ずいぶん長かった印象の今年の9月だが、今日で終わる。都会にも秋の気配。上野周辺を歩くと、紅葉にはまだ早いがさすがに落ちついた雰囲気。
たまたま立ち寄った五條天神社頭の掲示板に、「平成二十九年九月 生命の言葉」が。
虎に乗り かたはれ船に 乗れるとも
人の口端に 乗るな世の中
「かたはれ船」は「片破れ船」であろう。出典は荒木田守武の『世中百首』からの言葉だそうだ。「世間体が大切。人の噂にならぬよう身を処しなさい」という、何ともつまらない処世訓。だが、社頭に飾られたからには、今月中は神様の言葉だ。これが目に止まったのは本日なればこそ。次のように誤読したからだ。
アベに乗り 沈む前原にすがるとも
乗るな 百合子の口車
もちろん、アベの自公与党を支持してはならないし、沈没目前の前原民進も頼むに足りない。だからといって、けっして百合子の口車に乗せられてはならぬぞよ、という、あらたかなご託宣。眼光紙背に徹して、行間を読めば、天神様も「このたびの総選挙では護憲勢力に清き一票を投ぜよ。さすれば、国家安穏・天下太平の御利益を与えん。この旨ゆめゆめ疑うことなかれ」と言っておいでなのだ。
散歩から帰って、パソコンを開けたら、旧友小村滋君からの【アジぶら通信 第34号】が届いていた。題字に冠して「アジアは広くニホンは深く」と副題がついている。元朝日の記者だった小村君とそのごく少数の仲間たちによるメルマガ個人紙。関西人ながら沖縄にのめり込んだ小村君が、沖縄の運動の立場で発信を続けている。広告収入一切なし。カンパの要請を受けたこともない。こんなミニコミも訴える力をもっている。実はこのメルマガ、私には必ず2度届く。小村君から受信した知り合いが、私にもBccで転載してくれるからだ。
今号は5頁建て。トップは、「沖縄は不屈? 世界に発信 9/29 小凡・記」。映画「米軍が最も恐れた男 その名はカメジロー」の紹介記事である。なお、小凡が彼のペンネーム。
次いで、「『オール沖縄』に平和賞」の記事。
ドイツの平和団体「国際平和ビューロー」(略称IPB、ノーベル平和賞受賞団体)からオール沖縄会議に「ショーン・マクブライド平和賞」が 授与されるという内容だが、そのなかに小村君の思いが次のように述べられている。
「安倍政権は9月28日、“思いつき身勝手”解散を強行した。民進党は、小池新党『希望の党』に抱きついた。本土の新聞もTVも意味不明の“合流報道”で埋めつくされた。従来の野党連合はつぶれた。沖縄の辺野古新基地阻止は、本土の政局から孤立していくようだ。
しかし沖縄は元気だ。10月1日で普天間基地にオスプレイが配備されて5年になる。琉球新報は、連日、オスプレイ配備5年の調査報道だ。9月28日付は全県世論調査の記事で埋めた。「オスプレイ『危険』72%」がメインカット、「県民68%『撤回を』」が次に大きな見出し。3番手の見出しに「辺野古移設反対80%」とある。これなら沖縄の衆院4小選挙区とも翁長知事を支援する組織「オール沖縄会議」陣営が勝てるのではないか。沖縄は、わが道を進んでいる。」
なるほど、民進の崩壊は、各地の平和運動や市民運動に直ちに影響するのだ。「従来の野党連合はつぶれた。沖縄の辺野古新基地阻止は、本土の政局から孤立していくようだ。」という指摘は重い。「しかし、沖縄は元気だ」という言葉に救われる。そして、「従来の野党連合」はまた新しい運動の枠組みにつながるはずだ。それまでは、沖縄が本土を見捨てず、元気でいてほしい。
ところで、「オスプレイ『危険』72%」の数値は、さらにアップ することになる。昨29日夕刻、米軍普天間飛行場所属のオスプレイ2機が、新石垣空港に緊急着陸したからだ。その内1機はエンジントラブルで自力走行できず、車の牽引によって誘導路から除かれたという。翁長知事が、「こうした事態が繰り返されることに県民は大きな不安を感じている」と述べたが、もう何度目になることだろう。さらに、本日(30日)シリアでもオスプレイが墜落、米兵2名が負傷との報道。
明日(10月1日)のオスプレイ配備5周年には、あらためて「オスプレイ出ていけ」の声が高くなるだろう。日本全土を我がもの顔に飛びまわるオスプレイの危険が、今ここにある「国難」となっているのだから。
このオスプレイ国難を突破するには、アベに乗ってはだめ。沈む前原にすがっても無理。ましてや百合子の口車に乗せられては、オスプレイ撤退の実現はあり得ない。「オール沖縄」と、本土の「市民と野党連合」とで闘い続けるしか展望は開けないのだ。
(2017年9月30日)
激動の臨時国会冒頭解散の一日(9月28日)が明けて。メデイアの報道は、《アベ与党》対《小池新党》対立の構図で充ち満ちている。あたかも、有権者の選択肢はこの二者しかないかのごとくだ。しかし、どちらを選んでも、改憲勢力である。どちらも働く市民の味方ではない。どちらも、平和と民主主義を目指す勢力ではない。
かたや、《アベ与党》は虎である。これまで大企業の利益をもっぱらにして勤労市民に犠牲を強いてきた凶暴な虎。自分勝手なトランプとの同盟関係の堅固を誇る危険な虎。傍若無人に密林に君臨するようになって5年に近く、今や「9条改憲」と吠えている老虎である。
こなた、《小池新党》は狼である。前門の虎から逃れようとする人々を後門で待ち構える若い狼。小池百合子の権力欲に形を与えるとまさしく狼の姿となる。「日本のこころ」の代表を原始メンバーに加えておいて、民進の護憲リベラル派の参加には牙をむいて排除しようという、その心根が既に狼である。有権者は、火を避けて水に陥る愚を犯してはならない。
目前の総選挙の争点はなによりも「憲法」。対抗軸は「改憲か護憲か」である。警戒すべきは明文改憲だけではなく、解釈改憲も、なし崩し壊憲も、である。「虎」も「狼」も改憲勢力であり、平和主義・民主主義・立憲主義・人権原理に背を向けるからこそ危険な存在なのだ。どちらを勝たせても、特定秘密保護法も戦争法も共謀罪もなくなることはない。もしかしたら、改悪される恐れすらある。
選挙の主人公は、政党でも候補者でもない。もちろんメディアでもなく、飽くまでも有権者こそが主人公である。主権者が国政の進路を決定するために、このときに有権者として立ち現れるのだ。主権者が自らを主権者として自覚する機会でもある。
その主権者は、けっして改憲も壊憲も望んではいない。平和と人権と民主主義の確立と堅持とを望んでいる。その主権者の意を体する市民と野党が、護憲勢力として結集し、共闘の条件整備の努力を積み重ねてきた。政党は、その共闘の主体としての市民をけっして裏切ってはならない。
勤労市民にとっては、虎と狼とどちらを選んでも後悔することになる。改憲指向の保守2党しか選択肢がないとすれば、大政翼賛状況に等しい。10月10日の公示までには全選挙区に主権者の選択肢として、虎でも狼でもない護憲の鳩が羽ばたくことになるだろう。
