澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

「『桜を見る会』を追及する法律家の会」2・13結成集会

本日(2月13日)正午より、参議院議員会館会議室で、「『桜を見る会』を追及する法律家の会」の結成集会が開かれた。その式次第は、以下のとおり。

〇 開会宣言
〇 法律家の会結成の趣旨
?  泉 澤   章(弁護士、呼びかけ人)
〇 呼びかけ人から
  小野寺 義 象
  (弁護士、「桜を見る会」を追及する弁護士の会・宮城共同代表)
  澤 藤 統一郎
  (弁護士、背任罪告発代理人共同代表)
   毛 利 正 道
  (弁護士、「桜」私物化!怒り満開 市民の会チーフスタッフ)
〇 国会議員の方々から
〇 今後の会の活動と行動提起
   南   典 男(弁護士、呼びかけ人)

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「『桜を見る会』を追及する法律家の会」結成の趣旨

1 全国から湧き上がる「桜を見る会」私物化と情報隠蔽への怒り
昨年の臨時国会以来、安倍総理が主催してきた「桜を見る会」に関連して様々な問題が噴出し、国政上の重大な焦点のひとつとなっています。
特に「桜を見る会」の前夜祭として行われたホテルでの夕食会は、この間判明した事実からだけでも、安倍総理の事務所が主体となって開催された後援者向けの宴会であり、公職選挙法、政治資金規正法に抵触する疑いが極めて強いことが明らかになっています。また、本来国の行事として開催されるはずの「桜を見る会」を、自らの支援者に向けて権勢を示し、今後の政治的地位を固めるため、私的に流用した疑いも濃厚になっています。
安倍総理は、一国の総理が違法行為をしていたのではないかという疑いを払拭するため、本来であれば、自ら積極的に客観的な事実を示して、合理的な弁明をすべき義務があるはずです。
ところがこの間の国会論戦をみると、安倍総理は合理的な弁明どころか、ホテルとの契約は後援者個々人である、明細書は出せない、招待者名簿もないなどと、非合理的な弁明に終始しています。さらに政府も、「桜を見る会」の招待者名簿は、管理簿への記載もなく、事前同意手続もなしに廃棄したなどと説明し、公文書管理法違反の事実を認めながら、更なる調査やデータ復旧の試みはしないと居直るなど、ひたすら逃げ切りをはかろうとしています。
このように、「桜を見る会」を私物化し、自らに不利な証拠は隠蔽する安倍総理と政権への怒りは、全国各地で湧き上がっています。

2 いま、私たち法律家に求められていること
このような安倍総理による「桜を見る会」の私物化と政権の情報隠蔽に対し、政治的・道義的責任を問う声が高まっています。しかし、ことは政治的・道義的責任だけに止まるものではありません。なぜならこの問題は、前述した公職選挙法や政治資金規正法、公文書管理法等々といったわが国の法律に違反する“違法行為”を、わが国の総理大臣が行ったのではないか、ということが問われているからです。
独裁国家下ならまだしも、立憲民主主義の下で暮らしているはずの私たちは、為政者の違法行為疑惑を目の前にして、これを些細なこととして済ますわけにはゆきません。特に私たち法律家は、日本国憲法における法の支配のもと、法律がこの国において公正・公平に適用されるべく日々業務を行い、研究をしています。そのような法律家としては、為政者の違法行為疑惑を目の前にしつつ、これをただ座して眺めていることは到底許されないのです。
いまこそ、私たち法律家が率先して声をあげ、「桜を見る会」問題の真相を究明し、真に責任ある者の法的責任を追及することが求められているのです。

3 「『桜を見る会』を追及する法律家の会」の結成とこれからへ向けて
そこで今般、私たちは、全国の法律家に呼びかけて、「『桜を見る会』を追及する法律家の会」を結成することにしました。
これからは、すでに全国で「桜を見る会」問題の取り組みを進めている人たちや団体と相互に協力し合い、さらにこの問題で精力的に事実関係を追及してきた野党の対策チームにも協力を仰いで、「桜を見る会」問題の真相を徹底的に究明するとともに、刑事告発を含めた法的責任を追及する手段を慎重に検討し、早期に実現してゆこうと考えています。
本会の目的と活動が、国民各層の支持を得てさらに全国各地に広がり、わが国の立憲主義と法の支配が回復するよう、法律家として全力を尽くしてゆく所存です。

