澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

《健全なカジノ事業》とはいったい何のことだ?

自民党としてお願いしたい。名は体を表すと思われているではないか。「カジノ実施法案」とか「カジノ推進法案」では人聞きが悪い。聞こえのよいように「IR法案」と言ってもらいたい。あるいは「統合型リゾート整備法案」とね。

えっ? IRでは何のことだか分からない? 正確な法案名は、「特定複合観光施設区域整備法案」さ。もっと正確に言えば、既に成立した「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」にもとづいて、これを実施するための具体化法案。余計に分からなくなった? そこが付け目なんだが、分かり易く本質を衝いたネーミングだと、「民間賭博経営解禁法案」というべきなんだろうな。あるいは、「ギャンブル依存症蔓延法案」かな。本当のことを言っちゃあ、身も蓋もないけどね。

今日(7月19日)参院の内閣委員会を強行突破したから、この悪評さくさくの法案も何とか成立に持ち込めそうだ。

反対派の皆さん、この法案に目を通したことがおありかな。第1条に立派な目的が書いてある。立派すぎて少し恥ずかしいが、よく読んでいただきたい。だが、いかにも長い。読んでるうちに分からなくなる。実はそれが狙いなのだが、少しでも読み易いように、体裁を整えて改行してみよう。

第1条(目的)
この法律は、
 我が国における人口の減少、国際的な交流の増大その他の我が国を取り巻く経済社会情勢の変化に対応して我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展を図るためには、国内外からの観光旅客の来訪及び滞在を促進することが一層重要となっていることに鑑み、
 特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(平成二十八年法律第百十五号。以下「推進法」という。)第五条の規定に基づく法制上の措置として、
 適切な国の監視及び管理の下で運営される《健全なカジノ事業》の収益を活用して、《地域の創意工夫》及び《民間の活力》を生かした特定複合観光施設区域の整備を推進することにより、
 我が国において国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現するため、
 特定複合観光施設区域に関し、国土交通大臣による基本方針の作成、都道府県等による区域整備計画の作成、国土交通大臣による当該区域整備計画の認定等の制度を定めるほか、カジノ事業の免許その他のカジノ事業者の業務に関する規制措置、カジノ施設への入場等の制限及び入場料等に関する事項、カジノ事業者が納付すべき国庫納付金等に関する事項、カジノ事業等を監督するカジノ管理委員会の設置、その任務及び所掌事務等に関する事項その他必要な事項を定め、
 もって『観光及び地域経済の振興に寄与』するとともに、『財政の改善に資する』ことを目的とする。

 お分かりかな。キーワードはいくつもあるが、メインとなるのは《健全なカジノ事業》だ。《倫理観にあふれた自民党議員》とか、《忖度しない官僚》と同様の、矛盾・撞着ゆえにあり得ない概念。カジノとは、賭博のことだ。〈健全な賭博〉とは、そりゃいったい何だ、という疑問はもっともだ。

しかし、この法案の目的にあるとおり、「我が国を取り巻く経済社会情勢の変化」は待ったなしなのだ。これまでの常識では生き抜いていけない。賭博が不健全だという常識の間違いに気付かなければならない。《倫理観にあふれた自民党議員》がいるはずもないという常識も疑っていただきたい。

資本主義の今の時代、自分のカネをどう使おうと自由ではないか。何を買おうと、どこに投資をしようと、誰に寄付をしようと、ドブに捨てようと、文句を言われる筋合いはない。ならば、賭博に金を投じるのも非難されることではないだろう。そりゃ、自己責任の世界のこと。

賭博が何も生み出さないのは明らかだ。全財産を失う奴も出てくるだろう。借金漬けの問題もある。暴力団の資金源にもなり得るし、社会の風俗は乱れ、勤労意欲は確実に低下する。もしかしたら、一日パソコンに張り付いているデイトレーダーとカジノに入り浸りで一攫千金を夢みる若者が社会にあふれるかも知れない。でも、それでどうだというんだ。資本主義的自由とはそんなものだろう。個人も社会も、堕落する自由がある。自由民主党の「自由」とは、搾取の自由だけではなく、堕落の自由も意味しているのさ。

強調したいのは、この評判の悪い「民間賭博経営解禁法案」を推進しているのは、自民党だけではないこと。まずは仲間の公明党だ。「平和の党・福祉の党」と言っていたこともあったようだが、今は昔の看板だけ。公明党の国交大臣が先頭に立ってやっていることは、戦争のための辺野古新基地の建設と、このギャンブル依存症製造の賭博解禁法案の推進だ。どちらもまことに公明党に担ってもらうのにお似合いの任務ではないか。そして大阪に賭博場誘致を目論む維新も強固な推進派だ。

もっとも、こんなに評判の悪い法案にアベ自民党がどうしてこだわっているのか。いくつも理由はあるのだが、アメリカからの指示が大きい。もともとアメリカは、自民党筋のご主人様だし、日本外交の失敗から、アベ総理はトランプに大きな借りを作ってしまっている。そのトランプのスポンサーがアメリカのカジノ業界。そのご意向には逆らえない。だから、「今回のカジノ実施法案によって、歴史上初めて民営賭博を合法化しようとしている」のだ。売国奴と言われたり、民意に耳を傾けないとさんざんだが、またまた、「丁寧にご説明申しあげる」と言うあの手で、きっと切り抜けられるさ。なにしろ、有権者の怒りは持続しないんだものね。

(2018年7月19日)

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