いま、目の前に繰り広げられた突然の事態に、メデイアも有権者も戸惑いを隠せない。劇場型の政治の流れに翻弄されてメディアの誤導が甚だしいが、これに惑わされてはならない。もう少し落ちつけば、虎と狼の本性が暴かれることになるだろう。まだ時間はある。一時的な暗転に目を眩まされることなく、落ちついて政策や候補者を見極めよう。とりわけ、小池百合子とはこれまで何をし、どんな発言をしてきた人物なのかを見据えよう。
そのうえで、ぜひとも、前門の虎でも後門の狼でもない、護憲の鳩をこそ選択するよう呼びかける。
(2017年9月29日)
政治情勢の一寸先は闇、とはよく言ったもの。
9月1日の民進党臨時党大会における代表選挙が始まりだった。前原新代表の幹事長人事の不手際から、野党側の態勢不備とみての政権側からの解散風。まさかと思っているうちに解散が現実のものとなった。17日の朝刊が一斉に解散本決まりと報道し、総選挙は「アベ改憲政権」対「立憲野党連合」の対立構図かと思いきや、今週になって思いもかけない突風にかきまわされる政局模様。
これまで選挙共闘を目指してきた「市民と野党」を糾合する大義は、憲法擁護である。明文改憲阻止だけではなく、平和・民主主義・立憲主義の堅持でもある。具体的には、戦争法の廃止、共謀罪の廃止。アベ政権打倒は共通のスローガンではあつたが、けっしてこれを自己目的とするものではない。
誰もが改憲勢力と護憲勢力との壮大な選挙戦の構図を思い描いていた。当面は議席の3分の1の確保が現実的目標。小選挙区基調の現行制度でもそれは可能だと考えてきた。ところが、「リセット新党」の進出で民進党が事実上解党した今、「一寸先は闇」となった。
それでも、「市民+野党?民進」で、護憲勢力を糾合して選挙戦を闘うしかない。護憲勢力による、護憲のための、護憲選挙である。
小池新党とは何か、「保守+右翼」勢力であり、明らかな改憲勢力ではないか。これがアベ政権と張り合う実力を持つとすれば、改憲指向二大政党体制の出来となる。これは、現代版大政翼賛会の悪夢というほかはない。
護憲勢力は、地道に愚直に改憲阻止と、憲法理念の実現を訴え続けるしかない。幸いに、護憲の思想と運動は多くの無党派市民層に強固な支持基盤を持っている。選挙の主体は、「護憲政党+護憲市民」だ。
護憲派の闘う相手は二つ。一つは、「疑惑隠しおじさん」率いる旧改憲勢力。もう一つは「希望リセットおばさん」が君臨する新改憲勢力。両勢力との対決の中で、改憲を阻止するに足りる議会内勢力確保を目指さなければならない。
そんな事態の今日(9月28日)、衆議院が解散した。党利党略の疑惑隠し解散である。昨日、憲法学者90名が、「臨時国会冒頭解散に対する憲法研究者有志の緊急声明」を発表している。その全文をご紹介したい。
内閣総理大臣の「専権事項」論が誤りであることが中心だが、現情勢下の憲法論議のあり方や、森友加計隠し批判、メデイアへの注文などにも言及されていて、読み易く読み応えがある。
この層の厚い憲法学者たちも、護憲派の強い味方だ。
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臨時国会冒頭解散に対する憲法研究者有志の緊急声明
2017.9.27
1.安倍首相は、9月28日の臨時国会の冒頭に衆議院を解散すると表明した。この結果、10月22日に衆議院総選挙が行われることとなった。わたしたち憲法研究者有志は、この解散・総選挙にいたる手順が、憲法の規定する議会制民主主義の趣旨にまったくそぐわないものであること、今後の衆議院総選挙とその結果が、憲法と立憲主義を危機にさらすものであること、主権者がこの総選挙の意味を充分に認識し、メディアがそれを公正な立場から報道することが必要であること。以上の諸点に関して、ここに緊急声明を発表する。
2.臨時国会の召集請求が長く放置されてきたこと
今回の臨時国会の開催は、6月22日以来、野党が開催を求めていたものである。日本国憲法53条は「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」と規定している。
しかしながら安倍内閣は、その要求を無視し、臨時国会の開催をいままで先送りしてきた。正当な理由なく臨時会の召集を決定しなかったことは、野党による国会開催の要求権を事実上奪うものであり、少数派の意見も反映させて国政を進めるという議会制民主主義の趣旨に反する。
3.森友・加計問題を国会の場で明らかにしない点について
政治の私物化が濃厚に疑われる森友・加計問題を国会で明らかにすることは、主権者国民の希望であり、野党の求めていたことである。しかし臨時国会冒頭で衆議院を解散し、野党からの質問もいっさい受けないという内閣の姿勢は、民主主義の名に値する議会運営とはまったくかけ離れたものとなっている。
内閣は、国会に対して連帯して責任を負う(憲法66条3項)という議院内閣制の原則からすれば、安倍内閣および与党は、森友・加計問題について、早急に国会に資料を提出し、参考人・証人の喚問に応じなければならないはずである。
今回の解散は、「丁寧に説明をする」という首相自身の声明にも反する。実質審議なしの冒頭解散は、首相が疑惑追及から逃げ切り、国民に対する自らの約束を公然と破る暴挙に出たと言わざるを得ない。
4.内閣の解散権の濫用について
日本国憲法の定める解散権の所在および憲法上の根拠については、衆議院が内閣不信任を議決した場合・信任を否決した場合の69条の場合に限るとする説と、内閣の裁量によって7条を根拠に解散を行いうるとする説がある。しかし7条根拠説であっても、内閣の解散権行使は重大な権力行使であるため、党利党略に基づく自由裁量であってはならず、一定の限界があるという点では一致している。
衆議院の解散は、重要な問題について国民の意思を問うための機会としてなされるべきであって、国民の意思表明を求める必要があり、また選挙を通してその意思表明が行われる条件が整った場合に限られるのである。
この点、今回の解散・総選挙では、解散を事実上決定したのちに選挙の争点を決めるといった、泥縄式に争点が設定されたものであり、国民は何を基準に投票を決めれば良いのかがわかりにくい。このような解散権行使は濫用であって、憲法7条の趣旨に違反するものである。首相の猛省を促したい。
5.内閣総理大臣の「専権事項」論が誤りであることについて
なお、内閣の衆議院の解散権については、内閣総理大臣の専権事項であるとして、安倍首相の意思を尊重すべきだという議論がある。しかし憲法7条に基づく解散は、内閣の助言と承認によって天皇が行う国事行為である。したがって解散の実質的決定権は,内閣総理大臣ではなく、あくまで内閣という合議体に帰属するものである。
