(2022年12月21日)
《有田芳生さんと共に旧統一教会のスラップ訴訟を闘う会》が立ち上がっている。
その公式ホームページが下記URL。
https://aritashien.wixsite.com/home
単に「有田さんを支援しよう」というのではなく、《有田芳生さんと共に闘おう》と名乗りを上げているのが末尾に記した29人。大した面子ではないか。
闘う相手は旧統一教会で、闘いの場は法廷である。闘いによって勝ち取ろうとしているものは、抽象的な「表現の自由」にとどまらない。「信教の自由」の美名のもとに猛威を振るったカルトの反社会性と政権との癒着を徹底して明らかにすること、そのことを通じて真っ当な政治を取り戻すこと。そのための闘いなのだから、有田さん一人に任せずに、わがこととして共にスラップ訴訟を闘おう、という29人。
その有田芳生さんが、「共に闘う会」のホームページに《闘争宣言》を掲出している。一節をご紹介したい。
▼教団が韓国で生まれて68年目。統一教会=家庭連合は組織内外に多くの被害者を生んできました。まさに反社会的集団です。私は元信者はもちろん現役信者とも交流してきて思ったものです。日本史に埋め込まれた朝鮮半島への贖罪意識を巧みに利用して真面目な信者を違法行為に駆り立ててきた統一教会の犯罪的行為の数々は絶対に許すわけにはいきません。
▼安倍晋三元総理銃撃事件事件をきっかけに、自民党との癒着など「戦後史の闇」の蓋が開きはじめました。私は信頼する弁護団と社会課題についてはたとえ立場が異なれども教団に立ち向かう一点で集ってくれた「有田さんと闘う会」の高い志を抱きしめて、みなさんとともに、統一教会と徹底的に本気で闘っていきます。
▼その物質的支えとして、賛同してくださる方々それぞれの「一灯」、資金カンパをお願いできると幸いです。定職もなく元のフリーランスに戻ったのは、人生の循環で、ごく普通にうけとめています。でも裁判には時間もお金もかかります。旧統一教会に訴えられてからは、ピタッとテレビの仕事はなくなりました。まさにスラップ(恫喝)訴訟の効果です。反社会的な旧統一教会に圧倒的に勝たなければなりません。被告は私と日本テレビです。私は独自に5人の強力弁護団にお願いして闘っていくことにしました。日本テレビとは別個の弁護団です。HP表紙に「カンパのお願い」があります。どうかお気持ちをお寄せください。よろしくお願いします。
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「有田さんと闘う会」への特別カンパのお願い
旧統一教会との裁判は、長丁場になることが予想されます。
スラップ裁判の目的が、<金銭的余裕がある原告が、相手を弁護士費用、時間消費、精神的・身体的疲労などで、追い詰めていくこと>にある以上、私たちは、有田さんを精神的にも、金銭的にも支えていかなければならないと考えています。
旧統一教会は、理不尽な霊感ビジネスや、信者からの多額な寄付で、かなりの資金を持っています。一方、訴えられた有田さんは、裁判準備だけで数百万円単位のお金が必要です。
そこでご支援していただける方に、カンパをお願いする次第です。
金額は問いません。可能な範囲でのご協力をお願いします。
振込先
三菱UFJ銀行 月島支店
普通口座 4500218
口座名 チームAAA
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《有田芳生さんと共に旧統一教会のスラップ訴訟を闘う会
賛同人リスト》
青木理 ジャーナリスト
池田香代子 翻訳家
石井謙一郎 フリーライター
石坂啓 漫画家
石橋学 新聞記者
?井筒和幸 映画監督
内田樹 作家
江川紹子 ジャーナリスト
木村三浩 一水会代表
坂手洋二 脚本家
佐高信 作家
辛淑玉 コンサルタント
せやろがいおじさん(榎森耕助) 芸人
谷口真由美 法学者
寺脇研 映画プロデューサー
中沢けい 作家
仲村清司 作家
浜田敬子 ジャーナリスト
藤井誠二(事務局) ノンフィクションライター
二木啓孝(事務局) ジャーナリスト
前川喜平 教育評論家
松尾貴史 俳優・コラムニスト
三上智恵 ドキュメンタリスト
宮台真司 社会学者
室井佑月 作家
望月衣塑子 新聞記者
森達也 映画監督
安田浩一 ノンフィクションライター
吉永みち子 ジャーナリスト
(2022年12月20日)
逆風に晒されている統一教会が、その組織防衛策として提起した5件のスラップ訴訟。いずれも、同教団に対する批判の言論を嫌って、コメンテーターとメディアの萎縮効果を狙ったもの。そのうちの1件として、ジャーナリスト有田芳生を被告として訴えた「統一教会スラップ・有田事件」がある。私も、その常任弁護団の一人となった。
この事件の訴訟記録はいずれWeb上で閲覧できるように整備する予定だが、訴状のできは、はなはだよくない。何とも迫力に欠ける請求原因の記載だが、それでもスラップとしての萎縮効果は十分に発揮している現実がある。
有田さんは、8月19日放送の日本テレビ番組「スッキリ」で、統一教会問題の解説をした。10月27日に至って、統一教会は有田と日本テレビを被告として、東京地裁に名誉毀損訴訟を提起した。「スッキリ」での有田発言の一部が、教団に対する名誉毀損となるという主張。請求金額は2200万円、典型的なスラップ訴訟である。
この訴状において主張されている有田さんの統一教会に対する名誉毀損文言をそのまま転記すれば、以下のとおりである。
「一時期距離を置いていた国会議員達も、もう一度あの今のような関係を造ってしまったっていうその二つの問題があるということを思うんですが、どうすればいいかっていうのは、やはりあの、もう霊感商法をやってきた反社会的集団だって言うのは警察庁ももう認めているわけですから、そういう団体とは今回の問題をきっかけに、一切関係をもたないと、そういうことをあのスッキリ言わなきゃだめだと思うんですけどね」
原告(統一教会)主張の名誉毀損文言を要約すれば、「(統一教会が)霊感商法をやってきた反社会的集団だっていうのは警察庁ももう認めている」というもの。果たして、これが違法な言論として損害賠償請求の根拠となり得るだろうか。そんなバカなことはない。この程度のことが言えなくては民主主義社会は成り立たない。
