澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

亡き歌丸が語る ― 「こんなとき政治家に酒なんぞ飲んでいられたんじゃ困るんだよ」

7月5日夜、大雨予報が出ているさなかの「赤坂自民亭」宴会。記録的豪雨の被害確認が進むに連れて、批判の声が高まってきた。東京新聞「こちら特報部」の影響力でもある。

矢面に立たされているのが、西村康稔官房副長官。なにせ、政権の防災担当なのだ。それが、大雨予報が出ているさなかの飲み会のツィッター写真を垂れ流したのだ。この写真は、自民党議員らの無能・無神経の「証拠写真」だ。

この西村を矢面に、安倍政権批判というのが真っ当な報道。たとえば、産経の見出しが、『西村康稔官房副長官「誤解与えた」 安倍晋三首相参加の飲み会写真』となっている。

もっとも、朝日が『豪雨前の「赤坂自民亭」写真投稿を陳謝 西村官房副長官』、毎日が『赤坂自民亭:西村副長官が謝罪 大雨予報中の飲み会写真で』と、政権批判を押し出していない。

時事は、こう配信している。
『西村官房副長官、「自民亭」投稿を陳謝=ツイッターは炎上』
「西村康稔官房副長官は11日、「赤坂自民亭」と称した懇親会の写真を自身がツイッターに投稿したことについて「大雨の被害が出ている最中に、まるで会合をやっているかのような誤解を与えてしまい、多くの方に不快な思いをさせてしまった。おわびを申し上げたいし、反省もしている」と述べた。BS11の番組収録で語った。
 自民亭会合が開かれたのは5日夜。東・西日本で激しい雨が降り、気象庁は厳重警戒を呼び掛けていた。西村氏は10日に、「誤解を与えた」と番組と同じ趣旨の釈明をツイッターに投稿したのに対し、「誤解?」「酒盛りしていた事実がなくなるわけではない」などの批判が殺到している。」

「大雨の被害が出ている最中に、まるで会合をやっているかのような誤解を与えてしまい、多くの方に不快な思いをさせてしまった。おわびを申し上げたいし、反省もしている」とはいったい何だ。

「誤解を与えてしまい」は、釈明(言い訳)の常套句だがまことに不適切で見苦しい。誤解とは、真実とは異なる認識(印象)を与えてしまったということだが、いったい何が真実で、どのように誤解されたのか、まったく明らかにされていない。

「まるで会合をやっているかのような誤解」という表現は、「まるで会合をやっていなかったような誤解」を誘発しようという底意が見え見えで不愉快。宴会ないしは飲み会を「会合」と言っているのも姑息千万。

「会合をやったのが、まるで大雨の被害が出ている最中のことであるかのような誤解」と言いたいのなら、この政治家は相当にタチが悪い。何の反省もしていない。誰も、「大雨の被害が出ている最中」の宴会とは言っていない。大雨予報が出ているさなか、豪雨の警戒を要する時期での宴会を問題としているのに、意識的な論点すり替えが悪質なのだ。印象操作だけが問題で、何を反省すべきかを真剣に考えてはいないのだ。これが、自民党の政治家らしくもあり、安倍政権の一員らしくもある。

ところで、政治家が聖人君子であるわけはない。聖人君子然とした人物が政治家にふさわしいわけでもない。酒を飲んでいけないはずもない。酒を飲むなじゃない。酒の飲み方が問題なのだ。先日鬼籍に入った歌丸の「厩火事」の一節が教えてくれる。仲人が、髪結いのおサキに対して、おサキの亭主の酒の飲み方に苦言を呈する場面。歌丸は権力者には辛口の芸人だったという。

ちょいとおもしろくないことがある。4、5日前だった。近所に用があって、出掛けたんだよ。帰りがけにおまえの家の前を通ると、格子がこのくらい開いていた。物騒じゃないか。いるのかいって声をかけると、「旦那ですか。どうぞおあがりください」座布団を出してくれた、お茶を淹れてくれた。これはいいよ。どうぞお上がりくださいといいながら、前にあった御膳を脇へすっとどかした。このお膳の上をひょっとみて、あたしはおもしろくない。刺身が一人前とってあった、これはまあいいよ。徳利が1本乗ってたね。いいかい、飲むなじゃないよ、飲むなじゃないけれども。おまえの家業が髪結いだ。おまえさんが1日中油だらけになって、真っ黒になって、働いている。その留守に亭主が昼間から酒なんぞ飲んでいられたら、困るじゃないか。飲むなじゃない。おまえだって少しは行ける口なんだろ?仕事から帰ってきて、2人で1人前の刺身を半分ずつ、1合の酒を半分ずつ、差し向かいで飲んでてごらん。近所のものがこれをみたら、仲のいい夫婦なんてもんじゃない。それをおまえが一生懸命働いて、その留守に亭主がうちん中で酒なんぞ飲んでいられたんじゃ、困るんだよ。別れたほうがいい、お別れ、お別れ。

ちょいとおもしろくないことがある。7月5日のことだ。雨模様のぐずついた天気だった。テレビもラジオも、西日本には大雨の予報だった。去年もおととしも、いまごろの季節に豪雨があって、川が氾濫してたいへんなことになった。今年も同じことにならなきゃいいなと心配しながら、用があって赤坂の議員宿舎に寄ってみた。するってえと、いつもとは様子が違う。「自民亭」とか看板を掲げて飲めや歌えのどんちゃん騒ぎだ。この騒ぎをひょっとみて、あたしはおもしろくない。いいかい、飲むなじゃないよ、飲むなじゃないけれども。こんなときじゃないか。会期は延長して、強引にカジノ法案を通そうというときだ。財界の意向を汲んだ働かせ方改革も強行した。モリカケ問題では国政の私物化批判の声が高い。ウソと隠蔽の政治には国民の多くが安倍政権に呆れている。自民党議員が飲んで騒いで、浮かれているときではなかろう。それだけじゃない。大雨や洪水を心配しなければならない予報のさなかだ。ひるまは真っ黒になって働いている人々が、大雨と洪水を心配しているんだ。それを尻目に、政治家が安閑として、酒なんぞ飲んでいられたら、困るじゃないか。飲むなじゃない。本当に国民がよろこぶようなことをしてごらん。そうすりゃだれも文句のつけようはない。それをこれから大雨が降ろうというときだ。避難をしなけりゃならない人も出てくる。そんなときに、「自民亭」で政治家が酒なんぞ飲んでいられたんじゃ、困るんだよ。そんな奴ら選挙で落とした方がいい。さっさと落とせ。落としておしまい。

(2018年7月12日)

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