澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典の公園使用に、不当な条件の撤回を求める東弁会長声明

(2020年6月24日)

一昨日(6月22日)、東京弁護士会が素晴らしい会長声明を発表した。私は、東京弁護士会会員であることを誇りに思う。

その会長声明のタイトルは長い。「9.1 関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典のための公園占用許可につき不当な誓約書の提出を条件とすることの撤回を求める会長声明」というもの。下記に全文を掲載するが、下記URLで東京弁護士会ホームページの原文を読むことができる。
https://www.toben.or.jp/message/seimei/post-584.html

問題は、9月1日に予定されている恒例の「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」に対する小池百合子都知事の対応。端的に言えば、関東大震災朝鮮人犠牲者を追悼しようという日・韓・朝の人々に対する、小池都知事の嫌がらせをたしなめるもの。

いま、小池都知事は、追悼式典実行委員会の公園占用許可申請に対して、不当な誓約書の提出を条件として要求し、誓約書の提出がなければ公園占用許可をしないと言明している。東弁会長声明は、この態度を改めるよう強く求めている。

当ブログでは、本年5月28日に下記の記事を掲載した。

小池都知事よ、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典への嫌がらせをやめよ
http://article9.jp/wordpress/?p=14988 (2020年5月28日)

同日のブログでは、「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会」(実行委員長 宮川泰彦)と、自由法曹団東京支部(支部長 黒岩哲彦)の声明を紹介して、小池都知事に対して追悼式典への嫌がらせをやめるよう訴えた。

周知のとおり、東京市本所区(現東京都墨田区)横網町の陸軍被服廠跡地は1923年の関東大震災による被災地として知られる。痛ましくも、推定3万8000と数えられる老若男女がこの場所で焼死した。この犠牲者を悼むために、この地が「大正震災記念公園」とされたが、1930年「震災記念堂」が建立されて公園名も「横網町公園」となった。戦後は東京大空襲による身元不明者10万人余をも合祀して、名称を「都立横網町公園」「東京都慰霊堂」と改称して現在に至っている。

1973年、この公園の一角に、「朝鮮人犠牲者追悼碑」が建立された。横網町公園のホームページには、こう解説されている。

「関東大震災時の混乱のなかで、あやまった策動と流言ひ語により尊い命を奪われた多くの朝鮮人を追悼し、二度とこのような不幸な歴史を繰り返さないことを願い、震災50周年を記念して昭和48年(1973年)に「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼行事実行委員会」により立てられた碑です。」

 この実行委員会は、当時の都議会全会派の幹事長が参加するものだったという。その碑には、こう刻まれている。

「1923年9月に発生した関東大震災の混乱のなかであやまった策動と流言蜚語のため6千余名にのぽる朝鮮人が尊い生命を奪われました。私たちは、震災50周年をむかえ、朝鮮人犠牲者を心から追悼します。この事件の真実を知ることは不幸な歴史をくりかえさず民族差別を無くし人権を尊重し、善隣友好と平和の大道を拓く礎となると信じます。思想・信条の相違を越えてこの碑の建設に寄せられた日本人の誠意と献身が、日本と朝鮮両民族の永遠の親善の力となることを期待します。
 1973年9月 関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑建立実行委員会」

  碑 文

この歴史
   永遠に忘れず
  在日朝鮮人と固く
  手を握り
  日朝親善
   アジア平和を
  打ちたてん
        藤森成吉

 この碑の建立以降、毎年9月1日には、追悼碑前での「9・1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」が続けられてきた。「事前に都との打ち合わせを経て使用許可を得、厳粛且つ平穏な追悼式典が執り行われてきた。」ということは、実行委員会の声明にあるところ。式では、歴代の知事が追悼文を送り式で紹介されてきた。あの石原慎太郎でさえ、追悼文を欠かすことはなかった。

ところが、事態は小池百合子知事になって変わる。小池は追悼式に追悼文を送らなくなった。古賀俊昭という極右都議の議会での質疑に応えての方針変更である。そしてこの度は、ヘイト集団「そよ風」を利用しての、形式的平等取り扱いを装った、嫌がらせである。もしかしたら、本気で追悼集会を潰すつもりなのかも知れないのだ。

都市公園法という法律がある。その第6条1項に「都市公園に公園施設以外の工作物その他の物件又は施設を設けて都市公園を占用しようとするときは、公園管理者の許可を受けなければならない。」とある。これに基づいて、実行委員会は、昨年(2019年)9月以降、追悼式典のための占用許可申請(実行委員会声明では、「使用許可申請」)を重ねてきたが、東京都は3回にわたって、申請受理を拒否という。そして、12月24日には、「横網町公園において9月1日に集会を開催する場合の占有許可条件について」と題する文書を実行委に示してきた。

問題なのは、東京都が、これを遵守する旨の都知事宛ての誓約書を提出することを求めていることである。しかも、この誓約書には「下記事項が遵守されないことにより公園管理者が集会の中止等、公園管理上の必要な措置を指示した場合は、その指示に従います。また、公園管理者の指示に従わなかったことにより、次年度以降、公園地の占用が許可されない場合があることに異存ありません」とある。この当不当、あるいは違法性の有無が論じられなければならない。