6.改憲論議のあり方について
また、今回の解散を受けて始まる選挙においては、改憲問題が主な争点の一つになると伝えられている。近年、一部政治家などの間で、現在の政治、社会のさまざまな問題の原因をきわめて乱暴にあたかも憲法の規定するところに基づくものであるかのように描き、まるで、憲法を変えることで、人々の不安や不満を解決できるかのように煽るといった、ためにする改憲論、情緒的な改憲論が広がりつつある。そのような改憲論に対する理性的な検討や批判は、しばしば「現実を知らない理想論」「世間知らずの学者の議論」だと揶揄され罵倒されることも増えている。
このような傾向は未だ支配的ではない。しかしこれを放置することは憲法政治にとってのみならず、この国の自由で伸びやかな社会と平和の将来にとって極めて危険である。このたびの選挙において、そのような傾向が強まることを私たちは警戒し、こうした傾向や「流れ」に抗して、静かに、しかしきちんと私たち憲法研究者も声を挙げていきたいと思う。
7. 9条3項加憲論を選挙の公約に出してくること
安倍首相は、自民党の公約に、憲法9条3項に自衛隊を明記する規定を追加する改憲を掲げる予定と報じられている。わたしたちは、この改憲は日本国憲法の平和主義に対する大きな脅威であると考える。
同時に、このような公約が、与党内における充分な議論を経ず、文言の精査も行われないままで、国民の「判断」に付されようとしていることについて、立憲主義の立場からの危惧を覚えざるをえない。今後、数を頼りに憲法審査会での議論を強引にすすめ、本会議での乱暴な審議を経て、予定した時期までに国会による発議を成し遂げることに邁進するというのであれば、なおさらである。憲法は国の最高法規であり、その規定は、他の法律や命令などの在り方を規定するものである。改憲はそれをどうしても必要とする事実が存在し、また改憲によってその目的が達成される場合に限って行われるべきである。9条に3項を加える議論は、どのような目的で行われ、その結果どういったことが実現するのか。まったく議論されていない中での選挙における公約化は、憲法の重みをわきまえない、軽率な改憲ごっことでも評すべきものである。
8.ところで、いま日本のマスメディアが、現実に正面から向かいあって深く掘り下げることを曖昧にし、ただ目新しいものを追いかけ、それを無批判に報道する傾向を強めていることは、われわれ憲法研究者が憂慮するところである。しかし、そのような中にあっても多くのジャーナリストが批判的観点を忘れず、日々努力していることを私たちは知っている。今度の選挙にあたって、自由で闊達な報道がなされることを私たちは強く期待するものである。
9.安倍内閣は、秘密保護法・安保法・共謀罪法などの重要法案において、憲法違反の疑いが指摘されていたにもかかわらず、前例のない乱暴な国会運営によって、それらを成立させてきた。また自衛隊PKO日誌問題や森友・加計事件などにおいては、国会と国民に情報を適切に提供することや、公開の場で真実を究明することを妨げてきた。
今回の選挙は、憲法政治をさらに危険な状況に陥らせるおそれがある。しかし、それと同時に、市民の努力によって憲法政治を立て直す大きな可能性をもつものでもある。その意味では、主権者としての見識と力量を発揮するチャンスが到来したというべきである。
憲法を擁護するため、わたしたち国民に、「不断の努力」(憲法12条)、「自由獲得の努力」(憲法97条)が、いまほど強く求められたことはない。しかしその「努力」は必ずや実を結ぶであろう。そのことは歴史的事実であり、また私たちはそのことを信じている。
以上
憲法研究者有志一同(あいうえお順) 総数90名(2017.9.27現在)
愛敬 浩二(名古屋大学)
青井 未帆(学習院大学)
青木 宏治(高知大学名誉教授)
浅野 宜之(関西大学)
麻生 多聞(鳴門教育大学)
足立 英郎(大阪電気通信大学名誉教授)
飯島 滋明(名古屋学院大学)
井口 秀作(愛媛大学)
石川 多加子(金沢大学)
石川 裕一郎(聖学院大学)
石村 修(専修大学名誉教授)
稲 正樹(元国際基督教大学)
植野 妙実子(中央大学)
植松 健一(立命館大学)
植村 勝慶(國學院大學)
浦田 一郎(一橋大学名誉教授)
浦田 賢治(早稲田大学名誉教授)
榎澤 幸広(名古屋学院大学)
江原 勝行(岩手大学)
大内 憲昭(関東学院大学)
大久保 史郎(立命館大学名誉教授)
大津 浩(明治大学)
大野 友也(鹿児島大学)
大藤 紀子(獨協大学)
岡田 健一郎(高知大学)
岡田 信弘(北海学園大学)
奥野 恒久(龍谷大学)
小栗 実(鹿児島大学名誉教授)
小沢 隆一(慈恵医科大学)
押久保 倫夫(東海大学)
柏? 敏義(東京理科大学)
金子 勝(立正大学名誉教授)
上脇 博之(神戸学院大学)
河合 正雄(弘前大学)
河上 暁弘(広島市立大学)
菊地 洋(岩手大学)
北川 善英(横浜国立大学名誉教授)
君島 東彦(立命館大学)
清末 愛砂(室蘭工業大学)
倉持 孝司(南山大学)
後藤 光男(早稲田大学)
小林 武(沖縄大学)
小林 直樹(姫路獨協大学)
小林 直三(名古屋市立大学)
小松 浩(立命館大学)
笹沼 弘志(静岡大学)
澤野 義一(大阪経済法科大学)
志田 陽子(武蔵野美術大学)
清水 雅彦(日本体育大学)
菅原 真(南山大学)
杉原 泰雄(一橋大学名誉教授)
高佐 智美(青山学院大学)
高橋 利安(広島修道大学)
高橋 洋(愛知学院大学)
竹森 正孝(岐阜大学名誉教授)
多田 一路(立命館大学)
建石 真公子(法政大学)
千國 亮介(岩手県立大学)
塚田 哲之(神戸学院大学)
寺川 史朗(龍谷大学)
長岡 徹(関西学院大学)
中川 律(埼玉大学)
中里見 博(大阪電気通信大学)
長峯 信彦(愛知大学)
永山 茂樹(東海大学)
成澤 孝人(信州大学)
成嶋 隆(獨協大学)
西原 博史(早稲田大学)
丹羽 徹(龍谷大学)
根森 健(新潟大学フェロ?、神奈川大学)
藤井 正希(群馬大学)
藤野 美都子(福島県立医科大学)
前原 清隆(日本福祉大学)
松原 幸恵(山口大学)
宮井 清暢(富山大学)
三宅 裕一郎(三重短期大学)
三輪 隆(埼玉大学名誉教授)
村上 博(広島修道大学)
村田 尚紀(関西大学)
本 秀紀(名古屋大学)
元山 健(龍谷大学名誉教授)
森 英樹(名古屋大学名誉教授)
山内 敏弘(一橋大学名誉教授)
横尾 日出雄(中京大学)
横田 力(都留文科大学)
吉田 栄司(関西大学)
吉田 善明(明治大学名誉教授)
若尾 典子(佛教大学)
和田 進(神戸大学名誉教授)
渡邊 弘(鹿児島大学)
へぇ? 「日本をリセット」? いったいぜんたい、そりゃなんのことかね?
