ゼレンスキーの国会演説。被侵略国の代表者の訴えに耳を傾け励ましたい。
(2022年3月21日)
ゼレンスキー・ウクライナ大統領の我が国での“国会演説”が、明後日(3月23日)午後6時からオンラインで生中継となる見通しと報じられている。今のところ、自公維国が積極姿勢で、立憲・共産は慎重とのこと。
被侵略国には連帯したい。が、何を言うかはよく分からない。それでいて、世論に与える影響は大きい。慎重になるべきは当然だろう。日本の多数派、政権与党側に擦り寄っての支援要請発言とならざるを得ない以上は、我が国の少数派勢力には十分な警戒心が求められる。
よもやとは思うが、「ウクライナ人民は、国民一丸となって、祖国の栄光のために、死をも恐れずに、降伏を拒否してひたすら闘う。そのための軍事支援を。そして、平時にも軍備の増強を」などと、戦前さながらの軍国主義・国家主義・好戦主義を煽られてはたまらない。
ジャーナリストの鳥越俊太郎が自身のツイッターで、厳しい反対の意向を示していることが話題になっている。
反対理由は、「紛争の一方当事者の言い分を、国権の最高機関たる国会を使って言わせることでいいのか? 国民の声も聞かずに! 中国・台湾紛争でも台湾総統の演説を国会で流すのか?」とツイート。ゼレンスキー大統領の国会演説に疑問を呈している。
さらに「私はゼレンスキーに国会演説のチャンスを与えるのには反対する!どんなに美しい言葉を使っても所詮紛争の一方当事者だ。台湾有事では台湾総統に国会でスピーチさせるのか?」と猛反対。「紛争の当事者だ。何を言うか、分からんねぇ?国民は許さない。たとえ野党まで賛成してもだ!!」
また立憲民主の泉健太も、ゼレンスキーに演説させるにしても、「両国政府の合意の範囲」が当然であると主張している。党内から批判の声も上がったが、3月18日の記者会見では演説自体に反対ではないと釈明しつつ、国会が国権の最高機関であることや過去のケースを理由に首脳会談や共同声明、演説内容の「事前調整」の必要性を改めて強調したという。
私は、どちらかと言えば賛成の立場。但し、事前に幾つかの前提を踏まえてもらう必要があるだろう。日本には平和主義の日本国憲法があり、憲法9条は戦力放棄を定めている。非核3原則という国是もある。戦前の日本は、帝国主義的侵略国であったが、敗戦と同時に国のありかたを一変して、恒久平和主義を遵守する国家になって現在も変わらない、と。その立場からのウクライナ支援には自ずから限界があることの認識が必要なのだ。
ゼレンスキーに国会で喋ってもらうのは、飽くまでも理不尽な侵略を受けている国と国民の代表としてである。紛争当事国の一方としてのことではない。
なお、自民党の深谷隆司が、こう言っている。「16日の米国連邦議会向けの演説で、ゼレンスキー大統領はロシアの残虐行為を真珠湾攻撃になぞらえていた。彼の無知と偏見に私は驚いた。日本軍は真珠湾で民間人を狙った攻撃や、無差別爆撃をしていない。」
驚いてみせる必要はない。ゼレンスキーはこう言ったのだ。「真珠湾を思い出してほしい。1941年12月7日の恐ろしい朝、空があなたたちを攻撃する飛行機で黒くなった。米同時多発テロを思い出してほしい。2001年の恐ろしい日、邪悪が米国の都市を戦場に変えようとした。そのとき、無辜の人々が空から攻撃された。誰も予測していなかったように。そして、あなたがたはそれを防げなかった。我が国は同じことを経験している、毎日、まさに今この瞬間も」(訳は、CNN・Japan)
自民党には、かつては我が国がロシアと同じく、隣国に侵略戦争を仕掛けたという自覚がないのだろうか。宣戦布告なき真珠湾攻撃をいまだに反省していないのだろうか。