澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

プーチン・ロシアの蛮行は、大量殺戮であり、大規模強盗であり、都市と建造物の破壊犯罪であり放火でもある

(2022年4月22日)
 ロシアの軍事侵攻によるウクライナの悲惨な事態に胸が痛む。これまで、その名さえ知らなかったマリウポリという都市の存在が、ここ数日特別の意味をもって脳裏を離れない。その市民の深刻な苦悩や恐怖を思わずにはいられない。
 
 4月17日以来、マリウポリのアゾフスターリ製鉄所に立て籠もる守備軍と市民にに対する時間を切った降伏勧告が繰り返され、その都度胸が締めつけられる思いを余儀なくされてきた。いまもなお、その巨大な製鉄所の地下に、砲撃の恐怖と飢餓とに苛まれている多くの人々が身をひそめているという。

 ところが、昨21日突然に様相が変わった。プーチンが、唐突に作戦変更を指示したようなのだ。報道では、プーチンはショイグ国防相にこう述べたという。

 「工業地帯への強襲は、得策とは思えない。中止を命じる。兵士と将校の命と健康を守ることを考えなければならない。地下墓地のようなところをはいずり回る必要はない。ハエ1匹通れないよう、工業地帯を封鎖せよ」「“マリウポリ解放作戦”の完了を祝福する。感謝の意を隊員に伝えてほしい。南部の重要な拠点を制圧したことは成功だ。おめでとう」

 なんというプーチンの言いぐさだろう。「マリウポリ全体では、約10万人が地下シェルターに隠れており、製鉄所地下には2000人が救出不可能な状況」と報じられている。息をひそめて「地下墓地のようなところをはいずり回る」10万の人々を、プーチンは「ハエ」にたとえたのだ。生死の境をさまよっている人々に対して、「ハエ1匹通れないよう封鎖せよ」と言った。それが、プーチンなのだ。

 戦争だから仕方がない、とは言わせない。戦争を起こしたのもプーチンではないか。やむにやまれず起こした戦争だとも、言わせない。プーチンには、自らが起こした戦争での死者や戦争に苦しむ人に対する畏敬の念も、遺憾の気持ちも、憐憫も呵責も何もない。侵略戦争を起こし戦争犯罪を犯す人物とは、このような神経の持ち主なのだ。

 確認しておこう。プーチン・ロシアの侵略行為は、国連憲章に違反の違法行為である以前に、明らかな大量殺戮であり、大規模強盗である。都市と建造物の破壊犯罪であり、放火犯でもある。さらに、おびただしい死体損壊、死体遺棄でもある。これに関しての、いかなる口実も言い訳も許してはならない。

 また、改めて思う。プーチン・ロシアと同様に、これまでのあらゆる侵略も違法である。皇軍の侵略も、ベトナム戦争も、アフガン戦争も、イラク戦争も、イスラエルも…も。「どっちもどっち」で許すのではなく、「どっちも、けっして許してはならない」。アメリカもロシアも、ヒトラーもヒロヒトも、侵略戦争を起こし、戦争犯罪を重ねた国とその指導者は、徹底して断罪されなければならない。

 私に分かることは、侵略者の違法とその悪辣さであって、しかるべき制裁が必要だということである。私に分からないのは、悪辣な侵略行為にどう対処すればよいのかということ。英雄的な徹底抗戦が正義なのか、交渉に妥協してでも停戦して人命を尊重すべきが正義なのか。あるいは、そのような問題の設定自体が間違っているのか。果たして、このような問に正しい解があるのだろうか。

 分からぬままに、ひたすらに胸が痛む。これもプーチンの仕業である。

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