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私(澤藤)の発言は、「内閣総理大臣たる者による政治の私物化に法的な形を与えるには背任がふさわしいとする」趣旨のもの。

去る1月14日、「桜を見る会」についての公私混同疑惑を背任罪(刑法247条)に当たるものとして、内閣総理大臣・安倍晋三を東京地検特捜部に告発いたしました。告発人は、上脇博之さんら研究者グループ13名。代理人弁護士は、阪口徳雄君を筆頭とする51名。
「桜疑惑」については、公職選挙法違反、政治資金規正法違反、公用文書毀棄などが論じられてきました。背任派は少数意見にとどまっています。それでも、なぜ今あえて背任罪での告発なのか。私見を申しあげます。

◆私は、背任こそが国民の怒りの根源をとらえた告発だと思うのです。
森友・加計疑惑を曖昧にしたままの「桜疑惑」です。広範な国民のこの疑惑に対する怒りの根源は、内閣総理大臣たる者の国政私物化にほかなりません。
国政私物化とは、内閣総理大臣たる者が国民からの信頼を裏切り、私の利益のために国民から与えられた権限を悪用する行為です。国民はこの人物を信頼し、当然に国民全体の利益のために適切に権限を行使してくれるものと期待して、権力を預け権限を負託しました。にもかかわらず、この人物は国民の信頼を裏切って私益のために権限を悪用したのです。
このことを、法的に表現すれば、内閣総理大臣たる者の国(ないし国民)に対する「信任義務違反」というほかはありません。他人から負託された信頼を裏切る行為を本質とする犯罪が背任である以上、背任罪告発はことの本質を捉え、国民の怒りに形を与える刑事責任追及として最も適切と考えられるのです。
にもかかわらず、これまで首相の背任を意識した議論が少ないと言わざるを得ません。この告発によって、まずは大きく世論にインパクトを与え、世論を動かしたいと思うのです。単に、「安倍首相は怪しからん」というだけの漠然とした世論を、「安倍首相は国民の信頼を裏切った」「これは背任罪に当たる」「背任罪で処罰すべきだ」という具体的な要求の形をもった世論を喚起したい。そうすることではじめて、忖度で及び腰の検察にも本腰を入れさせることが可能となると考えます。

◆ 具体的に背任成立の要件について、述べたいと思います。
(1) 主体
背任罪は身分犯であって、その主体は、「他人のためにその事務を処理する者」です。憲法第15条に基づき、「全体の奉仕者」として公共の利益のために職務を行うべき公務員が、身分犯としての背任罪の主体となり得ることは判例通説の認めるところです。内閣総理大臣の職にある者においてはなお当然というべきで、この点に疑問の余地はありません。
本件の場合、「他人」とは国であって、被告発人は、各年の「桜を見る会」の主催者です。同「会」の遂行について国の利益のために適切に企画し実行すべき立場にある者として、構成要件における「他人のためにその事務を処理する者」に当たます。
(2) 図利加害目的
背任罪は目的犯であって、「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」が必要とされます。本件の場合は、被告発人自身の利益、ならびに第三者である被告発人の妻・被告発人の政治的後援会員・被告発人と所属政党を同じくする国会議員らの利益をはかる目的があっての任務違背であることは、自明のことというべきです。
(3) 任務違背
背任罪の本質は背信であると説かれます。被告発人の国に対する任務に違背する行為が、構成要件上の犯罪行為です。当該任務は、具体的には「法令、予算、通達、定款、内規、契約等」を根拠とします。その根拠にもとづく「任務に反する行為でその行為が、国に財産的損害を生ぜしめる性質のものである限り原則的に任務違背が成立する。」と説かれます。
被告発人は内閣府の長として、本件各「桜を見る会」を企画し実施して必要な経費を支出するに当たっては、「桜を見る会開催要領」と予め定められた歳出予算額とを遵守すべき義務を負っていたものです。
歳出予算は拘束力を持ち、いわゆる「超過支出禁止の原則」にしたがって、予算計上額を上回って超過支出することが禁止され、予算外支出も認められません。にもかかわらず、被告発人は、「桜を見る会開催要領」を無視して、招待者の範囲を恣に拡大し、約1万名と限定されていた範囲を大幅に逸脱して無原則に招待者を拡大し、予算の制約を大幅に超えて費用を支出した点において、その任務に違背したものです。
(4) 国の財産的損害
背任罪は財産犯ですから、被告発人が国に幾らの損害を与えているかが問題となります。被告発人は総理大臣になって以来、毎年「桜を見る会」への招待者数を増やし、国に予算を超過する支出を余儀なくさせて、毎年予算超過額に相当する損害をあたえました。その金額の総計は、公訴時効完成前5年分で1億5200万円となります。