原告のいう名誉毀損文言は、意味の上で二つの命題から成る。
A 「(統一教会は)霊感商法をやってきた反社会的集団である」
B 「そのこと(A)は、警察庁ももう認めている」
命題Aの「反社会的集団」という表現は《事実の摘示》ではなく、《意見(ないし論評・評価)》の範疇。すると、統一教会を「反社会的」とする「意見」の根拠となる前提事実の真実性が、Aの命題の違法性を阻却する立証の対象となる。
これは興味深い。統一教会の「反社会性」の根拠となる前提事実は、「霊感商法」を筆頭に山ほどにもなろう。その中から、必要にして十分なものを抜き出して立証を重ねることになる。ということは、この有田訴訟が、統一教会の反社会性立証の舞台となることを意味する。被告有田側での攻勢的な訴訟進行が可能というだけでなく必然なのだ。
そして、命題Bである。起訴に至っていない捜査の秘密が公的に暴露されることはない。しかし、複数のジャーナリストが、下記の有田さんと同様の体験を語っている。
「1995年秋に警察庁と警視庁の幹部の依頼で、対象者を聞かずに20?30人を相手にレクチャーを行い、その際に、『統一教会の摘発』を視野に入れていると聞いた」
「その10年後のこと、幹部2人と話をした時に、10年たって、今だから言えることを教えてくれって聞いたんですよ。なんでダメだったんですか。一言ですよ。『政治の力』だったって。『圧力』」
この点でも、攻勢的な立証活動が可能である。
その他には、被告の側の抗弁として、公共性・公益性を挙証しなければならないが、名誉毀損訴訟の実務において、公共性と公益性の立証のハードルはさして高いものではない。
スラップは、やられた被害者には面倒この上なく、社会的にも実害が大きい。しかし、この統一教会スラップ・有田事件には、貴重な反撃の舞台設定が用意されている。攻勢的に闘って、統一教会の反社会性を徹底して立証する場となることが約束されているのだ。
ご支援をお願いしたい。
(2022年12月19日)
統一教会と伝統右翼、その主張は水と油。むしろ互いに天敵の関係。天皇を含む日本人は韓国に跪いて奉仕すべしとする教義を持つカルトと、皇国史観から旧植民地韓国を差別して恥じないレイシスト集団。しかし、本来は不倶戴天のこの両者が、「反共」の一点では連携するのだ。だから、あの歴史修正主義者・安倍晋三が、統一教会の教主には歯の浮くようなお世辞のメッセッージを送ることになる。
いま、統一教会に対する日本社会の風当たりが強い。当然に、それなりの理由あってのことである。しかし、これまで息をひそめていた教団が、少しずつ反撃を試みつつある。その主要なものが、メディアを通じての教団の主張の展開であり、スラップの提起である。また、「信者」による各自治体への要請・陳情などでも報じられている。
さらに、あらたな手段が登場した。《旧統一教会と関係断つ富山市議会決議、取り消し求め信者が「全国初」提訴》(読売)と報じられている件。
「富山市議会が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を断つと決議したことで、憲法が保障する信教の自由や請願権を侵害されたなどとして、同市に住む50歳代の男性信者が16日、決議の取り消しと市議会を設置する市に慰謝料など350万円を求める訴訟を富山地裁に起こした。代理人弁護士によると、旧統一教会を巡る同種の決議に対し、取り消しを請求する訴えは全国初とみられる」。この原告訴訟代理人の弁護士が、伝統右翼側陣営の人物。
富山市議会の決議は9月28日におけるもの。全会一致での可決だった。「旧統一教会や関係団体と一切の関係を断つ」とす内容。その全文は以下のとおり。
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富山市議会が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)及び関係団体と一切の関係を断つ決議
安倍晋三元総理の銃撃事件をきっかけに政治と世界平和統一家庭連合(以下「旧統一教会」という。)との関わりの深さが浮き彫りとなっている。
問題は、政治家が宗教団体と関わることではない。消費者の不安をあおり、高額な商品を購入させる「霊感商法」などで大きな社会問題となった団体とのつながりを持ってきたことにある。
藤井市長並びに当局は、旧統一教会及び関係団体との関係について調査し、記者会見並びに議会でも公表した。富山市議会も藤井市長並びに当局と同じく、議会として過去の関係について次の通り調査し公表する。
1 各会派と旧統一教会及び関係団体との関係の有無について調査する。
2 会派として関係があった場合は、その内容について調査する。
3 会派の政務調査活動や政策立案の判断に影響が及んでいないか調査する。
4 以上のことを会派が取りまとめ議会として公表する。
藤井市長並びに当局は、旧統一教会は極めて問題のある団体として、旧統一教会及び関係団体とは一切関わりを持たないことを決意し、表明した。
富山市議会も、藤井市長並びに当局と同じく旧統一教会及び関係団体と今後一切の関係を断ち切ることを宣言する。
令和4年9月28日
富山市議会
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この決議を違憲違法というのだから恐るべき偏見。恐るべき没論理。意見は勝手だが、被告となる自治体の住民に迷惑をかけてはならない。
この決議についての一般紙の報道は、下記のように簡略である。
「訴状で男性は、決議について『市における信者の政治参加を全面的に排除するものだ』と主張。取り消しを求める請願をしようと複数の市議にかけ合ったが、決議の尊重を理由にいずれも断られたといい、信仰を理由に不当な差別待遇を受けたとしている。
また、決議自体についても、憲法が定める信教の自由や法の下の平等に反すると訴えている。」
このようにしか報道されないのは、箸にも棒にもかからない、敗訴確実の提訴だからだ。行間に、記者の嘲笑が聞こえるような記事の書き方。
