宇都宮健児君、立候補はおやめなさいーその23
事件の発端が、わたしの息子・大河に対する宇都宮選対本部の随行員任務外し。前回都知事選の最終盤2012年12月11日午後9時過ぎのこと。任務外しの「命令」をしたのは、選対本部長の上原公子さん(元国立市長)、お膳立てし実行したのは選対事務局長の熊谷伸一郎さん(岩波書店勤務)。そして、宇都宮君は、この任務外しをされた二人の随行員に問題の解決を約束しながら、結局放り投げた。忙しいからなどという言い訳は通用しない。およそ1年もの考慮期間があったのだから。
本日掲載する文書は、その随行員任務外し事件直後の時期に、大河がまとめた事件の経過とその総括に関する一文である。前回都知事選投票の当日まだ開票結果の出ていない時点で、選挙に携わった関係者にメール送信されたものだ。是非、入念にお読みいただきたい。
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2012年12月16日
「運動のポテンシャルを摘み取ったもの」
候補者随行員・澤藤大河
●はじめに
今回の都知事選は、宇都宮都知事の誕生を望む多くの市民が参加し、多くの政党がこれを支持する今までにない形態の選挙だった。私もまた、完全無償のボランティアとして、告示前の11月19日以来、連日候補者の随行員として運動に参加してきた。
投票日の本日、心から宇都宮都知事の誕生を望んでいるが、選挙結果にかかわらず、今回の私たちの運動は、さらに大きくなる可能性があったのに選対の体質・体制により自ら摘み取ってしまったことにおいて、失敗であったと私は考えている。私が運動に参加した当初、この運動には大きなポテンシャルがあることを肌で実感した。しかし、そのポテンシャルはついに顕在化することはなかった。これを「失敗」という。
人の尊厳を踏みにじる石原都政や、組織・企業の利益を最優先として人権を軽視する東京電力等の姿勢に絶望して宇都宮都知事の誕生を期待し、多くの市民がボランティアで参集してきた。しかし、皮肉なことに宇都宮選対の内部では、参集したボランティアを選対メンバーや事務局員より低く見る差別主義やいじめ・パワハラが横行していた。
選対本部長上原公子さんや選対事務局長熊谷伸一郎さんから、私になされた突然の理不尽な「任務はずし」は、これを象徴する事実といえるだろう。
私になされた仕打ちを多くの人に知っていただくとともに、今後の運動の本質的問題提起として考えていただきたい。
●事実経過
前記の通り、私は11月19日以降、11月24日と12月5日を除き、連日、候補者の随行員をつとめてきた。おそらく私が最も街頭宣伝の現場を知る立場にあった。また、最も長く候補者と時間を過ごし、取材・政見放送収録・公開討論会・集会の幕間演説・現地視察や街頭宣伝のほとんどすべてに参加した。候補者と陣営の利益のために、気概をもって交渉を行い、候補者の利便と安全を確保し、確実に予定を遂行できるよう全力を尽くしてきた。私の任務遂行能力と献身性は、候補者をはじめ現場にいる多くの人が認めるところであるし、選対本部長・事務局長も何ら否定していない。
ところが、突然、12月11日21時頃、事務局長熊谷さんから電話があり「本部長の上原さんが話がある」と選対事務所に呼び出された。選対事務所で上原公子さんからあるボランティアの女性(以下Tさんとする)について、「随行員からはずす」ことと、私については「12日に休暇を取ること」の2点について口頭で指示された。その際上原さんは、「これは命令です」と明言した。私は、上原さんには命令する権限がないこと、私は命令を受ける筋合いでないことを明言し、「命令」を拒絶した。
その「命令」を発するにあたり事前の事情聴取は全くなく、理由の説明を求めたが具体的な説明は一切なされなかった。2分間の事情聴取を求め、上原さんも合意したにもかかわらず、それさえも一方的に途中で打ち切られた。
翌12日、私もTさんも以前からの予定通り街頭宣伝に参加したが、既に現場責任者たる車長に対して、随行員から外すとの指示が行き届いており、乗員が満席になるように配置され、事実上随行から排除された。
