市民目線は、黒川を「起訴相当」と判断した。次は安倍の番だ。
(2020年12月25日)
なんという絶妙な天の配剤であろうか。昨日(12月24日)、安倍晋三が秘書に全ての責任を押し付けて、自らは不起訴処分となったその日に、黒川弘務・起訴相当の検察審査会議決が公表された。その結果、本日の新聞の一面で、安倍とならんで黒川の写真が載っている。
安倍晋三のレガシーである「モリカケ桜クロカワイ」と謳われたあの黒川である。安倍官邸の守護神と異名をとった東京高検元検事長の、あの黒川弘務である。議決をしたのは、東京第6検察審査会。議決は、《不起訴不当》ではなく、《起訴相当》である。これは厳しい。
世が世なれば、賭けマージャンに足をすくわれることさえなければ、いまごろ黒川弘務は検事総長の地位にあったはずである。その黒川を起訴して刑事被告人とせよ、と言うのが市民目線による検察審査会の判断なのだ。
黒川は、産経記者(2人)と朝日の元記者とともに賭けマージャンを繰り返していたことが明るみに出て、職を辞した。官邸の守護神も、自らを守ることはできなかったのだ。職を辞した黒川を、市民団体が賭博罪で告発した。
賭けマージャンは賭博罪に当たる。これには疑問の余地がない。問題は、刑事訴追に値するだけの悪質性・重大性があるか、である。黒川の賭マージャンのレートは点ピン(1000点を100円に換算するもの)であった。おそらくは、起訴不起訴の境界近辺の微妙なところ。起訴・不起訴どっちに転んでも、おかしくはない。
告発を受けた東京地検は起訴猶予処分とした。「1日に動いていた金額が多いとは言えない」という理由であったという。告発をした者は、不起訴の処分に不服があれば、検察審査会に審査を申し立てることができる。果たして、黒川不起訴(起訴猶予)の処分は適正であったか否か。市民団体が、検察審査会に審査を申立てたのは、「身内に甘い」という指摘が中心だったようだ。
本件には、事実認定や法律解釈に困難な問題点はない。市民感覚での、検察官の犯罪を不起訴にしてよいのかという判断が求められたのだ。検察審査会の議決は下記の3種。
(1)不起訴相当
(2)不起訴不当
(3)起訴相当
(3)の起訴相当の議決には、11人中8人の賛成が必要とされている。東京第6検察審査会は、黒川については高いハードルをクリヤーして、「起訴相当」にした。なお、新聞記者ら3人については「不起訴不当」の議決に留まった。
議決の中で審査会はこう述べているという。
「賭けマージャンはいわゆる『点ピン』と呼ばれるルールで行われ掛け率や賭け金が格段高いとはいえないが起訴猶予が当然というほど射幸性が低いとも言えない。東京高検検事長という重責にあり、違法行為を抑止する立場にあった元検事長が漫然と継続的に賭けマージャンを行っていたことが社会に与えた影響は大きく動機や経緯に酌むべき事情はない」
地検は再捜査のうえ再処分をすることになるが、再び不起訴なら検察審査会が再議決を行う。再び8人以上の賛成で「起訴議決」となれば強制起訴となる。
黒川と安倍、持ちつ持たれつで、相親しく相似たりの間柄。「起訴相当」議決を受けた今日の黒川は、安倍の明日の姿である。同じ紙面の顔写真を見て、つくづくとそう思う。
人は、自分に不都合な真実は語りたくない。だから安倍は、桜前夜祭問題では、声を張り上げて、118回もウソを繰り返した。しかし、人は不都合な真実を隠し通せないことを覚るや、その限りで一見しおらしく不都合な真実を語る。安倍も、一部の不都合な真実を語るが、それは「もっと大きな不都合な真実」を覆い隠すためである。ウソつき晋三の「秘書がやったことで、私は知らないかった」を、いったい誰が信じえようか。もっと大きな「不都合な真実」が暴かれるとき、安倍も起訴相当となり、強制起訴となる。
本日、安倍晋三は、閉会中審査の国会で新たなウソをつきはじめた。そのことについては通常国会でのさらなる追及が必要である。のみならず、検察審査会の議決においても追い込まなければならない。安倍晋三は、かつての守護神の轍を踏みつつある。
安倍晋三は、さぞや臍を噛んでいることだろう。この日あることを考えたがために、黒川を強引に検事長とし、さらには検事総長にまでしようとしたのだ。今は、守護神どころか、貧乏神ではないか。オレを守るはずが、自分のことも守れないとは。
また、安倍晋三はこうも思っていることだろう。オレのツキも、もうなくなった。まだツキがあるうちは、オレの手で憲法改正もできそうだという気もしていたが、もうだめだ。結局改憲派のツキがなくなったということなのだな。