ところが、統一教会の機関紙と目される「世界日報」だけは調子が異なる。内容が妙に詳細なのだ。タイトルは、「富山市を憲法違反で提訴 旧統一教会信者 断絶決議で請願権侵害」(2022年12月17日)
「富山県富山市の男性が16日、自身が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者であることから市議会への請願を受け付けられなくなったことは憲法違反であるとして、富山市を相手取った訴訟を起こした。
背景にあるのは、安倍晋三元首相銃撃事件で逮捕された容疑者が旧統一教会への恨みを供述したとの報道から激しい旧統一教会批判が巻き起こり、政党が競うように同教団との関係断絶をアピールしたことだ。
特に自民党総裁である岸田文雄首相が8月31日、自民党と教団関連団体との長年の関係を陳謝し、同教団と一切の関係を断絶すると宣言。その後、自民党は地方組織にも通達した。
来年に統一地方選挙を控えて各地の地方議会で教団との接点が政治材料となり、関係断絶を求めるなどの決議案が主に共産党から提出されている。が、富山市議会では、党中央の方針を受け自民党市議団から教団との関係を断絶する決議案を提出し、9月28日に可決した。
富山市を相手取った原告の代理弁護人がツイッターで公表した訴状によると、原告の男性Yさんは現市長や自民党市議団所属の議員を応援し、選挙協力してきたという。しかし同決議を理由に請願の紹介議員となることを断られたという。
Yさんは、『何人も…請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない』とする憲法16条、同14条の法の下の平等、同19条の思想良心の自由、同20条の信教の自由などに違反するとして、同決議の取り消しと請願権を侵害された損害などから慰謝料など350万円の支払いを富山市に求めた。
直近の選挙まで篤い支持を選挙で受けながら、教団の信仰を理由に信者が投票した議員が請願を拒否する問題は国政から地方にまで広がっている。このような「関係断絶」決議案を否決する地方議会もあれば、可決する地方議会もある状況だが、要は基本的人権にかかわる問題だ。」
こう詳しく報道されれば、一見して無理筋の訴訟であって、勝ち目のなさが明々白々である。被告の自治体(議会)が、こんな提訴で萎縮することはあるまいが、応訴の費用は自治体住民の負担となる。富山市は、この提訴にかかった全費用を、原告の「Yさん」に請求すべきであろう。また、場合によっては、共同不法行為として原告代理人の弁護士にも請求してしかるべきである。
そのようにして、傍迷惑な濫訴を防止する必要がある。この手の濫訴の放置は民主主義の脆弱化につながりかねないのだから。
(2022年12月18日)
八っつぁん「たいへんだ、たいへんだぁ。ご隠居、昼寝なんかしていられる場合かよ」
ご隠居「おや、八っつぁんか。まあ、落ち着け。いったいどうした」
八「どうしたもこうしたもあるもんか。落ちついてなんかいられない。政府は戦争おっぱじめる決意をしたそうじゃないか」
隠「ああ、なるほど。16日の安保3文書閣議決定のことだな」
八「そうそう。その3文書。まずは、うんと武器を揃えるぞ。そのため、軍事予算は倍増するぞ。さあ、戦争だ。てぇことじゃないのかね」
隠「そう言われると、なるほど、そのとおりかも知れんな」
八「そうかも知れんななんて。よくも変に落ちついてんだね」
隠「まずは、3文書よく中身を吟味しなけりゃならんな」
八「まだるっこいこと言ってやんなあ。でも教えて。3文書っていったい何だ」
隠「安保3文書は、(1)最上位の「国家安全保障戦略」、(2)「防衛目標」達成の手段を示す「国家防衛戦略」、(3)軍事費の総額や装備品数量を示す「防衛力整備計画」のこと。中身は、さっき八っつぁんが言ったとおりだね」
八「そんなたいへんなこと、勝手に決めていいもんかね」
隠「臨時国会が終わったのが10日。その後に、与党協議と自民党内の議論があっただけで国会審議はまったくない」
八「それじゃ、まだちゃんと決まったというわけじゃないんだ」
隠「そのとおりだ。議席数では与党の勢力が圧倒しているが、けっして世論がこの閣議決定を支持しているわけではない。頑張り次第だな」
八「戦争の危険てぇのが問題なんだが、何が一番危険なのかね」
隠「一言で言えば、『専守防衛』というこれまでの方針を転換して、『敵基地攻撃能力』をもつと明言したことだ」
八「『専守防衛』って、これまでも聞かされてきた。万が一、日本にどこかの国の軍隊が攻め込んできた場合にその侵略軍と闘うことだけはできるようにしておこう、ってことだよね。だから、敵国を攻撃するような武器の装備は必要ないってこと。ご隠居は、それにも反対していたんじゃなかったったっけ」
隠「そのとおり。そもそも憲法9条は、軍隊をもつことを禁止している。警察予備隊から、保安隊、自衛隊と成長してきた日本の軍事力は憲法違反というしかない。だがな、これまで政府は、専守防衛に徹するから自衛隊は違憲ではない、と言い続けてきた。この方針が大転換することになる」
八「今度は、敵基地を攻撃できるような強力な兵器をバンバン備えるってわけだ」
隠「中国や北朝鮮やロシアという国名を出してな。いざというときには、敵の基地を攻撃する能力を備えるという」
八「そんなことしたら、中国や北朝鮮やロシアも穏やかでない。対抗手段をとるに違いない」
隠「そのとおりだ。敵基地攻撃を実行に必要だとして、米国製の長距離巡航ミサイル・トマホークなど大量のミサイルを購入して配備することになる」
八「そうすりゃ、相手も、負けるものかと軍事力を増強することになる。すると日本も負けてはならないとなり、相手もまた、負けるものかと…。切りがない」
隠「それを、『安全保障のジレンマ』とか、『軍拡競争の悪循環』と言っている。そんなことにならないための平和憲法だったのに」
八「戦争の危険もだけど、軍拡にはカネがかかるよね」
隠「来年度から5年間の軍事予算を43兆円とすることになった。これはたいへんなことだ。その後は、軍事費をGDPの2%にするという。今の2倍だ。すると日本は世界3位の軍事大国になるということだ」