若狭と細野ら、おじさんたちのぐたぐたな協議を「リッセット」ということなら意味は明瞭だ。意味が明瞭なだけに、この「リセットおばさん」の人間性もよく見えてくる。希望の党とはなんたるものか、おぼろげながらもその体質やイメージがつかめる。新しくできる政党への投票の可否の判断材料にもなる。
しかし、「日本をリセットするために党を立ち上げる」となると、さっぱり分からない。「しがらみがないからリセットできる」と言われてもね。さっぱり分からないことを述べ立てるのは、有権者を愚弄することとは思わないか。
敗戦にともなう反省による「天皇制日本のリセット」。平和を求めて、「軍国日本をリセット」。財閥跋扈を許した経済体制をリセット。両性の平等を阻害してきた家父長制をリセット。歴史修正主義や民族差別を許容する日本の偏狭をリセット。臣民根性や官尊民卑思想の残滓をリセット…。などと、具体的に言ってもらわなければね。「日本をリセット」は意味がない。「日本のどの面を否定的なものととらえて、どのような日本を目指そうというのか」。それを明瞭にしないままの「リセットおばさん」の放言には辟易せざるを得ない。
この人の最大の関心事は、いま「民進党のリセット」であるようだ。実はそのことは、アベと同じく、戦後民主主義のリセット、社会的規制のリセット、福祉行政のリセット、もしや平和のリセットを考えているのではなかろうか。アベに代わって、庶民の希望をリセットすることにはならないか。リセットおばさんのリセットが、何に向けられることになるのか。この曖昧さが怖い。
一般論だが、カタカナ語を多用する文章には無内容なものが多い。曖昧な内容をイメージ先行でごまかそうとする魂胆。この人の言葉は、その典型だろう。眉に唾して聞かねばならない。
その「リセットおばさん」が新しい政党の綱領をこしらえた。公平に見て出来が悪い。読む人を感動させるものとなっていないのだ。共感も、勇気も、展望も呼び起こすものではない。もちろん、国民の希望を語るものとはほど遠い。
まず、前書きがある。
「我が党は、立憲主義と民主主義に立脚し、次の理念に基づき党の運営を行う。常に未来を見据え、そこを起点に今、この時、何をすべきかを発想するものとする。」
ここに述べられている意味ある言葉は、「立憲主義と民主主義」だけである。が、これとてあまりにも当然のこと。もっとも、アベ政権批判の市民と野党の主要なスローガンが、「立憲主義と民主主義を守れ」である。デモの中で官邸に向かって、アベ政権の具体的な悪政に突きつけられるときにこそ、「立憲主義と民主主義を守れ」は政治的に鋭く重い意味を持つ。「リセットおばさん」によって、新政党の綱領に平板に置かれたときに、何と軽い言葉となるのだろうか。
前書きに続く綱領本文は6項目である。
1 我が国を含め世界で深刻化する社会の分断を包摂する、寛容な改革保守政党を目指す。
最初から分からない。文意不明瞭の出来の悪さが際立っている。鉛筆をなめた人物の文章能力の問題もあろうが、集団的な検討を経ていない。推敲も不十分。流行り言葉を思いつきで並べてみたというしかない。あるいは、ことさらに曖昧な内容としたものだろうか。
「世界で深刻化する社会の分断」には、二種類考えられる。その一つが、民族・人種・宗教などによる理由なき差別である。「我が国」においては、在日外国人に対する民族差別、ヘイトスピーチデモの横行。しかし、周知のとおり、希望の党を主宰する小池百合子は、民族差別を克服する努力をしていない。むしろ、積極的に煽っているではないか。
今年の9月1日、関東大震災における朝鮮人虐殺犠牲者を追悼する式典に、これまで長年の慣行として都知事から寄せられていた朝鮮人犠牲者に対する追悼文は、今年はなかった。右翼・石原慎太郎ですら献じていた追悼文を、意識的に廃止したのだ。また、前知事が韓国大統領に約束した、都有地を韓国人学校の敷地として貸与するという約束も反故にした。
民族差別を糾弾しているのは、リベラル派であり左翼であって、保守陣営ではない。そこで、綱領起案者は、「社会の分断を包摂する保守政党を目指す」とだけ書いたのでは、座りが悪いと思ったのだろう。「保守政党」に「改革」を冠し、さらに「寛容な」と書き加えた。
しかし、もっと端的に、「民族や人種差別をなくして、人皆が平等に共生できる社会を作ろう」「ヘイトクライムを一掃しよう」「在日朝鮮人・韓国人・中国人に対する偏見をなくそう」となぜ言えないのか。
「我が国を含め世界で深刻化する社会の分断」のもう一つは、経済格差である。その原因は、新自由主義経済政策にある。「寛容な改革保守政党」は、まったくその矛盾解消策をもっていない。
2 国民の知る権利を守るため情報公開を徹底し、国政の奥深いところにはびこる「しがらみ政治」から脱却する。
細かい表現はともかく、この目標自体には全面的に賛成する。都民ファーストの会が自党の都会議員に箝口令を布いて、ブラックボックスを作るような愚を犯さぬよう願うのみ。
3 国民の生命・自由・財産を守り抜き、国民が希望と活力を持って暮らせる生活基盤を築き上げることを基本責務とする。
他党との差別化はまったく意識されていない。ほとんど日本国憲法に書き込まれていることだが、「憲法擁護」をなぜ言えないのか。
4 平和主義のもと、現実的な外交・安全保障政策を展開する。
アベ政権は、「積極的平和主義」という旗を掲げて集団的自衛権行使を容認する戦争法を作った。「平和主義に徹する」といわずに、「現実的な」外交・安全保障政策というのは、自衛隊の増強、軍拡路線に走る余地を残しているのではないかとの疑念を感じざるを得ない。
5 税金の有効活用(ワイズ・スペンディング)の徹底、民間のイノベーションの最大活用を図り、持続可能な社会基盤の構築を目指す。
「ワイズ・スペンディング」に、「イノベーション」。政党の綱領には不似合いのカタカナ語。「持続可能な社会基盤の構築を目指す」って、余りにも漠然ゆえに無内容。
6 国民が多様な人生を送ることのできる社会を実現する。若者が希望を持ち、高齢者の健康長寿を促進し、女性も男性も活躍できる社会づくりに注力する
ぐっとこらえて「ダイバーシティ」を使わなかったことだけを評価しよう。アベ政権の一億総活躍政策の物まねなのが情けない。
総じて、何ともお粗末というしかない。哲学がない。体系性がない。格調が低い。余りにも当たり前で特色が無い。政権と張り合う気概が見えない。どんな手法で、どんな社会を作っていこうというのか見えてこない。なによりも目玉とされた「原発ゼロ」と「消費税の増税凍結」はどうした。
希望の源泉であるはずの憲法擁護がない。希望を阻害している安心して働ける雇用環境の整備や雇用格差を解消する姿勢がない。教育の無償化への要求の切実さに理解がない。現政権の政策への批判の視点がない。こんな綱領しか掲げられない政党に、とうてい「希望」を語る資格があろうとは思えない。むしろ、リセットおばさんは、市民と4野党の選挙共闘を妨害することで、庶民の希望をリセットしようとしているのだ。
(2017年9月27日)
世は挙げての総選挙モード。アベ政権の疑惑隠し解散が目前である。あらためて、アベ晋三という人物の解散理由説明に接して、どうしてまたこんなオジさんにわが国の政権が預けられているのかと情けない。保守政治家のなかにも、これよりはマシなのが大勢いるだろうに。
メディアの話題は、もっぱら「リセットおばさん」の新党立ち上げ。こちらも保守でコテコテの改憲派だが、消費増税凍結と原発ゼロの政策を掲げるようだ。このクセ球が、いかにもポピュリストの匂い。それだけに、護憲派の票を蚕食しかねない不気味さ。
護憲派は、愚直に王道を行くしかない。全国の小選挙区で可能な限り、「市民と野党の統一候補作り」を進めることだ。与党候補との1対1の対決の構図を作ることが焦眉の急の課題。なにしろ、9月28日解散で、公示は10月10日の見通しである。候補者調整は可及的すみやかに実行されなくてはならない。遅くとも期限は10月10日まで。半月の勝負。つくづくと、党利党略解散の思惑が見えてくる。
「市民と野党をつなぐ会」が各地にできている。今、この市民運動に期待がかかる。
たとえば、「市民と野党をつなぐ会@東京」が、ずいぶん以前からホームページを立ち上げている。
https://tunagu2.jimdo.com/
なお、ツイッターは、
https://twitter.com/tsunagu_tokyo
「当会は、都内25の衆議院小選挙区のそれぞれで、「市民と野党の統一候補作り」を進める市民団体の横の連絡会です。」と趣旨を述べ、共闘についての「最近のニュース」を載せ、「政策協定例」や「各地の市民組織」「その動向」「資料」が掲載されている。
昨日(9月25日)付のニュースは以下のとおり。
「9/25、民進党の長妻昭 東京都連会長(党本部の選挙対策委員長も兼任)と面談し、早期の四野党による候補者調整と候補者発表を要請致しました。つなぐ会からの要請書に加え、預かってきた11区の「チェンジ国政!板橋の会」、2区の「みんなで未来を選ぶ@文京台東中央」からの要請書も手渡しました。」
9月23日には、「めぐせた 解散直前の決起集会」
いよいよ国会解散を前にして、めぐせたでは、9/23決起集会を開きました。東京5区、6区の民進党、共産党の候補者が、それぞれ力強い決意表明をしました。集会後半では、5区と6区に分かれて、今後の具体的行動計画について打ち合わせを行いました。
動画(6分半)https://youtu.be/ZfZefvFJp-E
*(各地の活動)「みんなで未来を選ぶ@文京台東中央」での政策作り
動画(7分)https://www.youtube.com/watch?v=4EHcs6b-JzQ&feature=youtu.be
9月21日は、「しぶなか市民連合、7区の民進党・共産党に申入れ」
突然の解散総選挙、しぶなか市民連合は野党共闘の実現に向けて、行動をスタートさせています9月21日、私たちの選挙区である東京7区の民進党・共産党の選対担当者にお目にかかり、「野党統一候補実現のための申し入れ書」をお渡ししてまいりました。
民進党は長妻昭衆院議員の秘書のかた、共産党は渋谷区委員会の選対委員長にお受け取りいただきました。この申し入れを皮切りに、衆院選を安倍政権にストップをかけるチャンスと捉え、市民が望んできたかたちで野党共闘が果たされるよう、私たちも持てる力を尽くします!
