澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「西松建設違法献金・株主代表訴訟」和解での、政治献金監視センター発足の意義

本日(9月10日)の朝日朝刊が大きく報じている。「西松建設の元役員ら、株主と和解」「違法献金めぐり賠償」の記事。北朝鮮核実験の愚挙がなければ社会面トップの扱いにもなったところ。中見出しの「弁護団『企業監視のモデルに』」がすばらしい。

残念ながら、毎日の扱いは小さい。記事の内容はとてもよいのに…、である。見出しは、「政治資金収支報告書・ネットで全文公開」「西松建設1000万円寄付」となっている。日経は、「西松建設の株主訴訟、異例条件で和解」「政治資金公開団体に寄付」というもの。

各紙の見出しだけで、何が話題かおよその見当がつくだろう。「西松建設がした政治家への献金を違法として、株主の一人が当時の役員9名を被告に、『献金相当額を会社に賠償せよ』という株主代表訴訟を起こした」「昨日(9月9日)、東京高裁でその訴訟の和解が成立した」「その和解において、被告らは違法献金を賠償しただけでなく、『政治資金公開団体』に1000万円を寄付することを約束した」「この『政治資金公開団体』は、政治資金収支報告書をネットで全文公開しようというもの」「このような条件で和解に至ることは異例」「弁護団は、このような解決方法を『企業監視のモデルに』したい」と言っている。

一審で判決が出たのが、2年前の2014年9月。判決は、献金の違法を認めて「被告元役員らは(連帯して)、6億7200万円を西松建設に(損害賠償金として)支払え」というものだった。昨日成立の東京高裁での和解金は1億5000万円。この金額が、現実に西松建設に支払われることになる。被告らは、この和解金とは別に、1000万円を『政治資金公開団体』へ拠出することを約した。被告らが、原告・弁護団の理念に基づいた提案に応じた姿勢を評価したい。西松建設が、「和解を機に、一層の法令順守を徹底し再発防止に努めていく」とするコメントしたことも、その言やよし。今後、本件がモデルケースとなって、同様の和解の方式が定着することを期待したい。

1000万円の資金拠出で発足する『政治資金公開団体』は、「一般財団法人・政治資金センター」という。阪口徳雄弁護団長は、記者会見で「株主や市民が企業を監視する、一つのモデルケースになったと思う」と発言している。今後も、「株主や市民が企業を監視する」活動を継続していくという宣言でもあるだろう。

この世の不公正は、強者による弱者への支配としてあらわれる。強者とは、政治的には権力であり、経済的には企業であり富者である。強者は一握りの存在であり、弱者はそれ以外の全ての市民である。政治的強者と経済的強者とは、相互に利用し補完する関係に立って、双頭の猛獣となっている。市民は、この双頭の猛獣をコントロールしなければならない。

市民による政治権力へのコントロールは、タテマエにもせよこの民主々義社会において、一応はメニューが揃っている。政治的権力に対するコントロールの基本は選挙であるが、「投票日だけの主権者」によるコントロールには限界がある。権力を担う者への監視を可能とする情報公開と、報道の自由があれば、市民は監視の目を光らせて、権力暴走の実態を把握し、批判することができる。権力の違法に対する批判は、言論やデモによることもあれば、パプリックコメント、あるいは司法の利用を手段として実現することも可能となる。

これに比して、市民による対企業コントロールは、制度として想定されているものではない。消費者運動による意識的な商品選択行動として、あるいは市民が公開会社の株主となっての株主オンブズマン活動などが試みられているが、成果は部分的なものに過ぎない。株主代表訴訟は貴重な対企業コントロール手段である。

最重要問題は、政治献金を通じての権力と企業との癒着に対する市民のコントロールをどう実効性あるものとするか、である。今後、新たに設立された「政治資金センター」が、各政治家ごとに、あるいは企業ごとに、政治資金収支報告書や選挙運動収支報告書を整理して公開し、分析を発表し続けることだろう。根気を要する地道な作業だが、権力と企業の両者を監視して、コントロールのための基礎資料と分析結果を市民に送り続けるとなればその意義は大きい。

なお、西松建設株主代表訴訟の一審判決言い渡しは、2014年9月25日だった。偶然だが、同じ日にやはり東京地裁で、住民訴訟関連の「原告国立市・被告上原公子(元市長) 損害賠償請求事件」判決が言い渡されている。

両判決を比較した私の見解を、「株主代表訴訟と住民訴訟、明と暗の二つの判決」と題して、その当日(9月25日)の当ブログに詳しく書いている。再読していただけたらありがたい。
  http://article9.jp/wordpress/?p=3589

両訴訟の一審判決は、市民の側から見て明暗分かれたが、国立市事件判決はその後逆転して高裁段階では両訴訟とも私が望ましいとした結果となった。たった一人でも、権力や企業の不正を糺すことを目的に提訴できる株主代表訴訟と住民訴訟。その制度を形骸化させることなく活用し、活性化したいものである。市民が、権力と企業の違法を是正すべくコントロールするために。
(2016年9月10日)

甘利明は不起訴相当、秘書2名は不起訴不当。政治家秘書は「トカゲの尻尾」だという検察審査会議決。

7月29日、東京第四検察審査会から連絡があって足を運び、被疑者甘利明外2名に対するあっせん利得処罰法違反告発事件の審査申立に対する議決書を受領した。

被疑者甘利明は「不起訴相当」となった。この結果、甘利に対する訴追の道は断ちきられたことになる。到底納得できない。
清島と鈴木の秘書2名は、「不起訴不当」。検察は捜査をやり直すことになるが、強制起訴の道は断たれている。
政治家秘書は「トカゲの尻尾」。これを切り離すことで政治家は生き延びることができる。そのような見本となった検察審査会議決である。

とはいうものの、少なくも秘書については、あっせん利得罪が成立することを認めた議決。それなりの意義はある。甘利についての不起訴相当の判断は、秘書との共謀の立証がないからというもの。秘書限りの犯罪とされたわけだ。

経過は次のとおり。
上脇博之政治資金オンブズマン共同代表(神戸学院大学教授)らが、被疑者甘利明と秘書2名を告発したのが本年4月8日。同告発に対して東京地検特捜部は、5月31日付けで不起訴処分とした。これを不服として、6月3日付で東京検察審査会宛に審査申立書が提出され、被告発人甘利明らの起訴の有無は、東京第四検察審査会の11名の審査員の判断に委ねられていた。その申立の代理人弁護士は49名。その筆頭が大阪弁護士の阪口徳雄君。私も代理人のひとりである。

6月3日の私のブログの表題は、「甘利不起訴ー検察審査員諸君、今君たちに正義の実現が委ねられている」というものだった。再掲しておきたい。

検察審査員諸君、あなたの活躍の舞台ができた。せっかくの機会だ。このたびは、あなたが法であり、正義となる。政治の浄化のために、民主主義のために、勇躍して主権者の任務を果たしていただきたい。

不起訴処分と同時に、甘利の政治活動への復帰が報じられている。甘利本人にとっても、起訴は覚悟のこと、不起訴は望外の僥倖と検察に感謝しているのではないか。不起訴処分は、限りなくブラックな政治家を甦らせ、元気を与えるカンフル剤となる。それだけではない。政治家の口利きは利用するに値するもので、しかも立件されるリスクがほぼゼロに近いと世間に周知することにもなる。

これでは、あっせん利得処罰法はザル法というにとどまらない。あっせん利得容認法、ないしはあっせん利得奨励法というべきものになる。

こんなことを許してはならない。巨額のカネが動いたのは事実だ。甘利自身、薩摩興業の総務担当者から、大臣室で現金50万円、地元神奈川県大和市の甘利事務所で50万円を直接受けとっている。この金が口利き料としてはたらいたことも明らかではないか。薩摩興業は、最終的にはURから2億2000万円の補償金を得ている。この現金授受と口利きの事実、口利きの効果が立証困難ということはありえない。「知らぬ存ぜぬ」は通らない。「秘書が」の抗弁もあり得ない。

有罪判決のハードルが、もっぱら構成要件の解釈にあるのなら、当然に起訴して裁判所の判断を仰ぐべきである。有罪判決となれば、立法の趣旨が生かされる。仮に法の不備から無罪となれば、そのときには法の不備を修正する改正が必要になる。いずれにせよ、検察審査会は単に不起訴不当というだけではなく、国民目線で、起訴相当の議決をすべきである。そうでなければ、政治とカネにまつわる不祥事が永久に絶えることはないだろう。

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審査申立書のまとめの部分を抜粋しておきたい。
1 本件は政権の有力政治家の介入事件である
 本件告発事件は、閣僚として政権の中枢にある有力政治家(被疑者甘利明)事務所が、民間建設会社の担当者からURへの口利きを依頼されて、URとのトラブルに介入して、その報酬を受領したという、あっせん利得処罰法が典型的に想定したとおりの犯罪である。同時に、口利きによる報酬であることを隠蔽するために、政治資金規正法にも違反し、不記載罪を犯した事件である。
2 あっせん利得処罰法の保護法益
 あっせん利得処罰法の保護法益は、「公職にある者(衆議院議員等の政治家)の政治活動の廉潔性ならびに、その廉潔性に姑する国民の信頼」とされている。政治の廉潔性に対する国民の信頼と言い換えてもよい。本件の被疑者甘利明の行為は、政治の廉潔性に対する国民の信頼を著しく毀損したことは明白である。
 しかも、通例共犯者間の秘密の掟に隠されて表面化することのない犯罪が、対抗犯側から覚悟の「メディアヘの告発」がなされ、しかも告発者側が克明に経過を記録し証拠を保存しているという稀有の事案である。世上に多くの論者が指摘しているとおり、この事件を立件できなければ、あっせん利得処罰法の適用例は永遠になく、立法が無意味だったことになろう。
 被疑者らが、請託を受けたこと、したこと、URの職員にその職務上の行為をさせるようにあっせんをしたこと、さらにその報酬として財産上の利益を収受に疑問の余地はないと思われる。
3 検察の不起訴処分は政権政党の有力大臣であった者への「恣意的」で「政治的」な不起訴処分である
 検察は国民の常識から見て起訴すべき事案を、もし報道されているように検察官が「権限に基づく影響力の行使」を『言うことを聞かないと国会で取り上げる』などという違法・不当な強い圧力を行使した場合に限定した解釈をしたというのであれば、その解釈は被疑者が政権政党の有力大臣であったことによる『恣意的』で『政治的』な限定解釈であると断じざるを得ない。
 第1に「権限に基づく影響力の行使」を『言うことを聞かないと国会で取り上げる』などのような一般的な制限的解釈は正しくはない。条文に「その権限に基づき不当に影響力を行使」したとか言う「行為態様」に関して一切の制限をしていない。
 権限に基づくという影響力の行使とは、行為態様が強いとか弱いとかいうのではなく、国会議員が有する客観的地位、権限に基づき影響力の行使を言うのであって、その影響力の行使の「態様」を制限していないのである。それをあたかも「影響力の行使」の「態様」について『言うことを聞かないと国会で取り上げる』などという制限的な態様を解釈で補充することは検察の極めて恣意的な解釈であると同時に検察の「立法」に該当する。あっせん利得処罰法の保護法益は前記に述べたように政治家はカネを貰って斡旋行為をすることを禁じた法律であり、政治家などの政治活動の廉潔性ならびに、その廉潔性に対する国民の信頼が毀損された場合は処罰する法律であって、その権限の行使態様には一切の制限がないのである。確かに一般の国会議員等が関係機関に要請した場合または口利きのみの行為を罰することは正しくない。しかし、国会議員等の要求、口利きであつてもその「行為」の報酬としてカネを貰うという「議員等とのカネでの癒着による権限に基づく影響力の行使」行為を罰するのであつて、通常の政治家の要請行為を罰するものではない。
 第2に本件の場合は安倍政権の有力大臣であり政治家の「要請」行為であったからこそ、UR側は当初は補償の意思がなかったのに2億2000万円まで大幅に補償額を上乗せして支払っているのである。この結果=社会的事実は甘利大臣側がどのような言葉で要請したかではなく、安倍政権の有力政治家が有する「権限に基づく影響力の行使」という客観的な地位、権限があったからこそ、UR側は飛躍的に補償額を上乗せしたのである。『言うことを聞かないと国会で取り上げる』と言ったとか、言わなかったかの問題でなく、当時の甘利大臣の飛ぶ鳥を落とす「地位」「威力」「権限」があったからこそ、UR側も要求に応じたのである。例えが悪いが巨大な指定暴力団の有力幹部が横に座つているだけで一言も発しなくてもその「威力」に負けて要求に応じるのと同一の構造である。
 第3に、本件は決して軽微な事案ではない。「週刊文春」などの報道によれば、被疑者甘利らが、本件補償交渉に介入する以前には、UR側は「補償の意思はなかった」(週刊文春)、あるいは「1600万円に過ぎなかった」とされている。ところが、被疑者らが介入して以来、その金額は1億8000万円となり、さらに2億円となり、最終的には2億2000万円となつた巨額の事件であり、甘利側が貰った金額も巨額である。今回の事件は、有力政治家の口利きが有効であることを如実に示すものであり、これを放置すると多くの業者などが、政権政党の有力大臣や有力政治家に多額のカネを払い、関係機関に「口利き」を要請する事態が跋扈することになろう。これを払拭するために、本件については厳正な捜査と処罰が必要とされている。

