澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

安倍政権の、国民の知る権利侵害を許さない ― 元気の出た院内集会

ご存知「望月衣塑子劇場」が大きな人気を呼んでいる。舞台は官邸記者会見場である。主役は、いかにも正義の味方の、滑舌流暢なヒロイン。これに配する仇役が、いかにも悪玉の菅義偉官房長官とその手下の上村秀紀内閣官房総理大臣官邸報道室長の二人。もちろんこの二人の背後に、大黒幕のアベシンゾーが控えている。

ヒロインは、アベ・スガ一家の悪事を暴こうと果敢に菅に切り込む。これを、上村秀紀が必至になって妨害する。「質問は簡潔に~!」というのが、悪役どもの武器。妨害にめげずにヒロインが奮闘する姿を観衆が一体となって応援している。その拍手が、この舞台のロングランを支えている。

但し、このヒロインも、所詮は宮仕えの身。お抱えの社が配役交替を指示すれば舞台を下りざるを得ない。その会社は、黒幕の動きと観客の反応をともに見ている。ロングラン実現のためには、観客の応援の継続が必要なのだ。国民の多数がヒロインを応援しているぞ、と可視化して見せなければならない。そのための手段の一つとして、法律家6団体が、集会を開いた。望月衣塑子記者個人の問題を超えて、国民の知る権利や民主主義に関わる重大事であることを確認するためでもある。

それが、今夕(4月22日)、衆院第1議員会館での「安倍政権と取材の自由」シンポジウム。「~官邸による取材の自由と国民の知る権利の侵害を跳ね飛ばす院内集会」という副題が付いている。会館の大会議室を満席にした盛会であり、副題のとおりの「跳ね飛ばす」元気の出る集会となった。

集会の趣旨は、「安倍政権による取材の自由侵害を許すな」「特定の記者の質問を封じてはならない」というもの。このことは、民主主義の根幹に関わることとして、看過できない。

民主主義は、報道の自由に支えられて成立する。メディアの取材と報道の自由があってはじめて、国民は知る権利を獲得することができる。国民が国政に関する重要情報を知らずに、主権を適切に行使することはできない。

官邸の記者クラブにおける官房長官記者会見の様子がおかしい。当然に、権力中枢に対する取材では、記者と権力との間に厳しい緊張関係があってしかるべきである。記者とは、政権に不都合な事実を聞き出すことが本来の任務である。政権に迎合するような質問しかしない忖度記者は、似非記者でしかない。あるいは失格記者。権力に迎合する記者は、国民の目からは用なし記者なのだ。

政権側は、記者から不都合な取材あることを覚悟しなければならない。記者会見での不都合な質問にも、誠実に答えなければならない。記者への回答は国民への開示ということ。開示した事実に対する評価は、国民の判断に委ねなければならない。政権が記者会見で、「政権に不都合な質問は控えろ」「そんな記者には、質問させるな」などというのは、もってのほかなのだ。

ところが、安倍政権の姿勢はこのような民主主義の常識とはかけ離れたものとなっている。昨年(2018年)暮れ、菅官房長官会見の司会を担当する官邸側の上村秀紀(内閣官房総理大臣官邸報道室長)は、東京新聞望月衣塑子記者の質問にクレームを付けた。同記者の「辺野古基地工事における投入土砂として、許可条件違反の赤土が使用されているのではないか」という質問に事実上回答を拒否して、内閣記者会に「事実誤認がある」とした文書を示し、「問題意識の共有」を求めるなどとした。これは、安倍政権の傲慢さを示すものというだけてなく、国民の知る権利をないがしろにする重大問題ではないか。

政権が、記者の質問を「事実誤認がある」「問題意識の共有を求める」として、封殺しようとしているのである。こんなことが横行すれば、世は忖度記者ばかり、アユヘツライ記者ばかりになって、国民は知る権利を失い、真実から疎外される。民主主義は、地に落ちる。これは、「跳ね飛ば」さねばならない事態ではないか。

集会第1部の望月衣塑子講演が、「民主主義とは何か~安倍政権とメディア」と表題したもの。詳細な経過報告とともに、政権の理不尽にけっして負けない、という元気を感じさせる頼もしいものだった。

第2部がパネル・ディスカッション。「安倍政権によるメディア攻撃をどう考えるか、どう立ち向かうか」
梓澤和幸(弁護士)、永田浩三(元NHKディレクター)、望月記者の各パネラーの持ち味を引き出すよう、清水雅彦さん(日体大)が上手なコーディネーターを務めた。

そして、6人の現役記者やジャーナリストの連帯・激励の挨拶があった。これがいずれも興味深く、印象に残るものだった。下記に掲載のアピールを採択して、日民協代表の右崎正博さんが、閉会の挨拶をされた。

