澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

熊と虎との「仲良し対談」記録

(2022年3月7日)
(下記は、某月某日のオンライン対談記録の日本語訳である。現実に、この対談が行われ、正確に翻訳されたことについての証明はなく、信憑性は乏しいと指摘されている)

「いやあ、あんたもやるねえ。用意周到だったわけだ。軍事侵攻の既定方針を隠して被害者を装うなんて、並みの芸当ではない。さすがは元KGB、大したもんだ」

「いやいや、褒められるほどじゃない。まだまだあんたには及ばない。香港の面倒な連中を押さえ込んだ手際にはほとほと感心した」

「あんたがうまくやってくれれば、次はワタシの番だ。あんたが失敗すると、チトやりにくくなる。その意味では相身互い、持ちつ持たれつだ。同じ穴のムジナかな」

「あんたの応援はいつもながら心強い。《弱い人は絶対に強い人にけんかを売るような愚かな行いをしてはいけない》と言っていただいたことには感謝したい」

「小国の分際で大国に楯突こうということが、大半の国際紛争の原因じゃないか。もっとも、ウチの場合は国内の民族紛争だけど、根は一緒だ」

「普通は軍事的な脅しだけで解決するんだが、《脅しには屈しない》なんて構えられると実力行使せざるを得ない。すべての責任は、小国の愚かな指導者にある」

「なんちゃって。結局のところ首都の進攻にまで至る口実を得たのだから、思う壺というところなんだろう」

「ウーン、そこだ。最初の作戦予定では、首都はすぐに陥落するはずだった。ところが、どうも、もたもたしてしまっている」

「その間に、あんたは世界中からバッシングだ。なかなかたいへんだろうね」

「国外からのバッシングは想定内だったが、問題は軍事作戦が長引いた結果の国内への波及だ。ロシア国内の民衆のデモは容易に鎮圧できそうに見えて、その実、弾圧を重ねてもおさまりそうもない。このデモを民意とする各方面への波及効果に頭が痛い」

「ヨーロッパの大規模なデモと連携しているんじゃないか。少なくとも、海外の大規模なデモに触発され鼓舞されていることは間違いない。ウチも警戒しなけりゃならない」

「日本の政治家だか芸能人だかが、テレビで《日本でデモしてもクソの役にも立たない》と言ってくれた。世界は広い。西側にもワタシたちの強い味方がいて、結構がんばってくれている。ありがたいことだ」

「あんたも国内のメディアを相当押さえ込んでいるようじゃないか」

「幸い、議会はワタシの言うままだ。直ちに、《政府発表とは異なるデマ報道には最高懲役15年》の立法だ。海外メディアも国内での取材はあきらめてきている」

「それがまた批判の材料にはなっているようだが、今はなりふり構っておられないからな」

「問題はむしろ、これまでは身内だった退役将校やら財界人が、叛旗を翻していることだ。これも国内のデモが沈静化しないことに影響されている」

「退役将校はともかく、新興財閥の離反は欧米の経済制裁が利き始めたということだろう」

「そうなんだ。戦闘が長引けば、戦費はかさむ。経済制裁は利いてくる。海外資本は逃げ出す。国民生活にしわ寄せが来る。インフレも起こるだろう。国際世論もますます厳しくなる。押さえつけようにも、国内の政権批判は止まらなくなる」

「お互い専制体制維持には人に知られぬ悩みがあるということだ。で、私に何をせよと?」

「幾つかのお願いがある。お互いの利益のためだ。ぜひ聞いていただきたい」

「聞けることと聞けないことがある。こちらも、あんたの巻き添えになって国際批判の矢面に立たされるのはまっぴらご免だ」

「まずは、米欧からの経済制裁加担の呼びかけを拒否してもらいたい。ブリンケン米国務長官は中国の王毅外相との電話会談で『世界はどの国が自由、自決、主権の基本原則のために立ち上がるかを見守っている』とロシア制裁の隊列に加わるように圧力をかけている。これを一蹴して欲しいんだ」

「ウーン、ドル建て決済が世界の経済を席巻しているいま、米欧と全面対決するのはなかなか難しい。時間を置いて、人民元決済の時代が来るまでは、態度を曖昧にしつつ経済制裁の抜け穴を見つけて対応するしかなかろう」

「何と情けない。ここは、専制主義・独裁主義が生き残れるか否かのせとぎわ。ワタシがこければあんたもあぶない。ぜひともよろしくお願いしたい」

「外には?」

「我が国に対する、金融支援、借款、装備品、日常品などの物資の支援を拡大してもらいたい。でなければ、国内世論が政権批判に向かうことになる」

「それから?」

「いずれイザというとき、戦況次第で必要になったときには、停戦の調停役を買って出ていただきたい。中途半端な調停者では、せっかくの軍事侵攻の努力が水の泡だ。その点、あんたなら信用できる」

「できるだけのことをしたいとは思うが、期待しすぎないでもらいたい。すべては国際世論と戦況次第だ。国際的な反戦デモのうねりがやまず、これがロシア国内の世論をも喚起し、各国の政府に経済制裁にとどまらない政治的、文化的な制裁手段に及んだとき、あんたの立場を守るために火中の栗を拾うわけにはいかない」

「ずいぶん冷たいじゃないか。《デモなんかクソの役にも立たない》という世論が世界の主流になることを願うばかりと言うことか…」(以下、録取不能。なお、対話者のコードネームは「熊」と「虎」であるが、巷間「狐」と「狸」ともされているようだ)

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