澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

政党助成金を受け取らない日本共産党の心意気に一票を。

(2022年6月26日)
 経済的な依存関係は、政治的な支配と被支配の従属関係を作る。商店はお得意様に、芸術家はパトロンに、メディアは広告主に頭が上がらない。そして政治家は、献金のスポンサーの言うことを聴かざるを得ない。金主に対する「聞く耳」「聞く力」は政治家の本能なのだ。

 分かりやすい実例を、2021年12月6日付「赤旗」が報じている。「軍需企業 自民に献金2億円」「軍事費6兆円突破の陰で」「契約額上位 三菱重工など」という見出し。
 「護衛艦や潜水艦などの軍需品を2020年度に防衛省に納入した軍需企業上位の各社が、同年、自民党の政治資金団体「国民政治協会」にあわせて2億円を超す献金をしていたことが本紙の調べでわかりました。政府が閣議決定した21年度補正予算案で、軍事費は過去最高の7738億円、当初予算の歳出額と合わせると初めて6兆円を突破しました。アメリカ言いなりに大軍拡をすすめる陰に、軍需企業の献金攻勢が浮かび上がりました」という記事。

 政治資金収支報告書で明らかになった2億円超の献金元企業とは、三菱重工業・川崎重工業・富士通・三菱電機・日本電気・IHI・日立製作所・小松製作所等々の軍需産業。利潤追求を株主に対する使命とする株式会社が、何の見返りもなく政治献金をするはずはない。献金とは、見返りを求めての賄賂に限りなく近いもの。自民党と大企業・軍需産業とは、相身互い持ちつ持たれつの相い寄る魂なのだ。美しい魂ではない、カネで結ばれた増収賄に限りなく近似したうすぎたない魂と魂である。

 かつて政党運営の財政は、全て支持勢力からの献金でまかなわれていた。当然のごとく、自民党は財界に、社会党や民社党は労組に政治資金の拠出を求めた。分かり易い構図だが、民主主義の観点から、その双方に問題があることは自明であった。

 民主主義は、全ての主権者が平等の政治的権利を持つことを基本原則とする。選挙権は各自平等であり、言論による選挙運動も対等なルールで行われなければならない。社会における富の偏在が民意の正確な反映を撹乱してはならない。政治資金としても選挙資金としても、企業献金は本来全面禁止されてしかるべきものなのだ。

 また、労働組合は政治思想で結集した集団ではない。組合員に対する政党支持の自由を保障しなければならない。労働組合が政治活動を行う余地はあるにせよ、特定政党への政治献金はなし得ない。献金先政党の支持者ではない組合員の政治的信条の自由(思想・良心の自由=憲法19条)を蹂躙するからだ。

 リクルート事件やゼネコン汚職で政治の浄化が叫ばれたとき、企業献金規制の世論が高まり、併せて労働組合・団体などからの献金も制限されることになった。これに代わって、政党に対し国が助成を行う制度が新設された。1994年2月4日成立の政党助成法である。

 毎年の政党交付金の総額は、総人口に250円を乗じた金額とされる。現在、その総額は300億円強である。これを各政党が、その規模に応じて山分けすることになる。もっとも、この政党助成金の制度はできたが、企業献金が禁じられたわけではない。だから、軍需産業から自民党に政治献金が流れることになる。

 そのような事態の中で、ご存じのとおり、ひとり日本共産党だけが、この制度を違憲として政党助成金を一円も受領していない。その理由を、党自身がこう説明している。

 「日本共産党が政党助成金を受け取らず、制度の廃止を強く主張しているのは、次の理由からです。

1、国民には政党を支持する自由も、支持しない自由もあります。政党助成金とは、国民の税金の「山分け」ですから、支持していない政党にも献金することを事実上強制する、「思想及び信条の自由」をふみにじる憲法違反の制度だからです。

2、政党の政治資金は、国民とのむすびつきを通じて、自主的につくるべきものです。税金からの分けどりは、この本来のあり方に根本的に反し、政党の堕落と国民無視の政治を助長する制度だからです。

 一部に「うけとって有効に使えば?」との意見もありますが、憲法違反のお金を受けとること自体が、国民への背信行為になります。また、制度の廃止をめざす世論の結集にも逆行することになると、私たちは考えています」

 私は、この日本共産党の、頑固なまでに筋を通そうという姿勢を好ましいものと思う。その筋とは、「思想信条の自由」の尊重でもあるが、むしろ、政党活動資金は自前で調達すべきものという政治活動の原則であろう。国や企業や組合を頼り、これをスポンサーにしたのでは、その意向を忖度せざるを得ない事態も考えなければならない。党費と支持者からの個人カンパと、あとは赤旗や出版物の販売による利益。これだけの原資で党を運営していれば、党自身と支持者の意見以外に、耳を傾ける対象はない。国からカネをもらって、国にきちんとものが言えるか、という心意気である。

 「有権者一人一人が個人献金によって政治活動を支えるという、あたりまえの姿を実現してこそ、政治が本当に国民のものになるのではないでしょうか」という、日本共産党の姿勢に賛同して、一票を投じたい。

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