◆ 政府側の弁明
予算超過に関する内閣府大臣官房長の説明は、「最低限必要となる見込みの経費を前提に予算を計上し、結果的に支出額が予算額を上回った分については、『一般共通経費』で補填している」というものです。つまりは、予算で最低限必要なことはできるのです。「桜を見る会開催要領」に従って、招待者1万人枠を遵守していれば、「一般共通経費」の「活用」は不要なのです。国会が承認した予算を漫然と超過することは許されありません。どのような事情で、何に、幾らかかったかの特定と、しかるべき理由と証明がなければ、「一般共通経費」からの支出が許されようはずはありえません。

以上のとおり、「桜疑惑」とは,その本質において、まずは「総理大臣の国民に対する」背任だというのが私たちの主張です。

弁護士 澤藤統一郎

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黒岩宇洋(立民)、池田真紀(同)、奥野聡一郎(国民)、山井和則(無所属)、田村智子(共産)、山添拓(共産)の各議員から、それぞれに熱のはいったご挨拶があった。

こもごも熱く語られたことは、「いったい、これが法治主義国家か」「法の支配はどこへ行ったのか」「民主主義の根幹が揺らいでいる」「権力者は法を破ってもよいとでも思っているのか」「こんなことが許されてはならない」「徹底した追及が必要だ」「そのために、法律家の協力を期待する」ということ。

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今後の方針と行動提起

南典男

1 「桜を見る会」の問題は、安倍首相による国政の私物化という問題ですが、同時に、民主主義や法治主義を壊すという問題でもあります。安倍首相は、国民の血税を使って地元の後援会員に便宜を図るだけでなく、前夜祭では本来なすべき収支報告をなさない、これは政治資金規正法に違反すると思われます。また、ホテル側が通常よりも低い金額で料理等を提供しており、これは公職選挙法に違反すると思われます。
安倍首相は、違法行為であることを弁解するために、ホテルと800人の参加者が個別に契約しているとか、安倍事務所はホテルと合意はしたが契約はしていないとか、説明にもならない、非常識かつ不合理な弁明に終始しています。
本来、率先して法を守るべき立場に立たなくてはならない首相が、率先して違法行為をする、弁解にもならない不合理な弁明に終始する、これでは私たちの国は法治国家の体をなしていないと言わざるを得ません。

2 私たち弁護士や法学者は、法の支配を回復するために、法の専門家として「「桜を見る会」を追及する全国法律家の会」を立ち上げました。今後の行動を提起します。
? 96人が呼びかけ人になりました。これから全国から千を超えるような賛同者を幅広く募ります。
? 刑事告発を視野に違法行為に基づく法的責任をはっきりさせます。集めた多くの証拠資料を分析し、また、新たな証拠の収集を行い、論点を絞り込んで法的責任を明確にします。
? 「桜を見る会」の問題について、全国津々浦々で集会などの企画を成功させます。既に、仙台、長野、沖縄などが先頭に立って走って頂いていますが、全国で企画を立てて頂ければと思います。3月に桜が開花するのとともに、違法責任を追及する運動を展開し、追及運動の季節にしていきましょう。
? 国民世論を高め、立憲野党の議員の皆さんと連携して国会での追及を強め、事実と真相を明らかにしていきます。
? 以上4つのことを実践して、3月12日午後5時から大きな規模で院内集会を行います。場所は衆議院第2議員会館多目的会議室です。

3月12日まで1か月、お互いに頑張りましょう。そして、違法責任の当事者である安倍首相の法的責任を明確にするまで、追及運動を大きくしていきましょう。

(2020年2月13日)

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