別文章削除 『ヘイト』批判相次ぐ」(東京)などという見出しが躍っている。DHC・吉田嘉明の「差別」体質は、ようやく天下に知れ渡り、世論の批判の的となった。

この事態は、「自業自得」あるいは「身から出た錆」「自分で蒔いた種」というにふさわしい。最近の言語感覚だと、「自己責任」「ブーメラン」「オウンゴール」とでもいうのだろう。せっせと、自分を貶め、自らの企業に打撃を与えているのだ。ご苦労様と声をかけるしかない。

それにしても、削除された3件のヘイトコメント全文を保存しておいたのは僥倖だった。今後、折ある都度に、適切に引用させていただこう。

とはいえ、世論は一色ではない。吉田嘉明が、常人の感覚では恥とせざるを得ない差別コメントを人目に晒すのは、これに共感し支持する一群の人々が存在すると思えばこそである。DHCテレビやら、虎ノ門ニュースやらの、右翼メディアの主宰者でありスポンサーである吉田嘉明が、その常連出演者である右翼連中の支援を期待したとしても無理からぬところではある。

このような吉田嘉明の期待に応えた発言は、探せば出て来る。たとえば、次のように。

DHCがサプリメントを販売する競合他社について、CMに起用されているタレントがほぼ全員コリアン系日本人ですとオンラインショップのサイトに書いたところヘイトスピーチだと騒いでいる人がいるとか。これがなぜヘイトし(ママ)ピーチなのか。事実を知らせて何が悪いのか。難癖のたぐいだ。反日に負けるな。」

これは田母神俊雄のツィートである。公職選挙法違反で懲役1年10月・執行猶予5年の有罪判決を得たこの人物の応援を、吉田嘉明がありがたがるはずもなかろうが、この田母神発言は右翼諸氏の精神構造をよく表現している。

彼らにとって共通の掛け替えのない最高理念は「日本」であり「愛国」なのだ。これを貶める最高の悪徳が「反日」である。合い言葉は「反日」、何に対しても「反日」という言葉を投げつけることで、「正義」は貫徹され、仲間同士の連帯感が育まれる。あれも反日、これも反日、反日に負けるな、である。DHC攻撃は反日、反日に攻撃されているDHC・吉田嘉明よ、頑張れ、負けるな。

田母神の「反日に負けるな」は、DHC・吉田嘉明に対して、「ヘイトスピーチだと騒いでいる人」に負けずに、「オンラインショップのサイトへの書き込み」を維持せよ、ということであったろう。「『反日』に負けない右翼としての根性を見せろ」という司令官としての命令であったかも知れない。が、吉田嘉明は簡単に負けちゃった。「反日」に、である。

DHC・吉田嘉明ヘイトコメント削除の報道の中で、最も詳細なものが、BuzzFeed Japanである。「DHC、差別文書を全削除もノーコメント。JR西やイオンなど取引先が批判、自治体対応も相次ぐ」という見出し。敬意を表しつつ、抜粋を引用させていただく。なお、経過は全部省略する。DHC・吉田嘉明のヘイトコメントは、消費者からだけでなく、自治体からも、法相からも、取引先からも批判されてきた。

NPO法人「多民族共生人権教育センター」(大阪市)は、DHCの主要取引先銀行、商品を販売している小売店・ドラッグストア、直営店が入店しているショッピングモールなどを運営する32社に対して、「取引を継続していることによる人権に対する負の影響を軽減するための適切な措置」を求める要望書を提出。

このうち22社から、対応に関する回答があったという。BuzzFeed Newsが入手したセンターの調査結果によると、具体的に対応をとったのは以下の7社だ(集計は同センターによる)。

JR西日本(駅内コンビニチェーンなどを運営するJR西日本デイリーサービスネットも同様の回答)
「同社のウェブサイトにおける一部表現については、私どもの方針にそぐわないものであると認識し、同社に対し、取引関係者として、事態を憂慮し、遺憾の意をお伝えいたしました」

