澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

秘密保護法の危険性を語るポイント

本日、第185臨時国会開会。今国会最大の対決法案は、「特定秘密保護法」。なんとしても、この法案の上程を阻止したい。提案されても、成立させてはならない。

この秘密保護法の問題点を訴えるには、三つのポイントがある。これを意識しながらTPOで細部を詰めていく。そのような語りかけや議論ができるようにしたいと思う。

第1点は、この法案の出自である。「法案提出の動機」「提案の背景事情」と言ってもよい。今回の法案は「アメリカからの度重なる要請」を出自としている。「要請」とは実質的に「押し付け」にほかならない。アメリカが押しつけているものは、独りこの法案に限らない。実は、この法案は孤立したものではなく、改憲、集団的自衛権、国家安全保障法、日本版NSC法、防衛大綱見直し‥等々とセットになった、危険な企図の一端であること。

第2点は、この法案がもっている独自の本質的危険性である。国民主権や民主々義が機能するためには、国民が政治的テーマについての情報を把握していることが大前提である。法案は、「時の政権が許容する範囲において国民に情報が与えられる」という仕組みをつくるものとして、国民主権・民主々義を蹂躙するものであること。

第3点は、この法案がもっている危険性の具体的イメージである。もし、この法案が成立したとすれば、日常生活はどうなる、国会はどうなる、記者の取材はどうなる、国民の知る権利は具体的にどうなってしまうのか。戦前の軍機保護法、国防保安法、軍刑法がどう使われたか。戦後も、沖縄返還密約問題など、秘密保護法制の危険性を生々しく具体的に語らねばならない。

以上の各点について、敷衍したい。まず、第1点。
この法案の出自がアメリカの要請にあることは、よく知られている。最初が2000年のアーミテージ・レポートだった。アメリカとの軍事的共同作戦を実行するためには秘密情報を共有しなければならない。だから日本にも「アメリカ並みの秘密保護法制が必要」というのだ。改憲をなし遂げ国防軍を作ることができればアメリカとの共同作戦を遂行することになる。改憲に至らずとも解釈改憲によって集団的自衛権行使が容認されれば海外での共同作戦遂行が可能となる。そのとき、アメリカとしては、同盟国日本との軍事作戦情報が秘匿されなければならない。ここに、この法案の出自がある。
安倍政権がたくらむのは、特定秘密保護法ばかりではない。戦争のできる国日本を目指すには、改憲、集団的自衛権、日米ガイドライン見直し、国家安全保障法、日本版NSC法、防衛大綱‥等々とセットになった総合法制が必要である。特定秘密保護法はその突破口であり、要の地位にもある。この動機や背景を見定めることは、そのままこの法案の危険性や、成立した場合の影響を語ることにもなる。

第2点。
憲法の国民主権原理は、国民一人ひとりが国政に関する重要な情報を把握することを大前提としている。国政に関して正確な知識を持った主権者が、自ら考え、意見を述べ、討議を重ねることによって、政策決定がなされることを想定している。民主々義は、国民の情報へのアクセスの権利、すなわち「知る権利」があって初めて成立する。情報を遮断された国民による、「民意の形成」も、「討議の政治」もなりたち得ない。民主々義のサイクルの始まりに、国民の知る権利がある。秘密保護法は、これを侵害する。国民主権と民主々義を根底から突き崩すものと言わざるを得ない。
国民は、報道機関の自由な取材と報道の活動によって国政に関する情報を知る権利をもっている。権力はいかに自分に不都合なものであっても、報道の自由を侵害してはならない。また国民は、行政が把握した国政に関する情報についてもこれを知る権利がある。民主々義が行政に要請するものは、行政の透明性を確保するための国民に対する情報の開示と説明責任の全うである。断じて、秘密の保持の範囲の拡大と厳格化ではない。

第3点。この点については、常に新鮮な情報か新しい切り口の提供が必要である。
本日、院内集会に参加して印象深かった情報2点。

一つは、毎日新聞の臺宏士記者からの報告の中でのこと。福島県議会の「特定秘密保護法に対し慎重な対応を求める意見書」が10月9日全会一致で採択され、本日開会の両院には届けられているという。
その内容は、「当県が直面している原子力発電所事故に関しても、原発の安全性に関わる問題や住民の安全に関する情報が、核施設に対するテ口活動防止の観点から『特定秘密』に指定される可能性がある」ことを指摘し、「今、重要なのは徹底した情報公開を推進することであり、刑罰による秘密保護と情報統制ではない。『特定秘密』の対象が広がることによって、主権者たる国民の知る権利を担保する内部告発や取材活動を委縮させる可能性を内包している本法案は、情報掩蔽を助長し、ファシズムにつながるおそれがある。もし制定されれば、民主主義を根底から覆す瑕疵ある議決となることは明白である。」という強い怒りの表現となっているというのだ。

もう1点は、赤嶺政賢議員の指摘。
「1989年のこと。海上自衛隊那覇基地内にASWOC(アズウォック・対潜水艦戦作戦センター)の庁舎建築に際して、建築基準法に基づき那覇市に建築工事計画通知書が提出された。この資料を市民が情報公開請求し、那覇市が市条例に基づいてこれを公開した。ところが国(那覇防衛施設局長)が公開に『待った』をかけた。『防衛秘密に属するから公開はまかりならぬ』というのである。国は、那覇市を被告として公開取り消しの裁判を起こした。最高裁までいって、この件では那覇市が勝訴したが、特定秘密保護法が成立したらこうはならないだろう。情報の公開ではなく、秘密の保持が優先することを恐れる」

秘密保護法について、構成をきちんとして縦横に語れるようになりたいものである。
(2013年10月15日)

Info & Utils

Published in 火曜日, 10月 15th, 2013, at 23:15, and filed under 未分類.

Do it youself: Digg it!Save on del.icio.usMake a trackback.

Previous text: .

Next text: .

Comments are closed.

澤藤統一郎の憲法日記 © 2013. Theme Squared created by Rodrigo Ghedin.