※本件のような、政権政党の有力大臣や有力政治家による口利きがあったことが明白な事件においてあっせん利得処罰法の適用ができないということになれば、「公職にある者(国会議員等の政治家)の政治活動の廉潔性ならびに、その廉潔性に対する国民の信頼」を保護することなど到底できないことになる。そして、今後政治家による「適法な口利き」が野放しとなり、国民は政治活動の廉潔性を信頼することがなくなり、政治不信が増大することとなる。
 口利きによる利益誘導型の政治が政治不信を招き、それを防止するために制定されたあっせん利得処罰法の趣旨を十分理解したうえで、検察官の不起訴処分に対して法と市民の目線の立場で「起訴相当」決議をしていただきたく審査請求をする次第である。ちなみにあっせん利得処罰法違反で500万円を受領した事件の時効は本年8月20日に満了する。早急に審査の上、起訴相当の議決をして頂きたい。
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7月29日に交付を受けた議決書の全文を資料として掲載する。

平成28年東京第四検察審査会審査事件(申立)第5号(第5号申立事件)
申立書記載罪名 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反,政治資金規正法違反
検察官裁定罪名 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反,政治資金規正法違反
議決年月日    平成28年7月20日
議決書作成年月日 平成28年7月27日

議決の要旨
  審査申立人 上脇博之
  審査申立代理人弁護土阪口徳雄外 48名
  被疑者  甘利明  清島健一  鈴木陵允

  不起訴処分をした検察官
   東京地方検察庁 検察官検事 井上一朗
  議決書の作成を補助した審査補助員 弁護士 岡村英郎
  上記被疑者らに対する,公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反,政治資金規正法違反被疑事件につき,平成28年5月31日上記検察官がした不起訴処分の当否に関し,当検察審査会は,上記申立人の申立てにより審査を行い,次のとおり議決する。
議 決 の 趣 旨
 本件被疑事件について,
 1 被疑者甘利明に対する各不起訴処分は,いずれも相当である。
 2 被疑者清島健一に対する公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反被疑事件のうち後記被疑事実1(1)及び同2(3)についての各不起訴処分は不当,その余の不起訴処分はいずれも相当である。
 3 被疑者鈴木陵允に対する公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反被疑事件のうち後記被疑事実2(3)についての不起訴処分は不当,その余の不起訴処分はいずれも相当である。

議 決 の 理 由
第1 被疑事実の要旨
 被疑者甘利明(以下「被疑者甘利」という。)は衆議院議員であって,政治団体である自由民主党神奈川県第13選挙区支部(以下「第13選挙区支部」という。)の代表者であるもの,被疑者清島健一(以下「被疑者清島」という。)は,被疑者甘利の秘書であって,第13選挙区支部の会計責任者であったもの,被疑者鈴木陵允(以下「被疑者鈴木」という。)は被疑者甘利の秘書であったものであるが
1 被疑者甘利及び被疑者清島は,共謀の上,平成25年5月9日,神奈川県大和市内所在の大和事務所において,A社の交渉担当者であったBから,国が資本金の二分の一以上を出資している独立行政法人Cが実施する道路整備事業に関し,独立行政法人CとA社の補償契約に関して請託を受け,被疑者甘利の衆議院議員としての権限に基づく影響力を行使して,独立行政法人Cに対し,A社に補償金を支払うようあっせんしたことにつき,その報酬として
(1) 同年8月20日,同事務所において,Bから現金500万円の供与を受けた。
(2) 同年11月14日,東京都千代田区内所在の被疑者甘利の大臣室において,Bから現金50万円の供与を受けた。
2 被疑者甘利,被疑者清島及び被疑者鈴木は,共謀の上,平成26年2月1日から平成27年11月までの間,Bから,独立行政法人CとA社の産業廃棄物に係る補償契約に関して請託を受け,被疑者甘利の衆議院議員としての権限に基づく影響力を行使して,独立行政法人Cに対し,A社に補償金を支払うようあっせんすることにつき,その報酬として
(1)平成26年2月1日,前記大和事務所において,Bから現金50万円の供与を受けた。
(2)平成26年11月20日,Bから現金100万円の供与を受けた。
(3)平成27年中,Bから,53回にわたって,現金合計795万円の供与を受けた。
(4)平成27年6月頃及び同年11月頃,Bから,パーティー券代名目で現金合計40万円の供与を受けた。
(以上につき公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律(以下「あっせん利得処罰法」という。)違反)
3 被疑者甘利及び被疑者清島は,共謀の上
(1)第13選挙区支部の平成25年におけるすべての収入及び支出等を記
載した報告書(以下「収支報告書」という。)を提出するに当たり
ア 実際は,平成25年8月20日に500万円の収入があったのに,100万円の寄附収入があった旨虚偽の記入をした。
イ 実際は,平成25年9月6日に自由民主党神奈川県大和市第2支部(以下「大和市第2支部」という。)に100万円の寄附をしたのに,その記載をしなかった。
(2)第13選挙区支部の平成26年における収支報告書を提出するに当たり
ア実際は,平成26年11月20日にBから50万円の収入があったのに,その記載をしなかった。
イ実際は,被疑者甘利に対する個人的な贈与であったのに,平成26年2月4日に第13選挙区支部が寄附を受けた旨虚偽の記入をした。
(以上につき政治資金規正法違反)