9月21日付で、「解散に向け、早期の候補者決定を求める要請書」の記事もある。
当然のことだが、候補者調整は容易なことではない。
「(1)冒頭解散目前にもかかわらず、民進党は共闘に関して足踏み状態です。他方、共産党は一方的に降ろすことはしないとして、相互推薦・相互支援を求めています。このままでは、安倍政権は倒せません。地域で市民と野党の共闘を創り、下から状況を変える運動をしてきた当会の真価が発揮される時です。9/21のつなぐ会緊急拡大運営委員会では、幾つかの地域からの実践報告がされた後、4野党への要請書の文案を後述のように決めました。
方針提案の動画(9分半) https://youtu.be/XeSOQ1DfEQ8
(2)特に意見交換があったのは、候補者擁立を見送る党への敬意の表し方でした。候補者擁立を見送ることは、降りるご本人の葛藤はもちろんのこと、政見放送の回数減、宣伝カーの台数減等で比例票において不利益を生ずる深刻な問題が政党側にあります。だから今まで衆議院選で野党一本化はありませんでした。その不利益に対する思い遣りも、代替案も無く、一方的に候補者を降ろせという話は政党間でも、市民からでも通らないと思います。しかしながら、こうした問題に対して、市民は事情に疎いため、地域組織でほとんど討論されてきませんでした。そこで、連絡会としては、下記4番の表現とし、その貢献を広く知らせることとしました。
(3)「一本化」という単語は、様々なケースを含みます。「共同候補、相互推薦、相互支援」が望ましく、最低限、地域の市民組織を介した政策協定の合意によるブリッジ共闘は必要と考えられます。しかし、1項の政策協定の合意もなく、単なる野党の棲み分けとなった場合、それを2項にある応援の対象とするかどうかは、その地域の市民組織と個人が判断することになります。
——————-要請書————————-
四野党 様
「野党候補一本化の要望と、第一次発表候補者リストの提案」 2017/9/21「市民と野党をつなぐ会@東京」
1.安保法制廃止等の政策協定の合意を前提に、早急に候補者の一本化を求めます。特に現職については最優先で発表して頂きたい。(第一次発表候補者リストの提案参照)
2.四野党で一本化された候補者を「市民と野党をつなぐ会@東京」は全力で応援します。
3. 四野党から複数立候補の小選挙区に関して、当会としては応援しません。
4.大義のために候補者擁立を見送られた党の英断に対して、当会は敬意を表し、その貢献が選挙全般において正当に評価されるように広く呼びかけます。当会のHP、SNSに掲載し、広く知って頂くようにします。
(注)「市民と野党をつなぐ会@東京」は地域組織の連絡会なので、実際に判断をするのは各地域組織と個人です。個人がそれぞれの判断で行動することは当然のことです。当会として、一本化候補の地区への応援集中を呼び掛けはしても、複数立候補の地区への応援を呼び掛けることはないということです。
——————————
第一次発表候補者リストの提案
(四野党現職の小選挙区候補者で、政策協定が結べると見込まれる候補者)
【前回、小選挙区で当選している議員】
7区 長妻昭(民進党)、15区 柿沢未途(民進党)
【前回、比例復活で当選している議員】(もし今回小選挙区で当選できれば、他の人が比例議員となれるので、民進党が2議席、共産党が2議席純増となる)
6区 落合貴之(民進党)、16区 初鹿明博(民進党)、12区 池内沙織(共産党)、20区 宮本徹(共産党)
(注)18区の菅さんは新党結成に言及されており、当会としては四野党のご判断に立ち入らない立場から、第一次リストには記載していません
長妻さんからは「四野党で協議を進めている」「市民からこのような後押しがあることは、大変ありがたい」とのお話しがありました。」
各地の市民組織の名称は以下のとおり。
《東京》
第1区 東京1区市民連合(仮称)準備会
第2区 みんなで未来を選ぶ@文京台東中央(略称ぶたちゅう)
第4区 戦争法廃止オール大田実行委員会
第6区 市民連合 めぐろ・せたがや(略称めぐせた)
第7区 選挙で変える!しぶや・なかの市民連合(通称しぶなか市民連合)
第8区 自由と平和のために行動する議員と市民の会@杉並
第9区 練馬・みんなで選挙(略称ねりせん)
第10区 TeNネットワーク
第11区 チェンジ国政!板橋の会?
第12区 みんなで選挙@東京12区準備会
第13区 市民と政治をつなごう!市民連合あだち
第15区 江東市民連合(2017/10/1発足予定)
第16区 市民連合えどがわ(仮称)準備会
第18区 選挙で変えよう!こがねい市民連合
選挙で変えよう!ふちゅう市民連合???
統一候補を実現する武蔵野の会
みんなで選挙東京18区 (ミナセン18区)
第19区 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合@国分寺(略称・市民連合@国分寺)
第20区 選挙で変えよう東久留米市民連合
選挙でかえよう20区市民の会(仮称)準備中
第21区 アベ政治を許さない日野市民連合
UNITE!ひの
第22区 東京22区市民連合(仮称)2017/11/18立上げ予定
第23区 市民連合東京23(仮)
まちだ市民連合 2017/10/7発足予定
市民連合・多摩 2017/10/7発足予定
第25区 あにすんだ勝手連東京25区
選挙で変えよう!市民連合あきる野
選挙で変えよう!市民連合@昭島 2017/9/26発足予定
なお、「つなぐ会@東京」のツィッター版に、次の記事が掲載されている。
https://twitter.com/tsunagu_tokyo/status/909793939992936448
次期衆院選で【野党共闘】が実現すると、
60選挙区で与野党の勝敗が逆転
ほぼ拮抗も合わせるとなんと93選挙区で接戦
(2014衆院選結果をベースに試算)
「つなぐ会」とは、「市民と野党をつなぎ、各野党をつなぐ会」の意だが、つなぐことで希望が見えてくる。改憲を阻止して立憲主義を堅持する。そして議会制民主主義と平和を確かなものにする明日への希望である。全国各地の「つなぐ会」は、明日への希望をつなぐ会でもある。
(2017年9月26日)
総選挙が近い。きたる選挙ではアベ政権の凋落を見たい。できることなら、その断末魔を見届けたい。
護憲派議席拡大という朗報を聞きたい。かつてのごとく、議会の中に「堅固な3分の1の壁」の再構築を期待したい。
そのためには、まずは選挙共闘である。現行の小選挙区制を前提とせざるを得ない以上、護憲派が選挙に勝つためには、共闘による候補者調整が必要である。これが難儀だ。実に難しい。難しいけれども、これを乗り越えずして護憲派の勝利はなく、日本国憲法典の安定もない。
私の地元でも、市民による候補者一本化の議論が急速に盛りあがっているが、さて何を共闘の共通課題とするか、一致点をどこに定めるべきか。けっして容易ではない。市民が真剣に容易でない討議を重ねていることに、民主主義の原型を見る思いである。
選挙に限らず、共闘のハードルを上げて高い理念の運動を起こせば、見解を同じくする人々の間の共闘となって、鋭い問題提起と迅速な行動のできる運動が可能であろうが、共闘の幅は狭まる。パワーの不足は否めない。
さりとて、共闘の幅を広げてパワーを追及すれば、理念が薄められ、いったい何のための共闘か、わけの分からいものとなってしまう。
アンチ・アベ政権だけでの選挙共闘もありなのかも知れないが、護憲派が維新や小池新党などと組んでの「共闘」はあり得ない。それこそ、何のための共闘かが問われることになろう。