私もTさんも、現場における混乱を避けなければならないと思い、その後無理に選挙カーに搭乗したり、現場で口論するなどの行為は一切行っていない。
以後投票日までの三日間、私もTさんも、随行員としても現場の運動員としても運行表に登録されることは一切なかった。
また、私は加入していた連絡用のすべてのメーリングリストから一方的に秘密裏に排除された。
私は、その後、連日最寄り駅での街頭宣伝、ポスティングなどを自発的に行い、支持の拡大に努めた。
Tさんも連日、自発的に街頭宣伝に参加していた。特に15日には、候補者の山手線一周宣伝を応援したいと考え、自発的に候補者のそばで街頭宣伝に協力していたが、17時頃に新宿にて事務局員の内田聖子さんに「あなた、なんでここにいるの。随行はさせないように本部からいわれているのだから、帰りなさい」と面罵された。Tさんは不本意であったが、候補者が一連のいきさつを現認しており、心配そうな顔をしていたため、候補者に心配をかけることは本末転倒であると考え、丁重にその場を辞した。
私は、四回にわたり、上原さんに対して「命令」の撤回と謝罪を求め、事実関係の確認を求める文書を電子メールおよびFAXで送ったが、一切無視されており、2012年12月16日17時現在回答はない。
なお、私が随行員となったのは、事務局長熊谷さんの当初の指示に基づくものであった。Tさんが同行していたのも、街頭宣伝の現場で人員が不足していたので、増強を強く選対本部に求めたのに対し、何の対応もなされなかったことから、宣伝現場の責任者たる杉原車長および副車長たる木村さん、随行員の私、そのほか熱心に街頭宣伝に参加していた5人のボランティアが参加した12月4日の会議で、協議の結果決めたことであった。
●上原さんの「命令」について
この上原さんの「命令」は、理由が説明がなされないという点で手続的に不当であるし、また、内容においても非合理的である。のみならず最も重要なのは、ボランティア参加者に「命令」ができると考えているその一点で、到底看過することのできない市民運動組織原則上の根源的な誤りが含まれていることである。
候補者の人柄・政策に共鳴したボランティア参加者で構成される市民選挙においては、対等な市民が結集して協力することで運動が行われるのが原則である。選対本部長・事務局長などの役職も、既存の権限を分配するものではなく、合理的な話合いと納得の結果、参加者の協力の中で成立する。指示の実効性は、内容の合理性と、十分な説得・納得にのみ支えられることになる。これが対価的契約関係も政治的権力関係もない市民選挙運動の特質であり、原則でもある。
上原さんは、私に「命令」する際に、熊谷さんと顔を見合わせて冷笑し、「このひと、私の命令に従えないんだって」と、侮辱的な言葉を述べている。この言葉に象徴される権威主義・差別主義が、私のみならず実際に多くの仲間の参加を阻んだ。初期の街頭宣伝に参加していたが顔を見せなくなった人、協力する気がなくなったことを明示して去って行った方が、多くいたことを知っている私には残念でならない。
●熊谷さんの差別主義について
自発的に参加したボランティアを選対メンバーや事務局員より低くみて、十分な情報を与えず、与えられた仕事をこなす労働力のように考える傾向は、上原さんだけでなく、事務局長熊谷さんにおいても顕著だった。
熊谷さんは、この選挙中激務の中で急病となり、一時的に事務局長としての執務が行えない状態となった。事務局長を欠くと事務が滞る体制だったため、宣伝についての予定が策定されない状態となった。私も候補者も予定を知ることができず、非常に困惑し、事務局に予定について問い合わせたが、いつ予定が立つのかすら全くわからないという混乱状態だった。今後の予定を立てることが客観的に明らかに必要であったため、一時的にでも熊谷さんの決定権を代行できる人が必要であると考え、その旨を数名の選対メンバーに伝えた。
これを聞いた熊谷さんは「あなたは選対メンバーでも、事務局員でもないのだから、越権行為であり、黙っていてもらいたい」と私に告げた。