第2 検察審査会の判断
 当検察審査会が本件不起訴処分を不当とする理由は,次のとおりである。
1 被疑事実1(1) について(あっせん利得処罰法違反)
① 前提事実
関係証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア Bは,平成25年4月頃,A社の総務担当者として独立行政法人Cとの間の,独立行政法人Cによる道路用地取得に関する補償交渉(以下「補償交渉1」という。)に関与することになったが,同年5月頃に独立行政法人Cが検討していた補償金額はA社が主張する補償金額を大きく下回っていた。
イ Bは,同年5月頃,神奈川県大和市内にある被疑者甘利の大和事務所に赴き,被疑者清島に対し,A社と独立行政法人Cとの補償交渉1について,独立行政法人Cに働きかけ,A社が要求する額の補償金を支払わせるよう陳情した。この際,まずA社が独立行政法人Cに対してこの補償交渉1に関する内容証明郵便を送り,その後に大和事務所が独立行政法人Cに接触することになった。
ウ 被疑者清島から依頼を受けたD秘書は,同年6月頃,事前に予約を入れないまま独立行政法人C本社を訪れ,その職員が応接室にてD秘書と面談した。D秘書は,この職員に対しA社が送付した内容証明郵便に対する回答の状況を問い,独立行政法人Cの担当部署において検討している旨の回答を得た。
エ A社は,同年8月,独立行政法人Cとの間で補償契約を締結し,同月中に,独立行政法人Cから,同契約に基づく補償金の一部金の支払いを受けた。
オ Bは,前項の補償金の支払いを受けた日に,被疑者清島に供与するための資金として現金を受け取り,大和事務所に赴いたが,被疑者清島に手渡しだのは現金500万円であった。
 被疑者清島は,Bと協議レ最終的に,このうち300万円を個人的に受領し,残り100万円を県議会議員に寄附することとした。
カ なお,関係証拠上,前記のとおり独立行政法人Cにおいて補償交渉1に関する補償金額を増額することとしたのは,独立行政法人Cにおける算定方法や範囲等の見直し等がきっかけとなっており,D秘書との面談がきっかけとなったと窺わせる証拠はない。
(2) 被疑者清島について
  検察官は,被疑事実1(1) について被疑者清島を不起訴としたが,以下アないしウの理由から,この検察官の判断は,納得できるものではなく,改めて捜査が必要であり,不当である。
ア 第1に,あっせん利得処罰法違反における「請託」とは,「その権限に基づく影響力を行使」してあっせんすることを依頼するまでの必要はないと解されているところ,Bが被疑者清島に独立行政法人Cとの補償交渉1についてあっせんを依頼したこと,被疑者清島がこれを了承したことは関係証拠から明らかであり,「請託」の事実が認められる。
イ 第2に,あっせん利得処罰法違反における「その権限に基づく影響力を行使」したと認められるためには,あっせんを受けた公務員等の判断に影響を与えるような態様でのあっせんであれば足り,現実にあっせんを受けた公務員等の判断が影響を受けたことは必要ないと解されているところ,あっせんを受けた公務員等の判断に影響を与えるような態様の典型例として職務権限の行使・不行使を交換条件的に示すことが挙げられるが,この典型例に当たる行為が認められないからといって,直ちに「その権限に基づく影響力を行使」したといえない訳ではない。当該議員の立場や地位,口利きや働きかけの態様や背景その他の個別具体的事案における事情によっては,公務員等の判断に影響を与えるような態様の行為と認め得る。
被疑者清島は,前記のとおり,A社から独立行政法人Cに対する内容証明郵便が送付された後に,D秘書に独立行政法人Cにその確認をするように依頼レD秘書は,事前の約束もなしに独立行政法人C本社を訪れてその職員と面談して,A社と独立行政法人Cとの本件補償交渉に関する内容証明郵便への対応を確認したが,A社と独立行政法人Cとの補償交渉という民事的な紛争の場面において,対立する一方当事者であったとしても,相手方の都合も問かないまま突然,直接の担当部署でもない相手方の本社に訪問しても対応を断られるのが通常と思われる。D秘書は,あくまでも第三者に過ぎないが,衆議院議員で,有力な国務大臣の一人である被疑者甘利の秘書であるからこそ,応接室に通され,独立行政法人C本社の職員らと面談し,前記の確認をできたとみるのが自然である。D秘書が単に事実確認をするだけであれば,電話を独立行政法人Cの担当部署にかければ十分であり,事務作業としても効率的なはずである。しかしながら,D秘書は,敢えて事前の約束もなしに独立行政法人C,しかもA社との補償交渉を直接担当している訳ではない独立行政法人C本社に乗り込み,面談を求めたのは,そういった行動が独立行政法人Cの判断に影響を与え得るものと判断しているからであると考えるのが自然である。他方,独立行政法人C本社職員がわざわざ自らの業務時間を割いて,D秘書と面談し,補償交渉1に関する説明をしたのも,それをしないと不利益を受けるおそれがあるからと判断したとみるのが自然である。
また,被疑者清島としても,補償交渉1の補償金額が増額された経緯を認識していないとしても,それに関して500万円もの高額の現金を受領したのであるから,それ相応の行為をしたという認識があったと考えるのが自然である。
ウ 第三に,Bが被疑者清島に供与した現金500万円の趣旨は,その交付日が増額された補償金の支払日と同一であること,供与された現金が500万円と高額であることを考慮すると,その交付の趣旨は,補償交渉1に関する補償金額が増額されたという結果に対する報酬,謝礼であるとみるのが自然である。
(3) 被疑者甘利について
 以上のとおり,被疑事実1(1)について被疑者清島に関する再捜査が必要であるが,被疑者甘利が被疑者清島との間で前記の被疑者清島の一連の行為について共謀していたことを窺わせる証拠はない。
 よって,被疑事実1(1)について被疑者甘利を不起訴とした検察官の判断は相当である。
2 被疑事実1(2) について(あっせん利得処罰法違反)
 関係証拠によれば,A社代表取締役のEが平成25年11月14日にBらA社関係者と共に被疑者甘利の大臣室を訪れ,被疑者甘利に直接現金50万円を手渡した事実が認められるものの,この訪問の目的や経緯も考慮すると,この現金50万円がA社と独立行政法人Cとの間の補償交渉1に対する報酬や謝礼として供与されたものとは認められない。
 よって,被疑事実1(2)について,被疑者甘利及び被疑者清島をいずれも不起訴とした検察官の判断は相当である。
3 被疑事実2(1),(2)及び(4)について(あっせん利得処罰法違反)
  関係証拠によれば,平成26年から平成27年頃にBが被疑者甘利に現金50万円を手渡したこと,Bが被疑者清島に現金100万円を手渡したこと,Bがパーティー券代金として各現金0万円を支払ったことが認められる。
しかし,関係証拠から認められるこれらの供与の経緯を考慮すると,A社と独立行政法人Cとの補償交渉をすることの報酬や謝礼として供与されたものとは認められない。
よって,被疑事実2(1),(2)及び㈲について被疑者甘利,被疑者清島及び被疑者鈴木をいずれも不起訴とした検察官の判断は相当である。
4 被疑事実2(3)について(あっせん利得処罰法違反)
巾被疑者清島及び被疑者鈴木について
検察官は,被疑事実(3)について被疑者清島及び被疑者鈴木をいずれも不起訴としたが,以下アないしウの理由から,この検察官の判断は納得できるものではなく,改めて捜査が必要であるから,不当である。
ア被疑事実(3)の前提となる現金の供与について,関係証拠によれば,被疑者清島及び被疑者鈴木が,平成27年中,Bから,多数回に渡り現金の供与を受け,その合計額は多額なものとなっていることが認められる。この現金の供与は,多数回のことであり,関係者による記録や記憶に不正確ないしは曖昧な点があるとしても,そういった事実が一切存在しないとか,Bを含む関係者において意図的に虚偽の事実を作出したと疑うべき明確な事情は認められない。
イ関係証拠によれば,Bが,この間,被疑者清島に対し,A社の代表取締役の知人に関する事柄やA社に関する別の事柄も相談していた事実が認められるものの,この現金が供与されている間,Bが継続して相談していたのはA社と独立行政法人Cとの道路建設工事の実施に伴う損傷修復等に関する補償交渉(以下「補償交渉」という。)であること,多額の現金供与に経済的に見合う事柄は補償交渉であることを考慮すると,この継続する現金供与の主要な目的は,A社と独立行政法人Cとの補償交渉に関レ被疑者清島や被疑者鈴木においてあっせん行為をすることの報酬,謝礼であるとみるのが自然である。
被疑者清島や被疑者鈴木も,繰り返しの現金提供を受けていること,その間,A社と独立行政法人Cとの補償交渉について相談を受け,関与していたのであるからBによる現金供与の目的を理解していたはずである。
そうすると,双方とも,Bによる現金供与の主要な目的があくまでA社と独立行政法人Cとの補償交渉に係るあっせんすることの対価と理解していると認められる以上,あっせん利得処罰法違反における「請託」を受けて,あっせんしたことの報酬,謝礼として現金供与が行われたとみるのが自然である。
ウ被疑事実(3)は,「あっせんをすること」,すなわち将来あっせんすることの報酬,謝礼として現金の供与を受けたという行為に関するものである。
関係証拠によれば,Bと被疑者清島との間に,独立行政法人Cへの働きかけの方法として具体的な合意,協議の事実までは認められないものの,被疑事実1田に関する補償交渉1の経緯,その際補償金額が増額したことの対価としてBから被疑者清島に対し500万円もの現金が渡されたことも踏まえると,Bが,A社と独立行政法人Cとの補償交渉について,甘利事務所によって独立行政法人C担当者の判断に影響を与えるような働きかけを求めていたことは容易に認めることができる。
他方,被疑者清島も,Bにおいて,被疑事実1(1)同様に,甘利事務所による働きかけによってA社が主張する額の補償金が支払われるようあっせんすることを求めていることを知っていたから,こそ,その対価として多数回に渡り現金の供与を受けていたと認めるのが自然である。被疑者鈴木も,Bから現金供与を受ける中で,被疑者清島から,Bの意図につき説明を受け,認識していたとみるのが自然である。
(3)被疑者甘利について
以上のとおり,被疑事実(3)について被疑者清島及び被疑者鈴木の関係で再捜査する必要があるといえるが,その一連の行為について,被疑者甘利が被疑者清島,被疑者鈴木の一方又は双方と共謀していたことを認め得る証拠はない。
よって,被疑事実(3)について被疑者甘利を不起訴とした検察官の判断は相当である。
5 被疑事実2(3)について(政治資金規正法違反)
関係証拠によっても,被疑事実2(3)のような収支報告書の虚偽記載,不記載があったと認められない。
よって,被疑事実2(3)について被疑者甘利及び被疑者清島をいずれも不起訴とした検察官の判断は相当である。
6 結論
以上のとおり,被疑事実1(1)について被疑者清島を不起訴としたこと,被疑事実(3)について被疑者清島及び被疑者鈴木を不起訴としたことには納得できないため,検察官に再捜査及び再考を求める必要があり,その他について不起訴とした検察官の判断が相当であると判断したから,前記議決の趣旨のとおり議決する。
東京第四検察審査会
以 上
(2016年8月2日)

カネにキズ持つ小池百合子の「裏金作り疑惑」を徹底追及しようー猪瀬・舛添同類の知事はゴメンだ。

都知事が2代続けて「汚れたカネ」でつまずいて、辞任に追い込まれた。今回都知事選は、いつにもまして候補者の「政治資金収支のクリーン度」が問われている。カネにキズ持つ候補者は、今回都知事選に出馬の資格がない。

昨日の当ブログで、「落選運動を支援する会」のサイトを引用して、小池百合子候補の「政治とカネ」疑惑4件をお伝えした。今日(7月24日)になって、そのうちの1件に進展があった。小池百合子の「政治資金疑惑」の色が一挙に濃くなったのだ。小池は、思想的に右翼というだけではない。「政治資金のクリーン度」不足についても徹底した批判を受けなければならない。赤旗と日刊ゲンダイが伝えているニュースだが、もっと多くの有権者に小池百合子「裏金作り疑惑」を知っていただきたいと思う。

政治資金の流れは、徹底して透明でなければならない。これをごまかそうというのが、「裏金作り」だ。適宜に調達した領収証を利用して、政治資金収支報告書には実体のない支出の報告をしておく。こうして浮かせた金が、国民の目から隠れた支出に使われる。計画的で組織的な、ダーティきわまるカネの使い方。もちろん、政治資金規正法における「収支報告書への虚偽記載の罪」に当たる。小池百合子にその疑惑濃厚なのだ。

昨日の当ブログの該当個所は、以下のとおりである。
 小池百合子自民党衆議院議員(元防衛大臣)の政治資金問題その2
 「不可解な「調査費」支出とその領収書問題
    http://rakusen-sien.com/rakusengiin/6730.html
  既にない企業へ世論調査を依頼し、「調査費」の領収証をもらったという不可解。
  こんなことをしている政治家に、クリーンな都政を期待できるのか。」

落選運動のサイトから、疑惑を再構成してみよう。
☆政治資金収支報告書によれば、小池百合子議員の政党支部「自民党・東京都第10選挙区支部」(代表者・小池百合子)は、2012年から2014年まで、「M-SMILE」(当初、東京都新宿区新宿5-11-28、後に東京都渋谷区広尾5-17-11)という先に「調査費」合計210万円を支出している。
☆上記住所の「M-SMILE」は、インターネットで検索しても該当するものが見あたらない。会社としての登記もない。実在が怪しい。
☆「日刊ゲンダイ」の調査報道(「小池百合子氏に新疑惑 “正体不明”の会社に調査費210万円」2016年7月5日)によると、同紙の問合せに対する小池事務所の説明は次のとおり。
「当初は『M―SMILE』という会社名だったのですが、現在は『モノヅクリ』という名前に変更されています。・・・支出目的? 選挙の際、世論調査をお願いしました」
☆この説明は不自然で、疑惑が残る。
・『モノヅクリ』は実在するが、「オーダースーツ専門の株式会社」で、調査をする会社とは思えない。
・この点の疑惑に関して、『モノヅクリ』の代表者はこう説明している。
「私は09年ごろから、個人的に『M―SMILE』という名で世論調査の事業を始めました。小池さんから仕事をいただき、軌道に乗れば法人登録したかったのですが、うまくいかなかった。そのため、12年に『モノヅクリ』を立ち上げ、オーダースーツの事業をメーンにしています」(「日刊ゲンダイ」)
・小池事務所の「『M―SMILE』という会社名が、『モノヅクリ』という名前に変更された」と、『モノヅクリ』側の「12年に『モノヅクリ』を立ち上げた」は齟齬がある。「調査」と「スーツ」、事業目的の違いはあまりに大きく商号変更というには無理があろう。
☆2012年には既に企業としては存在しなくなっている『M―SMILE』に、2012年から2014年まで調査費を支払ったということはあまりに不自然。
・仮に、「『M―SMILE』という会社名が、『モノヅクリ』という名前に変更」されたとしても、13年・14年とも『M―SMILE』の領収証を添付し続けたことが、これまたあまりに不自然。
☆実は、調査の依頼などの事実はなく、存在しない(あるいは、存在しなくなった)会社の領収書が意図的に作成された疑惑が残る。政治資金収支報告書上は調査費支出としておいて、実は210万円を裏金とする操作をしたのではないか。これは、政治資金規正法上の収支報告書への虚偽記載に当たる可能性がある。