一方、護憲派の選挙共闘というときに、民進党抜きの共闘はなかろうが、どのように民進党に護憲の姿勢確保を求めるか、なかなか難しそうではなかろうか。
などと考え込んでいるところに、熊本での野党共闘のニュースが飛びこんできた。
熊本日日新聞が昨日報道した、「熊本全区、野党共闘」「次期衆院選で民進、共産の県組織が方針」という朗報。
https://this.kiji.is/284127793541039201?c=92619697908483575
朝日は、「野党、地方で共闘」「熊本の3選挙区 民・共、擁立調整」との見出し。
各紙の報道を総合すれば、次期衆院選に向けて民進党県連と共産党県委員会など野党間の選挙協力協議が進展し、熊本1?4区で候補を事実上一本化する方針を決めた。中央で野党共闘の協議が進まない中、地方組織の方針が先行した格好だ。確定すれば全国で初めて民進、共産に社民を加えた3党の野党共闘の環境が整い、県内の全4選挙区で自民党現職と対決することになる。
まだ確定ではないが、全4区のうち、1区と4区は民進党、2区は社民党、3区は共産党で一本化の予定だという。
民進党県連の代表は、「野党候補を一本化し、与党対野党の構図をつくることが重要だと判断した」と強調。党本部が今後、共闘方針を決めなくても「県独自に共闘を進める方針は変わらない」とした。
民進党の地方と中央では、共闘に関する温度差が大きいようだ。民進党県連代表は候補者の擁立取り下げについて「野党候補がバラバラのまま戦っても厳しい結果になる。野党候補者は1人が望ましい」と説明。共産党県委員会委員長は「安倍政権を倒すためには市民と野党の共闘しか道はない。全選挙区で共闘したい」と話したという。
熊本は民進県連の選挙共闘への積極姿勢が際立っている印象だが、全国で市民運動グループが政党間の接着剤になろうと懸命の努力を続けている。まずは熊本に注目したい。そして、それを弾みにした、全国の選挙共闘の実現を願う。
それなくしては、アベ政権の断末魔はおろか凋落をすら見ることができない。そして、そのことが同時に日本国憲法の命運に直接関わってくるのだから。
(2017年9月24日)
「自民惨敗の都議選」(7月2日)に続く大型地方選挙として、民意の動向を占う機会と注目されていた仙台市長選。昨日(7月23日)投開票の結果、郡和子候補の勝利となった。同候補は、民・共・社・由の4野党共闘候補。「市民と野党」の共闘が結実したことになる。安倍内閣の支持率が急落するさなかでのこの結果、政権への影響は不可避である。それだけではなく、今後の野党共闘選挙のモデルとして大きな意義がある。
都議選は、部分的な野党共闘はあったものの基本は各政党の選挙戦。特殊な事情として、都民ファーストの会という本来保守でありながらヌエのごとき政治勢力の存在があった。反自民票の主たる受け皿の地位は、この政治勢力にさらわれた。しかも都議選では、「都ファ+公明」の選挙協力が成立し、自民は公明に離反されて孤立してもいた。
それと比較して仙台市長選は、与党勢力対野党勢力が四つに組んでの総力戦となった。「自・公の与党」対「民・共・社・由の野党」の闘い。極めて普遍性の高い選挙状況。いずれ迎える「天下分け目の」次の総選挙の小選挙区共闘のモデルケースである。地元紙「河北新報」の出口調査が、「無党派層の投票先は、自公候補28.1%、野党共闘候補45.2%」となっているのが象徴的である。野党共闘陣営が、無党派票(≒浮動票)獲得に成功し、ここで勝敗が決まった。票差は、16万5000票対14万9000票である。
河北新報の以下の記事も紹介しておきたい。
「(敗れた)菅原さんは自民、公明の政権与党に加え、盟友の村井氏(宮城県知事)、奥山氏(前仙台市長)が支える盤石の態勢だった。『だからこそ負けるわけにはいかない』と訴えたが、知名度不足を最後まで覆せなかった。
告示直前の都議選で自民が大敗し、学校法人「加計学園」問題などで安倍政権の支持率が下落する中での選挙戦。『国政どうこうという話は私の頭の中には全くない』と述べたが、支援した市議は『アゲンストの風が吹いた』と悔やんだ。」
けっして、野党が勝って当たり前の選挙ではなかった。
与党側候補には、自民公明の政権与党が付き、宮城県知事も前市長も推しているのだ。負けるはずのない「盤石の態勢」と言ってもよい。それでも投票率が上がり、野党共闘に票が流れた。『アゲンストの風が吹いた』のだ。
河北新報は次のようにも伝えている。
「村井氏(知事)との近さを前面に出したことで、他候補から『お友達政治は許されない』『市は県の支店ではない』との批判も招いた。落選が確実となり、事務所では吹っ切れた表情で敗戦の弁を述べ、支持者らに頭を下げた。村井氏と奥山氏は姿を見せなかった。」
こんな風にはならないだろうか。
「首相との近さを前面に出したことで、国民から『お友達政治は許されない』『行政は総理のご意向や忖度で動くべきではない』との批判も招いた。文科省の設置不認可が確実となり、愛媛県も今治市も、吹っ切れた表情で敗戦の弁を述べ、地元民に頭を下げた。しかし、加計学園も安倍晋三首相も姿を見せなかった。」
これも、河北新報記事。
「郡氏は民進、社民両党の宮城県連が支持し、共産党県委員会と自由党が支援。衆院議員を四期務めた知名度を生かし、幅広く支持を集めた。自民党県連と公明党県本部、日本のこころが支持した菅原氏は、政権への逆風の余波を避けようと党幹部らの応援を控え、地元市議や県議が組織戦を展開したが、及ばなかった。」
全体状況と経過が簡潔にまとめられている。弱小ながらも極右の「日本のこころ」が、与党勢力にくっついていることにも触れられている。与党や自民が何者であるかを考えるうえで貴重な役割を果たしている。
ところで、衆議院議員総選挙宮城県第1区の最近の総選挙開票結果を確認しておこう。
2014年第47回衆議院議員総選挙
土井 亨 56 自・公 前 93,345票 46.8%
郡和 子 57 民主党 前 81,113票 40.6%
松井秀明 46 共産党 新 25,063票 12.6%
2012年第46回衆議院議員総選挙
土井 亨 54 自民党 元 87,482票 39.2%
郡 和子 55 民主党 前 60,916票 27.3%
林 宙紀 35 み・維 新 38,316票 17.2%
角野達也 53 共産党 新 13,454票? 6.0%
桑島崇史 33 社民党 新 6,547票? 2.9%
宮城1区に限らない。共闘ができずに野党乱立すれば、確実に共倒れ。野党共闘ができれば、今回市長選のように十分な勝機がある。ということは、野党共闘ができずに乱立すれば確実に改憲発議を許してしまう。野党共闘ができれば、今回市長選のように改憲を阻止する勝機があるのだ。
(2017年7月24日)
本日(10月16日)の21時04分、朝日新聞デジタルが、「号外」を出した。「新潟県知事選で、医師で野党系候補の米山隆一氏(47)の当選が確実になった」という。おっ、なんと見事な。欣快の至り。
勝負にならない⇒背中が見える⇒急追⇒接戦⇒大接戦⇒横一線 との変遷が報じられてはいた。
「県民世論は原発再稼働反対なのだから、この世論を票に取り込めば勝てる」「TPP問題も今や大きな追い風」とも聞かされてはきた。
それでも、相手は「自民・公明」+「経済界・電力業界・連合」である。なかなかに勝てそうな気はしない。またまた、善戦むなしく…となるのではないか。本当に「当確」なのだろうか。糠喜びではなかろうか。
