徳洲会組織ぐるみ大規模選挙違反の波紋
選挙違反には、目を光らせよう。それが主権者としての務めであり、たしなみでもある。
昨年12月16日の総選挙と都知事選。公訴時効は、選挙犯罪の別(当該犯罪の法定刑の軽重)によりけりだが、3年ないし5年。2015年暮ないし2017年暮れまで。その間に摘発すべきは厳正に摘発されることを望む。
今のところ、大きな話題となっているのは、石原宏高陣営(東京3区)と、徳田毅(鹿児島2区)陣営の悪質・大規模選挙違反。これまでの報道によれば、いずれも捜査の進展次第で、石原慎太郎にとって致命傷となりうる。石原慎太郎のダメージは「日本維新の会」へのダメージとなり、民主々義の微笑みとなろう。
慎太郎三男・石原宏高の選挙違反の悪質さについては、これまで当ブログで何度も触れてきた。これは、カジノ企業と政治家の、腐臭を放つ癒着の構造が選挙違反として露出したものなのだ。形式的な選挙違反だけでなく、更に保守政治家の本質的な醜悪さを露呈する事件となりうる。捜査当局がどうして強制捜査に逡巡しているのか理解に苦しむ。これだけ大きく報道された事件について当局が動かなければ、保守政界に間違ったメッセージを与えることになりかねない。
強制捜査は、徳洲会事件が先行した。徳洲会は、石原慎太郎の政治資金源として噂されていた存在。捜査の進展は、選挙違反にとどまらず、保守政界の醜悪な金の動きを垣間見せることになるだろう。
ごく最近の報道によれば、徳洲会の選挙違反の端緒は、徳洲会の内紛のようだ。本日の赤旗・社会面のトップは、そのことに触れている。もっとも、歯切れが悪く分かりにくい記事ではある。記者が詳細を掴んでいないのか、掴んではいるが事情あって書けないのか、読者には判断しかねる。ともかく、大要は以下のとおり。
徳洲会グループが、グループ内で選挙の経理を取り仕切っていた「選挙経理担当の元事務総長」なる人物を今年の2月に懲戒解雇し、さらに最近、業務上横領と背任容疑でこの人物を警視庁に告訴したという。しかし、元事務総長も黙ってはおらず、徳洲会に83ページにわたる反論書を作成して提出しており、この内容が徳洲会組織を上げての選挙違反や、裏金による政界工作の実態を暴くものとなっているという。これが、捜査の端緒となった模様。
「たとえばー。
▽ある政党を立ち上げるときに、徳田理事長が億単位の現金を提供した。その後、徳洲会の税金申告漏れ事件が報道されると返還された。
▽首都圏の知事にも億単位の資金提供。かき集めたその資金の中には、税金から拠出された政党助成金も含まれており、他から現金を持ってきて穴埋めした。」
どうもこれだけの記事では、何が行われたのか、どこに事件の本質があるのか、もうひとつ分かりにくい。「ある政党」とは「立ち上がれ日本」のことだろうが、「国民新党」のことなのかもしれない。あるいは両者をともに指すのだろうか。「首都圏の知事」とは、石原慎太郎以外に考えられないが、なぜ名前が伏せられているのだろうか。はたして赤旗は、「反論書」を入手しているのだろうか。
この「83ページの反論書」(報道によっては「上申書」)が、事情通や捜査機関には把握されているとして、注目の的である。注目の理由は、選挙違反の実態もさることながら、政界工作資金としての徳洲会マネーの流れをあきらかにするものとしてである。
普段は水面下に没して分かりにくい保守政治の汚い金の動き。そのほんの一部が、氷山のごとくに水面に浮かび出たもの。それが、投票買収や運動買収の選挙違反資金である。徹底して、これを暴いてこその刑事司法の存在価値である。本来、金や権力の横暴を抑制すべきが民主々義である。あべこべに、金や権力によって、民主々義が左右されるようなことがあってはならないのだから。
(2013年10月6日)