ここまでは、昨日まで判明の「疑惑」。ここからが「本日さらに濃くなった疑惑」である。
本日(7月24日)の赤旗・社会面のトップと、「日刊ゲンダイ」(デジタル)が、新たな調査で判明した疑惑を報道している。

「小池百合子氏「裏金疑惑」 都議補選に出馬“元秘書”の正体」(「ゲンダイ」)、「『調査費』210万円の実態不明会社 社長の正体は元秘書」(赤旗)という各見出し。
「ああ、やっぱり」というべきなのだ。「疑惑」は限りなくクロに近くなった。

赤旗の記事を引用しておこう。
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「東京都知事選(31日投票)に立候補している元防衛相、小池百合子氏の政党支部が、実態不明の会社に「調査費」名目で210万円を支出していた問題で、同社の社長は、小池氏の元秘書だったことが、23日までにわかりました。まさに政治資金の“横流し”といえるもの。しかも小池氏は、この元秘書を22日に告示された都議補選・新宿区に無所属で擁立しており、小池氏側に説明責任が浮上してきました。
政治資金収支報告書によると、小池氏が支部長を務める「自民党東京都第10選挙区支部」は、2012年~14年に計210万円を「調査費」名目で「M―SMILE」に支出しています。

 本紙の調べによると、このM―SMILEなる会社は、当該住所に存在しませんでした。本紙の「架空支出ではないのか」との問い合わせに、小池事務所は「M―SMILEは現在、『ものづくり』という会社で、世論調査を発注、結果を受け取っていた」と文書で回答してきました。

 今回、都議補選に立候補した小池氏の元秘書は、森口つかさ氏(34)。同氏のオフィシャルサイトによると、08年9月に「衆議院議員小池百合子事務所」に入所し、12年10月に「株式会社モノヅクリ設立」とあります。

 登記簿やホームページによると、「モノヅクリ」は、東京都渋谷区広尾に「本店」を置き、資本金100万円のオーダースーツ専門会社。森口氏が社長でした。
 元秘書のオーダースーツ専門会社に「調査費」名目で支出していたことになります。
 第10選挙区支部は、12年~14年の3年間で4875万円の政党助成金を自民党本部から受け取っています。これは、同支部の収入総額(約9140万円)の53・3%にあたります。国民の税金が、「調査費」名目で自分の秘書の会社に流れていた可能性があります。

 小池氏は、森口氏擁立にあたって、「都議会に私の仲間というか、方向性を同じくする者が存在するということは意義深いことだ」と語り、22日の告示日にも応援に立ちました。

 小池氏は、知事選立候補表明直後に掲げていた「利権追及チームの設置」にいつのまにか言及しなくなりました。「しがらみなくクリーンな若い力で、不透明な都政を変えます」と主張している森口氏ともども、不透明な政治資金支出について、明確な説明が求められています。

以下は「日刊ゲンダイ」の記事
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「31日投開票の都知事選に出馬している小池百合子元防衛相(64)に新たな「政治とカネ」問題が浮上した。今回はナント! 「裏金づくり」疑惑だ。

 日刊ゲンダイは小池氏が代表を務める「自民党東京都第十選挙区支部」の収支報告書に添付された領収書の写し(2012~14年分)を入手。この領収書を精査すると、不可解なカネの流れが判明した。

 同支部は12~14年、「M―SMILE」という会社に「調査費」として計210万円を支出していたのだが、この会社は登記簿を調べても記載がなく、実体不明の会社だったからだ。

 小池事務所は「現在は『モノヅクリ』という社名に変わっている。選挙の際の世論調査を依頼した」と説明。そこで日刊ゲンダイが改めて「M-SMILE」の代表者に確認すると、代表者の男性は「09年ごろ、個人的に『M―SMILE』という名で世論調査の事業を始めた。12年に、『モノヅクリ』を立ち上げ、オーダースーツの事業をメーンにしている」と説明。つまり、実体のないスーツ会社が、小池氏から多額の政治資金を受け取り、世論調査を請け負っていた――という怪しさを記事にした。

■小池氏、元秘書とも問い合わせにダンマリ
 そうしたら、小池陣営が22日、都議補選(31日投開票)で新宿選挙区から擁立した男性の名前を見て驚いた。何を隠そう「M-SMILE」の代表者、森口つかさ氏(34)だったからだ。しかも、肩書は小池氏の「元秘書」だったからビックリ仰天だ。

 つまり、小池氏は自分の秘書がつくった“ペーパーカンパニー”に多額の政治資金(調査費)を支払っていたことになる。これほど不自然で、不可解なカネの流れはないだろう。政治資金に詳しい上脇博之・神戸学院大教授もこう言う。

 「小池氏の政党支部が(M-SMILE)に調査費を支出した時期に森口氏が秘書を務めていたのなら大問題です。通常、議員のために調査を行うことは秘書としての業務の一環で、調査の対価は給与として支払い済みのはず。それを秘書が経営する(幽霊)会社に調査費用を支払うというのは、あまりにも不自然です。裏金をつくったり、不正な選挙資金を捻出していたと疑われても仕方がありません。そうでないのならば、小池氏は説明責任を果たすべきです」

 果たして小池氏と森口氏はどう答えるのか。両者に何度も問い合わせても、ともに一切回答なし。知事が2代続けて辞職に追い込まれた「政治とカネ」問題は、今回の都知事選でも間違いなく重要な争点だ。それなのに小池氏、元秘書ともそろってダンマリでいいはずがない。
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以上の各報道が問題点を語り尽くしている。「M-SMILE」にせよ、「モノヅクリ」にせよ、その代表者(森口つかさ)は小池百合子の元秘書なのだ。現在も、小池が都議補選候補に擁立する間柄。小池百合子を代表者とする政治団体が、小池百合子の秘書(あるいは元秘書)に「調査」を依頼し、その秘書(あるいは元秘書)が作成した領収証を受領していたというのだ。領収証はどうにでも作れるではないか。到底些事として看過できることではない。
(2016年7月24日) 

選挙カンパが「罪作り」ー田母神公選法違反(運動員買収)裁判に注目を。

政治とカネにまつわる事件は、最近の主なものだけで、「徳洲会・猪瀬 5000万円事件」、「DHC・渡辺 8億円事件」、「小渕優子・ドリル事件」、「田母神俊雄・運動員買収」、「甘利明・UR口利き」。それだけで終わらず、舛添要一・公私混同事件にまで続いている。都政・都知事選関係の事件が際立つのは、偶然だろうか。

それにしても、突如猛烈な勢いで炎上した舛添叩き。誰も彼もが安心しきって楽しそうに、それぞれの正義を振りかざして舛添叩きに参加している。この雰囲気に、ある種の不気味さを感じざるを得ない。かつて、國体の護持に反逆する不逞の輩に対するバッシングとは、こんなものではなかっただろうか。マッカーシズムの空気にも似てはいないだろうか。どうして、叩く相手が舛添なのか。政権中枢の諸悪にもっと切り込まないのか。安倍の外遊、安倍の原発売り込みに、無駄はないのか、浪費はないのか。安倍の政治資金収支報告書の徹底洗い出しは誰もやらないのか。

政治家の裏金の授受や公私混同、あるいは贈収賄、あっせん利得などの立件の壁は厚い。正確に言えば、検察が「壁は厚い」と自らに言い聞かせている。だから、政治家本人の刑事訴追にはなかなか至らない。

そのなかにあって、政治家本人が立件されたのは猪瀬と田母神。実は両事件とも、公職選挙法違反なのだ。政治資金規正法はダダ漏れのザルだが、公職選挙法はザルの目が細かい、というべきなのだろうか。

猪瀬直樹前東京都知事が、徳洲会から5000万円を受け取っていたことに関して、東京地検特捜部は公職選挙法違反(選挙運動費用収支報告書への虚偽記載)として罰金50万円の略式起訴とし、略式命令が確定した。罰金50万円だが、5年間の公民権停止が付いている。

そして、元自衛隊空幕長だった田母神である。舛添が当選した都知事選に、石原慎太郎ら極右勢力の与望を担って出馬し、泡沫かと思われていたが61万票を獲得した。今、その選挙陣営から10人が起訴されて公判中である。候補者なんぞにならなければ、逮捕も起訴もなかったに。

田母神の処罰そのものにさしたる関心はない。注目すべきは、その罪名である。運動員買収。この事件は、選挙運動に携わる者に、警告を発している。

先月(5月)7日当ブログの下記の記事を参照されたい。
『田母神起訴から教訓を学べー「選挙運動は飽くまで無償」「運動員にカネを配った選対事務局長は買収で起訴』
  http://article9.jp/wordpress/?p=6853

連休さなかの5月2日、東京地検は元航空幕僚長・田母神俊雄を公選法違反(運動員買収)で起訴した。2014年2月東京都知事選における選対ぐるみの選挙違反摘発である。選挙後に運動員にカネをばらまいたことが「運動員買収」とされ、起訴されたものは合計10名に及ぶ。
  田母神俊雄(候補者)    逮捕・勾留中
  島本順光(選対事務局長) 逮捕・勾留中
  鈴木新(会計責任者)    在宅起訴
  運動員・6名          在宅起訴
  ウグイス嬢・女性       略式起訴

起訴にかかる買収資金の総額は545万円と報じられている。田母神・島本・鈴木の3人は共謀して14年3月~5月選挙運動をした5人に、20万~190万円の計280万円を提供。このほか田母神・鈴木両名は14年3月中旬、200万円を島本に渡したとされ、島本は被買収の罪でも起訴された。さらに鈴木らは、うぐいす嬢ら2人に計65万円を渡したとされている。

被疑罪名は、田母神俊雄(候補者)と鈴木新(会計責任者)が運動員買収、島本は買収と被買収の両罪、その余の運動員は被買収である。

選挙カンパは、ときに思いがけない大金となる。選挙事務を司る者は、往々にしてこの金を自分が自由に差配できるカネと錯覚する。小さな権力を行使して、自分の権限で選挙運動員にこのカネを配ったりする。運動員に対する恩恵の付与のつもりなのだろうが、こうして個人的な影響力を誇示し拡げようとする意図が透けて見える。

これは典型的な公職選挙法上の運動員買収に当たる。カネを配った者には運動員買収罪、日当名目でも報酬としてでもカネを受けとった者には被買収罪が成立する。カネを配ることは、犯罪者を作ることでもあって罪が深い。表に出ることはすくないが、現実にあることだ。