八「するってぇと大増税ってことですか。日本の経済は落ち目で、国の借金はベラボウな金額で、福祉も医療も教育も予算が不足だっていうじゃないですか。そんな日本が軍事費のための大増税ができるはずもない」
隠「軍拡はやむを得ないとする人たちも、増税は反対だな。早くも、毎日新聞が、17、18の両日全国世論調査をして、今日の夕方その結果を発表している」
八「世論調査ね。まずは、こんな閣議決定をしたことで、岸田内閣の支持率は上がったんですか。それとも下がったんですかね」
隠「見事に下がった。岸田内閣の支持率は25%で、11月19、20日の前回調査の31%から6ポイント下落し政権発足以降最低となった。しかも、不支持率は69%で前回(62%)より7ポイント増加。末期症状といってもよい」
八「次に気になるのは、大増税への賛否」
隠「防衛費増額の財源としての増税に「賛成」が23%で、「反対」の69%を大きく下回った。社会保障費などを削ることについては「賛成」が20%で、「反対」がなんと73%だ。そして国債発行は「賛成」33%、「反対」52%。」
八「岸田政権、ここに進退きわまったり」
隠「おや、随分と元気になったじゃないか」
八「まだ、大軍拡が決まったわけじゃない。何よりも平和が大切だよ。隣り合う国を敵国として軍備を張り合うなんて、愚の骨頂じゃないか」
隠「そのとおりだ。みんなで反対すれば、この軍拡は阻むことができる」
八「みんなに訴えよう。『たいへんだ、たいへんだぁ』じゃあなく、軍拡には『はんたいだ、はんたいだぁ』」
隠「軍事優先に反対して、子どもや年寄りを大切にしなけりゃのう。そうだ。年金切り下げて防衛費にまわすなんて絶対に許さん」
八「ところでご隠居、この噺にはオチがないね」
隠「あたりまえだ。オチついてなどおられるか」
(2022年12月17日)
NHK森下俊三経営委員長の違法の責任を問う
《NHK文書開示請求訴訟》
次回口頭弁論 12月21日(水)14時・415号法廷
NHKと森下俊三経営委員長の両名を被告として、NHKの報道姿勢と総理大臣任命の経営委員会のあり方を根底から問う《NHK文書開示請求訴訟》。その第6回口頭弁論が、下記の日程で開かれます。
今回も原告代理人が、法廷でパワーポイントを使っての意見陳述をいたします。報告集会ともども、ぜひ傍聴をお願いいたします。
日時 12月21日(水) 14時
法廷 東京地裁415号
閉廷後の報告集会は下記のとおりです。
同日 15時ころ?
日比谷図書館文化会館小ホール
パワーポイントを使っての法廷での原告代理人意見陳述は、原告第7・第8準備書面の主張と、それに対する両被告の応答を整理した要約となります。その上で、いよいよ人証の申請をし、その採用の必要性を強調することになります。
NHK「クローズアップ現代+」は、「かんぽ生命保険」の不正販売を追求する番組を報道しました。この報道に日本郵政から圧力がかかってきたとき、NHKの最高意思決定機関である経営委員会は、番組制作の現場を守ろうとせず、日本郵政と一体となって、報道を妨害したのです。その手段が、経営委員会の席上における「会長厳重注意」というものでした。公共放送としてのNHKの歴史的な汚点であり、明らかな放送法(32条2項)違反でもあります。
114名の原告らが開示を求めているのは、この「厳重注意」を言い渡した経営委員会議事録です。「厳重注意」部分を除いた不完全なものではなく、法規に則った完全な議事録。そしてその議事録の元となった録音の生データ。
原告の主張は、この文書開示請求を妨害しているのが経営委員長の森下俊三であって、不法行為による損害賠償の責めを負うと追及しているのです。
訴訟の進行は佳境に入ります。裁判所も真剣に取り組んでいます。ぜひ法廷にお越しください。
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《NHK文書開示請求訴訟》経過
◎2021年4月7日 文書開示の求め(その後、2度の延期)
◎2021年6月14日 第1次提訴 (原告104名・被告2名)
・被告NHKに対する文書開示請求
開示対象は2グループの文書だが、
その主たるものは、下記経営委員会議事録の未公開部分
「第1315回経営委員会議事録」(2018年10月 9日開催)
「第1316回経営委員会議事録」(2018年10月23日開催)上田会長厳重注意
「第1317回経営委員会議事録」(2018年11月13日開催)
・被告両名に対する損害賠償請求(慰謝料・弁護士費用、原告一人2万円)
◎同年 7月9日 NHK「3会議の議事録・粗起こしの草案」(「議事録の原告らに開示
(◎同年 9月16日 第2次提訴 (原告10名・被告2名)1次訴訟に併合)
☆同年 9月15日 被告NHK答弁書(現時点では対象文書は全て開示済み)
★同年 9月21日 被告森下答弁書(不法行為はない、請求棄却を求める)
◇同年 9月23日 原告 被告NHKに対する求釈明
◇同年 9月24日 原告 甲1の1?4 NHK開示文書提出
◎同年 9月28日 第1回口頭弁論期日
(西川さん・長井さん・醍醐さんの原告3名と代理人1名の意見陳述)
☆同年 12月 3日 被告NHK準備書面(1)「現時点で、所定の議事録作成手続は完了しておらず、放送法41条の定める議事録とはなっていない」
★同年 12月 3日 被告森下 準備書面(1) 「本件各文書はいずれも開示済」と言いながら、「粗起しのもので、適式の議事録でない」ことを自認している。
★同日 被告森下丙1?32号証 提出
◇2022年1月12日 原告第1書面(被告森下の求釈明に対する回答)提出
☆同年 1月17日 被告NHK 乙1(放送法逐条解説・29条部分)提出
◎同年 1月19日 第2回口頭弁論期日
★同年 2月28日 被告森下 準備書面(2)
◇同年 3月 2日 原告第2準備書面
◇同年 4月 7日 原告第3準備書面
☆同年 4月22日 被告NHK 準備書面(2)
★同年 4月22日 被告森下 準備書面(3)
◎同年 4月27日 第3回口頭弁論期日
◇同年 4月28日 原告第4準備書面(求釈明)
★同年 6月14日 被告森下 準備書面(4) (電磁記録は消去済みである)
