澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

「桜を見る会前夜祭」告発人集会 ー 安倍晋三を検察審査会申立へ

(2021年2月2日)
本日、「桜を見る会を追求する法律家の会」が、オンライン集会を開いた。
「会」は、「桜を見る会前夜祭」における参加者への費用補填に関する告発(政治資金規正法・公職選挙法違反)が秘書についての罰金だけで終わって、肝心の安倍晋三を不起訴としたことを不服として、本日検察審査会へ「起訴相当」の議決を求めて審査申立をし、併せて記者会見、告発人集会を開いた。

集会では、米倉洋子・日民協事務局長から申立内容についての報告の後、辻元清美議員、宮本徹議員、上脇博之教授、毛利正道弁護士、次いで私が、それぞれの立場から、発言・報告をした。

この中であらためて明らかにされたことは、安倍晋三後援会の3年分(2017年?2019年)の政治資金収支報告書の記載についての、泥縄式「訂正」の奇妙さである。この訂正は、配川博之(秘書)起訴・安倍晋三不起訴という処分をした12月24日の前日の「訂正」。おそらくは、検察からの指導によるものではないかと推測せざるを得ない。少なくとも、検察の黙認でなされたものではあろう。

奇妙の第1点は、子どもだましの明らかな辻褄合わせだということ。訂正前、前夜祭会費の補填費用は、一切報告がなかった。捜査の最終版で、補填費用が支出として計上せざるを得なくなった。とすれば、それに見合う収入も書き込まなければならない。さてどうするか。これを「前年からの繰越金を増額訂正する」という方法で、辻褄を合わせたのだ。

最後の「桜・前夜祭」が開催された2019年の収支報告書は訂正されて、補填額2,604,908円(A)の支出が記載されるとともに、「前年(18年)からの繰越金」が、補填額相当の2,604,908円(X)の増額訂正となった。

その前年の2018年の収支報告書は訂正されて、補填額1,506,365円(B)の支出が記載されるとともに、「前年(17年)からの繰越金」が、次年度への繰越金増額(X)に補填額相当の1,506,365円(B)を加算して、4,111,273円(Y)の増額訂正となった。

さらに、その前年の2017年の収支報告書は訂正されて、補填額1,901,056円(C)の支出が記載されるとともに、「前年(16年)からの繰越金」が、次年度への繰越金増額(Y)に補填額相当の1,901,056円(C)を加算して、6,012,329円(Z)の増額訂正となった。

面倒だが、
19年の前年からの訂正繰越金増加金額 X=A
18年の前年からの訂正繰越金増加金額 Y=X+B=A+B
17年の前年からの訂正繰越金増加金額 Z=Y+C=A+B+C

つまり、計算上のことだが、これが続けば訂正繰越金増加金額は、
W= A+B+C+D+E+F… と際限なく拡大することになる。

実際に訂正されたのは、公訴時効の問題で17年分までの3か年分だけになった。これでも、16年の収支報告書における「次年度への繰越金」は、17年の「前年からの繰越金」額とは、6,012,329円(Z)の齟齬が生じている。これは、現状を糊塗しようとして、新たな虚偽報告を行ったことになる。安倍晋三が、ウソとゴマカシを糊塗しようとする度に、新しいウソを重ねてきたことを思い出させる。

奇妙の第2点は、上脇さんの指摘である。上記の(A)(B)(C)の各年の補填額が一円単位まで書かれているのは、何を資料として記載したものかと問わねばならない。「領収証も明細書もない」というのは、実はウソではないのか。手許にあるからこそ、「正確な」金額を書けたのではないか。あるいは、安倍晋三後援会には、裏帳簿があったのではないか。数字はそこから拾ってきたのではないか。納得のいく説明がどうしても必要となっている。

また、奇妙の第3点は、この訂正は、安倍晋三の国会での証言(「補填の費用は自分や家族の金から支出した」)と、決定的に異なる。この点についての徹底した追及が必要となっている。