繰り返すが、選挙運動は無報酬ですべきことなのだ。選挙運動の対価として報酬を得れば犯罪となる。このことを肝に銘じなければならない。不当な弾圧などと言っても通じることではない。

田母神陣営の公判は、分離されて進行している。その先頭が陣営の元出納責任者・鈴木新。同被告人は、6月7日の初公判で起訴事実を認めたと報道されている。

「買収起訴内容認める…田母神陣営元出納責任者 東京地裁初公判
 2014年2月の東京都知事選で落選した元航空幕僚長、田母神俊雄被告の運動員に違法な報酬を配ったとして、公選法違反(運動員買収)に問われた陣営の元出納責任者、鈴木新被告は(6月)7日、東京地裁(家令和典裁判長)の初公判で『事実はその通り』と起訴内容を認めた。事件では計10人が起訴されたが公判は初めて。無罪を主張するとみられる田母神被告の初公判は27日に開かれる。」(毎日)

検察側の冒頭陳述は、大要次のようであったという。
「田母神の政治団体が1億円以上の寄付を集め、選挙運動の経費を払っても数千万円の余剰金が出る見込みになったことから、元選挙対策事務局長の島本順光が総額2000万円を選挙運動の報酬として払うことを考え、島本が貢献度に応じて報酬額を決めた配布リストを作成した。田母神がこれを了承した上で、選挙の応援演説などに加わった元自衛官の友人らにも報酬を配ることや、一部協力者の報酬を増やすように指示し、島本被告から伝えられた鈴木被告が『会長指示自衛隊関係』と記してリストを修正した」

各メディアの報道では、田母神陣営が集めた選挙カンパの額は1億3200万円。この金額が罪を作ることとなった。内5000万円が使途不明となり、そのうち2000万円が運動員の買収資金となった。残りの使途不明金3000万円余は、田母神と陣営幹部の遊興費に費やされたとみられている。田母神陣営のカンパだけが使途不明になったわけではない。往々にしてあることだ。選挙カンパの使途について、原則公開されるのだから、目を光らせなければならない。ネットの収支報告書を読むだけでも、解ることがある。怪しいことも見えてくる。それが、主権者としての自覚というべきものではないか。

けっして、舛添だけが汚いのではない。6月27日の田母神初公判にも注目しよう。そして、政治資金や選挙カンパには目を光らせ、政治とカネのつながりにもっともっと、鋭敏になろう。
(2016年6月9日)

舛添要一「政治資金流用疑惑」調査報告の惨憺たる失敗

組織に不祥事ないしはその疑惑が生じた際の対処の手法として、「第三者委員会」の利用が流行りとなっている。本来は、不祥事の原因を徹底究明して公表することによって説明責任を全うし、再発防止に資するとともに、失った信頼の回復を目的とするもの。

不祥事疑惑の解明は、当該組織自らの手ではなかなか徹底しがたい。その徹底性についての社会の信頼も得られない。だから、独立した「第三者」の手に委ねることになる。しかも、第三者が単独ではその独立性に対する信頼を確保しがたいから、複数人を選任して委員会を設置することにもなる。選任の方法・具体的な人選・調査の手法・報酬の取り決め・公表のあり方等々に、公正性を担保するための慎重な配慮を要する。

しかし、世に流行るものは、如上の慎重さを備えた本来の「第三者委員会」ではないようだ。公正を装った隠れ蓑であったり、世論の追求をかわすための時間稼ぎに使われる「似非第三者委員会」である。第三者性に疑義があり、調査の徹底にも信頼がおけない。結局は、再発の防止にも、失った信頼の回復にも役に立たないものとなる。

昨日(6月6日)公表された弁護士2名の「第三者」による疑惑調査結果の報告にもそうした疑念がつきまとう。「疑惑を抱える本人から依頼されて調査を行うことで客観性を保てるのか」。こう記者から質問された件の弁護士が、「第三者委員会とは基本的にそういうもの」と答えたと報じられているが、第三者委員会とは本来「そういうもの」ではない。そういうものであってはならない。

周知のとおり、日弁連が「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(2010年 7月15日作成、同年12月17日改定)を公表している。日弁連はけっして権威でもなく無謬でもない。当然のことながら、日弁連の言うことがみな正しいわけではない。しかし、多数弁護士の経験の集積は信頼に足りるスタンダードの提供としてハズレはすくない。このガイドラインもよくできている、と思う。

そのガイドラインの冒頭に、「第1部 基本原則」が置かれている。
「本ガイドラインが対象とする第三者委員会とは、企業や組織において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(「不祥事」)が発生した場合及び発生が疑われる場合において、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会である。
 第三者委員会は、すべてのステークホルダーのために調査を実施し、その結果をステークホルダーに公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復することを目的とする。」

これが、「第三者委員会」設置の本来の趣旨・目的であり、使命である。もちろん、これ以外の調査機関の設置も自由である。しかし、それは本来の「第三者委員会」とは似て非なるものであることが、十分に認識されなければならない。似て非なるものをもって、「第三者委員会とはそういうもの」と言ってはならない。

このガイドラインの前書きに当たる個所に、「経営者等自身のためではなく、すべてのステーク・ホルダーのために調査を実施し、それを対外公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復することを目的とするのが、この第三者委員会の使命である。」という一文がある。また、「第三者委員会の仕事は、真の依頼者が名目上の依頼者の背後にあるステーク・ホルダーである」との文言も噛みしめるべきである。

「第三者委員会」の設置者として想定されているのは、内部に不祥事を抱えた組織であって不祥事を起こした当事者本人ではない。本件の場合、東京都あるいは都議会が「第三者たる委員」を選任して委員会を設置すべきであって、不祥事の当事者である舛添本人が依頼し設置する調査チームは、「似非第三者委員会」と言わざるを得ない。「疑惑を抱える本人から依頼されて調査を行うことでは客観性を保てない」からである。

本来の「第三者委員会」は、不祥事を起こした当事者の不利益を忖度することはあり得ない。むしろ、不祥事に厳正に対処し、これを制裁し剔抉することで、組織を防衛することが期待されている。舛添個人の不祥事疑惑を容赦なく徹底追求することで、東京都の都民に対して名誉と信頼を回復することが、真の「第三者委員会」の調査の目的でなくてはならない。

しかも、ガイドラインがいみじくも述べているとおり、本来の「第三者委員会」は、「名目上の依頼者」のために仕事をするのではない。たとえ東京都から依頼を受けた場合でも、形式的な依頼者の背後にある、真の依頼者としての都民の利益のためにはたらかねばならないのだ。

6月5日付で報告書を提出した、舛添要一不祥事疑惑調査の弁護士チームをなんと呼べば適切なのか、にわかに判断しがたい。当然のことながら、「第三者委員会」とも、「第三者調査チーム」とも言えない。敢えてネーミングするなら、「チーム・舛添」「舛添不祥事レスキュー隊」くらいのところだろうか。

「チーム・舛添」は、隠し通せない明らかな不祥事には「不適切」「要是正」としつつも、「違法はない」との結果を予定して調査を請け負ったものと評価せざるを得ない。

出発点がおかしいから、調査の姿勢も内容もおかしい。到底公正な調査が行われたとは言いがたい。

報告書の冒頭に、「第1 調査の目的」が述べられている。その全文が次のとおり。
「舛添要一氏の関係する政治団体,すなわち,自由民主党東京都参議院比例区第二十八支部,新党改革比例区第四支部,舛添要―後援会,グローバルネットワーク研究会及び泰山会の政治資金の支出内容について調査した上,それらが適法になされていたか,また,適法であったとしても政治的道義的観点から適切になされていたかを判断することが目的である。」

これには、首を傾げざるを得ない。「政治資金の支出内容について適法か」という調査目的の設定そのものがおかしいのだ。政治資金規正法にしても、政党助成法にしても、「政治資金の支出内容についての違法」は原則としてないからだ。

そもそもが、法は原則として政治資金の使途を規正しない。法は、政治団体に係る政治資金の収支の公開を義務付け、公開された使途に関しての適切不適切の判断は有権者にまかせているという基本構造になっている

政党助成法に至っては、「第4条 1項 国は、政党の政治活動の自由を尊重し、政党交付金の交付に当たっては、条件を付し、又はその使途について制限してはならない。」という明文規定を置いている。公権力は、政党の活動に介入してはならない。カネの使途を制限することで政党活動を制約してはならない。そのような自由主義的理念にもとづくもの。だから、使途の違法は原則としてない。「政治資金の支出内容について適法か」との問に対する回答は、「適法」あるいは「違法とは言えない」に決まっているのだ。

もっとも、同条2項は、「政党は、政党交付金が国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることに特に留意し、その責任を自覚し、その組織及び運営については民主的かつ公正なものとするとともに、国民の信頼にもとることのないように、政党交付金を適切に使用しなければならない。」と定める。これは精神的な訓示規定。

法は、政治資金の「入り」についても、「出」についても、報告と公開の制度を設け、政治資金の動きの透明性を確保しようとしている。その報告書に記載された使途が、不適切か否かは有権者にまかせるが、報告書は正確に書かねばならない。不記載も、虚偽の記載も、違法であり犯罪となる。

だから、第三者委員会なり調査チームの調査目的は、何よりも「政治資金収支報告書の記載が正確であるか」「虚偽の記載はないか」でなくてはならない。繰り返し強調しなければならないが、虚偽記載は犯罪である。虚偽であるか否かの判断は、現実の支出内容を厳格に究明して、政治資金の支出として報告書に記載された使途との齟齬がないかを点検しなければならない。報告書を一瞥する限り、そのような視点からの検証はない。

たとえば、話題となったグローバルネットワーク研究所政治資金収支報告書上の次の記載。
「会議費用 237755円 平成25年1月3日 支出を受けた者・龍宮城スパホテル三日月 木更津し北浜町1」(現在、本年5月16日に抹消された記載となっている。)

この「会議費用」が、「組織活動費(組織対策費)」と項目別区分された、政治活動費の支出として明記されているのだ。

本来、調査は、「会議費用として平成25年1月3日237755円としての支出」という報告書の記載が虚偽ではなかったかを究明しなければならない。

この政治資金収支報告書の記載が、有権者の政治家の活動判断の材料だ。ここに虚偽が記載されていたのでは、有権者は当該政治家の活動の内容も、政治家としての資質の判断もできないことになる。有権者の判断を誤らしめるものであるか否かが、虚偽記載罪(政治資金規正法25条1項3号)成否の分かれ目である。また、それゆえに、虚偽記載罪の罪責は重い(法定刑は、5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金)。