イオン株式会社R.O.U株式会社、ミニストップ株式会社、イオンリテール株式会社を代表し回答)「どのような経緯ないし趣旨で、そのような発言が会社のホームページに掲載されているのかについて、同社宛に事情説明依頼文書にて事情の説明を求めております」「同社が、上記のような発言を容認するとすれば、それはイオンの方針とは相容れないことについても付言しております」

平和堂(小売チェーン)「吉田会長の発言は不適切と考え、現在、会社の公式見解を求めております」「取引を中止することで問題の根本的な解決には至りませんので、現時点では継続する方向で考えておりますが、公式見解・回答を待ち、対応を検討する所存でございます」

コクミン(ドラッグストアチェーン)「人権差別発言に関しましては再発防止の要望をいたします」

なお、ドラッグストアチェーンのキリン堂ホールディングスは「当該人物の発言内容は、社会性を著しく欠くものであり、当社として相容れるものは一切ありません」「DHCの今後の対応に基づき、当社として、今後の方針を検討していきたいと考えております」と回答した。

このほか、セブン&アイ・ホールディングスは「不当な差別を助長するようなことはあってはならない」などとしながら、基本方針に従って個別に対応すると回答。DHCに対する個別の言及はなかった。ローソンなども同様だった。

りそな銀行、UFJ銀行、みずほ銀行、ファミリーマート、イズミヤ、アスクル、東急ハンズはいずれも「個別の回答を控える」とコメントしている。

なお、楽天グループやツルハドラッグ、コスモス、デイリーヤマザキ、ポプラ、ダイコク、ドラッグユタカ、KIDDY LAND、アリー、ショップインの10社は、期日までの回答がなかったという。

いま、ユニクロがウィグル問題で苦境に立たされている。ユニクロの本音は、次のようなものだろう。

「ウィグルでの人権問題の当事者は、中国政府であって当社ではない。当社は、現地で提供される正当な市場価格での労働力を購入しているに過ぎない。資本主義的存在である企業の経済合理性に基づく経済行動として当然のことではないか」

しかし、今やこのユニクロの言い訳は通用しない。中国当局の少数民族弾圧を奇貨とし、その収奪に積極的に加担していると糾弾されざるを得ないのだ。

DHCとの取引企業も、ユニクロと事情は似ている。今や、DHCと通常の経済取引をしているだけ、という言い訳は通用しない。DHCの不当な差別に加担し、差別を助長している、と批判されざるを得ないのだ。

DHCとの取引あった32社が、吉田嘉明のヘイトコメントにどのような反応をしたか、よく覚えておこう。

吉田嘉明のヘイトコメントにDHC取引先7社が「遺憾の意」 ー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第190弾

(2021年6月1日)
昨日付の共同通信配信で、「DHC取引先7社が『遺憾の意』 会長名での差別的文章掲載に」(表題は、毎日・大阪版)という記事。天下に隠れもないレイシスト、DHC・吉田嘉明のヘイトコメントに関して、「DHC取引先7社が『遺憾の意』を表明していた、というニュースである。

毎日新聞大阪版掲載のデジタル記事を引用する。

 「化粧品会社ディーエイチシー(DHC)のウェブサイトに吉田嘉明会長名で在日コリアンを差別する文章が掲載された問題で、取引先7社が「遺憾の意」を伝えるなどDHCに何らかの対応を取ったと大阪市の人権団体に回答したことが31日、分かった。
 NPO法人「多民族共生人権教育センター」などが4月、DHCの主要取引先32社に対し、DHCに謝罪を要請して取引停止などを求める要望書を送付。うち22社から回答を得た。
 同センターによると、「遺憾の意を伝えた」(JR西日本)「不適切で公式見解を求めた」(平和堂)など、7社が何らかの対応を取ったと回答。「社会性を著しく欠く」(キリン堂ホールディングス)などとして今後対応を検討すると答えた企業もあった。8社は「回答を差し控える」とした。
 同センターの文公輝事務局長(52)は「人権擁護の重要性を理解してもらっていると感じた。より多くの企業に措置を取ってほしい」と話した。
 DHCは競合他社について「CMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人です」と記述し、自社について「すべてが純粋な日本企業」などとする文章を掲載していた。(共同)」