☆同年 6月21日 被告NHK 準備書面(3)
◇同年 7月 1日 原告第5準備書面(求釈明)
◎同年 7月14日 進行協議
★同年 8月22日 被告森下準備書面(5) (求釈明に対する回答)
☆同年 8月25日 被告NHK 準備書面(4)
◇同年 8月30日 原告第6準備書面
◎同年 9月 6日 第4回口頭弁論期日
☆同年 10月14日 被告NHK 準備書面(5)
★同年 10月14日 被告森下準備書面(6)
◇同年 10月16日 原告第7準備書面
◎同年 10月26日 第5回口頭弁論期日
◇同年 11月16日 原告第8準備書面
★同年 12月13日 被告森下準備書面(7)
☆同年 12月14日 被告NHK 準備書面(6)
◎同年 12月21日 第6回口頭弁論期日(予定)
(2022年12月16日)
中国は師である。多くのことを教えてくれる貴重な存在。民主主義や人権についての恰好の反面教師。けっして、ああなってはならないのだ。
とりわけ、香港から見える中国の姿が教訓に満ちている。おそらくは、ウィグルやチベットから見ればさらに深刻な教訓が得られるのだろうが、残念ながら報道が極端に少ない。
香港からの報道で身に沁みて学ぶべきは、権力集中というグロテスクの危険であり恐さである。中国は具体的な実例をもってそのことを教えてくれている。真剣に学ばねばならない。
一党独裁とは、共産党に敵対する政党の存在を許さないというだけのものではなく、徹底した国家権力の集中を意味するのだ。一国二制度の下、ごく最近まで香港には常識的な三権分立の制度が確立していた。中国が香港の自由を蹂躙したとき、香港の教科書から「三権分立」の文字が消えた。同時に香港の人権と民主主義も失われた。その後学校現場に持ち込まれたものは、愛国教育の徹底であった。
具体例として報道されたのは、「(香港の法制度の特徴は)三権分立の原則に従い、個人の自由と権利、財産の保障を極めて重視する」との教科書の記述が削除され、代わって「デモで違法行為をした場合、関連の刑事責任を負う」との記述が加えられたという。恐るべき中国共産党、恐るべき一党独裁、恐るべき偏向の洗脳教育ではないか。
三権分立の核をなすものは、司法権の独立である。法の支配において、最終的に法の解釈を確定する権限は司法にある。が、この常識は中国では通じない。香港の司法の独立は、中国共産党の支配にまったく歯が立たないのだ。
それを見せつけたのが、以下の共同配信の記事。毎日新聞は、「香港最高裁判断、全人代が変更の可能性 りんご日報創業者の弁護巡り」という見出しで報じた。
「香港政府は(22年)11月29日までに、香港国家安全維持法(国安法)違反罪に問われた民主派香港紙、蘋果(ひんか・りんご)日報(廃刊)創業者、黎智英氏の弁護人を英国の弁護士が務めることを認めた最高裁の判断は不当だとして、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会に法解釈の判断を求めた。
香港メディアは最高裁の判断が覆される可能性が高いと報じており、司法の独立性の後退に懸念が高まっている。」
黎智英が英国の弁護士を弁護人として選任したのは刑事訴訟法がそれを許容する制度になっているからだ。ところが、香港の司法当局(日本での法務省に当たるのだろう)は、これにイチャモンを付けて、弁護人の変更を申し立てた。その理由は、「国安法の外国勢力との結託による国家安全危害共謀罪で起訴された黎氏の弁護人を、海外で働く外国人が担当するのは国安法の立法趣旨に反し不適当」だというのだ。無罪の推定も、弁護権の保障も念頭にない、まったく無茶な主張。
さすがに、香港の高裁と最高裁はいずれも司法当局の訴えを退ける判断を下した。ところが、ここで奥の手が出てくる。香港の最高裁の判断は、全人代常務委員会の胸先三寸で、ひっくり返すことができるのだ。これが、一党独裁のグロテスクさ。
既に、香港最高裁のこの件の判断に対しては、中国政府で香港政策を担当する「香港マカオ事務弁公室」が11月28日に「国安法の立法精神と論理に反している」と非難する声明を出しているという。既に、万事休すなのだ。
意気阻喪しているところに、今度は元気の出るニュース。「天安門追悼計画、民主派逆転無罪 香港・高裁」という、昨日の毎日新聞記事。
「香港の高裁は14日、中国当局が民主化要求運動を武力弾圧した天安門事件(1989年)の犠牲者を追悼する昨年の集会計画を巡り、無許可集会扇動罪に問われた香港の民主派団体元幹部(弁護士)に対し、1審有罪判決を取り消し、無罪を言い渡した。
香港当局は2020年の香港国家安全維持法(国安法)施行後、民主派への締め付けを強化。デモ開催などを無許可集会に当たるとして、民主派が有罪判決を受ける中、無罪判決は異例。」
一審判決禁錮1年3月(実刑)からの逆転無罪である。公訴事実は、昨年6月4日天安門追悼集会を企画し宣伝した「無許可集会扇動罪」。弾圧された民主派が次々と有罪判決を受ける中、無罪判決は異例だという。
もしかしたら、この判決は最高裁で逆転させられるかも知れない。さらには、またまた北京のご意向で無罪判決は吹き飛ばされるかも知れない。それでも、自分の良心に忠実に無罪判決を書く裁判官の存在に胸が熱くなる。制度よりは、このような人の信念にこそ、民主主義が生きているのだ。
中国共産党はいろんな教訓を教えてくれる。やはり、貴重な「師」以外のなにものでもない。
(2022年12月15日)
毎年12月13日が、中国の「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」である。現在、「国家哀悼日」とされて、日中戦争の全犠牲者を悼む日ともされている。この「南京大虐殺」こそは、侵略者としての皇軍が中国の民衆に強いた恥ずべき加害の象徴である。
私も南京には、何度か足を運んだことがある。「侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館」も訪れている。そこでの印象は、激しい怒りよりは、静かな深い嘆きであった。粛然たる気持にならざるを得ない。
私の同胞が、隣国の人々に、これだけの残虐行為を働いたのだ。人として、日本人として、胸が痛まないわけがない。
