澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

憲法学者「9条違反」ー「違憲ショック」「論戦 潮目変わる」「審議大きな転換点」

私は、昨日(6月6日)「那須南九条の会」で戦争法案の違憲性について講演。本日(6月7日)は、川口で少人数の「憲法カフェ」に出席して質疑に応じた。多くの人が、憲法の平和主義が壊れるのではないかと危機感を募らせていることを痛感するとともに、戦争法案の違憲性の確信や反撃への手応えも感じている。

とりわけ、6月4日(木)衆院憲法審査会に参考人として出席した憲法学者3人が、口を揃えて「戦争法案は違憲」と言った「事件」の波紋は大きい。この話題が巷に満ちている。朝日川柳に次の句が掲載されている。
  呼んどいて「異見」はいらぬというシンゾウ(林武治)

世の衝撃は大きく、政権の評判はがた落ちだ。法案審議について議論の潮目が変わる予感がする。法案審議についての潮目の変化は、当然に安倍内閣支持の世論の潮目の変化ともなる。

本日の東京新聞朝刊には「論戦 潮目変わる」の大きな見出し。そして、「違憲ショック」「各論から『違憲立法』へ」である。朝日も、昨日の「憲法解釈変更 再び焦点」「安保法制『違憲』、攻める野党」に引き続いて、第2面に「参考人の指摘 重みは」とする大きな解説記事を掲載し「審議大きな転換点」と締めくくっている。毎日も、「学者批判続々」「安保法制 政権に不信感」だ。

とりわけ、東京新聞のボルテージが高い。
「衆院憲法審査会に参考人として出席した憲法学者三人全員が安全保障関連法案を『違憲』と言明したのを受け、衆院特別委員会の審議の最大の焦点が、法案の中身から法案の違憲性に移った。『違憲ショック』で法案の正当性が根幹から揺らいだことで、政府・与党は防戦を強いられた」というリード。

「長谷部恭男早大教授は、他国を武力で守る集団的自衛権の行使を解禁した憲法解釈変更に基づく安保法案について『従来の政府見解の論理の枠内では説明できず、法的安定性を揺るがす』と指摘。小林節慶応大名誉教授(民主党推薦)と笹田栄司早大教授(維新の党推薦)も『違憲』と言い切った」と経過を要約のうえ、
「五日の特別委は、専門家三人の『違憲』発言を受けて審議の潮目が変わった。それまでは、どういう状況なら集団的自衛権の行使が許されるのかの基準に議論が集中していたが、法案の違憲性が中心になった」と解説している。

「政府側は『憲法解釈は行政府の裁量の範囲内』(中谷元・防衛相)と反論。だが、この説明は『政府が合憲と判断したから合憲だ』と主張するのに等しい」「安倍政権は憲法解釈変更の閣議決定に際し、一内閣の判断で憲法解釈を変え、憲法が国家権力を縛る「立憲主義」をないがしろにしたと批判された経緯もあるのに、今回の学者や野党側の「違憲」との指摘も、正面から受け止めようとはしなかった」と手厳しい。

衆院憲法審査会の与党推薦参考人は、当初佐藤幸治(京大名誉教授)が予定されていたとされている。佐藤の日程の都合がつかなくて、与党は内閣法制局に適任者の人選を依頼し、内閣法制局から長谷部の推薦を受けたと経過が報じられている。もし、当初予定の佐藤幸治の日程に差し支えなく佐藤が審査会に出席していればどうなっただろうか。おそらくは、長谷部以上に辛辣に断固として法案の違憲を論じたにちがいないのだ。

その、話題の佐藤幸治が昨日(6月6日)1400人の聴衆に語っている。毎日の報道が大きい。「憲法改正:『いつまでぐだぐだ言い続けるのか』 佐藤幸治・京大名誉教授が強く批判」というタイトル。

「日本国憲法に関するシンポジウム『立憲主義の危機』が6日、東京都文京区の東京大学で開かれ、佐藤幸治・京大名誉教授の基調講演や憲法学者らによるパネルディスカッションが行われた。出席した3人の憲法学者全員が審議中の安全保障関連法案を「憲法違反」と断じた4日の衆院憲法審査会への出席を、自民党などは当初、佐藤氏に要請したが、断られており、その発言が注目されていた。

基調講演で佐藤氏は、憲法の個別的な修正は否定しないとしつつ、『(憲法の)本体、根幹を安易に揺るがすことはしないという賢慮が大切。土台がどうなるかわからないところでは、政治も司法も立派な建物を建てられるはずはない』と強調。さらにイギリスやドイツ、米国でも憲法の根幹が変わったことはないとした上で『いつまで日本はそんなことをぐだぐだ言い続けるんですか』と強い調子で、日本国憲法の根幹にある立憲主義を脅かすような改憲の動きを批判した」

注目されるのは、毎日が紹介するパネルディスカッションでの議論の内容。
「違憲とは言えないかもしれないが、憲法の精神には反していることを示す『非立憲』という言葉が話題になった。これまで、特に政治家の行動を戒めるために使われてきた言葉という。樋口陽一・東大名誉教授は、憲法改正の要件を定める憲法96条を改正し、国会発議のハードルを下げる『96条改正論』や、政府・与党による安保法制の提案の仕方そのものが『非立憲の典型』と批判した。」

これは面白い。2013年の憲法記念日を中心に、メディアに「立憲主義」の用語があふれた。安倍内閣の96条先行改憲論が立憲主義に反すると批判の文脈でだ。立憲主義の普及が、96条改憲論に本質的なとどめを刺した。今度は、「非立憲」。7・1閣議決定が「非立憲」。戦争法の提案自体が「非立憲」。必ずしも、明確に立憲主義違反とは言えない場合にも「非立憲」。気軽に、手軽に「非立憲」。安倍政権の非立憲を大いにあげつらおう。

東京新聞2面に、「安保国会 論点進行表」が掲載されている。10項目の各論点について、先週の「第1週の議論」に続いて、「第2集(1?5日)の議論」がまとめられている。ここには安保特別委員会だけでなく、憲法審査会の参考人発言も要領よく書き込まれている。これは優れものだ。来週の進行が楽しみになってきた。
(2015年6月7日)

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Published in 日曜日, 6月 7th, 2015, at 23:38, and filed under 安倍政権, 戦争法, 集団的自衛権.

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