本日は悪名高き「10・23通達」発出の日
(2022年10月23日)
本日は、私にとっての特別な日。いや私だけではなく、憲法や人権や真っ当な教育を考える人々にとって、忘れてはならない忌まわしい日。毎年、この日がめぐってくると、当時の自分の記憶をあらため、闘う気持ちを新たにする。
19年前のこの日、東京都教育委員会が「日の丸・君が代」の強制を教育現場に持ち込んだ。悪名高い「10・23通達」の発出である。東京都教育委員会とは、石原慎太郎教育委員会と言って間違いない。この通達は、極右の政治家による国家主義的教育介入なのだ。以来、卒業式・入学式などの学校儀式における国旗・国歌(日の丸・君が代)への敬意表明が全教職員に強制されて現在に至っている。
「10・23通達」の形式は、東京都内の公立校の全ての校長に宛てた命令である。各校長に所管の教職員に対して、入学式・卒業式等の儀式的行事において、「国旗に向かって起立し国歌を斉唱する」よう職務命令を発令せよ、職務命令違反には処分がともなうことを周知徹底せよ、というものである。実質的に、知事が校長を介して、都内の全公立校の教職員に起立斉唱命令を発したに等しい。この事態は、教育法体系が想定するところではない。
あの当時、元気だった次弟の言葉を思い出す。「都民がアホや。石原慎太郎なんかを知事にするからや。石原に投票するセンスが信じられん」。そりゃそのとおりだ。私もそう思った。こんなバカげたことは石原慎太郎が知事なればこその事態、石原が知事の座から去れば、「10・23通達」は撤回されるだろう、としか考えられなかった。
しかし、今や石原慎太郎は知事の座になく、悪名高い横山洋吉教育長もその任にない。石原の盟友として当時の教育委員を務めた米長邦雄や鳥海巌は他界した。当時の教育委員は内舘牧子を最後にすべて入れ替わっている。教育庁(教育委員会事務局)の幹部職員も一人として、当時の在籍者はない。しかし、「10・23通達」は亡霊の如く、いまだにその存在を誇示し続け、教育現場を支配している。
この間、いくつもの訴訟が提起され、「10・23通達」ないしはこれに基づく職務命令の効力、職務命令違反を理由とする懲戒処分の違法性が争われてきた。この訴えを受けた最高裁が、
秩序ではなく人権の側に立っていれば、
国家ではなく個人の尊厳を尊重すれば、
教育に対する行政権力の介入を許さないとする立場を貫けば、
思想・良心・信教の自由こそが近代憲法の根源的価値だと理解してくれさえすれば、
真面目な教員の教員としての良心を鞭打ってはならないと考えさえすれば、
そして、憲法学の教科書が教える厳格な人権制約の理論を実践さえすれば、
「10・23通達」違憲の判決を出していたはずなのだ。そうすれば、東京の教育現場は、今のように沈滞したものとなってはいなかった。まったく様相を異にし、活気ある教育現場となっていたはずなのだ。
19年目の10月23日となった本日、関係17団体の共催で、恒例の「学校に自由と人権を!10・23集会」が開催された。メインの企画は、小澤隆一さんの講演「憲法9条の危機に抗して」。教育の危機は、戦争の危機につながるのだ。本日の私の気持ちを、下記の集会アピールが代弁してくれている。
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?10・23通達発出から19年にあたって?
「学校に自由と人権を!10・23集会」アピール
東京都教育委員会(都教委)が卒業式・入学式などで「日の丸・君が代」を強制する10・23通達(2003年)を発出してから19年経ちました。これまで「君が代」斉唱時の不起立・不伴奏等を理由に延べ484名もの教職員が処分されています。10・23通達と前代未聞の大量処分は、東京の異常な教育行政の象徴です。
小池都放下で都教委は、卒入学式で不起立を理由とした処分の強行などこれまでの命令と処分の権力的教育行政を続けています。新型コロナ感染拡大の最中の今年の卒業式は、昨年に続き、式を短縮しても、式次第に「国歌斉唱」を入れ生徒・教職員を起立させ、CDで「君が代」を大音量で流し、「起立」を命じ、まさに「君が代」のための卒業式という異常さが改めて浮き彫りになりました。
岸田政権は、安倍・菅政権を継承し、参議院選挙の結果を受けて、憲法改悪の動きを一層加速し、ロシアのウクライナ侵略に便乗し、敵基地攻撃能力の保有、防衛費2倍化の検討など「戦争する国」へと暴走しています。何としても憲法改悪を止めるために、草の根から、大きな闘いを構築しなければなりません。
また、小中学校の「道徳」の教科化、高校の科目「公共」、教科書の記述への露骨な政治介入等、教育の政治支配と愛国心教育による「お国のために命を投げ出す」子どもづくりが狙われています。
最高裁判決は、職務命令は思想・良心の自由を「間接的に制約」するが「違憲とはいえない」として戒告処分を容認する一方、減給処分・停職処分を取り消し、機械的な累積加重処分に歯止めをかけました。
一連の最高裁判決とその後の確定した東京地裁・東京高裁の判決により、10・23通達関連裁判の処分取り消しの総数は、77件・66名にのぼります。
これまで都教委は、違法な処分をしたことを反省し謝罪するどころか、減給処分を取り消された現職の都立学校教員を再処分(戒告処分)するという暴挙を行いました。また、2013年3月の卒業式以降、最高裁判決に反し、不起立4回以上の特別支援学校、都立高校の教職員を減給処分にしています。また、被処分者に対する「再発防止研修」を質量ともに強化し、抵抗を根絶やしにしようとしています。
しかし、これらの攻撃に屈することなく、従来の最高裁判決の枠組みを突破し、戒告を含む全ての処分及び再処分の取り消しを求め、東京「君が代」裁判五次訴訟が東京地裁で闘われています。粘り強く闘う原告団を支え共に闘います。
破処分者・原告らは、19年間、都教委の攻撃に屈せず、東京の学校に憲法・人権・民主主義・教育の自由をよみがえらせるために、法廷内外で、学校現場で、粘り強く闘いを継続しています。多数の市民、教職員、卒業生、保護者がともに闘っています。
本日、10・23通達関連訴訟団・元訴訟団が大同団結し、「目の丸・君が代」強制に反対し、「憲法を変えさせず、誰も戦場に送らせない」運動を広げるために、「学校に自由と人権を!10・23集会」を開催しました。
集会に参加した私たちは、広範な教職員、保護者、労働者、市民の皆さんに「日の丸・君が代」強制と都教委の教育破壊を許さず、共に手を携えて闘うことを呼びかけます。何よりも「子どもたちを再び戦場に送らない」ために!
2022年10月23日
「学校に自由と人権を!10・23集会」参加者一同