菅義偉による「学術会議被推薦会員任命拒否」の暴挙を正す法的な闘いが始まった。
(2021年4月27日)
昨日(4月26日)、学術会議から次期会員として推薦を受けながら、菅義偉によって任命を拒否された6名の研究者が、内閣府と内閣官房に対して、個人情報保護法に基づく自己情報開示の請求書を提出した。
また併せて、法学者や弁護士計1162名が任命拒否の根拠や理由を示す文書の開示を求めて情報公開請求に及んだ。私も、その1162名の一人である。さあ、いよいよ本格的な法的レベルでの闘いが始まる。
菅義偉という男が首相になっての初仕事が、日本学術会議の会員候補6名の任命拒否であった。権力による、アカデミズムへの乱暴極まりない不当介入である。憲法も法律も、学の独立も、非文明人である彼の目には入らない。あの中曽根康弘という超国家主義者でさえ、首相の日本学術会議会員任命権は形式的なものに過ぎないとして、学術会議自身の推薦を尊重した。菅の任命拒否は、違法というだけでは足りない。民主主義のなんたるかを弁えない蛮行であり暴挙であると評するしかない。
自己情報開示請求は〈行政機関個人情報保護法〉に基づくもの。自己情報をコントロールする権利を行使して、行政機関に対して、学術会議会員の任命に関しての「自己に関して行政機関が保有している文書」の開示を求めるもの。
法学者・弁護士計1162名の情報開示請求は、〈行政機関情報公開法〉にもとづくもの。開示請求の対象は、『任命拒否の経過や、根拠・理由が分かる行政文書』。当然のことながら、公開を拒否された場合には、行政事件訴訟法に基づく訴訟の提起までを想定している。
昨日、自己情報開示請求書を持参して内閣府に直接提出したのは、岡田正則・早稲田大教授と小沢隆一・東京慈恵会医科大教授。二人は、記者会見でこう語っている。
岡田正則・早稲田大教授(行政法学)
日本の民主主義と法治主義が試されている。日本学術会議法は、(首相は被推薦者を)任命しなければならないと定めている。政府も繰り返し学術会議からの推薦によって任命すると国会で約束してきた。にもかかわらず、今回突然、総理大臣がそれに縛られないで任命拒否できるとした。
これは違法と言わざるをえない。政府がそれについて何も説明しないというのは、議会制民主主義を破壊する行為だ。法律家の責任として、このまま見過ごすことはできない。
首相が、学術会議の推薦を否定したわけです。菅首相は「人事に関することだから説明できない」と言うが、拒否した6人の名前も業績も知らないという。それでも、「人事に関すること」と言えるのか。学術会議が推薦した者を拒否した基準はあるのか、あるならば明らかにしていただきたいということだ。
小沢隆一・東京慈恵会医科大教授(憲法学)
この件は、重要な問題を含んでいる。今回の任命拒否について菅首相は、「学問の自由とは関係ない」「学術会議の独立を侵していない」と国会で答弁している。しかし、学術会議が私たちの研究業績にもとづいて選考・推薦したものを拒否するのであれば、特段の理由を明らかにしなければならない。
政治的な立場から政府が介入したのではないかという疑念を国民は抱いている。今回は私たち自身が請求しているので、人事やプライバシーといった問題はクリアされている。今回の請求が、市民社会と政府と学術の関係を正していくものになるようにしたい。