東弁会長声明は、「地方自治法第244条第2項は、『普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。』としているところ、判例上も、特段の事情がない限り、妨害者の存在を理由として、被妨害者の不利益を帰結するような取扱いはなされるべきではないものと解されているところである」と、上尾市福祉会館事件判決を引用している。同判決はこう言って、不許可を違法と判断した。その判決理由中に、下記の判示が見える。

 本件会館は、地方自治法244条にいう公の施設に当たるから、被上告人は、正当な理由がない限り、これを利用することを拒んではならず(同条2項)、また、その利用について不当な差別的取扱いをしてはならない(同条3項)。

 (条例は)「会館の管理上支障があると認められるとき」を本件会館の使用を許可しない事由として規定しているが、右規定は、会館の管理上支障が生ずるとの事態が、許可権者の主観により予測されるだけでなく、客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合に初めて、本件会館の使用を許可しないことができることを定めたものと解すべきである。

 また、泉佐野市民会館事件最高裁判決(最判1995(平成7)年3月7 日)はこう判示している。

被上告人(泉佐野市)の設置した本件会館は、地方自治法244条にいう公の施設に当たるから、被上告人は、正当な理由がない限り、住民がこれを利用することを拒んではならず(同条2項)、また、住民の利用について不当な差別的取扱いをしてはならない(同条3項)。

市立泉佐野市民会館条例の定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」の危険性は、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要である。

主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、その集会の目的や主催者の思想、信条に反対する他のグループ等がこれを実力で阻止し、妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことは、憲法21条の趣旨に反するところである。

 もっとも、泉佐野市民会館事件では、最終的には例外的に不許可が認められた。当時の情勢から、中核派と対立グループとの抗争による混乱は、警察力の行使によっても制止困難な「明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される」事態の認定あってのことである。本件とは比較すべくもない。飽くまでこの原則論が尊重されなければならない。

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9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典のための公園占用許可につき不当な誓約書の提出を条件とすることの撤回を求める会長声明

2020(令和2)年6月22日
東京弁護士会 会長 冨田 秀実

 東京都は、今般、本年度の「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」開催のため、同追悼式典の実行委員会が、東京都立横網町公園の占用許可を申請したのに対して、誓約書の提出を占用許可の条件とし、誓約書の提出がなければ、占用を許可しないと言明した。誓約書の内容は、「公園管理上支障となる行為は行わない」、「遵守されないことにより公園管理者が集会の中止等、公園管理上の必要な措置を指示した場合は、その指示に従います。また、公園管理者の指示に従わなかったことにより、次年度以降、公園地の占用が許可されない場合があることに異存ありません」などというものである。

同追悼式典は、同公園において毎年9月1日に開催されてきた式典である。関東大震災時に「朝鮮人が井戸に毒をいれた」等のデマが流布したことなどにより、自警団や軍隊、警察による殺傷事件が起きた。政府の「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書(2008年3月 内閣府中央防災会議)」は朝鮮人らの虐殺犠牲者数を、震災死者数(約10万人)の「1~数%」に当たると指摘している。こうした悲劇を踏まえ、同公園に1973年、朝鮮人犠牲者追悼碑が建立され、40年以上追悼式典が行われてきた。同追悼式典は、犠牲者を追悼するためのものであり、管理上の支障や混乱なく開催されてきた。これまで、占用許可について、上記の内容の誓約書の提出を求められたことはなかった。

しかるに、2017年以降、朝鮮人虐殺の事実を否定する団体が、同追悼式典と同時間帯に、同追悼式典と近接した場所で、「慰霊祭」を開くようになった。「慰霊祭」において、この団体は、同追悼式典を「歴史捏造」とする看板をかかげ、追悼式典の参加者を挑発するように「不逞朝鮮人」などのことばも用いて、朝鮮人に対するヘイトスピーチを行い、あからさまに同追悼式典を挑発し、同追悼式典の静謐さは破られた。

言うまでもなく、集会の自由(日本国憲法第21条第1項)は、民主政の過程を支える憲法上優越的な人権として尊重されるべきものである。これを受けて公共施設の利用について、地方自治法第244条第2項は、「普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。」としているところ、判例上も、特段の事情がない限り、妨害者の存在を理由として、被妨害者の不利益を帰結するような取扱いはなされるべきではないものと解されているところである(最判平成8年3月15日・民集第50巻第3号549頁)。

その上、上記誓約書の「公園管理者の指示に従わなかったことにより、次年度以降、公園地の占用が許可されない場合があることに異存ありません」などの文言は、不許可を容認させる点で制限が強度であるだけでなく、指示の内容が具体的に示されていないため、萎縮効果をもたらすおそれがあるばかりか、前に述べた経緯を看過して、上記誓約書の提出を条件とすることは、ヘイトスピーチを用いた妨害行為を容認、助長する効果をももたらしかねない。それは、集会の自由の不当な制限であるだけでなく、人種差別撤廃条約、ヘイトスピーチ解消法、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」等、人種差別、ヘイトスピーチの撤廃、解消を企図する法令の趣旨にも合致しない。

当会は、東京都に対し、上記追悼式典のための占用許可にあたって、従来どおり、上記内容の誓約書の提出を条件としないことを強く求める。

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Published in 水曜日, 6月 24th, 2020, at 20:14, and filed under 表現の自由, 都政, 韓国.

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