1937年の事件当時、私はまだ生まれていない。だから、私に責任のあることではない。責任とは一人ひとりに生じるものではないか、などと強弁することはできるかも知れない。しかし、現地では、とうていそんな気持ちにはなれない。日本人の一人として、中国の民衆に深く謝罪しなければならない、と思う。
日本社会は、いまだに侵略戦争の罪科を認めず、戦争責任を清算し得ていない。のみならず歴史を修正しようとさえしている。そのことについては、戦後を生きてきた私自身も責任を負わねばならない。安倍晋三のごとき人物を長く首相の座に坐らせていたことの不甲斐なさを嘆くだけではく、そんな社会を作ったことの責めを負わねばならない。
事件から85年となる一昨日、現地の「紀念館」で、恒例の追悼式典が行われた。
式典で演説した中国共産党幹部の蔡奇(ツァイ・チー)は旧日本軍の行為について、「人類の歴史において非常に暗い1ページだ」と指摘した上で、「中日国交正常化から50年、様々な分野での交流と協力が実を結び、両国の国民に重要な利益などをもたらし地域の平和や発展、繁栄を促進した」「新時代の要求にふさわしい中日関係を構築すべきだ」などと述べたと報じられている。これが、本当に中国国民の気持ちを代弁する言葉なのだろうか。疑問なしとしない。
南京事件にせよ、関東大震災後の朝鮮人虐殺にせよ、細部までの正確な事実を特定することは難しい。虐殺をした側が証拠を廃棄し、直後の調査を妨害するからだ。大混乱の中で大量に殺害された人々の数についても正確なところはなかなか分からない。
細部の不明や、些細な報道の間違いを針小棒大にあげつらって、「南京虐殺」も、「朝鮮人虐殺」もなかった、という人たちがいる。事実の直視ができない人たち、見たくないことはなかったことにしたいという、困った人たちである。
「南京虐殺40万人説」はあり得ない、「30万人説も嘘だ」。だから、「実は、南京虐殺そのものがなかったのだ」という乱暴な「論理」。
そういう人たちの「論理」を盾に、「『南京虐殺』も、『朝鮮人虐殺』もあったかなかったか、不明というしかない」という一群の人たちがいる。実は、こちらの方が、もっともっと困った人たちであり、タチが悪いのだ。
旧軍がひた隠しにしていた南京虐殺は、東京裁判で国民の知るところとなった。以来、日本国政府でさえ、「非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないが、被害者の具体的な人数は諸説あり認定できない」としている。ところが、「不明」「不可知」に逃げ込む人々が大勢いる。知的に怠惰で、卑怯な態度といわねばならない。たとえば、文京区教育委員の面々である。
戦争の悲惨は語り伝えなければならない。被害の責任だけではなく、加害の責任も。そのような姿勢で、日中友好協会・文京支部は、2018年以来毎年8月に、「平和を願う文京・戦争展」を企画し、「日本兵が撮った日中戦争」の写真展示を続けている。その写真の中に、南京事件直後の生々しい写真がある。これが、問題となった。
この企画展について後援申請をしたところ、文京区教育委員会は「後援せず」と決定したのだ。このことが、18年8月2日東京新聞朝刊『くらしデモクラシー』に大きく取りあげられた。
同記事の見出しは、「日中戦争写真展、後援せず」「文京区教委『いろいろ見解ある』」、そして「主催者側『行政、加害に年々後ろ向きに』」というもの。
日中戦争で中国大陸を転戦した兵士が撮影した写真を展示する「平和を願う文京・戦争展」の後援申請を、東京都文京区教育委員会が「いろいろ見解があり、中立を保つため」として、承認しなかったことが分かった。日中友好協会文京支部主催で、展示には慰安婦や南京大虐殺の写真もある。同協会は「政治的意図はない」とし、戦争加害に向き合うことに消極的な行政の姿勢を憂慮している。
同展は、文京区の施設「文京シビックセンター」で8?10日に開かれる。文京区出身の故・村瀬守保(もりやす)さん(1909?88年)が中国大陸で撮影した写真50枚を展示。南京攻略戦直後の死体の山やトラックで運ばれる移動中の慰安婦たちも写っている。
区教委教育総務課によると、区教委の定例会で後援を審議。委員からは「公平中立な立場の教育委員会が承認するのはいかがか」「反対の立場の申請があれば、後援しないといけなくなる」などの声があり、教育長を除く委員四人が承認しないとの意見を表明した。区教育委員会には何の見識もない。戦争を憎む思想も、戦争への反省を承継しようとの良識のカケラもない。
文京区教育委員会事案決定規則によれば、この決定は、教育委員会自らがしなければならない。教育長や部課長に代決させることはできない。その不名誉な教育委員5名の氏名を明示しておきたい。
教育委員諸氏には、右翼・歴史修正主義者の策動に乗じられ加担した不明を恥ずかしいと思っていただかねばならない。自分のしたことについて、平和主義に背き、歴史に対する罪を犯したという、深い自覚をお持ちいただきたい。
教育長 加藤 裕一
委員 清水 俊明(順天堂大学医学部教授)
委員 田嶋 幸三(日本サッカー協会会長)
委員 坪井 節子(弁護士)
委員 小川 賀代(日本女子大学理学部教授)
(2022年12月14日)
「東洋経済オンライン」に、下記の本日5:00掲載の記事(抜粋)。到底看過し得ない。
「今回の会長人事の前に奇妙な運動が起こっていた。市民団体が元文科省次官・前川喜平氏をNHK会長に推す署名活動を行ったのだ。4万人分の署名がネットで集まったそうだが、私はこの運動に何の意味があるのか不思議だった」「選挙ではないのだ。…運動にはNHKのOBもいて、会長選出の仕組みを知っているはずなのになぜ」「集会の様子が偏ったメディアに拡散されれば効果があると思ったのだろうか。そんなやり方で経営委員に届くはずがなく、「お花畑」と言われても仕方ないだろう。」
市民運動を揶揄するこの見解。市民運動のなんたるかについての理解も想像力もなく、理解しようという意欲も善意もない。民主主義のなんたるかも、公共放送の理念にも無知である。「お花畑」の賑わいも暖かさもなく、「砂漠」の殺風景と「墓場」の冷たさに覆われた記事。