多民族共生人権教育センターは、部落解放同盟大阪府連合会、部落解放大阪府民共闘会議と連名で、今年の4月5日付で悪質な人種差別言動を繰り返すDHCに対して抗議文を送付した。4月28日(水)までに誠意ある文書回答を求めていたが、DHCからは何の返答もなかったという。吉田嘉明の思想の偏頗はともかく、せめて堂々と自ら信ずるところを披瀝する態度の堅持あれば世人の見る目も異なってくるであろうに、法廷にも欠席したように、吉田嘉明には「堂々とした姿勢」を見ることができない。大物の風格の片鱗もないのだ。

「そのためやむを得ず」、人権教育センターらは、4月29日(木)付でDHCの主要取引先である、銀行、商品を販売している小売店・ドラッグストア、直営店が入店しているショッピングモール等を運営する32社に対して、DHCとの取引を継続していることによる人権に対する負の影響を軽減するための適切な措置をとるように求める要望書を送付したという。

32社の内の22社から回答があり、7社が何らかの対応を取ったという。もっとも、明確にDHC吉田嘉明のコメントを批判したのは、「JR西日本」「平和堂」「キリン堂」である。何らかの対応を取った7社の内の他の4社についても、「回答を差し控える」とした8社についても、報道がない。個別の企業名を特定して報道してもらわねば意味がない。
 
なお、要請書は以下のとおりである。

人種差別を繰り返すDHCに抗議します。
取引企業は適切な対応をとってください。

 謹啓 時下ますますご清勝のこととお慶び申し上げます。
 さて、私たちは、御社が株式会社ディーエイチシー(以下、DHC)と取引を継続することにより、?権に対して深刻な負の影響を及ぼしていることを憂慮しています。つきましては、下記の通り要望します。
 なお、この要望については5?21?までに?書で回答することを求めます。御社の回答は、その有無を含めて公表することを予めご承知いただければ幸いです。

(要望の主旨)
1.DHCが会社としておこなった?種差別について公式に謝罪し、社内ルール策定等の再発防?策を実?することを要請してください
 DHCに対しては、謝罪の?法について事態の深刻さに鑑み、公式ホームページでの謝罪?の掲載のみならず、DHC 直営店舗での謝罪?掲出、主要新聞紙?への謝罪広告の掲載、代表取締役会?・CEOの吉?嘉明?による謝罪記者会?によっておこなうことを要請してください
2.前記要請が聞き?れられなかった場合、DHC との取引停?を含めた厳しい措置をとってください
3.以上2点を踏まえて、DHCが?種差別を繰り返していることについて、主要な取引先である御社の認識を公表してください

申し入れ先の32社は、下記のとおりである。
1 りそな銀行
2 三菱UFJ銀行
3 みずほ銀行
4 三井住友銀行
5 セブン-イレブン(コンビニ)
6 ファミリーマート(コンビニ)
7 ローソン(コンビニ)
8 ミニストップ(コンビニ)
9 デイリーヤマザキ(コンビニ)
10 ハート・イン(コンビニ)
11 ポプラ(コンビニ)
12 コクミンドラッグ(ドラッグストア)
13 キリン堂(ドラッグストア)
14 ダイコク(ドラッグストア)
15 ココカラファイン(ドラッグストア)
16 ツルハドラッグ(ドラッグストア)
17 マツモトキヨシ(ドラッグストア)
18 コスモス(ドラッグストア)
19 ドラッグユタカ(ドラッグストア)
20 イズミヤ(量販店・大型スーパー)
21 イオン(量販店・大型スーパー)
22 平和堂(量販店・大型スーパー)
23 LOHACO(ネットショップ)
24 Rakuten(ネットショップ)
25 KIDDY LAND(バラエティショップ)
26 東急ハンズ(バラエティショップ)
27 LOFT(バラエティショップ)
28 R.O.U(バラエティショップ)
29 アリー(バラエティショップ)
30 ショップイン(バラエティショップ)
31 イオン株式会社(ミニストップの親会社)
32 西日本旅客鉄道株式会社(ハート・インの親会社)