そして21時10分に続報。「新潟県知事選は16日投票され、無所属新顔で医師の米山隆一氏(49)=共・社・由推薦=が、同県・前長岡市長の森民夫氏(67)=自・公推薦=ら無所属新顔3氏を破り、当選が確実になった」。これで、まずは間違いなかろう。
米山当選の意義は、大きくは二つ。まずは、原発再稼働否定の民意が確認されたこと。これはとてつもなく重く大きい。
世界最大規模のプラント・柏崎刈羽原発を地元に抱え、事実上その再稼働の可否を問う選挙である。「原発再稼働問題の今後を左右する天王山」「最も重要な自治体選挙」と位置づけられたこの選挙に示された民意の重さは格別である。川内原発の停止を求めている三反園訓鹿児島県知事との連携を期待したい。
そしてもう一つは、野党共闘の拡大・強化への弾みである。「市民」と野党の共闘候補が勝利した意味は大きい。野党共闘は「共産・社民・自由」の3党推薦で、民進自主投票となったが、蓮舫代表までが応援にはいった。変則ではあったが、実態としては4野党共闘に限りなく近い。また、無党派市民の応援活動も大きいと報じられていた。
解散・総選挙が近いと噂されるこの時期である。「1議席を争う選挙では、野党共闘なくして勝利はない」「1議席を争う選挙でも、野党の共闘あれば現実に勝利が可能だ」という今回選挙での実例が示した成果のインパクトが大きい。
自・公勢力が各議院で議席の多数を占めているのは、小選挙区が生み出す死票のマジックによるもの。これまで野党は、分断され、各個撃破されてきたのだ。アベ政治とは、そのような上げ底議席に支えられてのことなのである。
新しい時代、新しい局面の幕開けを予感させる。
原発再稼働・TPPなどを経済の柱に据えようというアベ政権である。自公推薦候補の敗北は、現政権の終わりの始まりという予感がする。
(2016年10月16日)
本郷三丁目交差点をご通行中の皆さま、ご近所の皆さま。こちらは地元「本郷・湯島九条の会」の定例の訴えです。しばらくお耳を貸してください。
私たちは、憲法を守ろう、憲法を大切しよう、とりわけ平和を守ろう。絶対に戦争を繰り返してはならない。安倍政権の危険な暴走を食い止めなければならない。そういう思いから、訴えを続けています。
一昨年(2014年)の7月に、安倍内閣はそれまで、集団的自衛権行使は違憲としていた憲法解釈を大きく変えて、一定の制約は設けながらも、集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定をしました。戦後保守政治が自制してきた一線を越える歴史的暴挙と言わなければなりません。内閣法制局長官の首をすげ替えることまでしての荒療治でした。
そして、多くの国民の反対の声を押し切って、昨年(2015年)9月19日、集団的自衛権行使容認を内容とする戦争法を成立させました。これで、自衛隊は、自衛のための実力という域を超えて、他国の要請によって海外で戦争のできる戦力に変質を遂げています。
「安倍内閣は憲法に縛られない」「不都合な憲法条文は、内閣の方で解釈を変えてしまえ」という傲慢な安倍内閣の姿勢が、大きな批判の的になりました。立憲主義を理解せず、憲法をないがしろにする非立憲内閣、ビリケン内閣ではないか、という批判です。
「憲法9条は非軍事の平和主義を定めている」というオーソドックスな憲法理解をする革新勢力だけでなく、「自衛の場合には軍事的な手段も容認される」という専守防衛論の保守派も一緒になって、安倍内閣の危険な暴走に歯止めをかけようとしたのです。
そのため、安倍政権は戦争法を成立させはしましたが、大きな抵抗に遭って、必ずしも思うがままの立法や運用ができる状況ではありません。政権も、あらためて憲法9条の歯止めの効果を認識せざるを得なくなったのです。安倍内閣は、今や解釈改憲の限界を認識して、明文改憲を実行しなければならない。そのように考えています。
安倍内閣の目指すところは、9条改憲です。2012年の自民党改憲草案のとおりに、9条を改正して堂々の国防軍をもちたいのです。しかし、国民世論が憲法の改正を望んでいないことは明らかです。とりわけ、国民の中には、平和を大切にし憲法9条を変えてはならないという強い願いがあります。だから、安倍内閣も容易に改憲には踏み切れません。
そこで安倍内閣は何をたくらんでいるか。改憲策動を隠しながら、国会内で圧倒的な改憲派の議席を掠めとること、これが安倍政権の基本方針です。
選挙の度に、「改憲は争点ではない」、「今回選挙はアベノミクス選挙だ」などといいながら、選挙が終われば「改憲派が各院の3分の2を占めるに至った」「これが主権者国民の意思だ」と言っているのです。これを繰り返せば、圧倒的多数の改憲派議席を獲得することができる。そうすれば、強引にでも憲法改正の発議ができる。あたかも、改憲が民意だと強弁することさえ不可能ではない。
ですから、今、憲法の命運にとって死活的に大切なのは、3分の1の改憲反対派の議席を確保し守り抜くことです。その貴重な議席を積み上げる国政選挙での勝利が日本の明日の平和を守り抜くことになります。
選挙に勝つには、改憲反対勢力の共闘しかありません。とりわけ、衆議院議員総選挙で295の議席を占める小選挙区選挙での野党共闘の成否が重要です。憲法を守ろう、立憲主義を守ろう、戦争法を廃止しよう、という野党勢力と市民の連携で、改憲・壊憲・非立憲の安倍政権を支える与党に勝たなければなりません。各野党個別の闘いでは個別撃破されてしまうことは灯を見るより明らかです。
本日、その大切な選挙が始まりました。お隣豊島区と練馬区からなる衆院東京10区の補選が告示され、鈴木庸介候補が立候補の届け出をしました。この人、「期待の大型新人」と言われています。何しろ身長190cmの大型。民進党の公認ではありますが、共産・生活・社民の3党が推す、野党共同候補でもあります。10月23日の投開票の結果が注目されます。同時に行われる、福岡6区も同様。改憲派陣営は割れ、改憲阻止派が統一候補を擁立している図式です。
鈴木候補は、こう言っています。
「政治の道を志したきっかけは、内戦が終わった直後に訪れたルワンダ国内で見た無数の頭がい骨。私のこぶしぐらいの子どもの頭を見た時、『この子はどんな恐しい思いを、悲しい思いをしたんだろう』と思うと慟哭を抑えることができなかった」「本当に戦争の恐ろしさ知る人間になりたいとの思いから、アフガニスタン、ボスニア、パレスチナを回った」「今、日本の立憲主義は脅かされている。憲法を軽んじる政治家によって、われわれ日本が積み重ねてきた政治・平和が危機に陥っている」「決してこの国を戦争の惨禍に巻き込んではいけない。私たちのちょっとした選択が、一歩間違えれば戦争になってしまう」
この志を貫いてほしいものと思います。
今や、基本的な政治状況は改憲の是非をめぐる対立構造となっています。安倍政治が投げ捨てた立憲主義の政治を取り戻すことができるか否か。憲法を大切にし、政治も行政も憲法に従って行うという当たり前の大原則を、きちんと政権に守らせる勢力の議席を増やすことができるか。それとも、憲法をないがしろにして、あわよくば明文改憲を実現したいという勢力の議席を増やしてしまうか。
一方に憲法を護ろうという野党4党と市民運動のグループがあり、もう一方に改憲を掲げるアベ自民党とこれに擦り寄る公明・維新のグループがあります。この「立憲4党+市民」と「壊憲派」の憲法をめぐる争い。おそらくは、この構図がこれからしばらく続くものと思います。
今、このように憲法がないがしろにされているこのときにこそ、全力を上げて憲法を守れ、立憲主義を守れ、憲法の内実である、平和と人権と民主主義を守れ、と一層大きく声を上げなければならない事態ではないでしょうか。