市民運動は、市民一人ひとりの正義感や怒りから出発する。NHKの報道姿勢は明らかにおかしい。政権に忖度したニュースや解説。現場のドキュメントに対する執行部や経営委員会からの介入・締めつけ。優秀で良心的な現場を、権力と一体となった経営陣が押さえつけているのだ。
市民運動が求めるNHK会長は、ジャーナリズムのなんたるかをよく理解している人物である。政権と意を通じた、政権お抱えの会長ではない。優秀なビジネスマンでもない。もちろん、安倍・菅政権から一本釣りされた経営委員のお気に入りでもない。
市民運動は、制度に囚われない。おかしな制度は徹底して批判する。そもそも、会長公選制でないことがおかしいのではないか。マグナカルタ以来の民主主義の基本は、「代表なくして課税なし」である。これは、「課税あるところには、代表選出の権利もなくてはならない」という主張なのだ。
NHKに受信料を支払っている公共放送の視聴者にとっては、「受信料支払いの強制あれば、当然に会長選出の権利もなくてはならない」のだ。放送法の制度を墨守すべきとする姿勢こそが、嗤うべき因循姑息。
市民運動には知恵がある。「前川喜平氏をNHK会長に推す署名活動」は、素晴らしい問題提起をした。多くの人が、政権から独立し得ていない現在のNHKの姿勢に不満を持っていることを明確にしたのだ。市民にとって、前川喜平こそは、政権からの独立を象徴する人物像である。これが、多くの視聴者から歓迎されるNHK会長のイメージなのだ。
NHK次期会長に選任された元日銀理事稲葉延雄は、その人物像を前川喜平と比較されることになる。権力への忖度の素振りは、徹底して批判される。「やっぱり政権ベッタリか」と言われることを気にせざるを得ない。われわれも、遠慮なく批判しよう。「前川なら、こういう態度はとらないだろう」と。
本日の毎日新聞が、「なるほドリ」の蘭で、NHK会長人事を以下のように解説している。『NHK会長、あるべき姿は? 求められる政治的中立 選考過程をオープンに』というタイトル。これを抜粋する。
Q 「あるべき会長像」ってあるのかな?
A リーダーシップはもちろんですが、政治的中立が求められます。放送法などで「公平・公正」「不偏不党」がうたわれているからです。稲葉さんも会長就任の記者会見で「公平・公正が大切」と強調していました。
Q なぜ公平・公正でなければならないの?
A NHKは全国各地や海外に拠点を持ち、その放送には大きな影響力があります。時の政権がNHKに圧力をかければ、国民の多様な意見を反映できなくなり、報道機関として国民の知る権利に応えられなくなるでしょう。2014年に就任した籾井勝人(もみいかつと)会長は、当時の安倍晋三(あべしんぞう)政権の肝(きも)いりで決まったといわれました。就任会見で「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」などと発言し、会長としての資質が問題視されました。
Q 会長を選ぶ過程で、今回は政権の動きはあったのかな?
A NHKの会長を決めるのは経営委員会なのですが、今回も政権の意向があったという指摘もあります。選考の過程をもっとオープンにすべきでしょうね。
もちろん、今回の会長選考過程で、政権の意向も動きも、大いにあった。経営委員会は、実際のところ何の選考も審議もしていないとも言われている。さて、政権丸抱えの新NHK会長、前川喜平と比較されて恥ずかしくない姿勢をとれるだろうか。
(2022年12月13日)
本郷三丁目交差点ご通行中の皆さま、とりわけ若い方々に訴えます。ご意見もお聞かせいただきたい。あなたは、命じられたら戦争に参加しますか。兵士となって戦場に行く覚悟がありますか。怨みのない人と命をかけた殺し合いもやむを得ないと思いますか。
お父さんやお母さんの世代の方にも伺いたい。愛する子どもや家族を戦争に差し出しますか。ご親戚や友人、隣人ならどうですか。国を守るためなら戦争もやむを得ないと思いますか。誰かに、命をかけて国のために闘ってもらいたいと思いますか。
政府・与党は今、大軍拡大増税に踏み切ろうとしています。軍拡って他人事ではありません。軍拡は武器だけでなく、たくさんの兵士を必要とします。あなただって、兵士として戦場に引っ張られるかも知れない。祖国の防衛のためなら、勇躍して任務に当たりますか。
政権や右翼や扇動者は、平和を維持するためには抑止力が必要と言います。抑止力って、イザというときには反撃できる能力のことのようです。張り子の虎では抑止力にならない。イザというときには対等以上に戦闘する能力を備えるための軍備拡張。あなたは、イザというときの反撃のために兵士になることをやむを得ないと受け容れますか。
臨時国会が10日に閉幕となりました。この国会では岸田内閣のタカ派的な姿勢は目立ちませんでした。ところが、国会が終わってそのくびきから脱したとたんに、事態は様変わりしました。昨日、安保3文書の与党内合意が成立したことが公表されました。本日の各紙朝刊が、その骨子を報道しています。これが16日に閣議決定される予定ということです。
恐るべき事態と言わねばなりません。歴代政権が憲法違反だとしてきた敵基地攻撃能力の保有が明記されることになります。米国製の長距離巡航ミサイル・トマホークが導入されます。来年23年度から27年度までの5年間で、防衛予算は総額43兆円に膨れあがります。大軍拡に伴う大増税を覚悟せよというのです。そのうえで、大軍拡のとばっちりを受けて、教育や福祉の予算は削らざるを得ないことになります。「軍事栄えて民痩せる」という時代がやってきます。本当にこれでよいのでしょうか。
なによりも、軍拡は兵士を必要とします。あなたは兵士として、命をかけて闘う覚悟がありますか。大切な人を、お国のために差し出す覚悟がありますか。
12月です。太平洋戦争の開戦を思い起こさねばなりません。1941年12月8日の天皇の「詔勅」は、こう言っています。
「日本は平和を望み、長い間忍耐を重ねてきたが、米も英も少しも互譲の精神がなく、ますます経済上・軍事上の脅威を増大し続け、それによって我が国を屈服させようとしている。このような事態が続けば、アジアの平和を願っての我が国の努力はことごとく水の泡となり、帝国の存立もまさに危機に瀕している。今や自存と自衛のため、決然と立ち上がって一切の障害を破砕する以外にない。」
