澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「桜疑惑」とは、まずは背任である。

通常国会は本日が3日目。野党の代表質問が始まった。立憲民主の枝野幸男代表の質問冒頭はやはり、桜疑惑だった。報道の見出しは、『野党いきなり“辞任要求” 「桜を見る会」「IR汚職」で追及』となっている。

「あなたが疑惑まみれのまま、そのまま地位に留まり続ければ、日本社会のモラル崩壊が続くばかりです。潔く総理の職を自ら辞すことを強く求めます」
まったくそのとおりだ。古来、右翼とは立ち居振る舞いの潔さを身上としたはずではなかったか。卑怯未練・ウソやゴマカシを嫌う美学を身につけていたはずなのだが、この安倍晋三の姿勢のみっともなさはどうしたものか。

この桜疑惑について、問題の違法性を調べようと、宮城県内の弁護士が17日までに「『桜を見る会』を追及する弁護士の会・宮城」を立ち上げたことが話題となっている。

中心人物は、小野寺義象弁護士。10人余の弁護士が、これから、「首相の政治資金収支報告書を精査したり国会議員と連携したりして、公選法違反や政治資金規正法違反などに当たるかどうかを調べる。刑事告発や民事訴訟を起こすことも検討する」という。同弁護士は、「法律家の目線で一つ一つの証拠を確かめる。運動が全国に広がってほしい」と語っているという。

その小野寺さんが、最新の自由法曹団通信(旬刊・1月21日号)に、「団の総力をあげて『桜を見る会』を追及しよう」と呼びかけている。これを紹介したい。

「『桜を見る会』問題には、次のような特質がある。
 第1に、安倍首相自身の問題(安倍後援会と内閣府・内閣官房)であるため、安倍首相は他に責任転嫁できない。
 第2に、単なる政治的道義的責任問題ではなく、公職選挙法・政治資金規正法違反等の刑事事件を含む違法行為が問題となっており、それが立件されると日本のトップが犯罪者になり、公職資格が剥奪される。
 第3に、問題発覚後の安倍政権の証拠隠滅・説明拒否の異常さである。この現象は安倍首相らが「桜を見る会」問題の恐ろしさを十分認識していることを意味している。
 第4に、問題が収束するどころか拡大し(消費者被害加害者・反社会的勢力の招待、「反社会的勢力」の定義、首相夫人枠、「60」番問題、公文書管理法違反等々)、様々な角度・分野からの追及ができる。
 第5に、「税金でタダで飲み食い」「5000円で高級ホテルで宴会」など庶民に分かりやすいテーマが問題になっている。そして、
 第6に、桜は「モリカケ」と異なり、今年も全国各地で咲き、国民は桜が味けば「桜を見る会」を思い出すので、事件が風化しにくい。

 このように「桜を見る会」は、安倍政権そのものを直撃する事件であり、それゆえ、相手方は「何としても安倍を守る」陣容で臨んでいる。その理由は、「安倍しか改憲ができない」からにほかならない。

そして小野寺さんは、「このような問題の特質を最大限生かして、以下のような取り組みが求められている」という。

 第1に、「桜を見る会」が刑事事件であり、安倍首相は犯罪者であることを国民に知らせる取組みをすること。
 第2に、国民の強い怒りに応える、国民参加型の取組みをすること。
 第3に、真相究明・責任追及運動を全国各地で拡大させ、安倍首相を包囲し孤立させる取組みをすること、
 第4に、抽象的な「政治の私物化・税金の私物化」批判だけにとどめず、違反している具体的な法規(◎法△条)を示し、攻撃のターゲットを絞り込んだ責任追及をすること。

まったく異存がない。安倍首相に対する背任告発も、同じ発想である。もうすぐ、日民協の「法と民主主義」1月号が発刊となる。その中に、2頁をいただいて私が、「なぜ、今、安倍首相告発罪名が背任なのか」を寄稿している。

告発状はやや長文だが、下記ブログに投稿している。
http://article9.jp/wordpress/?p=14139
併せて、下記にも目をお通しいただきたい。
http://article9.jp/wordpress/?p=14156

以下は、小野寺さんの問題意識に応える、「法民」寄稿の一部である。

「桜疑惑」には、様々な問題がある。そのうち、公職選挙法違反、政治資金規正法違反、公文書管理の不適切が主として論じられてきた。にもかかわらず、なぜ今、背任罪での告発なのか。飽くまで現時点での私見だが、整理をしておきたい。

国民の怒りの根源をとらえた告発
 森友事件・加計学園事件を曖昧にしたままの「桜疑惑」。広範な国民のこの疑惑に対する深い怒りの根源は、内閣総理大臣たる者の国政私物化にある。
 国政私物化とは、国民が信頼してこの人物に権力を負託し、国民全体の利益のために適切に行使してくれるものと信頼して権限を付与したにも拘わらず、その人物が国民からの信頼を裏切って私益のために権限を悪用したということである
 このことを、法的に表現すれば、内閣総理大臣たる者の国(ないし国民)に対する「信任義務違反」にほかならない。国民から負託された信頼を裏切る行為を本質とする犯罪が背任である以上、背任罪告発はことの本質を捉え、国民の怒りに形を与える刑事責任追及として最も適切と考えられる。
 にもかかわらず、これまで安倍晋三の背任を意識した議論が少ない。この告発によって、まずは大きく世論にインパクトを与え、世論を動かしたい。単に、「安倍首相は怪しからん」というだけの漠然とした世論を、「安倍首相は国民の信頼を裏切った」「これは背任罪に当たる」「背任罪で処罰すべきだ」という具体的な要求の形をもった世論を喚起したい。そうすることで、政権忖度で及び腰の検察にも本腰を入れさせることが可能となる。

◆ 安倍首相本人を直撃する告発
 公職選挙法違反・政治資金規正法違反・公用文書毀棄等々の告発の場合、主犯はそれぞれの事務の担当者とならざるを得ない。報告書の作成者、会計事務責任者、当該文書の作成者管理者等々。そこから、安倍晋三本人の罪責にまでたどり着くのは一苦労であり、さらに立証のための調査を重ねなければならない。
 しかし、背任罪なら、安倍首相本人の責任が明らかである。同人が「桜を見る会」の主催者であり、内閣府の長として予算執行の責任者でもある。そして、不適格者を大量に招待させたり、あるいは招待もないままに参加させた安倍晋三後援会の主宰者でもある。両者の立場を兼ねていればこそ、国民に対する信頼を裏切って行政を私物化し国費を私的な利益に流用することができたのだ。

◆ 政府側の弁明
 予算超過に関する内閣府大臣官房長の説明は、「最低限必要となる見込みの経費を前提に予算を計上し、結果的に支出額が予算額を上回った分については、『一般共通経費』で補填している」というものである。つまりは、予算の範囲で最低限必要なことはできるのだ。「桜を見る会開催要領」に従って、招待者1万人枠を遵守していれば、「一般共通経費」の「活用」は不要なのだ。国会が承認した予算を漫然と超過することは許されない。どのような事情で、何に、幾らかかったかの特定と、しかるべき理由とその証明がなければ、「一般共通経費」からの支出が許されようはずはない。
 以上のとおり、「桜疑惑」とは、まずは背任である。

(2020年1月22日)

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