トランプと「カジノ王」肝いりのカジノ法案
「盗人にも三分の理」という。この「盗人」の読みは、貧者から盗む奴には怒りと侮蔑の念を込めて「盗人(ぬすっと)」と読まねばならず、金持ちからの窃盗犯には穏やかに「盗人(ぬすびと)」と読むべきだろう。「盗人(ぬすっと)」と「盗人(ぬすびと)」、それぞれの「三分の理」の内容には自ずから異なるものがある。大金持ち専門の盗賊は「義賊」ともなる。この世に格差がある限り、「盗人の理」も永遠不滅と言わざるを得ない。落語「花色木綿」に出てくる「貧の末の出来心」というあの言い訳。
「盗人に三分の理」とは、「三分しか言い訳できない」ことでもある。この点は、博打も同様。確率から言えば、必ず損をするのが博打。その点憐れではあるが、相手の懐にある金を我がものにしようという点では、盗人と変わるところはない。博打を賭博と言っても賭け事と言っても、あるいはカタカナ語でカジノと言い換えてもまったく本質は同じこと。
賭場では、お互いに他人のカネをむしり合う。このむしり合いを煽り高みで眺めながら、テラ銭を稼ぐのが胴元。リスクなく利益だけをむさぼるという点で、割のよい商売だが、それだけにタチが悪い。刑法では、賭博場開張罪として重く罰せられる。歴とした犯罪者である。
「賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。」(刑法186条2項)
賭場開帳者と言っても、カジノ経営者と言っても同じこと。人の不幸を作り出してテラ銭を掠めとる蔑むべき犯罪者。やっていることは本来的悪行である。こんな輩に、「一分の理」も語らせてはならない。
本日(7月6日)、参院でカジノ法案が審議入りした。そして、その前提としてのギャンブル依存症対策法が成立した。何ともヘンな話しだ。「食中毒にならないように腐った物の客への提供を禁止する」のではなく、「客の方に、腐った物への耐性をつけさせよう」という法案なのだ。自民・公明・維新が提案者。これを記憶に留めておこう。罪の深いことといわなければならない。
「盗人猛々しい」という言葉さながらに、アベがバクチ解禁の「一分の理」を趣旨説明した。「経済振興」というのだ。バクチで経済振興。博打で観光客誘致。これがまともな政府の言うことか。さすが、戦後民主主義を否定して戦前日本へ回帰のアベ政治。植民地や占領地にアヘンを売りさばいて戦時財政の原資を捻出した没義道国家の再生ではないか。
本日(7月6日)の東京新聞一面トップに、「カジノ法案にトランプ氏の影 きょう参院審議入り」の大見出し。「カジノ解禁を安倍政権が急ぐ背景には、米カジノ業界から支援を受けるトランプ米大統領の影が見え隠れする。ギャンブル依存症の増加など多くの懸念が指摘される法案は結果的に、日本参入を目指す米側の要求が反映された。」という内容。
トランプの有力支持者として、「カジノ王」シェルドン・アデルソンの名が出て来る。「カジノの経営者」だから、わが国の刑法から見れば歴とした犯罪者。「カジノ王」というぐらいだから、多くの博打打ちから莫大なテラ銭を掠めとって来た人物。人の不幸で大儲けをし、さらに儲けようと虎視眈々。
こんな輩が、「大統領選で40億円近い資金援助をし、今秋の中間選挙でも共和党に資金提供を約束していると報じられる。政権の政策にも大きな影響力を持つ。イスラエルのネタニヤフ首相の支援者でもあるユダヤ系で、米大使館のエルサレム移転を歓迎し、費用の寄付も申し出ている。」という。トランプ陣営の何たる醜悪。
17年2月訪米したアベは、「朝食会でアデルソン氏らを前に、前年12月に公明党幹部の反対を押し切って強硬に成立させたカジノを含むIR整備推進法が施行されたことを『手土産』にアピールした。」という。トランプに輪をかけたさらなるアベの醜悪さ。
アデルソンは日本でのカジノ運営に関して、「客への金融サービス実施や面積規制の緩和も求めた。」と口を出した。その後、「政府案に当初盛り込まれていた面積の上限の数値は消え、カジノ事業者が顧客に賭け金を貸し出すことも認めた。米側の要求と一致したと国会でも指摘されたが、政府は日本の政策判断だと強調する。」
カジノで大儲けできるように、掛け金の貸し付けまでやらせようというのだ。こんな法案が国会通るのなら世も末ではないか。
東京新聞の記事は、最後をこう結んでいる。
「立憲民主党の枝野幸男代表は『米国カジノ業者が子会社をつくり運営し、日本人がギャンブルで損した金を米国に貢ぐ。国を売る話だ』と厳しく批判している。」
はて? アベシンゾーとは、真正の売国奴であったか?
(2018年7月6日)