今また、同じ轍を踏みかねません。かつては、日本は正義の国で、英・米・蘭・ソ・中などは、どれも日本を敵視する不正義の国。ドイツやイタリアと同盟して、これと闘わねばならないとしました。あの頃とは、敵国・味方国が変わっていますが基本は変わりません。かつてヒトラーのドイツと結んだ日本は、今、アメリカと同盟しています。主たる敵が中国であることは隠そうともしません。中国の脅威に備えて軍備を拡大し、軍拡増税をしようというのです。
77年前の敗戦のあと、日本国民は再びの戦争という過ちを犯してはならないと、深く強く決意しました。その決意の根本には、平和は武装することによって得られるものではない。近隣諸国との軍備拡大の競争という愚かなことはしない。それが日本国憲法9条に結実しました。
あの戦争の反省には、まったく異なる二通りがありました。一つは、戦争に負けたことを反省しようというのです。今度は、精強な大軍事力を作って、米英にも、中国にも負けない大軍事国家を建設しようという反省の仕方。これは、ほんの一握りの戦争指導者の立場。圧倒的な国民は、戦争そのものを反省しました。どんな理由があろうとも、けっして再び戦争をしてはならない。
その国民の意思を結実した憲法9条が次第に影を薄くし、いま自衛隊という軍事力が存在感を増すにいたっています。それでも、憲法9条とそれを支える世論があるから、敵基地を攻撃するような武器は持てないとしてきたのです。
今回の安保3文書は、かろうじて9条の効果としての「専守防衛」路線を事実上放棄すること。敵国の軍事力には、我が国の軍事力を対抗することで、平和を守ろうという路線への転換にほかなりません。明文改憲ないままに、事実上の「壊憲」が行われようとしています。このままでは、9条は空文に帰しとめどない軍拡の悪循環に巻き込まれかねません。慌てず、騒がず、浮き足立つことなく、落ちついて、戦争のない国際社会を作る努力をしようではありませんか。
[プラスター]★敵基地攻撃能力、戦争への道。★軍拡大増税、くらしはカツカツ大赤字。★穏やかな声優しそうな顔で、憲法9条を壊してゆく岸田政権。★人類の理想、戦争放棄の9条。★トンデモない 軍拡大増税。★浮き足立つな落ち着こう、反対しよう戦争への道。★9条の会、迷わず平和路線。★トマホーク、ハイマースもオスプレイもいらない、憲法9条と国連強化。
(2022年12月12日)
江戸時代の農民一揆の多くは一定の成功を収めた。領主は一揆の要求を容れて事態を収拾せざるを得なかった。しかし、秩序を紊乱した者の罪を放置することはできず、首謀者は厳しく罰せられた。だから、一揆の指導者は一身の犠牲を覚悟して決起したのだ。それゆえ、数々の一揆伝説が生まれ、一揆の指導者は民衆から尊敬されて語り継がれた。
「白紙革命」と言われる中国の市民の動向。江戸時代の一揆衆に似ていなくもない。そして、中国共産党は、封建領主とその精神構造において瓜二つではないか。「民衆の不満を宥めて妥協しているようにみえる中国政府が、その一方で抗議活動への封じ込めには最先端の監視技術を駆使して弾圧している」と言うのだから。
頑なだった中国のゼロコロナ政策は、市民のデモの衝撃によって、大きく修正を余儀なくされた。これ以上の厳格な旧来の政策継続は、体制批判にまで進行する危険があると判断されたに違いない。習近平指導部は、誤りを認めたとは言わぬままに、民衆の要求を容れて事態の収拾を図った。しかし、党の支配に抵抗して、秩序を紊乱したデモの参加者を許すわけにはいかない。
しかも、恐るべきは、中国共産党が、ほぼ完璧といわれるレベルでのデモ参加者特定の技術と設備をもっているということである。いわゆる監視社会化、その完成形態である。
中国共産党は、人民管理の手法としての監視技術を発達させてきた。党指導部の言い分は、人民の幸福を最大限に確保するための監視社会である。「幸福な監視国家」で何が悪いと開き直って来ている。コロナ撲滅のための人民の監視と管理はその典型といってよい。人民にとって何が幸福かは党が決める。人民はありがたく、賢い無謬の党の指導に身を委ねておれば「幸福」なのだ。
ジョージ・オーウェルの『1984年』に描かれたデストピアが、既に中国で実現しているのではないか。市民のすべての行動は当局によって監視され、把握されている社会。その姿こそ、現代の中国のごとくである。権力にとっての夢物語であり、市民にとっては悪夢のデストピアが最先端のハイテク技術を駆使することによって、現実のものになっていると言われる。
中国の警察は世界で最も洗練された監視システムを構築し、しかも全国では2億台もの監視カメラが設置されているという。強力な顔認識ソフトウェアを開発し、地元市民を識別するようプログラムしていると報道されている。その監視技術が、いま大活躍なのだ。
ニューヨークタイムズ外が、「中国の警察が電話機と顔写真を使って抗議者を追跡した方法」を報道している。抗議デモ参加者の多くは、目出し帽をかぶり、ゴーグルをつけて、あるいは服装を変えて、身を隠したつもりだった。が、それでも翌日から検挙されている。「警察は、顔認識や携帯電話、情報提供者を使って、デモに参加した人々を特定」したという。
デモ参加者の多くは、厳しい取り調べを受け、二度と抗議活動に参加しないようにと警告される。多くの人が、抗議活動の調整や海外への画像拡散に使われていたテレグラムのような外国のアプリを削除している。逮捕されたり、警察に声をかけられたりした後、多くのデモ参加者はVPN(仮想プライベートネットワーク)や、テレグラムやシグナルといった海外のアプリの利用を敬遠するようになった。
かつては、アメリカが「先進国」として、「今のアメリカの姿を見よ。これが明日の日本の姿だ」などといわれた。今、こう言わねばならない。
「恐るべき今の中国の監視社会の実態を見つめよ。このままでは、これが明日の日本の姿になる。権力は、すべからく民衆の一人ひとりの行動と思想までを把握したいという衝動を持っているからだ。けっして、このような社会の到来を許してはならない」