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私の発言は大要、以下のとおり。

私は、今回に限っては検察審査会の判断に大きな期待を寄せています。匿名の市民たちには、権力者を忖度する動機がありません。素直に法の趣旨を把握して条文を読み込めば、「安倍晋三有罪」という心証に到達するに違いありません。また、民主主義の何たるかを常識的に理解し、政治資金収支の主権者に対する透明性の確保徹底の観点からは、安倍晋三のようなウソにまみれた政治家に議員資格を与えておいてよいことにはならないはずと理解いただけると思うのです。

とりわけ強調したいことだけを申し上げます。
私と澤藤大河の両名が「第2次告発」、つまり政治資金管理団体である「晋和会」の会計責任者である西山猛と、同会代表としての安倍晋三を告発したのは、昨年の12月22日で、同日付の書面を東京地検特捜部に持参して提出しています。これに対する不起訴処分通知が、同月の24日付なのです。特捜は、実は実質的には何もこの点についての捜査をしていない。安倍晋三の政治日程に合わせた年内不起訴処分ではなかったでしょうか。

私は、晋和会代表者・安倍晋三の責任を政治資金規正法25条2項で問うていることが、とても分かり易いと思っています。

2013年最初の前夜祭の収支は、全て晋和会のものとして報告書が作成されていました。その後も補填の原資が晋和会から出ていることはごく自然なことでもあり、報道されているところでもあります。おそらくは、ホテルの領収証の宛先も、晋和会。つまりは、「補填資金」の出所は「晋和会」だったことになります。しかし、晋和会の政治資金収支報告書に前夜祭の収支についての記載はありません。

とすれば、まず、晋和会の会計責任者(西山)の不記載罪(法25条1項1号)が問われねばなりません。これを免責する理由は見あたらない。

同時に、晋和会の代表者である安倍晋三の刑事責任も免れないことになります。
25条2項は「前項の場合において、政治団体の代表者(安倍晋三)が当該政治団体(晋和会)の会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠つたときは、50万円以下の罰金に処する」とあります。

つまり、安倍晋三が収支の不記載について「知らぬ、存ぜぬ」「秘書の責任」を押し通して、25条1項の罪責を会計責任者だけに押し付け、最高刑禁錮5年の罪責を免れたとしても、「会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠つたとき」には処罰され、罰金を科せられることになります。

問題は、「会計責任者の《選任》及び《監督》について政治家に要求される相当の注意」の水準です。会計責任者の不記載罪が成立した場合には、当然に過失の存在が推定されなければなりません。資金管理団体を主宰する政治家が自らの政治資金の正確な収支報告書の作成に、常に注意し責任をもつべきは当然だからです。

被告発人安倍において、十分な措置をとったにもかかわらず会計責任者の不記載を虚偽記載を防止できなかったという特殊な事情のない限り、会計責任者の犯罪成立があれば直ちにその選任監督の刑事責任も生じるものと考えるべきです。とりわけ、被告発人安倍晋三は、当時内閣総理大臣として行政府のトップにあって、行政全般の法令遵守に責任をもつべき立場にありました。自らが代表を務める資金管理団体の法令遵守についても厳格な態度を貫くべき責任を負わねばなりません。

25条2項の法定刑は、最高罰金50万円に過ぎませんが、被告発人安倍晋三が起訴されて有罪となり罰金刑が確定した場合には、政治資金規正法第28条第1項によって、その裁判確定の日から原則5年間公民権(公職選挙法に規定する選挙権及び被選挙権)を失います。その結果、安倍晋三は公職選挙法99条の規定に基づき、衆議院議員としての地位を失うことになります。

この結果は、法が当然に想定するところです。いかなる立場の政治家であろうとも、厳正な法の執行を甘受せざるを得ません。本件告発に、特別の政治的な配慮が絡んではなりません。臆するところなく、検察審査会は厳正な判断をすべきです。

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