民衆の反共意識 その根拠と克服のために
昨日(10月14日)付の「赤旗・日曜版」に、日本共産党にとってなんとも景気の良い記事が掲載されている。「参院選後 地方議員選49連勝」という見出し。
「参院選後の定例地方議員選挙。日本共産党は党候補81人が立候補した24市25町村で全員当選、11週にわたって49連勝中です。当選者数は4年前の前回と同数ですが、定数を減らされる中、議席占有率は8.6%から9.2%へ0.6ポイント前進しました。」
「これらの議員選挙全体でみると、7月の参院選比例票の113.8%を獲得。他党は、自民91.1%、公明84.0%、民主49.9%、維新の会59.2%と、いずれも参院選比例票より得票を減らしています。」
「補欠選挙では定数1の茨城県議補選筑西市区(9月8日投票)で自民党推薦候補との一騎打ちを制して、日本共産党公認の鈴木聡さんが当選しました。」
この記事に表れた数字がどのような意味をもつものなのかよくは分からないが、「11週にわたって49連勝中」とはまことに結構なこと。
共産党の他党とは異なる組織上の特色は、全国各地に拠点となる党組織を持ち、地方議会に献身的な議員をもっていることだ。要するに、「政党らしい政党」となり得ている。文字通り、「身を粉にして」「地を這うような」地道な活動をしている地方議員が党を支え、日本の民主々義をも支えている。その地方議員の選挙が「連戦連勝」であることは、喜ばしい。
「水商売」という言葉は言い得て妙である。一見調子が良さそうでも、金融機関が「水商売」に信用を措くことはない。明日の流れは「水もの」なのだから。維新や民主を「水商売」にたとえることが失礼であれば、「風政党」でもよかろう。風の吹き方、風向き次第。風が収まれば、また離合集散を繰り返すしかない。一時は勢いのよかった維新や民主の風も、いまやぱったりである。なお、本日は社民党の党首選開票日だったが、その話題性の凋落は覆うべくもない。いまやひっそり、というしかない。
これに比較して共産党の活動は、「水もの」でも「風頼み」でもない。確かな党の勢いを実感できる。支持者は着実に増えている。もちろん、その支持は日本共産党の理念や政策への積極的支持ばかりではあるまい。当然のことながら、安倍政権の悪政批判の消極的支持も多いことだろう。共産党が、政権批判の唯一の受け皿としての重みをもちつつあるのだから。他に「受け皿」としての政治勢力はなく、この傾向はしばらく続くことにならざるを得ない。
私は、共産党の党勢がなかなか大きくはならないことについて、いくつかの原因があろうかと思っている。
(1)まずは、戦前の記憶の残滓がある。
戦前において、共産党は、明らかに権力からの弾圧の対象であり、非国民として社会的からも排斥された。なにしろ、天皇陛下に弓を引こうというのだ。しかも、労働者の搾取は不正義などとも言う。地主様にもたてつこうという不逞の輩である。3・15事件、4・16事件ばかりではない。共産党員は、検挙され、拷問され、有罪とされ、命さえ奪われた。善良な小市民の目からは、共産党も共産党員も恐るべき存在である。
いじめられっ子に味方すると、自分までいじめられる。共産党の同類と疑われたのではたまらない。うっかり共産党の言うことに耳を傾けたり、目を向けたりしたらたいへんなことになる。治安維持法がなくなった戦後も、民衆の記憶の底に染みついた残滓はいまだに容易に消し去られてはいない。
(2)戦後の保守勢力は、民衆の反共意識を煽り助長して、最大限に利用した。
下山・三鷹・松川の各事件とも、事件直後から、政府が「労働組合と共産党の犯行」と宣伝した。有無を言わさない大規模なレッドパージは、戦前の記憶の再現となった。善良な市民に、「やっぱり、共産党の側にいるだけで火傷する」と思わせる状況が意識的につくられたのだ。
(3)体制の変革者としての共産党は、体制そのものからもっとも疎まれる存在である。
共産党は現在なお、資本がもっとも警戒する存在である。企業への就職に際しても、就職してからも、共産党に関わりを持っていることは、不利になるものと考えざるを得ない。企業だけではなく、官庁においても同様である。職業人として生きていくのに、共産党支持を表明して有利になることはほとんど考えられない。
(4)世渡りには共産党と関わりを持たないことが大切と信じられている。
上手に世渡りするには、「共産党を支持しています」などと毛ほどのそぶりも見せてはいけない。共産党の言うことに耳を傾けてはならない。赤旗講読などもってのほか。共産主義は、時代遅れだという思想を身につけよう。体制に疎まれることのない、今はやりの思想で共産党の言っていることに反論しよう。こうすることが、世に受け容れられる賢い生き方。そう広く信じられている。
にもかかわらず、いま、共産党への支持が拡大しつつあるのは、安倍右翼政権への対峙の姿勢に揺るぎがないからだ。私は、積極的な共産党支持者が増えることもさることながら、民衆の反共意識の克服が重要な課題だと思っている。そうでなくては、共産党を中心とする共闘が成立し得ない。改憲を阻止して民主々義を実現するための実践的課題である。
どんな動機であれ、民衆が共産党の政策に耳を傾け、選挙で投票する経験をもつことには、極めて大きな意義がある。共産党と関わりを持ちたくない、共産党支持者だと思われたくない、共産党と関わりを持たないことが賢い生き方だという反共意識を払拭する第一歩として。そして、改憲阻止の民主的共闘体制の構築を実現するために。
(2013年10月14日)