病気で倒れたことはまことにお気の毒なことではあるが、それによる空白を放置することは無責任というほかない。十分な事務が行われない状態を改善すべきであると提言することは、立場の如何にかかわらず当然である。
しかし、それ以上に、選対メンバーを頂点として、そのもとに常勤事務局員がおり、それ以外のボランティアを下位に置くという熊谷さんの考え方に大きな問題がある。政策に共鳴し、参集した対等な当事者としてボランティア参加者を考えるのではなく、選対が決定した宣伝計画に協力する将棋の駒、あるいは兵士のようにとらえているのではないだろうか。
岩波書店の「世界」の編集者である熊谷さんの上司にあたる岩波書店の岡本厚さんも、選対メンバーの一人である。私の問題提起について、「事情はよくわかりませんが、選対本部長は責任があると同時に指揮の権限があると思います」と返事を寄せてくれた。私は、「事情」を説明したうえで一般論としては異論はないこと、しかし、具体的な本件においてボランティアとしての運動参集者に理不尽極まる一方的な「命令」をすることまでの権限があるとは到底考えられない旨お返事している。
この運動の頂点はキックオフ集会の時期であったという失望の意見が多くのボランティアの中にある。ボランティアが自主的な運動を行い、創意工夫が生かされ、一日一日よりおもしろくなっていく運動に多くの期待が寄せられていたためである。私もこの運動に参加したときに感じた高揚感を思い出す。革新的な「統一候補」を擁するこの運動の無限の可能性を感じた。ところが告示後、事務局が決定した街頭宣伝に、運動員として機械的労務を提供することだけがボランティアに期待される任務となり、初期に参加した多くの方が失望して去って行った。
その街頭宣伝の計画でさえ直前まで詳細を知らされず、当日の早朝のメールで指示をされることもたびたびであった。人員や物品の増強の要請への対応はじれったいほど鈍かった。候補者自身も、明日は何をするのだろうかと、不安そうにすることが珍しくなかった。事務局に問い合わせると、「都知事選のような巨大な選挙ではマスコミ対策の方が重要であり、街頭宣伝は後回しである」と明示的に告げられた。宣伝における地域的特性や選挙情勢に応じた宣伝内容の検討などは、一切行われず、候補者を含む街頭宣伝チームは放置されていたというほかない。
もう一つ、選対の差別的な体質の表れとして、「三鷹事件」への対応がある。集合住宅での会の確認ビラの配布中に、70歳の男性運動員が住居侵入罪で逮捕された弾圧事件である。
選対はこの事件の事実関係の確認が取れて以後も、即時に公開し、機敏な救援活動を行うことをしなかった。仮にも、「ひとにやさしい」都政を目指す運動を行っている自覚があるならば、即座に被逮捕者へのあらゆる救援活動を行うべきであるし、直ちに事件を公開することで十分な法的知識のない多くのボランティアに危険性を告知することが絶対に必要だった。
私は、選対の内部に、弾圧の危険性を告知することでビラ配布が伸びなくなることを恐れ、弾圧の事実を伏せるべきだとする動きがあったのではないかと推測している。
選挙勝利と組織防衛を最優先の目的とし、個別の運動員・ボランティアの身の安全に気を配ることのない姿勢は、私には東京電力の用いた企業の論理と同じように見える。
熊谷さんは事務局長を任ずるならば、仲間が逮捕されている以上速やかな解放を目指すことを最優先とすべきであった。にもかかわらず、候補者に同行して築地視察・葛西臨海公園視察へ赴き、関係者との名刺交換だけを行った。視察に熊谷さんが不可欠というわけではなく、自らの人脈を広げるためにこの選挙を利用したとまで思われる不自然な同行であった。
私のもとには、選対の体質に失望して、このままではこれ以上の協力はできないという多くの声が寄せられている。私も、以上に述べたような上原さんや熊谷さんの体質や考え方に根本的な反省がない限り、協力はできないと考えている。
●改善の提案
この度の「失敗」を招いた原因の一つとして、上原さんや熊谷さんの「ひとにやさしくない」官僚的で人を見下す個人的な資質と、能力の不足によるところが大きいことは明らかである。
