澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

NHKは官邸におもねることなく、ジャーナリズムの本道に徹せよ

NHK会長 上田良一様

権力監視報道に立ち戻り、報道現場の萎縮克服を求めます

研究者・弁護士有志(名簿略)

 目下、わが国では、森友・加計問題、防衛省の日報隠しに代表される国家の私物化、権力の濫用と腐敗が極限に達しています。しかも、そうした事態を正すべき国会審議と国政調査権が数の力に遮られ、機能不全の状態に陥っています。
 このような民主主義の危機的状況を立て直す最後の砦は有権者の理性的な意思表明と行動ですが、それには有権者が賢明な判断を下すのに十分な情報が不可決です。いわゆるメディアの権力監視報道はそうした使命を担うものにほかなりません。
 この点で、NHKは昨年来、森友学園問題や自衛隊の日報隠しなどで優れたスクープ報道を行ってきました。
 しかし、その一方で、現場の記者の精力的な取材の成果を抑え込むような報道局上層部の姿勢が市民の疑惑、批判を招いてきたことも事実です。たとえば、去る3月29日の参議院総務委員会において、NHKの内部関係者から寄せられた通報と断って、「ニュース7、ニュースウオッチ9、おはよう日本などのニュース番組の編集責任者に対し、NHKの幹部が森友問題をトップ・ニュースで伝えるな、トップでも仕方ないが放送尺は3分半以内、昭恵さんの映像は使うな、前川前文科次官の講演問題と連続して伝えるな」などと事細かな指示が出ていることが取り上げられました。
 こうしたNHK局内の動きと関連して、森友問題で貴重なスクープ取材をしてきたNHK大阪放送局の記者をこの6月の異動人事で記者職から外し、考査部に異動させるという動きも伝えられています。

私たちは、このような一連の動きに共通するNHKの権力監視報道の希薄化を危惧し、以下のことをNHKに求めます。

1. 受信料で支えられる公共放送機関としてのNHKは、権力から独立して自主自律の放送を貫くなか、権力を監視し、国民の知る権利に応える放送を続けているという視聴者の信頼を得ていることが大前提です。NHKが日々の報道でも人事においても、こうした前提を自ら壊すような言動は視聴者への背信行為であり、厳に戒めること
2.  NHK報道局の上層部は取材・番組制作の現場の職員を萎縮させるような人事権を含む権限の濫用を斥け、事柄の核心に迫ろうとする意欲的な取材、番組制作への職員のモチベーションを支え、高めるような役割と職責を果たすべきこと
3.  以上の趣旨と関連して、目下、伝えられているNHK大阪放送局の記者を異動させる人事につき、不当で不合理なおそれも強く、中止を含め根本的に再検討すること 

以上

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本日(6月1日)午前中に、醍醐聰さんを筆頭とする有志7名が議員会館内で記者会見をし、午後NHKに赴いて、上記の申し入れを行った。

記者会見はおよそ90分。質疑は活発だった。思いがけなくも、有志の側だけでなく、取材の記者を含む共通認識が確認できたという印象。NHKは公共放送として、その使命を果たしていないのではないか。むしろ、権力を監視するジャーナリズムの本旨を貫こうとしている現場の記者をNHKの上層部が押さえつけているのではないか。NHKの中枢には、政権から通じている太いパイプが存在し、このパイプを通じて権力の意向が伝達される仕組みができあがっているのではないか。

記者職から外され考査部に異動の内示を受けているNHK大阪放送局の記者は、森友問題での数々のスクープで知られている。その記者としての活動は、政権にとって明らかに不都合なもの。政権からの指示か、NHKの忖度か、いずれにせよ政権の意向に沿った人事の象徴として注目されている。

NHKは官邸への擦り寄りを優先してこの記者の異動を強行するのか、それとも官邸のNHKに対する圧力などないことを明確にするために異動の内示を撤回するか。いまや岐路に立っているとの自覚が必要だ。

官邸の意向におもねることは易きにつくことである。総務省とは円滑な関係となり、事業計画も予算・決算も、スムースに運ぶことになろう。反対に、官邸の意向に背くことは、難きにつくことである。総務省とは不穏な関係となり、事業計画も予算・決算もスムースには運ばないと覚悟せざるを得ない。

しかし、どんなに困難でも、権力の意向におもねってはならない。権力を監視し批判すべきジャーナリズムの本道から離れてはならない。それは国民の信頼を失うことであり、公共放送の存在根拠を失うことでもあるのだから。

さらには、ことはNHKの問題にとどまらない。国民の知る権利を侵し、日本の民主主義過程の正常な展開を妨げて、国の将来をも危うくしかねない。それは、大本営発表の時代再来の悪夢である。とりわけ、アベ政権が改憲をねらう今、権力におもねらずに「権力が不都合とする情報」についての旺盛な報道姿勢が不可欠なのだ。

本日記者会見に参加していただいた第一線記者たちの、NHK問題についての共通認識が頼もしい。もっとも、NHKと産経・読売の記者は見えなかったようだが。
(2018年6月1日)

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