オリンピックは実に汚い。こんなものへの公費のつぎ込みは一切やめようではないか。
(2021年11月28日)
ロイターの報道がメインのようだが、11月25日ブラジル・リオデジャネイロの連邦裁判所(一審)は、2016年のリオ五輪組織委員会会長だった被告人カルロス・ヌズマン(79)に対して禁錮30年11月の判決を下した。
ヌズマンは、ブラジル・オリンピック委員会の会長を20年以上も務め、リオ五輪招致の中心的な存在だった人物。16年の五輪開催地を決める09年10月の国際オリンピック委員会(IOC)総会を前に、投票権を持つ有力なIOC委員だった国際陸連(現世界陸連)前会長のラミン・ディアク(セネガル)らに200万ドル(約2億2600万円)の賄賂を渡したとして有罪になった。被告罪名は、贈賄・マネーロンダリング(資金洗浄)などだという。弁護人は控訴の方針だとか。
日本では、民間団体であるIOCやJOC関係者の贈収賄は処罰対象とはならない。ブラジルには処罰規程があるのだろう。ブラジル連邦警察は17年10月にヌズマンを逮捕した。彼の地の警察も検察も、裁判所も、よく機能している。ここではオリンピックが聖域化されてはいないのだ。
このニュース、この被告人が東京五輪誘致の中心人物とよく似た立場であることを連想させる。何より注目すべきは、被告人の贈賄先であるラミン・ディアク(セネガル)という人物名だ。そして、贈賄額の200万ドル(約2億2600万円)。あの人の疑惑と瓜二つではないか。
ラミン・ディアクは元国際オリンピック委員会(IOC)委員、16年のリオ五輪だけでなく、21年開催の東京五輪を巡る招致活動でも収賄の疑いがかけられている。その賄賂を贈賄した疑惑が持たれているのは、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和前会長。ブラジルのヌズマンとまことによく似た立場。フランス当局が、竹田を贈賄容疑で正式捜査の対象としたとの報道のあと、コロナのお蔭か捜査の進展の報道が不透明となっている。
それでも、今年(2021年)の夏には「JOCが弁護費用2億円負担 五輪招致で疑惑の元会長に」という記事が各紙に掲載されている。「元会長」とは、竹田恒和のこと。被疑者としての弁護費用に既に2億円を要しているところ、その全額をJOCが負担しているというのだ。もちろん、JOCには税金を原資とする巨額の補助金が注入されている、今年度(21年度)予算では、受取補助金として76億円が計上されている。文春オンラインには、「2019年度の決算資料には、補助金などの収益が161億円超あり」と報道されている。そこから、竹田個人の弁護費用の支出には大いに違和感を感じでざるを得ない。潔さに欠ける、と言っても通じないだろうが。
本年8月8日の朝日の報道は以下のとおり。
「東京オリンピック(五輪)・パラリンピック招致をめぐる贈賄疑惑でフランス司法当局の捜査を受けている竹田恒和・元招致委員会理事長の弁護費用が2020年度までの3年間で約2億円に上り、その全額を竹田氏が19年6月まで会長を務めていた日本オリンピック委員会(JOC)が負担していることがわかった。JOCは19年3月の理事会で費用負担を決議しており、今年度以降も、捜査終結まで負担するという。
JOC関係者によると、竹田氏には日仏の合同弁護士チームがついており、翻訳料金なども含むと、JOCの負担額は仏当局の捜査が本格化した18年度が約6千万円、19年度は約1億円、20年度は約4千万円だった。
竹田氏は朝日新聞の取材に対し、弁護士を通じて「私は、JOC会長職にあったことから、規約により招致委員会の理事長となりました。本件は、理事長の職務として行った行為であり、私的な利益や動機は全くありません。山下(泰裕)会長を始めとするJOC理事会のご理解には深く感謝しており、私の身の潔白を証明することでその信頼にこたえたい」とコメントした。」
私は、なんでも刑事事件化して、徹底して捜査を尽くすべきだとは思わない。ブラジルやフランスのように、日本ももっと幅の広い増収賄処罰規定が必要だとも思わない。
しかし、わけの分からぬところで、わけの分からぬ輩がうごめき、わけの分からぬカネが動いての東京五輪誘致実現はなんとしても、納得しかねる。
東京五輪誘致のために電通や竹田がどのように動いたのか、誘致のための費用はどう捻出され、どう使われたのか、徹底して明るみに出していただきたい。
我々はオリンピックの現実をボッタクリ男爵の薄汚さによって学んだばかりである。IOCもJOCも商業主義に汚染され、カネを目当ての連中によって運営されているのだ。もう、こんなものには見切りを付けよう。納税者の名において、国費も都費も一切の公費のつぎ込みをやめようではないか。