このうち、回答あったのが22社、何らかの対応を取ったのが7社。この数は、多いとして喜ぶべきか、少ないとして嘆くべきか。意見さまざまではあろうが、ヘイト企業が糾弾されるだけでなく、漫然とヘイト企業と取引を継続することも、批判の対象となる新たな風潮を歓迎したい。


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《悪名高いヘイト企業DHC》への世論の指弾が厳しくなっています。
 Change.orgの「DHC商品のコンビニからの撤去、および同社との取引中止を求めます」というネット署名キャンペーンの賛同者が5万筆を超えました。

 6月3日には、DHC本社前のスタンディングも企画されているということです。

 下記のURLから、ぜひ署名にご協力をお願いいたします。
 また、この短縮URLの拡散もお願いいたします。

https://t.co/1XBu4Rb95q?amp=1

ヘイト企業DHCは追い詰められつつある ー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第189弾

(2021年5月26日)
 Change.orgの「DHC商品のコンビニからの撤去、および同社との取引中止を求めます」というネット署名キャンペーン。6月3日を一応の締め切りにするという。下記のURLでアクセスして、署名にご協力をお願いしたい。また、この短縮URLの拡散もお願いしたい。

https://t.co/1XBu4Rb95q?amp=1

キャンペーンの趣旨は、以下のとおりである。

 人権侵害として言論の自由の許容範囲を超える、このDHC社と吉田会長による行為に対して、あらゆる行政や企業等は、責任をもって対処する必要があります。
 つきまして、本署名において、コンビニエンスストア各社に対して、DHCの商品の取り扱いの中止と、DHCとのあらゆる取引を中止するよう求めます。
 本署名は、大手コンビニエンスストア各社に対し、直接提出したうえで、各社の反応についてレポートし、各社がどのような対応をするかを広く周知したいと考えております。 

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 DHCの公式ホームページでの吉田嘉明のヘイトコメント。これまでにない多方面からの批判と制裁に曝されている。
 本日、各紙をにぎわしているのは、「在日コリアン差別でDHCを除外 さいたま市、返礼品から」という記事。気が付かなかったが、DHCは「ふるさと納税の返礼品」納入業者としても自治体とつながっているのだ。

 そのつながりの一つをさいたま市が断ち切って、同市の「ふるさと納税サイト」に掲載の返礼品リストからDHC製品を削除した。吉田嘉明のヘイトコメントを閲覧して、「寄付への謝意を表す品としてふさわしくない」「ふるさと納税の返礼品は寄付者への感謝の気持ちで、シティーセールスの側面もある。混乱を生じさせている状況では返礼品にそぐわない」と判断したからだという。

 さいたま市財政課によると、市内にあるDHCの工場で生産された化粧品を、2017年から返礼品として採用。これまでの累計で、443件約2100万円分の申し込みがあったという。金額はともかく、公的組織がヘイト企業という烙印を押しての縁切りである。その象徴的なアナウンス効果はDHCへの打撃となるだろう。

 地元紙埼玉新聞の報道によると、さいたま市は、4月から複数回にわたってDHC側にヘイトコメントの真意を確認していた。5月21日までに回答すると返事があり、同日電話で問い合わせたところ、「サイトの文章を一部削除した」と説明を受けたという。それでも、サイトを確認した市は「更新の意図が説明されず、回答として十分でない」「疑念を晴らすものではなく、十分に説明を尽くしていない」として、24日に登録の取り消しを決定しDHCに連絡したという。