調査にはこの点が不可欠だが、チーム・舛添の報告書での当該部分のコメントは、以下のとおりである。

「宿泊費・飲食費について調査し検討した結果,一部に家族同伴のものなども含まれており,政治資金を支出したことが適切とは言えないものがある。」
「舛添氏とその家族が1月1日から3日まで宿泊した(2泊3日)。舛添氏によると,平成24年12月実施の第46回衆議院議員選挙で結果を出せなかったことを踏まえ,政治家としての今後について判断しなければならない状況にあったため,宿泊期間中,付き合いが長くかねてより相談相手としていた出版会社社長(元新聞記者)を客室に招き政治家としての今後のことについて相談したとのことであり,面談は数時間程度であったとのことである。舛添氏の説明内容を踏まえると,政治活動に無関係であるとまでは言えない。しかし,全体としてみれば家族旅行と理解するほかなく,政治資金を用いたことが適切であったと認めることはできない。」

これではダメなのだ。「不適切」で済ますのではなく、虚偽記載の有無に切り込まねばならない。これでは、政治活動として出版会社社長(元新聞記者)との面談が本当にあったとは言えない。不祥事の疑惑の当事者の言い分を鵜呑みにする「厳正な調査」はあり得ない。百歩譲って舛添の主張を信じたとしても、正月3が日のうち「数時間程度の面談」を除くその余の時間は、純粋な家族の旅行だったことになる。2泊3日分の費用の掲載は虚偽記載となるべきことについて、どうしてなんの検討もしないのか。「全体としてみれば家族旅行と理解するほかない」宿泊費をの全部を「会議費」として記載したのは、この部分だけでも虚偽記載となりうるではないか

こんな舛添の言い分に耳を傾けるだけの調査では、真の実質的依頼者である都民の納得を得られない。調査が尽くされていないから、認定事実に具体性なく、都民の信頼を回復するどころではない。むしろ、都民の怒りの火に油を注ぐものとなって、逆効果をもたらしたというべきだろう。

件の弁護士は、「政治資金規正法違反容疑で告発されたみんなの党(解党)の渡辺喜美元代表=不起訴=の代理人や小渕優子・元経済産業相の政治資金問題の調査、現金受領問題が発覚した猪瀬直樹前都知事の弁護も担った」(朝日)と報じられている。ああ、やっぱり。なるほど、そうなのか。と、そこだけが、妙に腑に落ちて納得した。その余の納得は到底なしえない。
(2016年6月7日)

甘利不起訴ー検察審査員諸君、今君たちに正義の実現が委ねられている。

上脇博之政治資金オンブズマン共同代表(神戸学院大学教授)らが、被疑者甘利明らを告発したのが本年4月8日。同告発に対して東京地検特捜部は、5月31日付けで不起訴処分とした。
その処分通知は下記のとおりまことに素っ気ないもの。

  処分通知書
 平成28年5月31日
 上脇博之 殿
   東京地方検察庁 検察官検事 井上一朗 職印
 貴殿から平成28年4月8日付けで告発のあった次の被疑事件は,下記のとおり処分したので通知します。
   記
1 被疑者   甘利明,清島健一,鈴木陵允
2 罪 名   公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反,政治資金規正法違反,公職選挙法違反
3 事件番号  平成28年検第14913~ 14915号
4 処分年月日 平成28年5月31日
5 処分区分不起訴

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これに対して、本日(6月3日)付で東京検察審査会宛に、下記のとおりの審査申立がなされ、甘利の起訴の有無は、検察審会の判断に委ねられた。
この申立の代理人弁護士は49名。その代表者が大阪弁護士の阪口徳雄君。私も、ワンノブ49sである。

  審査申立書
 2016年6月3日
東京検察審査会 御中
  別紙代理人目録記載の弁護士49名
 被疑者 甘 利 明
 被疑者 清 島 健 一
 被疑者 鈴 木 陵 允
申立の趣旨
 被疑者甘利明、清島健一および鈴木陵允らの下記被疑事実の要旨記載の各行為についてのあっせん利得処罰法および政治資金規正法に違反する告発事件について、「起訴相当」の議決を求める。

申立の理由
第1 審査申立人及び申立代理人
 審査申立人:上脇博之(別紙審査申立人目録記載の通り)
 申立代理人:別紙代理人目録記載のとおり

第2 罪名
 あっせん利得処罰法違反及び政治資金規正法違反

第3 被疑者
 甘利明、清島健一および鈴木陵允

第4 処分年月日
 2016(平成28)年5月31日

第5 不起訴処分をした検察官
 東京地方検察庁 検事 井上一朗

第6 被疑事実の要旨
 別紙告発状記載の通り

第7 検察官の処分
 不起訴処分。理由は嫌疑不十分。なお理由は処分した検察官からの電話で、代理人代表弁護士が「嫌疑不十分」と聞いただけであり、どの事実についてどのように証拠がなく、嫌疑不十分となったかの質問をしたが、それは答えられないと拒否された。従って、報道されているように「権限に基づく影響力の行使」を『いうことを聞かないと国会で取り上げる』などという違法・不当な強い圧力を行使した場合に限定した解釈をした結果不起訴になったか否かは不明である。

第8 不起訴処分の不当性
1 本件は政権の有力政治家の介入事件である
 本件告発事件は、閣僚として政権の中枢にある有力政治家(被疑者甘利明)事務所が、民間建設会社の担当者からURへの口利きを依頼されて、URとのトラブルに介入して、その報酬を受領したという、あっせん利得処罰法が典型的に想定したとおりの犯罪である。同時に、口利きによる報酬であることを隠蔽するために、政治資金規正法にも違反し、不記載罪を犯した事件である。
2 あっせん利得処罰法の保護法益
 あっせん利得処罰法の保護法益は、「公職にある者(衆議院議員等の政治家)の政治活動の廉潔性ならびに、その廉潔性に姑する国民の信頼」とされている。政治の廉潔性に対する国民の信頼と言い換えてもよい。本件の被疑者甘利明の行為は、政治の廉潔性に対する国民の信頼を著しく毀損したことは明白である。
 しかも、通例共犯者間の秘密の掟に隠されて表面化することのない犯罪が、対抗犯側から覚悟の「メディアヘの告発」がなされ、しかも告発者側が克明に経過を記録し証拠を保存しているという稀有の事案である。世上に多くの論者が指摘しているとおり、この事件を立件できなければ、あっせん利得処罰法の適用例は永遠になく、立法が無意味だったことになろう。
 被疑者らが、請託を受けたこと、したこと、URの職員にその職務上の行為をさせるようにあっせんをしたこと、さらにその報酬として財産上の利益を収受に疑問の余地はないと思われる。
3 検察の不起訴処分は政権政党の有力大臣であった者への「恣意的」で「政治的」な不起訴処分である
 検察は国民の常識から見て起訴すべき事案を、もし報道されているように検察官が「権限に基づく影響力の行使」を『言うことを聞かないと国会で取り上げる』などという違法・不当な強い圧力を行使した場合に限定した解釈をしたというのであれば、その解釈は被疑者が政権政党の有力大臣であったことによる『恣意的』で『政治的』な限定解釈であると断じざるを得ない。
 第1に「権限に基づく影響力の行使」を『言うことを聞かないと国会で取り上げる』などのような一般的な制限的解釈は正しくはない。条文に「その権限に基づき不当に影響力を行使」したとか言う「行為態様」に関して一切の制限をしていない。
 権限に基づくという影響力の行使とは、行為態様が強いとか弱いとかいうのではなく、国会議員が有する客観的地位、権限に基づき影響力の行使を言うのであって、その影響力の行使の「態様」を制限していないのである。それをあたかも「影響力の行使」の「態様」について『言うことを聞かないと国会で取り上げる』などという制限的な態様を解釈で補充することは検察の極めて恣意的な解釈であると同時に検察の「立法」に該当する。あっせん利得処罰法の保護法益は前記に述べたように政治家はカネを貰って斡旋行為をすることを禁じた法律であり、政治家などの政治活動の廉潔性ならびに、その廉潔性に対する国民の信頼が毀損された場合は処罰する法律であって、その権限の行使態様には一切の制限がないのである。確かに一般の国会議員等が関係機関に要請した場合または口利きのみの行為を罰することは正しくない。しかし、国会議員等の要求、口利きであつてもその「行為」の報酬としてカネを貰うという「議員等とのカネでの癒着による権限に基づく影響力の行使」行為を罰するのであつて、通常の政治家の要請行為を罰するものではない。
 第2に本件の場合は安倍政権の有力大臣であり政治家の「要請」行為であったからこそ、UR側は当初は補償の意思がなかったのに2億2000万円まで大幅に補償額を上乗せして支払っているのである。この結果=社会的事実は甘利大臣側がどのような言葉で要請したかではなく、安倍政権の有力政治家が有する「権限に基づく影響力の行使」という客観的な地位、権限があったからこそ、UR側は飛躍的に補償額を上乗せしたのである。『言うことを聞かないと国会で取り上げる』と言ったとか、言わなかったかの問題でなく、当時の甘利大臣の飛ぶ鳥を落とす「地位」「威力」「権限」があったからこそ、UR側も要求に応じたのである。例えが悪いが巨大な指定暴力団の有力幹部が横に座つているだけで一言も発しなくてもその「威力」に負けて要求に応じるのと同一の構造である。
 第3に、本件は決して軽微な事案ではない。「週刊文春」などの報道によれば、被疑者甘利らが、本件補償交渉に介入する以前には、UR側は「補償の意思はなかった」(週刊文春)、あるいは「1600万円に過ぎなかった」とされている。ところが、被疑者らが介入して以来、その金額は1億8000万円となり、さらに2億円となり、最終的には2億2000万円となつた巨額の事件であり、甘利側が貰った金額も巨額である。今回の事件は、有力政治家の口利きが有効であることを如実に示すものであり、これを放置すると多くの業者などが、政権政党の有力大臣や有力政治家に多額のカネを払い、関係機関に「口利き」を要請する事態が跋扈することになろう。これを払拭するために、本件については厳正な捜査と処罰が必要とされている。
4 告発事実の事実関係、政治資金規正法違反について
 別紙告発状記載の通り
5 結語
 本件のような、政権政党の有力大臣や有力政治家による口利きがあったことが明白な事件においてあっせん利得処罰法の適用ができないということになれば、「公職にある者(国会議員等の政治家)の政治活動の廉潔性ならびに、その廉潔性に対する国民の信頼」を保護することなど到底できないことになる。そして、今後政治家による「適法な口利き」が野放しとなり、国民は政治活動の廉潔性を信頼することがなくなり、政治不信が増大することとなる。
 口利きによる利益誘導型の政治が政治不信を招き、それを防止するために制定されたあっせん利得処罰法の趣旨を十分理解したうえで、検察官の不起訴処分に対して法と市民の目線の立場で「起訴相当」決議をしていただきたく審査請求をする次第である。ちなみにあっせん利得処罰法違反で500万円を受領した事件の時効は本年8月20日に満了する。早急に審査の上、起訴相当の議決をして頂きたい。
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不起訴処分と同時に、甘利の政治活動への復帰が報じられている。甘利本人にとっても、起訴は覚悟のこと、不起訴は望外の僥倖と検察に感謝しているのではないか。不起訴処分は、限りなくブラックな政治家を甦らせ、元気を与えるカンフル剤となる。それだけではない。政治家の口利きは利用するに値するもので、しかも立件されるリスクがほぼゼロに近いと世間に周知することにもなる。