繰り返されたのが、「この事件を、望月記者対官房長官問題と矮小化してはならない。」「政権の傲慢が国民の知る権利侵害の危機を招いていと認識しなければならない」「元凶は政権の理不尽にある。しかし、それをはねのけるだけのメディアの力量がないことが歯がゆい」「跳ね返すメディアの力は、国民の後押しなくしては生まれない」ということだった。

安倍政権の酷さ醜さが、ここにも露呈している。ここでも、国民の力を結集して闘わなければならない。「望月衣塑子劇場」のヒロインには、まだまだ活躍願わねばならない。

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4.22「安倍政権と取材の自由」集会アピール 

1 2018年12月28日、上村秀紀内閣官房総理大臣官邸報道室長は、内閣記者会宛てに、記者会見における菅義偉官房長官に対する東京新聞望月衣塑子記者の質問(沖縄県辺野古基地工事における赤土問題)について「事実誤認がある」とした文書(以下「内閣記者会宛て文書」という。)を示し、「問題意識の共有」を求めるとしました。
政府の一方的な認識を前提として、質問者から寄せられた事実認識を「事実誤認」と断定し説明や回答を免れることは、何が事実であるかを時の権力者が決め、そして政府の意に沿わない記者を排除することにつながるものであって、決して許されません。
こうした行為が見過ごされるのであれば、記者による取材は大きな制約を受け、国民の知る権利(憲法21条)はないがしろにされ、また、自由な言論によって政治的意思決定に参加する権利も奪われてしまいます。

2 もっとも、本件は唐突になされたものではありません。これまでも、2001年1月NHKのドキュメンタリー番組「戦争をどう裁くか 問われる戦時性暴力」の内容に対し安倍晋三内閣官房副長官(当時)らが介入した事件をはじめとして、2015年5月の自民党によるNHKとテレビ朝日経営幹部への聴取問題、同年6月の沖縄2紙への自民党議員らによる暴言、2016年2月の高市早苗総務大臣(当時)による電波停止発言、2018年9月自民党総裁選に関する「公平・公正報道」要求、2018年通常国会における安倍首相による朝日新聞への執拗な攻撃など、与党・政府によるメディアへの直接間接の介入攻撃事例は後を絶ちません。

3 本日の集会では、本件の直接の当事者である望月氏による講演が行われ、また望月氏とジャーナリストで元NHKプロデューサーの永田浩三氏、弁護士で報道の自由に詳しい梓澤和幸氏の3名によるパネルディスカッションが行われました。さらには、多くのメディア有志による応援スピーチも行なわれました。
それぞれの発言を通じて、与党・政府によるメディアへの介入・攻撃がいかに組織的でかつ巧妙であるかを知るとともに、これら一連の報道の自由の危機は、憲法違反の秘密保護法や安保法制の制定、自民党などのもくろむ明文改憲の動き、「戦争する国づくり」と連動していることも知ることができました。
そして、こうした権力の腐敗や濫用を監視し、暴走を食い止めることこそがジャーナリズムの本来の使命であること、権力からの介入・攻撃に対して、すべてのメディアが連帯してこれを「跳ね飛ばす」ことの重要性を学ぶことができました。
また、この問題を単に望月記者一人への攻撃として捉えるのではなく、メディア全体、ひいては市民への攻撃として理解し、メディアと市民とが共同して反対の声を挙げる運動が重要であるということも学ぶことができました。
与党・政府によるメディアへの介入・攻撃に対して、市民が共同して、「政権によるメディアへの介入攻撃は許さない」、「国民の知る権利と報道、取材の自由を守れ」の声を大きく広げていくことが、今、緊急に求められています。

4 安倍首相がもくろむ明文改憲が争点となる参議院選挙を3か月後に控え、与党・政府によるメディアへの介入とメディア側の一層の「自己規制」「萎縮」「忖度」がとりわけ懸念されます。
こうした事態に対抗すべく、私たちは、今後とも、権力を監視し権力の暴走をくいとめるメディアを応援し、メディアに携わる人々と連帯して憲法の保障する取材の自由を守り抜き、与党・政府からの介入・攻撃を「跳ね飛ばす」ことを誓います。
  そして、私たちは、政府に対して、内閣記者会宛て文書を撤回するよう求めるとともに、今後、取材の自由を最大限尊重し、メディアに対する不当な圧力を加えないことを強く求めます。

以上

2019年4月22日
「4.22安倍政権と取材の自由集会」参加者一同

主催団体  改憲問題対策法律家6団体連絡会
構成団体
 社会文化法律センター          代表理事 宮里 邦雄
 自 由 法 曹 団           団  長 舩尾  徹
 青年法律家協会弁護士学者合同部会 議  長 北村  栄
 日本国際法律家協会         会  長 大熊 政一
 日本反核法律家協会         会  長 佐々木猛也
 日本民主法律家協会         理  事  長 右崎 正博

(2019年4月22日)

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