 確かに、吉田嘉明の3件のヘイトコメントの内の最初の1件は削除されている。吉田嘉明も弱気になって消したのかも知れない。1件削除すれば、市は見逃してくれるだろうととも思ったかも知れない。しかし、市は「疑念を晴らすものではない」と判断して、関係を切ったのだ。吉田嘉明は、自分の考えが社会の常識からいかに懸け離れているのかを弁えねばならない。このことを十分な反省材料としてもらわなければならない。

 吉田嘉明のヘイトコメントを巡っては、朝日新聞が24日付で、災害が発生した際にサプリメントなどを供給する「包括連携協定」をDHCと締結した21の地方自治体のうち、2市が協定を解消、1市は解消予定であり、7市町が検討中だと報じた。

 朝日の取材に対して、合志市の担当者は、「(吉田嘉明の)文章は人種差別にあたる。何も対応しないままでは、このメッセージを容認していると捉えられかねず、市民の理解も得られない」と述べたという。他の自治体も、肝に銘じるべきである。

 この包括協定とは別に、平塚市はDHCと「健康づくりの推進に係る連携協定」を結んでいるという。その平塚市も、4月上旬以来DHCに対して吉田嘉明のヘイトコメントを削除するよう求めていたことが明らかになった。

 平塚市の担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、「(吉田嘉明のコメントは)あるまじき内容。会社のサイトに掲載されていることから、会社の見解と判断しました。市民にも外国籍の人がたくさんいます。市民目線に立ってもあってはならないもので、即刻の削除を求めてきました」と語っている。この要請に対して、DHC側の対応は、「お答えできません」というものだという。平塚市側の担当者は「差別的表現の掲載が継続している以上、関係を継続することは困難と判断しており、今後の対応を検討しています」と話しているという。また、BuzzFeed Newsは5月21日、DHC広報部に文書削除の経緯などについて取材を申し込んでいるが、「回答には数日間を要する」としているそうだ。

 差別主義者吉田嘉明をオーナーとするDHCは、明らかにヘイト企業である。しかも、デマとヘイトとステマとスラップという4拍子揃った稀有な背徳企業である。

 このような企業の言動を看過し容認してはならない。あらゆる関係者が、社会正義の名において、糾弾と制裁の対象としなければならない。

DHC製品不買運動は、案外効いているのではないか。

(2021年3月20日)
前川喜平が、実名に(右傾化を深く憂慮する一市民)という自己紹介文を付したハンドルネームで、ツィッターを発信している。なるほどと、頷けることばかり。

https://twitter.com/brahmslover
前川喜平(右傾化を深く憂慮する一市民)
@brahmslover

一昨日(3月18日)発信の前川ツィートが、「DHC」に触れている。

「この前泊まったホテルの浴室にはDHC製品が置かれていた。もうあのホテルは使わない。」

「DHC製品、私は買わない」というだけでなく、アメニティとしてDHC製品を使っているホテルへの宿泊もやめようというメッセージ。DHCへの批判を、積極的に具体的な行動で表そうという呼びかけでもある。

このツィートは、沖縄タイムス阿部岳記者の以下の発信にリツィートしたもの。

「デマとヘイトの責任を問う法廷で、DHC「ニュース女子」側はなおもデマとヘイトを垂れ流し続けた。制作会社プロデューサーの一色啓人氏は(証人として)「高江に住んでいる半数以上が基地建設が決定してから住んだ」と述べた。すぐ高江区長に電話して確かめたが、事実ではなかった。」

阿部記者の言う「デマとヘイトの責任を問う法廷」とは、辛淑玉さんが原告となって、DHCテレビジョン(DHCの100%子会社、代表取締役会長:吉田嘉明)と長谷川幸洋を訴えた訴訟での証人調べ法廷のこと。