しかし、より本質的には、新しい形態の市民選挙の経験が誰にもなく、どのような仕組みを作ればいいのか、試行錯誤の段階にあることが原因と考える。
かつての革新統一選挙は、政党や労働組合という強力な組織の結合であり、少なくとも各組織の内部では指揮命令が可能であった。
他方、今回のように多くの意見の異なる市民運動や個人としてボランティアが参加する市民選挙においては、「命令」では組織を運営することができない。十分な自主性を発揮してもらうことが必須であり、そのためにはどうしても十分な説得と納得が必要なのである。
その前提となるのが、徹底した情報の透明性である。誰もが情報に接することができ、あらゆる決断がどのようになされるのか仕組みを誰もが知っており、その決断の妥当性を事後的に誰もが検証できる体制である。
事務局長である熊谷さんが対外的な折衝役も担っており、しかもその情報が共有されていなかったため、不在時に大変な混乱が生じたことは前記の通りである。また、選対に寄せられた情報もすべて熊谷さんに集中し、どのような情報が寄せられているのかすら開示されなかったことから、大きな権力が事務局長に集中した。交渉の内容や、妥当性についても事前にも事後にも検証はできない。
今回の選対は、選対メンバーで決定機関を構成し、その決定を事務局が具体化するという体制をとっていたことになっている。しかし、実務が進展するにつれ、事務局あるいは事務局長がほとんどすべての決断を独自に行うようになっていった。
多くの政党に等距離で接しなければならないきわめて政治的に微妙な選挙応援についても、事務局が決定していた。ある衆議院小選挙区候補者の応援に複数回協力する一方で、その選挙区の他の支持政党の候補者の応援には行かないという公平性を疑われる事態も生じた。そのような事態の検証、誰の責任で決断されたのかなどは放置されたままである。
急ごしらえの組織であればこそ、そのようなルールだけでも作るべきであったと残念でならない。
最後に7項目の具体的な提案をしてこの寄稿を終えたい。
1.市民選挙においては、すべての参加者が対等で平等な立場にあることを確認すること
2.誰も他者に「命令」する権限はなく、合理的な指示が十分に説得され納得を得ることでしか協力は得られないことを確認すること
3.市民選対への政党・労働組合・勝手連からの要請は完全に公開し、誰もがそれを見られるようにすることで、等距離公平に対応したことを検証可能にすること
4.意思決定がどのようになされるのか、仕組みを事前に明らかにし、その過程や責任が明らかになるように透明性を確保すること
5.それぞれのレベルの意思決定を実行部隊に周知する仕組みと、実行部隊からの意見や報告を意思決定機関に戻す仕組みを確立すること
6.何よりもボランティア一人一人の尊厳と安全を最優先し、任務の内容・意義を十分に説明するとともに必要な法律知識と身を守るすべを確実に与えること
7.偶然によって限定された範囲での人事を行わず、運動参加団体の英知と人脈を結集して任務内容にふさわしい、有能で信頼に足りる責任者の人選を行うこと
以上
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選挙運動期間終了後の開票以前の時期に、選挙運動の全体状況をつぶさに見、貴重な体験をした者でなければ書けない総括となっている。問題提起も具体的な提案も盛り込まれている。今後に生かすべきだと思う。
それにしてもだ。今にして知り得た事実によれば、選挙運動費用収支報告書に「労務者報酬」と堂々と明記して10万円を受領していた上原公子さんである。選挙運動者の手足として機械的労務の提供しかなしえない立ち場の上原さんが、居丈高に、無償労働の原則を貫いた選挙運動員である大河に「命令」していたのだ。倒錯したカリカチュア以外の何ものでもない。
宇都宮君、これが君の選対の実態だ。この実態になんの反省もなく、なんの改善策も示していない君だ。同じことが繰り返される。だから、宇都宮君、立候補はおやめなさい。
(2014年1月12日)