これでは、あっせん利得処罰法はザル法というにとどまらない。あっせん利得容認法、ないしはあっせん利得奨励法というべきものになる。

こんなことを許してはならない。巨額のカネが動いたのは事実だ。甘利自身、薩摩興業の総務担当者から、大臣室で現金50万円、地元神奈川県大和市の甘利事務所で50万円を直接受けとっている。この金が口利き料としてはたらいたことも明らかではないか。薩摩興業は、最終的にはURから2億2000万円の補償金を得ている。この現金授受と口利きの事実、口利きの効果が立証困難ということはありえない。「知らぬ存ぜぬ」は通らない。「秘書が」の抗弁もあり得ない。

有罪判決のハードルが、もっぱら構成要件の解釈にあるのなら、当然に起訴して裁判所の判断を仰ぐべきである。有罪判決となれば、立法の趣旨が生かされる。仮に法の不備から無罪となれば、そのときには法の不備を修正する改正が必要になる。いずれにせよ、検察審査会は単に不起訴不当というだけではなく、国民目線で、起訴相当の議決をすべきである。そうでなければ、政治とカネにまつわる不祥事が永久に絶えることはないだろう。

検察審査員諸君、あなたの活躍の舞台ができた。せっかくの機会だ。このたびは、あなたが法であり、正義となる。政治の浄化のために、民主主義のために、勇躍して主権者の任務を果たしていただきたい。
(2016年6月3日)

甘利不起訴? そりゃアマリにひどい。 法はザルか、底の抜けたバケツか。

天網恢々疎にして漏らさず(『老子』では「失わず」)、とは情けない諺。普通の理解は、「悪を捕らえる天の法網は、一見網の目が粗くて諸悪がすり抜けられそうなのだが、実は逃しはしないのだ。国法が目こぼししても、やがては天の網に捕らえられる」というくらいの含意。しかし、天の網の目を密と言わずに、疎といっている。なんとも微妙な言い回しではないか。

庶民はみんな知っている。政治家を縛る諸法はすべてザルであることを。権力には、巨悪を眠らせずにおくものか、という気迫のないことも。昔から、庶民は、「国法が見逃しても、きっと天の網が、奴らを捕らえてくれるはずさ」と、自らを慰めてきた。学のある者が、そのような民衆の気分を上手に文章にまとめたのが、「天網恢々」だ。いつかはきっと、あいつに天罰が下る。だから、怪しからんと憤ったり、ワーワー騒がなくてもよいのだ、と。

この法諺は、「天皇に道義的政治的責任はあっても、法的責任はない」「だから、東京裁判の起訴は免れた」「しかし、天網恢々…、その戦争責任をいつかは必ず天の網が裁くはず」と使われた。でもまた、誰もが知っている。結局のところはこれも願望に過ぎないことを。実際に、天皇はその後40年余も永らえて、天の網に捕らえられて裁かれたか…、誰も知らない。

「法は蜘蛛の巣だ。チョウはつかまり、カブトムシは破る」このリアリティを糊塗するための、天網恢々のたわごと。そんなことを考えざるをえないのは、今朝の朝刊に「甘利不起訴の方向」の記事を見てのこと。検察からのメディアのリークとして、根拠のない記事ではないと思っていたら、午後には「東京地検 甘利を不起訴に」の報道。

今朝の毎日の記事は、こうだ。
<甘利氏>不起訴へ 東京地検、任意で聴取 現金授受問題
「甘利明前経済再生担当相(66)=1月辞任=を巡る現金授受問題で、東京地検特捜部が甘利氏本人から任意で事情を聴いたことが分かった。甘利氏は都市再生機構(UR)が建設会社「薩摩興業」(千葉県白井市)に約2億2000万円を支払った交渉への関与などを否定したとみられる。甘利氏と元秘書2人については、あっせん利得処罰法違反などの疑いで告発状が出されているが、刑事責任を問うことは難しいとの見方が強く、特捜部は近く3人を不起訴処分とする方向で調整している。…UR関係者は『13年度中に契約を結ぶために交渉を急いでいた』と話し、甘利氏や元秘書が交渉に与えた影響を否定した。」
「同法違反での立件には、国会議員としての『権限に基づく影響力の行使』があったことを立証する必要があるが、捜査ではそうした証拠は得られなかったとみられる。」

この事件は、あっせんを請託した者が、自らの刑事訴追を覚悟して、甘利のあっせん利得処罰法違反を世間に暴露したものだ。稀有の事例と言ってよい。これで、立件できないとすれば、法はザルだ。密なる網でもなければ、疎なるザルですらない。底の抜けたバケツというべきではないか。必要性あって、せっかく作った「あっせん利得処罰法」が発動されることは今後一切あるまい。この運用で、「あっせん利得処罰法」は名前を変えざるを得ないだろう。「あっせん利得容認法」、あるいは「あっせん利得奨励法」だ。だから、政治家稼業は辞められない。

もう一度、あっせん利得処罰法の条文をよく見よう。
同法第1条(公職者あっせん利得)の構成要件は以下のとおりである。
(犯罪主体) 衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体の議会の議員若しくは長(以下「公職にある者」という。)が、
(犯罪行為) 国若しくは地方公共団体(URを含む)が締結する売買、貸借、請負その他の契約又は特定の者に対する行政庁の処分に関し、
  請託を受けて、
  その権限に基づく影響力を行使して公務員(UR職員を含む)にその職務上の行為をさせるように、又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、
  その報酬として財産上の利益を収受したときは、
(刑罰)三年以下の懲役に処する。

問題は、「その権限に基づく影響力を行使して」の立証の困難ということのようだ。「その権限に基づく影響力」とは、「甘利が国会議員として有している広範な権限の影響力」である。UR側が甘利事務所の口利きを無視し得ず、交渉を重ねざるを得なかったこと、甘利事務所が口利きをした保証金交渉で譲歩したのは、「その権限に基づく影響力の行使」ゆえではないか。立件し、裁判所の判断を仰ぐべきが筋であろう。

到底、天網に委ねて済む問題ではない。告発事件が不起訴の通知があれば、検察審査会への審査申し出とならざるを得ない。
(2016年5月31日)

目くそ君たち、大いに鼻くそを嗤え。

聖書には、引用される名言が多い。「汝らのうち、罪なき者まず石をなげうて」などは、その筆頭格だろう。ヨハネによる福音書第8章なのだそうだ。現代語訳では、「イエスは立ち上がって彼らに言われた、『あなたがたのうちで罪のない者が、まず彼女に石を投げなさい』」となっている。「故事俗信ことわざ大辞典」(小学館)をひもとくと、「この言葉によって、イエスは人が人を裁く権利のないことを悟らせた」との解説が見える。また、十王伝説では、閻魔は人を裁くその罪故に、毎日溶けた銅を飲む責め苦に耐えるのだという。他人の罪をあげつらうのは、罪なき聖者以外にはなしえず、清浄なる者にとっても他人の罪を裁くことは軽々になし得ることではないというのだ。

しかし、俗世は聖書にも仏教説話にもほど遠い。舛添要一の醜態を、我先に石もてなげうつ輩ばかり。これを「目くそが鼻くそを嗤う」という。「目やにが鼻垢を笑う」という語法もあるそうだ。

目くその筆頭は、石原慎太郎であろう。次いで、猪瀬直樹。鼻くそ君にも、3分の理があり、2分のプライドもあろう。この前任者二人に対しては、「ほかの人はともかく、おまえたち二人には言われたくない」との思いが強かろう。

続いて目立った目くそは、橋下徹、萩生田光一といったところ。萩生田光一(東京都第24区選出衆議院議員・内閣官房副長官)については、首を傾げる向きもあろうか。「安保関連法賛成議員の落選運動を支援する弁護士・研究者の会」が、4月28日付で東京地方検察庁に政治資金規正法違反で告発している御仁で、明らかに目くそというに相応しいお一人。
  http://rakusen-sien.com/rakusengiin/5625.html
この目くそ君。5月13日の舛添会見後、「(家族と会議?)それ嘘だろ! うさんくさいねえ。オレが記者なら追いかけるよ。これ以上のイメージダウンは勘弁願いたいね」と言っている(週刊文春)。目くそが鼻くそを嗤うの典型パターン。

鼻くそを嗤うのは楽だ。水に落ちた犬を叩くのはたやすい。正義は我にありとして、力を失った者を叩き続けるメディアに真のジャーナリズム魂があるのだろうか。

目くそにはなりたくない。目くそと呼ばれたくもない。ジャーナリスト諸君よ。鼻くそではなく、目くその方を追わないか。石原慎太郎の所業をもう一度洗い出さないか。政権で涼しい顔をしている連中とカネの問題を徹底して洗い出さないか。権力の座にある者、強い立場にある者、権威をひけらかしている者を批判してこそのジャーナリズムではないか。目くそ連中と一緒くたにされて本望か。

しかしだ。もう一段深く考えてみると、視点も変わる。諸々の目くそ君たちよ。目くそと言われて怯んではならない。自分のことは棚に上げて、大いに鼻くその非をあげつらえ。目くそと鼻くそは、実はいつでも交替可能な関係だ。昨日の鼻くそも、今日の目くそとなる。それでよいのだ。権力にある者の不正を批判することに資格は要らない。たとえ自分が汚くても、仮に自分に非があったとしても、権力者の不正批判は社会に有益なのだ。

だから、「汝らのうち権力の不正を目にした者、誰も躊躇なく石をなげうて」なのだ。「我が振り直す前に、権力者の振りに石をなげうて」なのだ。道徳の教えるところと、世俗の政治社会のありようとはかくも違う。

私は道徳にも宗教にも関心はないが、舛添叩きへの加担にいささかの躊躇がある。舛添潰しはもはや政権への打撃にならないのだ。のみならず、舛添後の都知事に最悪の候補者が出てくることにならないかという心配もある。

舛添叩きに加担することに躊躇しつつ、やっぱり舛添告発の代理人の一人となった。政治とカネの汚いつながりを断つために、目くその側に連なったのだ。
(2016/05/21)

限りなくクロに近い濃いグレイ-舛添知事の政治資金規正法違反の疑惑

2年前(2014年)の2月、舛添都知事誕生の際には、ひそかに期待するところがあった。あの石原暗黒都政から脱却の展望が開けるだろうという思いである。石原は、2012年都知事選では舛添を支援することなく、こともあろうに田母神の応援に走った。こうして、舛添は石原後継の軛に縛られることのない好位置を占めたうえ、保守中道と公明票を集めて210万を越える大量得票で圧勝した。

舛添は、保守ではあるがリベラルに親和性をもつ位置に立つ。日の丸や君が代が好きなはずはない。よもや愛国心強制教育に固執するようなことはあるまい。石原アンシャンレジームに責任を負わない立場の舛添であればこそ、脱却も是正もできるのではないか。教育委員のメンバーも少しはマシになって、異常な教育行政は改善されるのではないか。そう考えたのは、甘かった。

舛添就任から1年経過しても、都教委の姿勢におよそ変化の兆しがみえない。彼の記者会見の発言を聞くうちに、「どうもこの人ダメなようだ」と思わずにはおられなくなった。この人、教育行政の実態をほとんど知らない。知ろうとする意欲がない。頭の中は、オリンピックのことだけでいっぱいなのだ。

