こんな法案を、わずか2週間ほどの審議で通過させるなど論外だ
昨日のブログに、「みんなの党と言えども、みんながみんな自公との修正協議に賛成ではあるまい」と書いた。ところが、「みんなの党」には、一人ひとりのみんなはなく、党代表の愚昧な判断だけがあったごとくである。結局本日(19日)午後に、法案賛成にまわることに正式決定したとの報道。
「みんなの党のみんな」よ、ほんとにこれでよいのか。こんなに露骨に、自民党補完勢力の正体さらけだし、「官僚支配と闘う」などというスローガンの嘘っぱちを証明して見せて、有権者に恥ずかしくないのか。たったひとりの気骨ある議員もいないのか。
革新無党派層の票をさらって議員になって、都内の有権者を裏切って「みんなの党」に走った川田龍平の名誉挽回のチャンスだったが、その機会は永久に失われた。
本日は、品が悪くなるのは覚悟の上で気合いを入れてブログを書かねばと思っていたが、メディアの筆が鋭い。自分の文章は書かずに、いくつかの記事を紹介するに留めたい。
まずは毎日社説。みんなの党の修正合議の報にたじろがず、ぶれず揺るがず、原則論を貫いている。立派なものだ。
法案が衆院に上程された10月25日以後の特定秘密保護法関連の社説は12本になった。うち11本が「秘密保護法案を問う」と標題を付したシリーズもの。中見出しまで付して、その全部を書き出せば次のとおりである。
10月26日 秘密保護法案 国会は危険な本質見よ
11月 5日 秘密保護法案を問う 国民の知る権利
11月 6日 秘密保護法案を問う 国の情報公開◇「不都合」隠される懸念
11月 7日 秘密保護法案を問う 国政調査権◇国会が手足を縛られる
11月 8日 秘密保護法案を問う 重ねて廃案を求める
11月10日 秘密保護法案を問う テロ・スパイ捜査◇歯止めが利かぬ懸念
11月12日 秘密保護法案を問う 歴史研究◇検証の手立てを失う
11月13日 秘密保護法案を問う 強まる反対世論◇与党は考えを改めよ
11月14日 秘密保護法案を問う 野党◇成立阻止が目指す道
11月15日 秘密保護法案を問う 報道の自由◇「配慮」では守れない
11月18日 秘密保護法案を問う 刑事裁判◇「秘密」のまま処罰とは
11月19日 秘密保護法案を問う 修正協議◇安易な合意は禍根残す
以上のとおり、毎日は、与党に対しては「強まる反対世論◇与党は考えを改めよ」と述べ、野党に対しては「野党 成立阻止が目指す道」と諭していた。が、結局「みんなの党」は聞く耳を持たなかった。この政党に毎日はこう言っている。
「法案への疑問や懸念は国会審議でむしろ深まるばかりで、付け焼き刃的な修正でカバーできるものではない。与党による強行採決など数頼みの手段は許されない。野党側も将来に禍根を残しかねない中身での妥協は厳に慎むべきである」「何が秘密であるかが明らかにされないうえ情報公開のルールもなく、国会や司法のチェックも及ばない。質疑を重ねるほど法案の構造的な問題を露呈しているのではないか」
「そんな法案を2週間ほどの審議で通過させるなど論外だ。参院選で国会のねじれが解消して4カ月ばかりで数まかせの手段を行使するようでは選挙結果を有権者からの『白紙委任』とはき違えているに等しい」
「不可解なのがみんなの党の柔軟姿勢だ。同法案は官僚による情報独占、立法府や司法に対する行政優位を強めかねない大きな問題がある。ところが渡辺喜美代表は『総論賛成』と早々に言い切り、安倍晋三首相との会食で修正案まで示したという。官僚支配に反対した党の理念とどう整合するのか。同党の主張に沿い秘密指定への首相の関与が強化されたとしても恣意的な指定のおそれなどが解消するとは言い難い。安易な妥協で与党に採決の口実を与えてしまえば、その責任は重い。政党の真価が試される場面だ」
「2週間ほどの審議で通過させるなど論外」であるにもかかわらず、「不可解なのがみんなの党の柔軟姿勢」との指摘。11月13日付の毎日には、「同法案には、民主党が反対する方針を固めたほか、みんなの党は近く、独自に修正案をまとめる予定だ。共産党、生活の党、社民党は反対を決めており、自民党が現段階で修正協議に入れるのは維新だけというのが現状」との記事。「自民党が現段階で修正協議に入れるのは維新だけ」と思っていた矢先の、みんなの転びである。不可解以外に形容しがたい。
このことに、もっともストレートな見出しを付けているのが、「日刊ゲンダイ」で、「非難噴出! みんなの党『秘密保護法』ドタン場で裏切り合意」というもの。記事の内容を抜粋すれば以下のとおり。
「みんなの党の山内康一国会対策委員長は『(与党側の)誠意ある回答だった。趣旨をおおむね認めてもらった』と喜んでいたから開いた口が塞がらない。与党は首相の関与を形式的に明記するだけで、実務を各省庁が担う実態はほとんど変わらない。みんなは19日午前の政調部門会議で与党との修正協議を執行部に一任してしまった」「19日午前の党本部前には、みんなの裏切り行為を知った市民団体『秘密保護法を考える市民の会』の有志が集まり、『知ろうとするだけで犯罪』などのプラカードを掲げて抗議。『みんなの党のみんなとは誰のことか』『一人一人の議員はどう思っているのか』などとシュプレヒコールを上げた」
そしても最後が「東京新聞」。同紙は、解説ではなく、夕刊1面の記事として「恣意性チェック骨抜き」と見出しを打った。
「みんなの党は…与党が示した修正案を了承した。修正案は、政府の意のままの秘密指定を防ぐ第三者機関の設置は盛らず、「首相の『第三者機関的関与』で恣意的運用を排除し、指揮監督権を明記」としたが、首相は政府代表そのもので「第三者」ではなく、すでに「指揮監督権」もある。恣意性の検証は骨抜きとなった」と、記者の怒りが伝わってくる内容。
敵と味方がようやく見えてきた。問題の重要性も、問題の核心も見えて来つつある。大きな国民世論のうねりが起こる前に、慌てての強行採決に及ぶようなことがあれば、それこそ国民からの鉄槌を受けることになろう。
(2013年11月19日)