澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

参院選・投票日まであと4日ー「民主党」この曖昧にして不明確なるもの

民主党を、自民や維新・みんなと同類というつもりはない。そのような悪罵は、不正確でもあり、失礼なことでもある。2009年夏の選挙で、民主党が劇的な勝利をおさめたあのとき、鮮やかでさわやかな一陣の風が確かに吹きぬけた。「政治は、民意によって変わりうるのだ」という感慨を抱いたことが、印象に深い。

あのとき、民意は紛れもなく「格差・貧困をつくりだした自民党の政治」にノーを突きつけ、そのアンチテーゼを提示したものとして民主党を政権に押し上げた。自民党による格差・貧困作出の政治を抜本的に解決するという民主党のマニフェストは、戦後長く続いた保守政治への根源的な批判を含むものであった。「コンクリートから人へ」というスローガンは、生活重視の基本政策としても、自民党の利益誘導型政治批判としても、民意をつかんだ。

しかし、それから3年。民意は、完全に民主党を離れた。マニフェストが間違っていたのではない。民主党はその実行をできなかったのだ。沖縄問題、消費増税、雇用政策、福祉政策等々で後退を重ねた。「税と社会保障の一体改革」という3党合意がその象徴。結局は自民回帰に等しくなってしまったからだ。2009年総選挙で民主党(比例区)に期待を込めて投票した3000万人のうち、1000万人は2012年暮れの総選挙では棄権した。そして、1000万人が維新・みんななどの「第3極」にまわった。歴史的惨敗である。

敗北には厳しい総括が必要だ。民主党にそれができているとは思えない。今回参院選での重要争点である、雇傭・福祉・憲法・原発・沖縄・TPPなどに歯切れの良い政策提言ができていない。自民や維新・みんなと同類ではないが、積極改憲派3党との対決姿勢が曖昧で、対案が不明確なのだ。

同党のホームページで、「参議院選挙重点政策」(マニフェスト完全版)をみる限り、明確な「原発ゼロ」は政策に盛り込まれていない。原発輸出反対もない。「2030年代に原発稼働ゼロを可能にするよう、あらゆる政策資源を投入します」というのみである。改憲阻止もない。96条先行改憲反対だけは明確だが、その余のことは政策化されていない。むしろ、「民主党は日本国憲法の基本精神を守ります」「未来志向の憲法を構想する」に伴って、「国民とともに憲法対話を進め、補うべき点、改めるべき点への議論を深め…」と改憲志向とも読める。TPP参加の事前交渉も、もとはといえば民主党政権時代に始まったこと。TPP参加反対の政策はない。「国益を確保するために脱退も辞さない厳しい姿勢で臨みます」というだけ。普天間基地の辺野古移設問題についても、オスプレイ配備についても、まったく言及がない。

自民に愛想をつかして、民主に期待した民意は急速にしぼんだ。とはいえ、けっして自民に回帰したわけではない。民主に不満を持ちながらも、自民や「第3極」よりは、ずいぶんマシだろうとの意見も多かろうと思われる。しかし、民主党のこの曖昧さ、自民への対決姿勢の甘さは、覆うべくもない。

せっかくの大切な一票。もっとスッキリ、もっとハッキリ、明確でブレない政党への投票で活かすことが賢い選択ではないか。
(2013年7月17日)

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