澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

世論の糾弾に屈したか、吉田嘉明ヘイトコメントを削除 ー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第191弾

(2021年6月2日)
DHCの吉田嘉明が、公式ホームページからヘイトコメントを削除した。いかにも、こっそりと、である。昨日(6月1日)の早朝のことか、あるいは5月31日深夜のこと。なぜ削除したか、その動機や理由について語るところはない。問い合わせに対して、DHC広報部は「ご質問についてはコメントは差し控える」と言っている。

メディアは、あらためて大きく報道している。「DHC、差別文章をウェブサイトから全て削除」(毎日)、「DHCサイト、差別文章削除 自治体や取引企業から『不適切』」(朝日)、「DHC、ウェブサイトから在日コリアン差別文章削除 『ヘイト』批判相次ぐ」(東京)などという見出しが躍っている。DHC・吉田嘉明の「差別」体質は、ようやく天下に知れ渡り、世論の批判の的となった。

この事態は、「自業自得」あるいは「身から出た錆」「自分で蒔いた種」というにふさわしい。最近の言語感覚だと、「自己責任」「ブーメラン」「オウンゴール」とでもいうのだろう。せっせと、自分を貶め、自らの企業に打撃を与えているのだ。ご苦労様と声をかけるしかない。

それにしても、削除された3件のヘイトコメント全文を保存しておいたのは僥倖だった。今後、折ある都度に、適切に引用させていただこう。

とはいえ、世論は一色ではない。吉田嘉明が、常人の感覚では恥とせざるを得ない差別コメントを人目に晒すのは、これに共感し支持する一群の人々が存在すると思えばこそである。DHCテレビやら、虎ノ門ニュースやらの、右翼メディアの主宰者でありスポンサーである吉田嘉明が、その常連出演者である右翼連中の支援を期待したとしても無理からぬところではある。

このような吉田嘉明の期待に応えた発言は、探せば出て来る。たとえば、次のように。

DHCがサプリメントを販売する競合他社について、CMに起用されているタレントがほぼ全員コリアン系日本人ですとオンラインショップのサイトに書いたところヘイトスピーチだと騒いでいる人がいるとか。これがなぜヘイトし(ママ)ピーチなのか。事実を知らせて何が悪いのか。難癖のたぐいだ。反日に負けるな。」

これは田母神俊雄のツィートである。公職選挙法違反で懲役1年10月・執行猶予5年の有罪判決を得たこの人物の応援を、吉田嘉明がありがたがるはずもなかろうが、この田母神発言は右翼諸氏の精神構造をよく表現している。

彼らにとって共通の掛け替えのない最高理念は「日本」であり「愛国」なのだ。これを貶める最高の悪徳が「反日」である。合い言葉は「反日」、何に対しても「反日」という言葉を投げつけることで、「正義」は貫徹され、仲間同士の連帯感が育まれる。あれも反日、これも反日、反日に負けるな、である。DHC攻撃は反日、反日に攻撃されているDHC・吉田嘉明よ、頑張れ、負けるな。

田母神の「反日に負けるな」は、DHC・吉田嘉明に対して、「ヘイトスピーチだと騒いでいる人」に負けずに、「オンラインショップのサイトへの書き込み」を維持せよ、ということであったろう。「『反日』に負けない右翼としての根性を見せろ」という司令官としての命令であったかも知れない。が、吉田嘉明は簡単に負けちゃった。「反日」に、である。

DHC・吉田嘉明ヘイトコメント削除の報道の中で、最も詳細なものが、BuzzFeed Japanである。「DHC、差別文書を全削除もノーコメント。JR西やイオンなど取引先が批判、自治体対応も相次ぐ」という見出し。敬意を表しつつ、抜粋を引用させていただく。なお、経過は全部省略する。DHC・吉田嘉明のヘイトコメントは、消費者からだけでなく、自治体からも、法相からも、取引先からも批判されてきた。

NPO法人「多民族共生人権教育センター」(大阪市)は、DHCの主要取引先銀行、商品を販売している小売店・ドラッグストア、直営店が入店しているショッピングモールなどを運営する32社に対して、「取引を継続していることによる人権に対する負の影響を軽減するための適切な措置」を求める要望書を提出。

このうち22社から、対応に関する回答があったという。BuzzFeed Newsが入手したセンターの調査結果によると、具体的に対応をとったのは以下の7社だ(集計は同センターによる)。

JR西日本(駅内コンビニチェーンなどを運営するJR西日本デイリーサービスネットも同様の回答)
「同社のウェブサイトにおける一部表現については、私どもの方針にそぐわないものであると認識し、同社に対し、取引関係者として、事態を憂慮し、遺憾の意をお伝えいたしました」

イオン株式会社R.O.U株式会社、ミニストップ株式会社、イオンリテール株式会社を代表し回答)「どのような経緯ないし趣旨で、そのような発言が会社のホームページに掲載されているのかについて、同社宛に事情説明依頼文書にて事情の説明を求めております」「同社が、上記のような発言を容認するとすれば、それはイオンの方針とは相容れないことについても付言しております」

平和堂(小売チェーン)「吉田会長の発言は不適切と考え、現在、会社の公式見解を求めております」「取引を中止することで問題の根本的な解決には至りませんので、現時点では継続する方向で考えておりますが、公式見解・回答を待ち、対応を検討する所存でございます」

コクミン(ドラッグストアチェーン)「人権差別発言に関しましては再発防止の要望をいたします」

なお、ドラッグストアチェーンのキリン堂ホールディングスは「当該人物の発言内容は、社会性を著しく欠くものであり、当社として相容れるものは一切ありません」「DHCの今後の対応に基づき、当社として、今後の方針を検討していきたいと考えております」と回答した。

このほか、セブン&アイ・ホールディングスは「不当な差別を助長するようなことはあってはならない」などとしながら、基本方針に従って個別に対応すると回答。DHCに対する個別の言及はなかった。ローソンなども同様だった。

りそな銀行、UFJ銀行、みずほ銀行、ファミリーマート、イズミヤ、アスクル、東急ハンズはいずれも「個別の回答を控える」とコメントしている。

なお、楽天グループやツルハドラッグ、コスモス、デイリーヤマザキ、ポプラ、ダイコク、ドラッグユタカ、KIDDY LAND、アリー、ショップインの10社は、期日までの回答がなかったという。

いま、ユニクロがウィグル問題で苦境に立たされている。ユニクロの本音は、次のようなものだろう。

「ウィグルでの人権問題の当事者は、中国政府であって当社ではない。当社は、現地で提供される正当な市場価格での労働力を購入しているに過ぎない。資本主義的存在である企業の経済合理性に基づく経済行動として当然のことではないか」

しかし、今やこのユニクロの言い訳は通用しない。中国当局の少数民族弾圧を奇貨とし、その収奪に積極的に加担していると糾弾されざるを得ないのだ。

DHCとの取引企業も、ユニクロと事情は似ている。今や、DHCと通常の経済取引をしているだけ、という言い訳は通用しない。DHCの不当な差別に加担し、差別を助長している、と批判されざるを得ないのだ。

DHCとの取引あった32社が、吉田嘉明のヘイトコメントにどのような反応をしたか、よく覚えておこう。

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