沖縄・高江の米軍ヘリパッド建設への抗議行動を取り上げたDHCテレビ番組「ニュース女子」で名誉を毀損されたとする辛淑玉さんが、制作会社DHCテレビジョンと司会を務めていた長谷川幸洋に計1100万円の慰謝料などを求めて東京地裁に提訴し、併せて番組の差し止めと削除、謝罪広告の掲載も求めている。

3月17日東京地裁法廷での証人尋問の模様を阿部記者は、沖縄タイムスにこう書いている。

「涙」「能弁に」「笑いながら」 証言台の3人、語る姿の違いに現れた差別の構造

 証言台に立った3人は、ともに恐怖や被害を語った。だが、語る姿は全く違った。テレビ番組「ニュース女子」に名指しされた辛淑玉(シンスゴ)氏は涙で言葉に詰まりながら。司会だった長谷川幸洋氏は能弁に。制作会社の一色啓人氏は時に笑いながら。
 この差は、個性だけによるものではない。社会における力の差、差別の構造が表れている。仮に同じ出来事が降りかかったとしても、少数派には差別の重さが加わり傷はより深くなる。

前川ツィートは、この阿部記者の姿勢に共感するとともに、DHCやそれに与する人々への批判を形にすべきことを訴えているのだ。ヘイト容認派対ヘイト批判派、デマ容認派対デマ撲滅派。そのせめぎ合いの最前線で、DHCへの向き合い方が問われている。デマやヘイトを許さないとする者は、DHC製品をボイコットして、DHCの姿勢を正さなければならない。

前川は、2020年12月20日にも、
「DHCが提供するTV番組は見ない。」
とツィートしている。「DHCがスポンサーになっているTV番組」をみんなが見ないとなれば、DHCの売り上げは確実に激減するだろう。

 「DHCの製品、私は買いません」
 「DHCの製品、私の親類縁者には買わせません」
 「DHCの製品を使っているホテルには泊まりません」
 「DHC提供の番組は見ません」
 「DHCのコマーシャルが流れたら、スイッチを切ります」
 
前川喜平に倣って、DHCに対する批判を具体的な行動に表わそう。積極的に表現しよう。あるいは、下記の米山隆一のごとくに。

 差別を見過ごす人はその人も一定程度差別に加担しています。今般のDHCのキャンペーンの広報は、私には耐えがたいものに思えます。私は以前DHCの製品を使っており、その後止めた後現在時折買っていたのですが、もう金輪際買いません。差別に加担する積りはありません。(2020年12月16日)

DHC製品ボイコットに対する経済制裁は案外効いているのではないだろうか。

最近までのDHCは、業界ナンバー1を豪語し、1000億円(年間売上)企業と誇ってきた。しかし、今やDHCは確実に売り上げを減らして業績を悪化させている。既に、業界ナンバー1でも、1000億円企業でもなくなっている。

2019年までは、何とか1000億円の売り上げをキープしていたDHCだったが、2020年(7月決算)の売り上げは、973億円と大台を割り込んだ。とりわけ当期純利益は、49億(18年)⇒41億(19年)⇒13億円(20年)と、激減と言ってよい。

この間、ライバル会社ファンケルの業績が好調で、18年に初めて売上げ1000億円を超えてDHCを凌駕した。2020年(3月)の決算では、売上高1270億円と大きく水を開け、当期純利益がちょうど100億円となっている。

また、「通販健康食品」という分類で、DHCは長く業界のトップに位置していたが、2019年の販売金額でのトップはサントリーウエルネスで923億円。次いでDHCが399億円と、大きく引き離されている。

DHCの業績悪化の本当の原因は分からない。しかし、ニュース女子の番組で、DHCのヘイト体質が世に知られるようになったのが、2017年1月のことである。この辺りから世論の指弾とともに業績の悪化が始まっている。案外DHC製品不買運動が、効果を上げているようにも思える。

前川喜平や米山隆一に倣って、DHCの製品不買を呼びかけよう。「DHC製品、私は買わない」、たったそれだけのことが、デマやヘイトのない社会の実現につながる。

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