2年待って、見切りを付けた。もう、舛添に期待するのはやめよう。舛添も闘うべき相手と見極めなければならない。そう考えを決めたころから、この人の公費の浪費や公私混同の話題が出てきた。私は何の躊躇もなく原則のとおりに批判した。

海外出張の大名旅行ぶりの指摘を受けて、この人は「トップが二流のビジネスホテルに泊まりますか?」「恥ずかしいでしょう」と居直った。おや、こういう人だったのか、と認識をあらためた。相手の批判を極端にねじ曲げたうえでの反論は理性ある人の対応ではない。批判者の誰も、「二流のビジネスホテルに泊まるべきだ」と求めてはいない。都の出張規程の上限である一泊42000円のホテルで十分ではないか。それを20万円に近いスイートに宿泊する必要はなかろうとの批判を真摯に受け止めようとしないのだ。

さらに、公用車での湯河原別荘通いが暴かれた。メデイアへの匿名内部告発が報道の発端だという。問題発覚以後の「ルールに則っているから問題ない」というこの人の姿勢に、これはダメだとあらためて思った。自分の利益のためなら、ルール最大限活用主義者なのだ。

そして、公私混同の極み。家族旅行費用を政治団体の資金から支出し、ホテルからの領収証を「会議費」とさせて、政治資金収支報告書に虚偽記載しているという報道。これまでのところ、この報道内容の信憑性は高い。これは重大問題だ。倫理や道義の問題ではなく、刑事制裁の対象となる事件だからだ。ことは、知事の座がかかる事態に発展しかねない。

公私混同よりも、政治団体のカネの流用よりも、政治資金規正法に基づく収支報告書への虚偽記載がポイントである。これは、逃れ方が難しい。

政治資金規正法第1条の(目的)規定を掲記する。ぜひ、目を通していただきたい。

第1条 この法律は、議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能の重要性及び公職の候補者の責務の重要性にかんがみ、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の授受の規正その他の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする。

「議会制民主主義下の政治活動は、国民の不断の監視と批判の下に行われなければならない」。その監視と批判を可能とすべく「政治資金の収支の公開」を制度として整える。その厳格な収支の公開を主権者の目に晒すことによって、「政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的」とすると言っている。この法律による制度の中核をなしているものは「政治資金の収支の公開」という手法である。もとより、この公開は正確でなくてはならない。虚偽の公開は、国民の不断の監視と批判を妨げることから、政治活動の公明と公正を毀損し、民主政治の健全な発達を阻害する犯罪行為とされるのだ。

その趣旨を、同法25条1項3号は、「政治資金収支報告書…に虚偽の記入をした者」は、「五年以下の禁錮又は百万円以下の罰金に処する」と定める。

もっとも、政治資金規正法25条は、会計責任者の身分犯であって、直接には会計責任者の罪科が問われることになる。会計責任者は法27条2項「重大な過失により、…第25条第1項の罪を犯した者も、これを処罰する」によって、故意がなかったというだけでは免責されない。

そこで、虚偽記載罪については一般に、会計責任者が「殿のために」すべてをかぶって、「殿の与り知らぬこと」となし得るが、本件の場合にはそうはいかない。

家族旅行のホテル代の領収証取得には、会計責任者は関与していない。舛添の指示のとおりに、会計責任者が報告書に虚偽の記載をしたものと考えざるをえない。しかも、正月に「会議」などあり得ないことは会計責任者の分かること。結局は、舛添と会計責任者の共同正犯(刑法60条)が成立し、身分のない舛添も処罰対象となる(刑法65条1項)可能性が限りなく高い。

それだけでない。法28条は、公民権停止を定める。
第28条 (第25条の)罪を犯し罰金の刑に処せられた者は、その裁判が確定した日から五年間(刑の執行猶予の言渡しを受けた者については、その裁判が確定した日から刑の執行を受けることがなくなるまでの間)、公職選挙法 に規定する選挙権及び被選挙権を有しない。

公民権を失うとどうなるか。
地方自治法第143条 普通地方公共団体の長が、被選挙権を有しなくなつたとき…は、その職を失う。
のである。

公職選挙法違反でも政治資金規正法違反でも、特定の犯罪で有罪になった者には、公職にある資格がないとされる。舛添の政治資金収支報告書虚偽記載罪はそのような類型の犯罪なのだ。

なお、政治資金規正法第2条は、次のように(基本理念)を掲げている。
第2条 この法律は、政治資金が民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であることにかんがみ、その収支の状況を明らかにすることを旨とし、これに対する判断は国民にゆだね、いやしくも政治資金の拠出に関する国民の自発的意思を抑制することのないように、適切に運用されなければならない。

政治資金はすべて国民が拠出した浄財である。任意の拠出資金だけではなく、税金から支出された政党助成金も含まれている。この浄財の公と私の財布とのケジメを無視したことは、国民が拠出した浄財をクスネたということになる。

このことによって、多くの国民が「政治資金をカンパしても、結局こんな使われ方で終わってしまう」。「馬鹿馬鹿しくってカンパなどやっていられるか」ということになってしまう。このように「政治資金の拠出に関する国民の自発的意思を抑制した」点において、舛添知事の責任は大きい。

それにしても、である。先に、田母神が逮捕された。次いで、舛添も刑事責任を追求されかねない。他の候補者・陣営は安泰なのだろうか。そして、舛添の失職と新たな都知事選があるのだろうか。風雲は急を告げている。
(2016年5月12日)

田母神俊雄運動員買収で逮捕ー教訓:選挙運動者にカネを払ってはならない

田母神俊雄が逮捕された。一瞬驚いたが、所詮は政権とは無縁の人。甘利逮捕ならビッグニュースだが、田母神逮捕ではさしたるニュースバリューはないのかも知れない。それでも、田母神を応援した石原慎太郎や百田尚樹らの言を聞きたいところ。

政治的影響はともかく、政治とカネ、選挙とカネについての貴重な教訓を提供する事件だ。選挙運動は無償だ。これにカネを支払えば犯罪となるとの警鐘として心しなければならない。似たような話は身近にいくつもある。

田母神逮捕の被疑事実は公職選挙法の運動員買収である。条文を抜粋すれば以下のとおり。
第221条(買収)「次に掲げる行為をした者は、3年(候補者がした場合は4年)以下の懲役若しくは禁錮又は50万円(100万円)以下の罰金に処する。
一 当選を得、若しくは得しめ又は得しめない目的をもって、選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益の供与、その供与の申込み若しくは約束をしたとき。」

公選法上の買収には2種類ある。選挙人買収と運動員買収である。選挙人(有権者)を買収することは、直接に票をカネで買うことだ。運動員の買収はカネで票を集めること、間接的にカネで票を買うことにほかならない。選挙運動は無償が大原則なのだから、選挙運動員にカネを渡してはならない。カネを渡せば運動員買収罪が成立する。受けとった運動員も処罰対象となる。買収だけでなく供応も同じだ。

田母神の被疑事実は、「都知事選後の14年3月中旬ごろ、東京都内の事務所で、事務を統括し選挙運動をしたことへの報酬として島本順光元事務局長に200万円を支払ったほか、島本元事務局長らと共謀し、同3月中旬~5月上旬、同事務所などで運動員だった5人に対し、投票を呼びかけて練り歩いたことなどに対する報酬として、現金計280万円を供与したと」と報道されている。

候補者であった田母神だけでなく、島本順光元事務局長も逮捕された。島本は、5人の運動員買収について田母神との共犯(共同正犯)とされたほか、自らが田母神から200万円を受領したことが別の独立した犯罪とされている。

選挙運動は、判例において「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」と定義されている。選挙運動は飽くまで、自発的な意思によって行われるべきもので、報酬はない。選挙運動は無償が原則である。選挙運動者に報酬を支払えば、運動員買収として処罰対象となるのだ。もっとも選挙運動には当たらない純粋な労務の提供や事務作業者に対しては、予め届け出た者に限って決められた範囲の額の対価を支払うことができる。気をつけなければならないのは、たとえ労務者として届出があっても、単純労務の提供の範囲を超えて「選挙運動をした者」となれば報酬を支払ってはならないということだ。

私は、2013年の暮れから14年の1月にかけて、連続33日間「宇都宮健児君、立候補はおやめなさい」のシリーズを書き続けた。その中で、12年暮れの都知事選における宇都宮陣営の田母神類似問題について、詳細に報告した。

金額の大小の差はあれども、宇都宮選対事務局長と選対本部長とは、田母神陣営と似たことをしている。この報告は、下記のURLでお読みいただきたい。
 http://article9.jp/wordpress/?cat=6

この私の指摘に対して、宇都宮陣営の3人の弁護士が連名で「反論」している。2014年1月5日付(公表は6日)の「澤藤統一郎氏の公選法違反等の主張に対する法的見解」というもの。公平に見て、駄文の域を出ないものであるが、そのなかに、見過ごせない次の一文がある。

「澤藤氏は、『公職選挙法の定めでは、選挙運動は無償(ボランティア)であることを原則としています。』とか『市民選挙における選挙カンパとは、選対事務局員への報酬へのカンパではないはずと思うのです。』との一方的な思い込みに基づく論理で、あたかも選対事務局員に公選法違反の報酬が支払われたかのごとき主張をなしているのである。これらの支払いは単純労働への対価の支払であり、何らの違法性もないものである。」

この文章の非論理はともかく、これを普通の読み方をすれば、「公職選挙法の定めでは、選挙運動は無償(ボランティア)であることを原則としています」という私の指摘を、「一方的な思い込みに基づく論理」として非難するものにほかならない。これは、恐るべき認識というほかはない。この文章が書かれたのは、2014年都知事選の直前のこと。14年都知事選での宇都宮陣営は、「選挙運動は無償(ボランティア)であることを原則としています」という指摘を真剣に受け止めることなく、選挙戦に突入したと考えるほかはない。この3弁護士の「論理」で選挙運動をしたのでは、田母神陣営と同様の違法を犯した可能性を否定し得ない。

革新陣営の選挙に参集する選挙運動者に対しては、飽くまで「選挙運動は無償(ボランティア)でするもの」と確認し強調しなければならない。これを「一方的な思い込みに基づく論理」などと揶揄するようでは、田母神陣営の感覚と変わるところがない。14年選挙についての違法は可能性しか指摘できないが、12年選挙に選対事務局長や選対本部長の違法があったことは、既述のとおりである。

このような感覚だから、12年選挙における宇都宮選対の打ち上げの「会食費」が政治資金収支報告書に計上されたり、宴席で突然に「労務者報酬」が配られたりするようなことになる。このようなやり方で、善意の選挙運動参加者を違法行為に巻き込んだ選対事務局長の責任はとりわけ大きい。

その他の反論は、「宇都宮健児君、立候補はおやめなさいーその17」をお読みいただきたい。
  http://article9.jp/wordpress/?p=1834

あらためて当時のことを思い出す。今回の田母神逮捕は、私の運動員買収の指摘が杞憂でなかったことを裏付けるもの。再度しっかりと確認しておきたい。選挙運動は飽くまで無償でやることなのだ、と。
(2016年4月14日)

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