本当に、今、声を上げなければ大変なことになりかねません。でも、声を上げれば、もう少しで国会の議席配分を逆転することも可能なのです。このことを訴えて、宣伝活動を終わります。ご静聴ありがとうございました。
(2016年10月11日)
日本民主法律家協会機関誌・『法と民主主義』は年10回刊。2・3月と、8・9月が合併号となる。今月発刊の8・9月号(通算511号)は、「市民と野党の共同」を特集している。7月の参院選を振り返って、全国各地の状況をこれだけ並べて読めるのは、当誌ならではの充実した企画。
「3分の2の壊憲派議席を許した護憲勢力敗北の参院選」との一面的な総括ではなく、「市民の共同と広がりが野党を動かし共闘を実現させ、さらには市民と野党の共同の選挙をもつくり出した」「全国32の一人区すべてで統一候補が立候補し、11人の当選者を生み出した」「原発と米軍基地による被害に苦しむ福島と沖縄では現職大臣が落選し統一候補が当選」「当選しなかった選挙区でも4野党の比例票を大幅に超える得票を獲得し、市民と野党の共同が生まれ成長しているという希望を生み出した」という視点からの「希望の総括」。次の総選挙・小選挙区での選挙共闘を展望してのものである。
ご案内は下記URL。
http://www.jdla.jp/houmin/index.html
ご注文は下記から。
http://www.jdla.jp/kankou/itiran.html#houmin
目次をご紹介しておきたい。
広渡清吾、佐藤学のビッグネーム論稿だけでなく、「市民が主役、津軽の『リンゴ革命』…大竹進(整形外科医)」など各地の具体的な状況がビビドで読み応えがある。
個人的には、編集長のインタビュー記事「あなたとランチを〈№19〉…ランチメイト・渡辺厚子先生×佐藤むつみ」をお読みいただきたい。渡辺厚子さんは、「東京・君が代裁判」の原告のお一人。
そして巻末の「ひろば」(日民協執行部の回りもちコラム)を今月号は、私が担当して執筆した。象徴天皇制へのコメントである。もちろん、日民協の公式見解ではなく、私の見解。憲法的視点からの象徴天皇(制)批判として目をお通しいただきたい。
特集★市民と野党の共同
◆特集にあたって……編集委員会・南 典男
◆安倍政権ヘのオルタナティブを──個人の尊厳を擁護する政治の実現を目指す……広渡清吾
◆市民が創出した新しい政治──「市民連合」の挑戦──……佐藤 学
◆東京都知事選挙における「市民と野党の共同」……南 典男
●共闘はこう闘われた──全国の状況
◆市民が主役、津軽の「リンゴ革命」……大竹 進
◆弁護士グループ勝手連で応援……新里宏二
◆市民の後押しで実現した山形の野党共闘……外塚 功
◆現職法務大臣を破っての勝利……坂本 恵
◆「声をあげれば政治は変わる」の実感を……河村厚夫
◆投票率全国トップ、攻撃にひるむことなく熱い闘いを……毛利正道
◆次に繋げる検証を──山口選挙区からの報告……纐纈 厚
◆志を同じくする市民と力を合わせて──徳島・高知合区選挙区の闘い……大西 聡
◆今後の熊本の民主主義を支える大きな力に……阿部広美
◆「大分方式」の復活と「戦争法廃止運動」の融合……岡部勝也
◆沖縄の統一戦線「オール沖縄」の圧勝……小林 武
●その外21選挙区の状況
◆岩手/秋田/栃木/群馬/新潟/富山/石川/福井/岐阜/三重/滋賀/奈良/和歌山/鳥取・島根/岡山/香川/愛媛/佐賀/長崎/宮崎/鹿児島……丸山重威
☆連続企画●憲法9条実現のために〈7〉急事態条項改憲論批判──ウラの理由をどうみるか、オモテの理由とどうつきあうか……永山茂樹
☆メディアウオッチ2016●《参院選後……》リオに覆われた重要ニュース 問われる「社会の在り方」……丸山重威
☆あなたとランチを〈№19〉……ランチメイト・渡辺厚子先生×佐藤むつみ
☆司法をめぐる動き・名前を変えても本質は変わらない 共謀罪の国会提出に反対する……海渡雄一
☆司法をめぐる動き・7月・8月の動き……司法制度委員会
☆時評●司法反動期の不当判決群の遺物……徳住堅冶
☆ひろば●「天皇の生前退位発言」に関する論調に思う……澤藤統一郎
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ひろば 2016年8・9月号
「天皇の生前退位発言」に関する論調に思う(弁護士 澤藤統一郎)
日本国憲法は、主権者国民の「総意」に基づくとして、天皇という公務員の職種を設けた。天皇は、憲法遵守義務を負う公務員の筆頭に挙げられ、他の公務員と同様に国民全体に奉仕の義務を負う。
旧憲法下の天皇は、統治権の総覧者としての権力的契機と、「神聖にして侵すべからず」とされる権威的契機とからなっていたが、日本国憲法は権力的契機を剥奪して「日本国と日本国民統合の象徴」とした。
「初代象徴天皇」の地位には、人間宣言を経た旧憲法時代の天皇が引き続き就位し、現天皇は「二代目象徴天皇」である。
その二代目が、高齢を理由とする生前退位の意向を表明した。「既に八十を越え、幸いに健康であるとは申せ、次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています。」と語っている。
天皇自らが、「象徴の努め」の内容を定義することは明らかに越権である。しかも、国事行為ではなく「象徴の努め」こそが、天皇の存在意義であるかのごとき発言には、忌憚のない批判が必要だ。さらに、法改正を必要とする天皇の要望が、内閣の助言と承認のないまま発せられていることに驚かざるを得ない。
ところが世の反応の大方は、憲法的視点からの天皇発言批判とはなっていない。「陛下おいたわしや」の類の言論が氾濫している。リベラルと思しき言論人までが、天皇への親近感や敬愛の念を表白している現実がある。天皇に論及するときの過剰な敬語には辟易させられる。
この世論の現状は、あらためて憲法的視点からの象徴天皇制の内実やその危険性を露わにしている。
天皇制とは、この上ない国民統治の便利な道具として明治政府が作りあげたものである。神話にもとづく神権的権威に支えられた天皇を調法にそして綿密に使いこなして、国民を天皇が唱導する聖戦に動員した。敗戦を経て日本国憲法に生き残った象徴天皇制も、国民統治の道具としての政治的機能を担っている。
国民を統合する作用に適合した天皇とは、国民に親密で国民に敬愛される天皇でなくてはならない。一夫一婦制を守り、戦没者を慰霊し、被災者と目線を同じくする、非権威的な象徴天皇であってそれが可能となる。憲法を守る、リベラルな天皇像こそは、実は象徴天皇の政治的機能を最大限に発揮する有用性の高い天皇像なのだ。国民が天皇に肯定的な関心をもち、天皇を敬愛するなどの感情移入がされればされるほどに、象徴天皇は国民意識を統合する有用性を増し、それ故の危険を増大することになる。天皇への敬愛の情を示すことは、そのような危険に加担することにほかならない。
いうまでもなく、「国民主権」とは、天皇主権の対語であり、天皇主権否定という意味にほかならない。この国の歴史において、民主々義や主権者意識の成熟度は、天皇制の呪縛からの解放度によって測られる。今なお象徴天皇への敬意を強制する「社会的同調圧力」の強さは、戦前と変わらないのではないか。いまだに、権威からの独立心や主権者意識が育っていないといわざるを得ない。
天皇発言や天皇制への批判の言論が、社会的同調圧力によって抑制されてはならず、自己規制があってもならない。日民協やその会員が、憲法的視点から、天皇制に関する忌憚のない発言をすることは重要な使命だと思う。
(2016年9月30日)